要塞空母デスピナ出撃す。第2篇   作:まはまは

11 / 17
お待たせしました、第44話です。
今回は、短めです。

随分暖かくなってきましたね。あ、受験生の皆さんはお疲れさまでした。受かった人はおめでとうございます。
作者も無事進級できそうなので、小説も頑張っていきたいです。

ここ最近、第1篇に比べて第2篇のUAが伸び悩んでいる感じが…ウーム。
元々、固定の読者様ができるだけでうれしかったので随分と贅沢を言ってますね。
今も、これからも、読んでいただけている読者様には大変感謝しております。
どうか、これからもこの作品を楽しんでいただけたら幸いです。

長くなりましたが、本編をどうぞ。

あ、少し遅れて、横須賀鎮守府艦隊編成を投稿します。
興味のある方はぜひ。


第44話 はじめての提督生活1

第44話 はじめての提督生活1

 

12月2日 08:00

横須賀鎮守府 体育館

 

一夜明けて、艦娘達が再び体育館に集まっていた。

しばらくして、高野提督とT督が壇上に上がる。

「これより、横須賀鎮守府艦隊編成を発表する!」

T督の発言に少し艦娘達がザワつくも直ぐに静かになる。静かになったタイミングでT督が話を再開する。

「この艦隊編成は常時のもので、大規模作戦時はその都度艦隊編成が変わるのでそのつもりで。では、まず主力となる4艦隊を発表する」

 

ここで横須賀鎮守府の艦隊編成について。

横須賀鎮守府では、海域解放などが主な役目、主力の第1~4艦隊。

哨戒や通常戦闘などが役目の第5~12艦隊。

海域警備、護衛などを役目とする第1~第9護衛艦隊。

横須賀鎮守府所属の潜水艦隊。

遠征がメインとなる遠征艦隊群。

その他、常時艦隊に配備されない練習艦や工作艦、補給艦、給糧艦など。

そして、非公開の特務艦隊。

一応、特務の潜水艦達も上記の潜水艦隊所属になってはいる。

以上が横須賀鎮守府の大まかな艦隊編成である。

 

「まず第1艦隊――」

T督が全員の所属艦隊を10分以上掛けて読み上げた。発表された艦隊編成に喜ぶものや冷静に受け止めるものなど反応は様々であった。発表後に各艦隊の旗艦にミーティングなど各艦隊で自由に使える部屋の鍵を手渡した。

その後、高野提督から旗艦の艦娘に執務室にて今日の各艦隊の予定を伝えること、それ以外の艦娘は早速、各艦隊の部屋に待機することを連絡してその場は解散となった。

 

09:13

提督執務室

 

「では、今日の日程を伝えます」

高野提督が執務室に集まった艦娘に話始める。

「第1、第2、第4艦隊は香取さん、鹿島さんと共に演習を行ってください。演習弾を使用するので演習に行く前に工廠で演習弾を貰ってください」

第1艦隊旗艦の長門、第2艦隊旗艦の大和、第4艦隊旗艦のアイオワ、演習担当の香取と鹿島に伝える。

「了解した」「了解しました」「OK」「「お任せください」」

 

「第3、第10艦隊、第2護衛艦隊、第6護衛艦隊は製油所地帯である東海地方沿岸の制海権確保のため出撃して貰います。詳細はT督から伝えます」

第3艦隊旗艦の翔鶴、第10艦隊旗艦の妙高、第2護衛艦隊旗艦の阿武隈、第6護衛艦隊旗艦の利根に伝える。

「「「了解しました」」」「了解したのじゃ」

 

「第1護衛艦隊、第8護衛艦隊、第9護衛艦隊は鎮守府近海の対潜哨戒のため出撃してもらいます。同じく詳細はT督から伝えます」

第1護衛艦隊旗艦の神通、第8護衛艦隊旗艦の龍驤、第9護衛艦隊旗艦の鳳翔に伝える。

「了解しました」「まかしとき」「分かりました」

 

「遠征艦隊群の第1、第2、第3、第4部隊は、日本近海の資材出現ポイントに資材調達に向かってください。こちらも詳細はT督から伝えます」

第1部隊旗艦の睦月、第2部隊旗艦の名取、第3部隊旗艦の長良、第4部隊旗艦の天龍に伝える。

「了解にゃしぃ」「「了解しました」」「了解だ」

 

「明石さんは工廠に、大淀さんは私と事務仕事を、間宮さん、伊良湖さんは食堂と甘味処のほうをお願いします。他の艦隊は、本日非番になります。質問はありますか?」

高野提督が艦娘の顔を見渡す。

「質問は無さそうですね。では、毎朝09:00にここでこのように連絡を行うのでお願いします。それでは、本日の出撃艦隊と遠征艦隊以外は解散してください」

高野提督がこう締めくくり出撃艦隊と遠征艦隊の旗艦の艦娘以外は執務室から出て行き、提督執務室には、高野提督とT督、大淀、本日の出撃艦隊と遠征艦隊の旗艦の艦娘が残った。

 

執務室に残った艦娘に大淀が各自の任務について書かれた紙を配る。全員が貰ったことを確認してT督が話始める。

「では、まず製油所地帯沿岸の出撃任務について説明する。本作戦目標は戦艦ル級率いるこの海域の敵主力艦隊排除だ。第3艦隊は戦艦ル級率いる敵主力艦隊の撃滅を。第10艦隊、第2護衛艦隊、第6護衛艦隊は、周りの深海棲艦を撃滅してくれ。質問は?」

翔鶴が手を挙げ、質問を述べる。

「なぜ、4艦隊投入するのでしょうか?多すぎる気がしますが」

「理由としては、作戦海域が敵の勢力圏に近いためだ。近畿沿岸から敵の増援が来るなどの場合が考えられるからだ。そういった事態に対応できるように4艦隊を投入する。疑問は解けたか?」

「はい、ありがとうございます」

「よし、では出撃してくれ」

翔鶴が礼を述べて、翔鶴、妙高、阿武隈、利根が執務室から出ていく。

 

「続いて、対潜哨戒だが敵の潜水艦の場所は不明だ。虱潰しにやるしかない。民間の船に被害が出ているそうなので念入りに頼む。質問は?」

「被害が多かったんはどのあたりになる?」

と、龍驤の質問。

「たしか…浦賀水道を出たあたりだな」

「なるほど、その周辺を重点的にやるわ。ほな、行ってくるわ」

龍驤と鳳翔、神通が相談しながら執務室から出ていく。

 

「遠征艦隊は、配った紙に書いてある資材出現ポイントの資材を回収してくれ。一応目標として燃料と弾薬と鋼材は500以上ずつ、ボーキサイトは100以上でお願いする。質問は?」

質問が出なかったので、T督は艦娘達を遠征に向かわせT督自身も、仕事をするために自分に宛てがわれた執務室に向かった。

 

09:46

司令補佐執務室

 

朝の事務連絡となる朝礼のようなものを終えて、いよいよ始まる提督の仕事をするために自分の執務室にやってきた。高野提督のいる執務室の隣になる。

扉の横には司令補佐執務室と書かれた札がある。扉を開け中に入ると、

「あ、やっと来た」

「おかえりなさい、提督」

俺が昨日帰りにコンビニに寄って買ってきていたポテチを開け応接用にあるソファーで寛いで食べているほのかとほのかの湯飲みにお茶を入れているエピメテウスがいた。

「…あのな、ここ、仕事場。おk?」

「おk」

「す、すみませんでした」

エピメテウスは、真面目なのでソファーから立ち上がり腰を折って謝罪してくるが、ほのかはそのままポテチを食べ続ける。

「まったく、エピメテウスの爪の垢を煎じて飲ませたいな」

「うん?なんか言った?」

「うん、なんか言った」

と、都合の悪いことは聞こえないようにしているみたいで、俺のお菓子を食べたことや何故お菓子のありかを知っているのか問い詰めようと思ったが時間の無駄なので追求はやめておく。

また、隠すところを探さなければ。

 

ため息をつきつつ、執務室にある重厚そうな執務机と背もたれが高く肘置き付きのデスクチェアに座る。座り心地はなかなか良い。

装着しているT督の被り物はさすがに邪魔なので脱いでおく。

執務机の近くに設置されている秘書艦のデスクからエピメテウスが書類を持ってきて執務机の上に置く。

「では、提督。執務を始めましょう」

「あぁ」

執務机の上に置かれた1枚の書類を取り、目を通す。

最初の書類は、昨日の宴会の会計書類だった。宴会に関する書類を何枚か追加で書類の束から取って確認し、下の承認欄にハンコを押して決済済みの箱に入れる。

エピメテウスも秘書艦のデスクに座り、決済前の書類で不備が無いか確認している。

あー、提督の仕事って感じがする。そんな気がする。

 

コンコン

 

執務室の扉がノックされ、慌ててT督の被り物を被る。小声でほのかにT督の被り物がしっかり装着できているか確認する。ほのかが問題ないとジェスチャーで伝えてくれてから、入室を許可する。

「どうぞー」

扉が開き、艦娘が入ってくる。

「失礼するでちー」

「なんだ、ゴーヤか」

再び、T督の被り物を脱ぐ。意外と中は暑いので被り続けると首元に汗疹が出る(昨日装着したらできていた)ので嫌なのだ。

そんな俺を見て、ゴーヤがどこか呆れた目で見てくる。

「…それ毎回被るでちか?」

「仕方がないだろう、情報漏洩防止のためだ。それで要件は?」

ゴーヤが手に持っていた便箋を出してくる。

「大淀から貰ってきたでち。て~とくにご連絡」

便箋を受け取り宛名を見ると、統合参謀本部と書かれていた。

「と、統合参謀本部!?」

「驚かさないでよ、ポテチこぼしたじゃん!」

ほのかが服の上にこぼしたポテチの欠片を床の上に叩き落とす。

「知るか!あとで掃除しとけよ」

えー、と文句を垂れるほのかを無視して便箋を開封する。

 

統合参謀本部。

国防軍の最高司令部であるこの組織。様々な作戦などはここの判断を得て実行される。俊英たる将校が集まる場所である。

 

しかし、軍令部直轄の特務に手紙が?連絡ならば電話を…

と、机を見ても電話が無く、まだ電話線を引いていないことに気づく。

それで、手紙か。と納得し中身を読む。

手紙の内容を読み終えると、ほのかも見たがっていたので放り投げて渡す。

キャッチしたほのかが素早く目を通すと、明らかに嫌そうな顔になる。

「エピメテウス、特務艦隊にコード201を発令。30分後、ブリーフィングルームに集まるよう伝えてくれ」

「了解しました!」

エピメテウスが早速、配給されているスマホを使って特務艦隊全員にコード201を一斉送信する。

「てーとく、まさか…」

俺、ほのか、伊58の持つスマホからアラートが鳴る。スマホを取り出すと、画面には非常事態呼集を表す“コード201”の文字が表示されていた。

「あぁ、特務は休みだったが…。仕事だ」

 

11:38

横須賀鎮守府地下司令部 特務艦隊ブリーフィングルーム

 

「全員集まったな?これよりブリーフィングを始める」

自分の認証コードを打ち込み、モニターに作戦の詳細を表示する。

モニターに日本地図が表示され西日本、紀伊半島周辺、紀伊水道と拡大されていく。

マップに敵艦を表す赤点が表示され、エリアごとにそれぞれの警戒レベルを示す色も表示ざれる。

「本日09:23紀伊水道にて敵の大規模艦隊を別任務で偵察中であった国防空軍の部隊が確認。統合参謀本部の情報本部が敵の攻勢兆候であると判断した。統合参謀本部は本日09:56に第3次警戒態勢への移行を宣言。対象並びに周辺の9エリアを第3警戒レベルに指定。そして、特務艦隊にコード102が発令された。我が艦隊はこれを受領し、敵艦隊の撃滅にあたる」

 

現在の動きをまとめると、国防軍は第3次警戒態勢、防衛準備態勢に移行。

国防軍全体で通信の暗号強度を最大に引き上げられた。

 

陸軍では近畿エリアに近い中部地方にある各駐屯地ではすでに戦闘準備に入っており、敵の侵攻が確認されたらすぐに部隊を動かせるようにしている。

 

空軍も対象エリアを重点的に偵察機を多く出して警戒にあたっている。

 

海軍は横須賀鎮守府に24時間の戦闘準備待機を、特務艦隊に状況の対処を命じている。

 

モニターに詳細な敵戦力が表示される。

「敵艦隊はダブルダイソン…戦艦棲姫2隻、戦艦と空母の改flagship級を中心として100隻を超える。今回の戦いは敵の殲滅である。1隻たりとも逃がすなよ」

ブリーフィングルームに集まっている全員の顔を見渡す。出撃ということでやはり皆真剣な表情である。

「本日は東海地方沿岸に横須賀鎮守府の艦隊がいる。被害をださない為にも迅速に対処する必要がある」

モニターに現在味方艦隊がいると思われる位置を表示する。

艦隊は東海沖に展開中、おそらく交戦中だろう。

 

「今作戦では、俺含め全員出撃だ。30分後、鎮守府滑走路に集合せよ。今日の戦いが終わったら、確実に2日休暇をいれるから頑張るぞ!!」

「「「了解!」」」

2日間確実に休みと聞き、潜水艦娘は生き生きとした表情になった。潜水艦=休み無しと彼女たちの深層意識に刷り込まれているためであった。

 

ブリーフィングを終え、俺は高野提督がいる執務室に行き、特務艦隊の任務のため出撃をすることを告げておく。

執務室に入ると、大淀は居らず高野提督だけであった。

「大淀には、出撃中の艦隊に第3次警戒態勢の発令と注意喚起のために通信室に行ってもらっているわ。それにしても、初日から災難ね」

「ほんとですよ…、でも近くに出撃している艦隊を守るためにも迅速に対処するので」

「お願いね」

と、俺の目を見つめてくる。

「おまかせください、高野提督」

と言って執務室から出て行こうとしたが、

「裕一君?もう忘れたの、かなかな??」

せっかくのシリアスが台無しである。空気を読んで堅苦しく言ったのだがお気に召さなかったようだ。やはり名前で呼ばせたいらしい。

「おまかせください………絢香さん」

「うん♪いってらっしゃい」

 

東海地方沿岸

 

「第3次警戒態勢が発令!?」

東海地方沿岸沖で敵の主力艦隊を捜索中に横須賀鎮守府から緊急通信が入り、大淀さんからの説明に耳を疑いました。

「翔鶴姉、突然どうしたの?」

瑞鶴が突然大きな声を出した私に尋ねてきます。瑞鶴に心配をかけてしまうなんて、少し取り乱してしまいました。

「少し待っていて。それで状況は?」

『はい。紀伊半島の西沿岸部に敵の艦隊が集結中。すでに海軍軍令部直轄の部隊が向かっているそうです』

軍令部直轄の部隊?そのような部隊があるのね。もしかしたら…いえ、今はやめておきましょう。

「高野提督からの指示は?」

『高野提督よりその海域に深海棲艦の大規模艦隊が来る可能性があるので注意しつつ、任務の遂行に集中せよとのことです』

注意だけというのは疑問に思いますが…一応、加勢できるようにすべきですね。

「了解しました」

横須賀との通信を切り、集まってもらった第3艦隊の皆さんに現在起きている状況を説明します。

「深海棲艦の大艦隊が集結中ですって!?」

「ふふん、面白くなってきたぜ」

瑞鶴は話を聞いて驚いていましたが摩耶さんは逆にやる気に満ちた表情になっています。

「集結中の敵艦隊よりも、私たちの役目はこの海域の敵主力艦隊の撃滅です。任務に集中しましょう」

「Admiralは任務の遂行を優先しろと言っていますからね。でもショーカク、肝心の敵主力が見つかってないけど?」

と、Warspiteさんが尋ねてきます。

Warspiteさんの言う通り未だ敵の主力艦隊を補足できていません。他の艦隊も捜索していますが、発見には至っていません。

「でも、翔鶴姉。この海域は捜索が殆ど終わっているよ。もしかしたら、他の艦隊がやっつけちゃったかもしれないし…」

「それはないわ、瑞鶴。敵の主力艦隊には戦艦ル級がいるもの。戦艦の目撃情報がないということは敵の主力艦隊は健在よ」

「だったら、いったいどこにいるのよ!早く出てこーい!!!」

空を見て瑞鶴が叫ぶ。私も空を見上げます。こんな時、裕一さんはどうするのでしょうか。ちょうど一機の飛行機が西、紀伊半島の方へと飛んでいきます。

その飛行機をなんとなく目で追ってしまいます。空軍の偵察機でしょうか。

「あの…翔鶴さん」

と、照月さんに声をかけられました。

「照月さん、どうかしましたか?」

「仮想世界の時この海域は確か、近畿、四国沖の辺りまであった覚えがあるんです。もしかしたらその辺りに敵の主力がいるんじゃないかなーって」

そういえば、確かに。製油所地帯沿岸の海域は東海~近畿、四国だったはず…、ちょっと疑問には思っていましたが、気にしていませんでした。

「だが、あたし達の任務は東海地方の制海権確保だろ」

と、摩耶さんの意見。現状、東海地方沿岸の制海権の確保は出来たと言えます。

「でもでも、敵の主力艦隊を潰さないと制海権確保にはならないですよ」

と、照月さんの意見。今回の任務は敵の主力艦隊の撃滅です。私がやるべきは…

 

「第3艦隊に伝えます。これより第3艦隊は紀伊半島周辺まで向かいます。私たちの目標は戦艦ル級率いる敵の主力艦隊の撃滅です。対空、対水上警戒を厳として向かいます」

「「「了解」」」

妙高さん、阿武隈さん、利根さんにも連絡を入れます。どの艦隊でもどうするか話し合っていたようです。こちらの方針にも賛同してくれました。

あとは…

『うーん、なるほどね。でも、その辺りは敵の大艦隊がいるのよね…』

鎮守府に連絡を入れ、作戦指揮のT督…は不在のため高野提督の判断を仰ぐ

「提督、どうか」

『こちらとしては、東海地方沿岸の制海権確保が出来れば問題ないのよね~』

「しかし、再び制海権を失う可能性もあります。そのためにも、敵主力艦隊撃滅のため紀伊半島周辺への進撃の許可を」

『…少し待ってて。―――君?実はね―――――――――なんだけど。うん。――――』

誰かと話しているのでしょうか。少しだけ提督の声が聞こえます。

『―――――分かったわ。じゃあそっちも頑張って。―――お待たせ』

「いえ、大丈夫です。それで…」

『うん、許可します。だけど、敵の主力艦隊を撃滅したらすぐに帰投してね。あと、慢心ダメ、絶対!だからね♪』

「ありがとうございます」

『気を付けてね』

鎮守府との通信を切り、弓に流星の矢を番える。

「偵察隊、発艦はじめ!」

 

 

一方その頃

 

綾香さんからの電話を切り、思わずため息をつく。

「どうかした?」

ほのかが顔を覗き込んで聞いてくる。とりあえず鬱陶しいので顔を押しのけて答える。

「いや、こちらの立案ミスがあって、な。今、横須賀の4艦隊が紀伊半島周辺に進撃中だ」

綾香さんによると、東海地方沿岸には敵の主力艦隊がいなかったそうだ。

それで、第3艦隊が紀伊半島の周辺にまで進撃して敵の主力艦隊を撃滅することを進言してきたそうだ。

 

今日の事前打ち合わせで綾香さんとは東海地方沿岸の制海権確保、敵の主力艦隊撃滅はできればいいなであった。

だが、説明の時に作戦目標を敵の主力艦隊撃滅に絞ってしまったため、今回の事態が起きた。

 

自分で無意識に敵主力(いわゆるボス)撃破=制海権の確保となっていたからだ。ボスを撃破すれば深海棲艦も撤退し、数が減ると考えていた。まぁ、仮想世界ではそうだった。

しかし現実では、敵主力撃破→海域の深海棲艦を減らす→脅威度の低下→制海権の確保と、ボスを撃破するだけでは制海権は確保できないのだ。

端的に言えば、海域の深海棲艦の数さえ減ればボスは撃破しなくても制海権の確保は出来るのである。だけど、すぐにボスが追加の深海棲艦たちを連れてくるんだけど。

 

撤退させてもよかったが、損得を考え進撃を選択した。今回は万が一の事態にもすぐに対応できるためでもある。だが、もう少し良く考えるべきだった。

「皆さん、もう間もなく到着です」

ノーブルを操縦している機長から機内アナンスが聞こえたので、最後の確認に入る。

「諸君、最後の確認だ。今回は遠距離からのミサイル飽和攻撃を行う。座標はワダツミシステムを使いこちらから送信する。飽和攻撃で残ったものは、空爆と雷撃で沈める。では、総員降下準備!」

妖精さんたちに潜水艦たちの降下用のパラシュート装備を点検してもらう。

俺とほのかはパラシュート装備を装着せずそのまま落下する。途中でS型を展開して空中で偵察機を飛ばして、敵艦隊の座標をワダツミシステムを使って艦隊にデータを共有する。

 

あー、AWACS(早期警戒管制機)欲しいな~。わざわざ、複数の偵察機出さずとも広範囲をカバーしてくれる。近く、開発できないか試してみるか。

いや、空軍にAWACSの出撃要請を出す形にするか?でもな、こちらの艦載機の情報システムと空軍の情報システム違うからな…。統合とかめんどいし…。まぁ、俺じゃなくて全部妖精さんに任せるんですけどね。

 

「まもなく降下ポイントです!ハッチ開きます!」

降下指揮担当の妖精さんがハッチを操作し、ノーブルの後方ハッチを展開する。

後方のハッチ側に詰め、すぐに飛び出せるようにする。すでに、俺含め特務艦隊は仮想空間で何度も降下訓練を行っているので、恐怖心は極力抑えられるようになっている。

「降下、よーい、よーい。降下!降下!降下!」

―――ジリリリ‼

ランプが青に変わった瞬間、一斉にハッチから飛び出す。先に潜水艦たちが飛び出し、最後に俺とほのかが飛び出す。

―――ゴォォォォ!!

重力に任せ自由落下をし始める。風を切る音だけしか聞こえず、全身にものすごい風圧を受ける。

潜水艦達のパラシュートが展開されたことを上から確認して、俺とほのかは同時に通常型のB型と高機動型のS型を装着する。すぐに、飛行ユニットのブースターを下に向け噴射し減速する。

「機関出力最大!」

『機関出力最大!!』

機関の核融合炉で得られる膨大なエネルギーを一時的に飛行ユニットのブースターに全てつぎ込む。ブースターの噴射される勢いが大きくなり、落下速度を殺していく。

海面がだいぶ近くなったところで落下速度を完全に殺し切り、すぐにブースターの噴射を弱めホバリングを始める。

「ヘクター隊、発艦はじめ!」

D型ジェネラル12機で編成された第401偵察隊が艤装両舷の二段式飛行甲板から飛び出していった。

 

さぁ、ちょっぱやで終わらせますか!

 




ということで、ここで一旦切らせてもらいました。次回はじめての提督生活2 お楽しみに


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。