要塞空母デスピナ出撃す。第2篇   作:まはまは

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この前に 第49話投稿していますので、見ていない方はそちらからどうぞ。



第50話 会議そして、初仕事

第50話 会議そして、初仕事

 

12月25日 15:42

国防海軍軍令部 第1庁舎 会議室

 

昨日、クリスマスイブの夜から関東でも薄らと雪が積もり、今年はホワイトクリスマスとなった。東京は……未だ瓦礫だらけのため、人はおらず静かである。

横須賀鎮守府でも今晩クリスマスパーティだとか。間宮さんのクリスマスケーキを食べたかったな…。うん?俺は、参加しないのかって?今日は、朝から男だらけの会議室で頭を悩ませるんだよ!こんちくしょう!!

 

午前中に、舞鶴、呉鎮守府の奪還作戦は詰め終わった。今は、佐世保鎮守府の作戦を立案している。

立案といっても、あらかじめ作戦部で練り上げているので、陸と空の連携や作戦の修正を出し合うだけだ。

そうこうしている間に、佐世保鎮守府の奪還作戦も詰め終わったようだ。手元のタブレットにある資料に変更などの加筆をしておく。

「では、次に福岡攻勢作戦についてです」

議案は、次の作戦に移った。

さて、この福岡攻勢作戦は陸軍と空軍が中心となり実施予定だった。しかし、11月に突如衛星軌道上にプライマーのマザーシップが飛来。マザーシップは、福岡市に向けて巨大な物体を投下した。そう、プライマーの前線基地である。

これにより、陸軍と空軍で対処がほぼ不可能となり、福岡攻勢作戦は白紙に戻された。これをデスピナのいる海軍が請け負い、立案することになった。

 

「では、特務艦隊司令の山本大佐お願いします」

「あ、はい」

ぼーっとしていたため、返事が遅れる。少しの間だが、一緒に仕事をした作戦部から茶々をいれられる。えい、うるさい!

 

「おほん、……ではこれより福岡攻勢作戦について説明致します。まず福岡市の最新の衛星画像をご覧下さい」

1枚目は、福岡市全体の様子である。画像には、プライマーの前線基地の他に輸送船や、テレポーションアンカーが写っていた。

2枚目以降は、各種敵の施設と、深海棲艦の陸上戦力が写っている。

「現在、深海棲艦の日本占領部隊の陸上戦力及び航空戦力の7割は、ここ福岡に集結中です。深海棲艦側の戦力はおよそ5個師団規模。プライマーは、前線基地及びテレポーションシップ、テレポーションアンカーの存在から推定は不可能です。最悪の場合、敵軍全てを相手することになります」

最後の発言に、会議室はザワつく。プライマー全軍との戦闘、もはや絶望しかない。

「深海棲艦との戦闘は、国防軍で対処可能です。しかし、プライマーとの戦闘は、レベルが違います。はっきり申し上げますが、現状国防軍では勝てません。戦闘の結果は、外の景色を見てもらえばわかると思いますが……」

ざわついていた会議室は、途端に静かになる。ここにいる全員が国防軍では、勝てないことを理解している。精神論や、馬鹿なことを言うやつは、前の人事異動で徹底的に排除している。

「しかしです。前とは違い、私達、特務艦隊がいます。我らはプライマーを殲滅する力があります。そこで福岡攻勢作戦は、特務艦隊単独で実施します」

再び、会議室はザワつく。

「計画は既に、作戦部と共に立案を完了しています」

「本当かね?作戦部長」

その一言に、高野総長がようやく口を開く。

「はい。計画は、山本大佐と合同で立案済みです」

「ふむ、裕一君。その案とは?」

俺は一拍おいてから、その案を話す。

「作戦は、佐世保鎮守府の奪還と同時に作戦コード100を実施します」

この瞬間、会議室の空気が凍った。

 

作戦コード100

通称 オペレーションオメガ

作戦コード100は、特務艦隊専用に与えられたコードである。通称名の元ネタであるオペレーションオメガは、全地球人をEDFの兵士とする。

しかし、ここでのオペレーションオメガは、特務艦隊の動員できる全ての戦力を投入する作戦である。また、各種兵装制限が解除され、戦略兵器をバンバン使える。

 

「また、コード100に伴い、衛星軌道兵器及びコード301、302を使用します」

 

コード301 アルマゲドン使用

コード302 LP兵器の使用

 

もう分かるよね?コード100は、特務艦隊、EDFが本気を出しちゃう作戦だ。

俺たちの本気、やろうと思えば今のところ都市が跡形もなく消し飛ぶことをこの会議室にいる人達は知っているからこそ、空気が凍ったのだ。

 

「ちなみにだが、作戦コード100を使用しない場合はどうなる?」

と、高野総長が問いかけてくる。

「そうですね……使用できるのは、陸上部隊に砲兵隊と航空隊と特務のメンバーだけになるので、火力は半分程になります。

流れとしては、初手にテレポーションアンカーの全破壊のために砲兵隊による砲撃とミサイル攻撃を実施。その後、テレポーションシップを地上部隊で破壊。そこから、前線基地の砲台を半分以下まで減らします。残りは空爆により破壊。その後、前線基地の中心部を地上部隊で破壊します。あとは深海棲艦の地上部隊を含め、残存戦力を掃討して完了ですね。

しかし、こちらだと、異常を検知したプライマーが増援を送ってくる可能性が高いです。検知する前に片をつける方がよろしいかと」

「……良かろう、福岡攻勢作戦では、作戦コード100を実施する方向で行こう。決定は、統合参謀本部にて行う」

高野総長の決定に反論は出ず、福岡攻勢作戦計画は統合参謀本部にて、決定されることになった。

 

 

12月26日 20:42

新東京市 (旧長野県松本市) 料亭

 

会議の翌日、俺は鎮守府には戻らずに首都である新東京市に来ていた。理由は、統合参謀本部の会議に出席する高野総長のお供である。

そして現在、高級料亭に連れてこられた。しばらくして、中居の方が誰かを連れてやってきた。

「お連れ様をお連れ致しました」

「おう、高野久しぶりだな」

襖を開けて入ってきた国防陸軍の制服を着たおじさんが、高野総長に挨拶する。その後ろにもう1人国防空軍の制服を着たおじさんがいた。

「来たか、宇垣、年始以来か。坂井さんもお久しぶりです」

「あぁ。すまないが熱燗持ってきておいてくれ」

坂井さんと呼ばれた空軍のおじさんは、中居さんに熱燗を注文する。高野総長と、宇垣さんに坂井さんは、熱燗が届くまで他愛もない話をして時間を潰す。その間、俺は存在を消して部屋の隅にいた。

熱燗とつまむ物が届いたところで、高野総長が人払いをする。俺もそれに合わせて出ようとすると、

「裕一君、君は残りなさい」

と言われ、正座してその場に残る。高野総長が人がいなくなったことを確認して、俺へ隣に座るように命じる。俺がすわると高野総長が俺のことを2人に紹介する。

「この男が山本裕一。海軍軍令部直轄の艦隊の指揮と横須賀鎮守府の司令長官補佐だ。裕一君、そこの陸軍の制服を着たジジィが陸軍のトップである陸軍参謀総長の宇垣太郎。空軍の制服を着た方が、空軍のトップである空軍総司令兼、現在の統合参謀本部のトップでもある国防軍統合参謀本部長の坂井健太さんだ」

まさかの、三軍トップが勢揃い。やば、めっちゃ心臓バクバクしてる。

「は、はじめまして。国防海軍大佐山本裕一です。20歳になりまひた、よ、よろしくお願いします」

なぜ年齢言ったし、てか噛んでるし!!

「よろしくな、裕一君」

「よろしく、裕一君」

2人と握手を交わし、熱燗が冷えないうちに乾杯する。熱燗のためか、日本酒の香りがよく分かる。まだ、お酒に慣れていないので匂いだけで酔いそうだ。

高野総長たちは、後日行われる統合参謀本部での会議の打ち合わせをしつつ、苦労話に花を咲かせていた。俺は、聞き手に徹しお酒をちびちびと飲んでいた。

 

2021年1月4日 10:24

横須賀鎮守府

 

統合参謀本部での会議を終え、鎮守府へと戻り、歳を越し、三が日も終わった今日。本日から業務開始である。

さて、統合参謀本部での会議は、最終確認程度で直ぐに終わった。細かいところは、各軍の作戦部と統合参謀本部の作戦本部で調整されていた。

会議後は、忘年会へ移行し、軍の枠組みを超えてどんちゃん騒ぎであった。夜も深まったあたりで、海軍の作戦部の人達に連れられて、とあるお店に行った。

キレイなお姉さんがイッパイいた。お酒、タクサン飲んだ。その後、なんやかんやあってよく覚えてないけど……

山本裕一、20歳。大人になりました。

その後、物凄い寒気、なぜか殺気も感じ、1日かけて隠蔽工作を実施した。今も多分、バレていないはず……。

 

コンコン

「どーぞ」

執務室に入ってきたのは、秘書艦のエピメテウスだった。最近では、秘書艦業務にも慣れてきており、以前のような徹夜の仕事はなくなった。

「司令、お茶と軍令部からの密封指示書です」

エピメテウスが執務机に温かいお茶と、茶封筒を置いた。

「密封指示書?」

俺は、茶封筒を手に取り光で透けて見えないか試す。しかし、対策されており、透かしても何も見えなかった。エピメテウスが、ジト目でこっちを見てくる。ちょっとした出来心だったんだよ……

封筒を見ると、本日の11:00に開封するよう指示が書かれていた。

「開封指示は今日の11時のようだ。とりあえず、それまでにキリのいいところまで仕事を終わらせようか」

 

11:00

 

「では、密封指示書を開封する。何が出るかな?」

封を切り、指示書を確認する。指示書の内容を読むにつれ、表情が険しくなるのを自分でも感じた。

「司令?一体、どのような指示書だったのですか?」

「いや、少しめんどくさい指示だ。機密事項になるから教えることは出来ない」

内容が内容なだけに、他の者に教えるわけにはいかない。エピメテウスに業務を任せて、こちらの任務に取り掛からねば。

「エピメテウス、決済できる業務はやっておいてくれ。しばらく、離れる」

「はい、了解しました」

 

横須賀鎮守府地下司令部 特務艦隊ブリーフィングルーム

 

ブリーフィングルームには、俺の他にEDFレンジャー部隊の妖精さん40名が集まっていた。

「先程、海軍軍令部を通じて、国防軍監察本部より指示書もとい、依頼書が届いた」

国防軍監察本部。統合参謀本部の直轄の機関の一つである。監察本部は主に2つの部署があり、監察を実施する監察官が所属する監察部、軍における警察の役割を持ち、捕縛などの実働部隊となる憲兵部である。

「依頼は、利敵行為者の捕縛の手伝いだ。我々、特務艦隊のもうひとつの初仕事になる」

特務艦隊の任務は、

1、 偵察

2、 高難易度海域の攻略

3、 プライマーの対処

そして、4つ目に監察本部と合同で不正行為などした者の捕縛、利敵行為者などの排除がある。場合によっては、艦娘の捕縛もしくは排除も担うことになる。そのため、他の艦娘に知られる訳にはいかない。

「対象は、軍令部の元作戦部の軍人だ。対象は、深海棲艦と思わしき者と密会を重ねている」

モニターに対象の男の写真と、密会場所に入っていく対象と身長の低い女性の写真を出す。

「先月、紀伊水道に深海棲艦の艦隊が集結していた事と関係している可能性があり、他にも軍の情報を漏洩している疑いがあるそうだ。すでに、対象が滞在している周辺に憲兵部の部隊が展開中だ」

先月の紀伊水道の件は、割と焦ったので、許すマジ。

「我々の任務は、対象と共にいる可能性がある深海棲艦の対処である。武器はロケラン、グレランをはじめとした重火器を携行せよ。出発は、12:20、ヘリポートに集合せよ。質問はあるか?」

妖精さん全員を見渡し、質問のある者がいないか確認する。

「では、準備に入れ、解散!」

 

 




20歳になってからお酒を飲むようになり、好きなのは日本酒です。
でも学生には、ちょっと値段が高い。
ちなみに、ビールよりハイボール派です。

さて、裕一くん翔鶴さんの知らぬところで童○を卒業。
この時、翔鶴さんが過去最大の殺気を出しています。翔鶴を止めれるのは君だけだ瑞鶴!

では、次回もお楽しみに。

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