ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか   作:黒歴史

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第77話ベル達が多い

 〜ヤ…じゃないベル!!〜三人称

 

「こんな時に言うのもなんですけど、なんだかドキドキしますね」

「…シッ。静かに」

 

 現在ベル達は【イシュタル・ファミリア】のホームにて隠れながら移動していた

 命が移動をやめ、気配を殺すとドタドタと走る【イシュタル・ファミリア】のアマゾネス達がベル達に気づく事なく走っていく

 

「……そろそろ、使っておきましょう」

 

 上と下につながる階段を発見した命はここで『スキル』を発動した

 

八咫白鳥(ヤタノシロガラス)

 

 ダンジョンでヴェルフが言及していた敵探知の能力【八咫黒鳥(ヤタノクロガラス)】とは真逆の味方探知の能力を発動させる

 

「……?」

「命さん?どうしました?」

 

 下の階へ通じる階段に移った時、命はベルに振り返る

 もちろんベルは確かにそこにいるし、当の本人も何故こちらを見ているのかわからず首を傾げている

 

(この反応はベル殿?でも目の前にいますし、何より)

 

 あまりにも微細な目の前のベルと似ているベルの反応に困惑する

 命は戸惑いつつも気配のする方向へ足を運んだ。何度か階段を利用して下へ向かい、階の隅に位置する一室に辿り着く

 

「わぁ…」

「宝物庫……?」

 

 見張りはおらず、例によって所持している鍵束を使用して扉の中へ滑り込むと、広がったのは数多くの武器やアイテム、そして宝箱だった

 壁の左右に何段も取り付けられた棚に保管されており、隅に置いてある大袋の中には光り輝くヴァリス金貨が見える

 驚きながら奥へ進むと……

 

「あっ!」

 

 ベルがある物を見て走りだす。走る先には金の天秤が置かれている卓があり、その上に『ベルに似た反応』を発するそれはあった

 

「これ、僕のナイフです!」

 

 ベルが≪ヘスティア・ナイフ≫を持って喜ぶ、その卓の上にはまだ≪牛若丸≫と≪牛若丸二式≫、ベルト、腰巾着、そしてポーションが入ったレッグホルスターもあった。もちろん命の装備一式もある

 

「後は……じょ、状況が状況ですので」

「う、うん……」

 

 2人は周囲を見回し、言い訳を口にしながら棚に飾られているアイテムを調達する

 

「うぅ、これでは盗人と同じです」

「ヤ、ヤミさんなら『向こうが入れてきたんだからこれくらい覚悟の上だろ?』って言いそうだけどね……」

「それもそうなんですが……」

 

 そう言ってベルと命は宝物の中のアイテムを漁った

 

 

 〜ヤミの時になると何故か一人称なんだよな〜

 

「……春姫さん」

 

 フリュネの部屋から出て多分20分。薄暗い通路で2人分の足音が響く中、俺達2人は地下を歩き続けていた【イシュタル・ファミリア】のホームとは真逆に向かっているらしいが歩いてばかりでは落ち着かない

 

「何でしょうか、ヤミ様」

 

 前方でゆらゆらと尻尾を揺らしながら呼びかけられた春姫が顔を向ける

 

「…本当に逃がして良かったのか?何故かフリュネに捕まってたとはいえ、元々俺は【イシュタル・ファミリア】に捕まってた身だぞ?」

 

 俺達を襲ったあの冒険者(アマゾネス)の数から考えると、あれだけの人を動かせるのは多分神様くらいのものだろう

 主神様の意思という事は【ファミリア】の意思と思っても良い。それを裏切って俺とベルと命を助けたとなれば……

 

「お気になさらないですださいヤミ様」

 

 俺の考えていることを断つように春姫がまた笑い返す

 立ち止まり振り返った彼女は、金の長髪をさらっ、と揺らした

 

「私の最後の我儘です。アイシャさん達も、きっと大目に見てくれます」

 

『最後の我儘』

 その言葉に違和感を持った。なんか近々自分が死ぬとでも言うような…

 そんな違和感を持つも不謹慎だと思いそれ以上追求するのをやめにした

 

「ああ、そういえば春姫さん。俺達はアンタを『身請け』しようと考えてる」

 

 少しでも話題を変えようとみんなで最近決めた話を口にした

 

「えっ……?」

 

 春姫はその言葉を聞きその瞳を一杯に見開く

 

「命がヘスティア……俺達の主神様に説得したんだよ。まあ、金を貯めんのはまだまだ時間かかるが……」

 

 とりあえず暗い雰囲気から脱出しようと今俺達がやろうとしていることを打ち明けた

 

「主神様も、他の奴らも身請けする事を許してくれたんだ……まあ、そういう訳だからそんな暗い顔すんな!本気で笑ってた方が世の中明るく見えるぜ?」

 

 俺自身、笑顔を作り春姫を笑わせようとした。『顔が怖い』と言われている俺の顔で笑顔なんてしたらやばい気がするが……

 

「うそ……」

 

 春姫は両目を見開きながら涙を流した。二筋の滴が頬に引いていく

 喜びの涙も良いが、笑って欲しかったなぁ……

 

「私は……春姫は、幸せです」

 

 唇に、微笑みを浮かべた

 

「命様に……ベル様に、そこまで思っていただけるなんて」

 

 震えながら胸を押さえつけながら。『溶けてしまいそう』と掠れた呟きを口にする

 

「ありがとうございます…その言葉を聞けて……もう思い残す事はありません」

 

 そう言いながら彼女は俺に笑いかけた

 ……思い残す事はない?

 なんかこれから先、もう会えないみたいな……

 

「ありがとうございます、ヤミ様。行きましょう」

「え?あ、ああ……」

 

 礼を告げて彼女は前を向き、背を向けた

 ハッと戻ってきた俺は何も言わずにただただ追いかける事しか出来なかった

 

 

 〜またベルだなぁ…あぁ、一人称頑張るべ〜

 

 ベルは命と共に通気口を移動してる間に聞こえてきたアマゾネス達の会話が頭から離れなかった

 

『春姫が姿を消したらしい』

『殺生石の儀式って今夜だろう……まさか!?』

『逃げ出すため、【リトル・ルーキー】達に縋り付こうって腹かい?』

 

(『殺生石の儀式』って何だろう?春姫さんと何か関係が?

 ……下位構成員じゃなかったのかな?)

「ベル殿、通気口から出ます」

 

 考え事をしていると命が鉄柵を外しながらそう伝えてくる

 わかった。と返事を返し、命が通気口から降りた後に続きベルも降りる

 

「ここは……」

「本棚?」

 

 床に降り立ったベル達を囲むのは、いくつもの本棚だった

 収められている蔵書の量を見るに、書庫か資料しつか?と当たりをつける

 薄暗い部屋には紙と木の香りが漂っていた

 気配を殺し、2人で本棚の迷路を進む中、出口を探す2人の目にある光景が飛び込んでくる。机の上に無造作に投げ出された、羊皮紙の巻物の束

 多くの物が読み込んだ形跡があり、ベルは一枚の羊皮紙を試しに取る

 

「『……殺生石の儀式について』」

「ーー馬鹿なっ!?」

 

 それだけをベルは口にして読んでいると命が喉が張り裂けんばかりの声で叫んだ

 

「ベル殿…これ…!」

 

 命が焦りながらも一枚の羊皮紙を手渡した。それを受け取ったベルはその紙に書いてある文字を読みだした

 

 〜殺生石とは〜

『殺生石とは狐人の魂を石に封じ込める石である』

『相応の設備も併用する事で魔力を完璧に封じ込めた殺生石は、狐人の『妖術』と謳われる貴重な魔法を第三者に与える物へと変化し、殺生石は砕ける』

 

 

『代償として生贄にされた狐人を魂の抜け殻へと変える』

 

 

 そこまで読んでベルは息を飲んだ。【イシュタル・ファミリア】の狐人と言われてみれば、あの人しか思い浮かばないからだ

 そのままベルは続けてそれを読む

 

『魂を奪われた狐人は殺生石を肉体に注入すれば、魂を奪われた狐人は目を覚ます。肉体さえ無事であるならばそれから先も問題なく生きていけるが、少なくとも廃人へと成り下がる』

 

 そこまで読んでベルはアマゾネス達の言っていた言葉を一つ思い出した

 

『殺生石の儀式って今夜だろう?』

 

 

「命さん!!」

「ええ、行きましょう!!!」

 

 ベルと命は動揺しながらも春姫を探すために、脇目も振らずに走り出した

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