要塞空母デスピナ出撃す。第2篇   作:まはまは

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お待たせしました。第40話です。
何とか10月中に出せました。

うん?11月7日だろうって??
え?10月38日でしょう、今日(すっとぼけ)

はい。ごめんなさい遅くなりました!
2019/10/23 艤装の収納の指輪は削除に伴い戦闘シーン改変
2019/3/17 若干編集しました



第40話 対艦娘戦闘1

第40話 対艦娘戦1

 

8月27日 11:16

国防海軍軍令部 第2庁舎3階

 

軍令部第2庁舎は病院施設になっている。そこに

ピッ、ピッ、ピッ

「起きないなー、文月ちゃん」

文月がいる病室は廊下から様子が見ることが出来るように窓がついている。そこから様子を見るほのか。

文月は、未だに眠ったままである。けがの方は、治療を行いほぼ完治している。

医者の話によると、精神的なダメージの蓄積が原因で未だ眠っているのではとのことだった。

ピッ、ピッ、ピッ

「横須賀鎮守府第4艦隊所属、睦月型7番艦文月。

2010年6月12日、横須賀鎮守府工廠で建造。

同年、11月1日付で訓練課程を修了、横須賀鎮守府遠征第3艦隊に配属。

同艦隊の旗艦を務め2012年12月1日に西方作戦に伴う戦力増強で第4艦隊に転属。

その後、西方作戦、第1次プライマー遭遇線などの緒戦に参加。今では横須賀の古参組となっている…か」

大妖精からもらった国防海軍にある文月のデータを見終え、再び文月を見る。

「各戦いを生き残った文月ちゃんが精神的に追い詰められるなんて…あそこで何がおきているの」

ほのかは、横須賀にいる他の艦娘の事を心配し、次に来た時には目を覚ましていることを願いつつ病室前を後にした。

 

同時刻

軍令部 地下司令部

 

「横須賀鎮守府の様子は」

「平常通りです」

高野総長の何度目かの問いに、オペレーターの女性は同じ答えを返す。監視強化から1週間以上、未だに動きはない。

高野総長は、席の背もたれに深く体を預ける。

動きのない鎮守府、目を覚まさない艦娘。

状況はまだ動かない。警戒態勢が長引いていることにより、軍令部内は少し緊張感が薄れつつあった。

 

この後、起きる事態を予想できるものはいない。

 

8月29日 12:48

地下司令部 艦娘訓練室

 

艦娘の訓練用の装置は霞ヶ浦のほかにここ軍令部の地下にもある。

 

この装置は、艦娘の意識をバーチャル空間に転送して行う。現実世界で行う演習では戦闘スキルを向上させることがメインである。そして、この装置では主に艤装の熟練度を上げることがメインである。

 

裕一とほのかの二人がちょうどその装置を使って訓練をしていた。

 

バーチャル空間では、深海棲艦を相手にする戦闘訓練モード。同じ装置を使う艦娘と対戦する対戦演習モード。一人で黙々と訓練する通常訓練モードの3種類がある。

 

二人が使っているのは、対戦演習モードである。今回は、四方300kmの海原のエリアを使っている。

『方位154、204、265、325から複数のミサイルが接近』

網膜に投射されているCDCのレーダーには、4方向から192発のミサイルが俺に向かって接近していた。

どうやら、ほのかは航空機発艦の時間を稼ぐため大量のミサイルを撃ってきたようだ。

「高機動対空ミサイル、オールファイア」

艤装のミサイルコンテナから高機動対空ミサイルが、32発ずつ連続発射され計128発が接近するミサイルに向かっていく。

最初のミサイルを探知したのは、方位154でここから約60㎞の地点。次に、204で52km地点。本来ならあり得ない速度で移動していることになるが…。

「あいつ早速、S型使っているな」

新しく追加された艤装タイプの“S型艤装”。

 

S型艤装

高機動型艤装。B型艤装などの他の艤装タイプにEDF4.1のウイングダイバーの飛行ユニットに似たものを装着する。ちなみに着脱式。

飛行可能となり高速かつ3次元的な戦闘が出来る。

 

『高機動ミサイル、目標への着弾まで3、2、1、マークインタセプト』

視界にCDCから撃墜結果の情報が表示されていく。

128発全て命中。よし、残りは…

そこに、CDCから緊迫した報告が来る。

『ミサイル群から新たに多数の目標を確認!数修正、808!』

レーダーに映っている目標が更新され、目標を表す赤い点が急激に増える。

「ちっ、ルシフェルSか!」

ルシフェルSは小型ミサイル32発の多弾頭ミサイル。しかも分裂後の軌道は広範囲に広がっていくため、悪魔の微笑みとも呼ばれている。

そのため現在は、ほぼ360度からミサイルが接近している状況となっている。

思考操作で、俺もS型艤装を装着する。

装着後には、ミサイルとの距離は5kmをすでに切っていた。

急ぎ、飛行ユニットのブースターからプラズマを噴射し、上空に飛び上がる。

それに合わせて、ミサイルも俺を追いかけて上昇してくる。

パルスレーザーCIWS、艦載型フュージョンブラスターZX、艦載型ダイナストβ 3連装砲、艤装の迎撃兵器をフル稼働させて、ミサイルを迎撃する。

パルスレーザーの緑色、ダイナストの青色の弾幕、フュージョンブラスターの赤い光線が空を彩り、所々でミサイルが撃墜され黒い花を咲かせる。

「ちっ、まだ落ちねぇか!」

乱数回避をしつつ、ミサイルを落していくが未だに約200発のミサイルが残っている。さらに、徐々にミサイルとの距離が無くなってくる。

「どこか高機動ミサイルを撃つタイミングは…」

すでに装填済みの高機動ミサイル。これを撃つには迫ってくるミサイルに一度正面を向けて、ロックオンしなければならない。しかし今のままだと、間に合わずに自分にミサイルが命中するか、高機動ミサイルを撃てたとしても距離が近すぎて爆発に巻き込まれてしまう。

そのため、俺は迫ってくるミサイルとの距離が取れるタイミングを探していた。

しかし、もう時間はない。

「…やるか」

覚悟を決め後ろに振り向き、目線の動きに合わせて艤装が192目標に素早くロックオンする。

そして、

「ファイア!!」

体ごと振り返り、艤装のミサイルコンテナから高機動ミサイルが発射される。

発射後すぐに、直角に下降を始める。

数秒後、後方で複数の爆発が連続で起きた。ひと際強い風、爆風を感じ頭が上になるように姿勢を戻し、ブースターを下へと逆噴射しつつ減速し海に着水する。

着水後上を見ると、空に大きな黒い爆煙が出来ていた。

少し遅ければ、間違いなく大破判定が出て終了となっていただろう。

視界に移る対空レーダーにもミサイルの反応が無くなっており、無事切り抜けることが出来た。

 

が、この時安堵していたため対空レーダーに映った光点をCDC、俺も見逃していた。

 

「さて、偵察機発艦準備」

『了解。第401航空隊(ヘクター)、DF-02D発艦準備』

両方の艤装からDF-02 ジェネラルの偵察機タイプ“DF-02D”が飛行甲板に出てきた。

カタパルトまで移動していき飛行甲板の妖精さんたちが発艦作業を素早く行っていく。

『準備完了!』

航空管制室から連絡が入りほのか、ガラテナがいる可能性のある範囲をヘクター隊に伝える。

「ヘクター1、目標は方位059から119。当艦から120km~150km地点の半径15km圏内にいると思われる。予測データを送っておく。該当範囲を偵察せよ」

『了解』

『航空管制室から第401航空隊(ヘクター)へ。離陸を許可、射出に備えよ』

飛行甲板のジェット・プラストディフレクターがせり上がり、DF-02Dがジェットを噴射し始める。プラズマが放出されDF-02Dの後ろが青く輝き始めたタイミングで電磁式カタパルトが機体を約350km/hにまで瞬間的に加速させる。数秒後には、DF-02Dは上昇し周りを旋回し僚機を待つ。

「さて、そろそろ反撃と行きますか」

デスピナの力を見せてやろう。

 

 

『目標確認。レーダーに位置を出すよー』

視界のレーダー画面にデスピナの位置を示す光点が灯る。

「ミサイルの飽和攻撃を避けきったんだ…流石はお兄ちゃん」

スマ〇ラで対戦していたころを思い出し笑ってしまう。

あの頃も、なかなか決着つかなかったなー

第404航空隊(ガリア)に帰還命令、攻撃隊全機に出撃命令」

『了解ー。30分で出撃準備するよー』

航空管制室の航空参謀の妖精さんが時間を伝えてくる。

でも、それでは遅い。

「妖精さん、20分でやって」

『それは無理!どんなに急いでも25分はかかるよ』

ほら、少しは早くできるじゃん

「それをもう少し早くできるよね?相手は私たちより恐ろしいものよ。1秒でも先手を打たないとやられるの、だから…ね?」

お兄ちゃんに少しでも隙を見せたらやられる。

そして、反撃の機会を与えてはならない。デスピナの艤装はこちらの4倍はあるので、攻撃されたらひとたまりもない。

『…分かったー。20分でやります』

「よろしくね」

機関室に繋ぎ

「主機関の状況は?」

『主機関に問題なし。いつでも、最大出力を出せるよ』

「OK、S型はまだ存分に使えるのね」

『ノープロブレムー、高速飛行も可能だよ』

いざという時の準備も怠ってはならない。逃走手段の確認もOK

「了解。必要になったらまたお願いね」

このまま見つからずに終わりたいな…

『レーダーに感あり!目標1、方位268、距離約41,000m、高度約8,000m、速度800~900』

…思ったより早かったよ。

「対空戦闘用意!作業は継続し順次、発艦を開始!MEAAMX5(エメロード)追尾して!」

視界に警告と書かれたウインドウが表示され、各署の状況が記された複数のウインドウも表示される。

『目標がMEAAMX5(エメロード)の射程に入った!』

どうしようかな…撃墜しないでおく利点はあるかな?

「目標はDF-02Dかな?」

『間違いないですねー』

うん、撃墜しよう。こちらの座標はほぼバレたと見ていいし。

MEAAMX5(エメロード)攻撃開始!」

『撃ち方はじめー』

艤装のミサイルランチャーが目標の方向に素早く回転し、エメロードミサイル10発が連続で発射される。

『5-、4-、3-、2-、1-、まーくいんたせぷと』

レーダーから光点が消えたので、撃墜成功。

「対空警戒最大で」

『あいあいさー』

 

 

「ヘクター5が撃墜されただと!」

『方位88、123km地点です。そして、最後の通信で目標を補足したとのことです』

「了解した。総員、対水上戦闘用意!」

『対水上戦闘用意!』

第101航空隊(バルキリー)に攻撃命令を発令」

『了解、バルキリーに攻撃命令を発令します』

上空にて旋回中だった第101航空戦隊、DF-02A 108機で編成された部隊に攻撃を命じる。

第102航空隊(フェニックス)2個中隊をバルキリーの護衛にまわして」

思考操作で所属航空隊一覧を出し、第203航空戦隊への命令を攻撃に切り替えておく。

「次に、第203航空隊(レーヴァテイン)を最優先で上げて。レーヴァテイン1-1、応答願う」

『こちらレーヴァテイン1-1。良く聞こえます』

「機体の乗り心地はどうだ」

『早く本物に乗りたくなってしまうくらい最高です』

「OK、レーヴァテインには今回、高高度爆撃を行ってもらう。VR空間ではあるが高高度爆撃の実証評価を行う。そのつもりで」

『了解です』

飛行甲板からカロンより一回り以上大きな全翼機、DB-01Aが射出され、遥か上空へと上がっていく。

その向こうには、バルキリーと護衛のフェニックス2個中隊が雲に隠れて見えなくなるところだった。

「さぁ、反撃開始だ」

 

 

と、きめたところに

目の前に警告文が出てくる。艤装の網膜投射ではなく、訓練設備の緊急連絡であった。

その後、突如警報が鳴る。

“緊急事態発生、緊急事態発生。これより、強制復帰をおこないます”

そのアナウンスと共に意識が朦朧として、視界が闇に落ちた。

すぐに、意識が回復し訓練装置から出る。

「第2庁舎3階にて爆発を確認!非戦闘員は直ちにシェルターへ!戦闘員は現場へ急行せよ!繰り返す」

切羽詰まったアナウンスを聞き、ほのかが血相を変える。

「お兄ちゃん!そこに文月ちゃんがいる!」

「まさか…横須賀の攻撃か。急ぐぞ!」

何が起きたんだ、一体。

 

15:35 (事件発生5分前)

軍令部第2庁舎3階

 

1人の艦娘が目を覚ます。

文月は起き上がり、自分がどこにいるのか周りを見渡す。

そして、自分が病室のような場所にいると推察する。

「作戦第2段階ニ移行シマス」

どこか機械的な印象がある喋り方で艤装を展開する。

機銃を病室の外に撃ち始める。

強化ガラスとなっている病室の窓も機銃の掃射で粉々に割れる。

異常を検知したのか警報が鳴り文月は、周囲にある監視カメラを主砲の12cm単装砲で破壊する。砲撃されたところの壁が崩れ、煙が舞い上がり周囲が白くなる。

「戦闘ニ支障ナシ」

22号対水上電探を使い自分の周囲をある程度確認可能と判断して、事前に渡された庁舎内の見取り図に従い廊下を進む。

病室のある場所のちょうど反対側まで行き、床に主砲を向ける。

1発目は徹甲弾を撃ち込み下の階に貫通させ、直径15cmほどの穴を空ける。

次に、榴弾を装填しその穴の縁に連続で撃ちこんでいく。正確に穴の縁に榴弾が着弾し爆発する。爆発は連続して起き、建物全体が揺れる。

 

「第2庁舎3階にて爆発を確認!非戦闘員は直ちにシェルターへ!戦闘員は現場へ急行せよ!繰り返す」

 

10発近く撃ちこんで文月は射撃をやめ、数秒待つと床が崩落し直径2mの穴が開いた。

その穴の先には、第1庁舎へと続く連絡橋がある。

文月はその穴に飛び込んだ。

 

軍令部 地下司令部

地下司令部では警告のホログラムが表示され、警報が鳴り響いていた。

「状況は!」

「第3階の監視カメラ途絶」

「火災も発生中。消火システム起動しません!」

高野総長へとオペレーターから次々に報告が入る。

「第2戦闘班からの映像を主モニターに出します」

第2戦闘班がいるのは、連絡橋の第1庁舎側。盾を持つ隊員が先頭として小銃で武装した戦闘員が連絡橋を閉鎖していた。

主モニターに映ったのは、奥から歩いてきたのは、艤装を身に着けた文月であった。

地下司令部がざわつく。

「か、ん、むす…」

オペレーターの一人がつぶやく。

「あれは…文月か。意識が戻ったのか」

高野総長は、艦娘が文月であることに気づき3階から逃げてきたのだと思っていた。

連絡橋の前で歩くのをやめ立ち止まる。

戦闘員は一斉に小銃を構え、文月に照準を合わせる。

「やめろ、相手は艦娘だぞ!」

高野総長が叫ぶ。その言葉の意味は、相手が味方だからか。それとも、艦娘という強力な兵器だからか。高野総長自身も分からない、とっさに出た言葉であった。だが、音声通信は行っていないため届かなかった。

 

「対象ヲ脅威ト判定。排除シマス」

抑揚のない機械的に言葉を発した後、手を床に着け姿勢を低くする。艤装も機関部の出力が高まっていくような高い音が鳴り始める。

「撃て!」

戦闘班の指揮官が危険と判断し発砲を許可し、小銃が一斉に火を噴く。

それと同時に、文月は飛び出す。その際、床が文月の踏み込みに耐えられずに崩落し始める。

文月は窓や、天井を立体的に走り、弾幕を潜り抜けていく。

主砲を持つ右手を伸ばし主砲のトリガーを引く。

放たれた砲弾は、戦闘班の2列目へと向かい1人の隊員の身体に当たる。艤装は一見小さく見えるが、12cm砲の威力はそのまま。地上でミリ単位の小銃を扱う兵士たちからしてみれば120mmの大口径砲である。屋内で榴弾を撃つ分には十分な火力だ。

弾頭は隊員の身体を突き破り床に着弾し、信管が反応し戦闘班に爆風と破片が襲う。

近くにいた隊員は、爆風と破片で即死。他の隊員も破片が身体に刺さり戦闘継続可能なものは半数以下であった。指揮官は咄嗟に両腕で顔を隠したため、致命傷はなかったが庇った両腕は破片が多く刺さり感覚が無くなっていた。

そこに、文月が渡り廊下を渡りきり、主砲を指揮官の頭に付け立っていた。

『指揮官ト確認、排除シマス』

「ま、待て…!」

ドン!

至近距離から12cm砲を受け指揮官の上半身が吹き飛ぶ。

「う、、うわぁぁぁ!」

「ひぃーー!!」

生き残っている隊員に指揮官の血や肉片が付き、恐慌状態になる。

文月は機銃で残りの隊員達を蜂の巣にした。会敵した戦闘班は文字通り全滅となった。

 

「第2戦闘班からの連絡途絶…」

オペレーターの1人の報告は、指揮所を静かにさせた。そんな時だった。

『ああー、マイクテストー。ほのかこれ繋がってる?』

呑気な声が指揮所に響く。

『繋がってるからはよ喋れま!』

スパーん、といい音がした。裕一の「痛っ!」の声も無線は拾っていた。

『あー、こちらデスピナ。現在第2庁舎第3階へ急行中。現在の状況が知りたい』

展開が早くついていけないオペレーター達はしばらく固まったままだったが、すぐに現在の状況を伝える。

『なるほどねー、では第1庁舎の文月を何とかすればよきなのね。では、これより向かいます』

「デスピナ君」

高野総長が裕一に話しかける。

「…頼んだぞ」

その言葉を裕一は、文月を助けて欲しいとの意味で受け取る。

『……最善を尽くします』

裕一は、無線を切り文月を殺さず無力化する方法でいくことにした。

 

俺がいるのは第2庁舎の1階。文月は第1庁舎の2階の渡り廊下から移動中だと考えられる。

探し回るのは、時間がかかり司令部へと侵入されるのを阻止しなければならないので。

「ほーのかくんー、あーれをやてくれたまえー(CV若本)」

「え~!?そんな~(CV増岡?)」

ものまねをしながらほのかが艤装を展開する。

ほのかの艤装には通信傍受監視システム”イーグル・アイ”の運用のため、デスピナ以上の数のスパコンが搭載されている。そのスパコン達を使い文月の行動をシミュレートして俺が奇襲する。

「シミュレートを開始」

ワダツミシステムを利用して俺に算出されるデータを送ってもらう。

「じゃあ、行ってくるぜ」

そう、ほのかに声をかけて行く。ほのかは、少しでも計算を早くするために集中しているようで頷くだけであった。

 

艤装を展開し、第2庁舎の2階へと階段を駆け上がり、渡り廊下の前まで1分ほどでたどり着く。

この間に文月の居るであろう場所がほぼ特定されていた。場所は、第1庁舎の…

「やば!エレベーターのところ下ってやがる!」

急ぎ、エレベーターのある所に向かうと扉が砲撃で破壊されていた。シャフトの下をのぞき込む。底が暗く見えない。

「S型艤装を展開」

飛行ユニットが収納された大きなケースから、艤装に飛行ユニットが装着されたことを確認して、シャフトへと飛び降りる。

飛行ユニットのブースターを使い減速しながら下りていく。

ちょうど、ワダツミシステムを通じてシミュレートの結論が来ていた。結論は、

「地下司令部データベースからの情報収集?…まさか、文月のあれは全て横須賀が仕組んだことか!」

兵法三十六計の苦肉計が思い出される。完全に騙された。同時に、文月を生かしても意味がない可能性が高い。“排除”すべきだと考えた。

「あれ?俺自然に文月を殺そうとしている?いや、敵だから問題ない…よな…??」

そうと決まれば急ぎそこへと向かう。とにかく文月をデータベースから遠ざけなければ。

 

「目標、level3区画へ到達!」

オペレーターの焦った声が高野総長の耳に入る。

「地下司令部とシャフトを物理閉鎖!level4区画以降も物理的に隔離しろ!」

高野総長が素早く指示を出す。

高野総長はここで気づく。文月は横須賀のスパイであることに。こちらへの攻撃が目的だと。しかし、残念ながら文月の目的は情報の強奪。裕一の予想が正解である。

「デスピナの位置は!」

文月の迎撃、いや撃破が可能な彼の状況を知るためオペレーターに問う。

「最後に確認されたのはシャフトへと突入したところまでしか…おそらく文月を追いかけているかと」

文月により監視カメラのことごとくが潰されているため裕一の状況を判断出来ないでいた。

 

文月はシャフトの中を落下していた。

文月は視界のマップを見て、もうすぐ目標地点であることを確かめると、主砲を構える。

そして、1箇所のエレベーターの扉に向かって2度、砲撃を行う。

1発目の徹甲弾が扉を破壊する。2発目は、ワイヤーが繋がっておりアンカーの代わりとなるもので、扉の向こうの廊下の壁に砲弾が突き刺さる。ワイヤーに引っ張られ停止する文月。何度か引っ張り固定したことを確認してワイヤーをつたってシャフトから出る。

ワイヤーを切り離し、廊下を進むとセキュリティドアが見えてくる。文月は扉を破壊せず、近くにあるカードキーの読み取り機に偽造IDカードを読み込ませる。すると、扉の横にある画面に数字の羅列が表示され8桁のパスワードを求められる。教えられたパスワードを入力すると、500mmを超える鋼鉄の重厚な扉が開く。

部屋の中に入ると、防弾ガラスの中にケーブルが幾つも繫がったスパコン達があった。ここが、軍令部のデータを管理している場所。

シャフトを降りる前に、協力者からもらったスーツケースを開ける。中にはノートパソコンやそのほかダビング装置などがあった。それらをスパコンにささっているケーブルを接続し直す。次に、スパコンにセキュリティ破壊用プログラムが入ったディスクを挿入する。

後は、待つだけであった。

「!?」

が、突如500㎜を超える鋼鉄の扉が爆発音と共に吹き飛ぶ。文月は一瞬、驚くも主砲を入り口に向け臨戦態勢に入る。

「ゲホゲホ…見つけた」

爆煙の中から、大和を超える巨大な艤装を背負った男が入ってくる。

文月は躊躇いもなく主砲をその男に向けて発砲するが、主砲は男の艤装に弾かれた。

「おー、容赦なく撃つね…。そうだ。文月、俺と少し踊らないか?」

その言葉を聞き終わる前に、男の姿はかき消え気づいた時には抱きかかえられていた。

「絵面的に完全に犯罪者だわ、これ」

男がつぶやきながらエレベーターシャフトに入り宙を飛んで、昇っていく。

文月は抵抗する。至近距離で主砲を撃ち込んだり、殴ったりするも男はダメージを受けた様子もなく平然としており、

「ふはははは、効かんな!」

と、煽ってくる。結局、抵抗も空しくそのまま地上へと出た。

 

文月共に地上に出て、第1庁舎の外に放り出す。

その間に、ほのかにデータベースの対処を任せる旨の連絡をしておく。

「さてと、文月。艤装を解除し大人しくするなら気絶だけで止めるが、どうする?」

放り出された後すぐに砲撃し、現在は無事に着地してこちらに主砲を向けている文月に問う。

「対象ノ脅威判定ヲ更新。対象ヲ完全ニ排除シマス」

文月の艤装が変化する。

駆逐艦には似つかわしくない巨大な連装砲を背負い、飛行用と思われる翼を装着。機銃はガドリング砲に。太ももにたくさんの魚雷を装備。靴はローファー型のものから莫大な推力が得られるようなエネルギーが迸るブーツ型のものに。

俺は思わず、

「かっけぇ!流石はアメリカ」

それと同時に文月を殺すこととして認識が変わり、臨戦体勢に入る。

「これは…本気でやらなきゃね…」

文月と同時に踏み込み、飛び上がる。文月の主砲、20.3cm連装砲がこちらを向く。

視界に弾道の予測線が表示される。予測線からすぐさま避けブラストメネス電磁投射砲で反撃する。

文月は、レールガンの発砲と共に身体を捻り音速を超える砲弾を避ける。

おそらく、文月にも弾道を予測する方法があると考えられる。勘だけで極超音速の砲弾を避けきることは難しい。

「ならば!」

飛行ユニットで距離を取り、文月に今すぐに撃てる汎用ミサイル288発をロックオンする。艤装から288発の汎用ミサイルが発射され文月へと群がって行く。

文月の脚部の艤装が唸りをあげ、文月が空へと勢いよく飛び上がる。汎用ミサイルも文月を追い、空へと上がっていく。

文月が乱数回避を行う。ミサイルが多いため互いにぶつかり合い数発を残して自爆してしまう。

残ったミサイルは、文月の正確な射撃で撃ち落とされてしまった。

今度は文月が上空から仕返しとばかりに8発の魚雷を両手に取り、投擲してくる。

弾道予測計算がすぐに行われ、全ての魚雷が俺のそばを通り過ぎ外れるとの結果が出た。結果に従い、そのまま動かずやり過ごそうとしたが、俺の横を通り過ぎる瞬間

「!?」

全ての魚雷が爆発した。全周囲から爆発の衝撃と爆炎が襲うも艤装の装甲が厚いので身体の方は問題ないが

「ちっ、レーダー全滅。第1、第2ミサイルコンテナ温度上昇中」

視界には、多数の警告画面が表示されていく

“第1、第2ミサイルコンテナ 緊急冷却”

“高機動対空ミサイル、ライオニックⅡ 使用不可能”

“主砲操作 完全マニュアルモードに変更”

“迎撃システム 完全マニュアルモードに変更”

“CIWS 2基破損”

“艤装ダメージ判定 中破“

魚雷8発で中破。本来ならあり得ないダメージである。魚雷を投擲して来た時点であり得ないが。それより、今の魚雷近接信管が搭載されていたのだろう。全く、流石はアメリカだ。

とりあえず、ほのかに確認を取る。

「ほのか、状況は」

文月が再び魚雷を投擲してくる。

『今、データベースで文月ちゃんが仕掛けた物を解除中』

迫る魚雷を大きく避けて回避する。

『そっちは?』

「その文月と交戦中。――よっと」

弾道予測が表示され文月の砲撃を回避しつつ、レールガンを操作し撃ち返しておく。

「でも、ピンチ。すまないけど高野総長に連絡できないか?」

『できるよー』

「じゃあ、40秒で支度しな」

『余裕~。じゃあ、少し待ってて』

 

文月の飛行進路を予測し、飛んでくるであろう空間にジェノサイド砲を偏差撃ちで撃ち込む。数秒後に予測通りジェノサイド砲の砲撃が直撃…せず。すぐにルシフェルSを発射しておく。

『用意出来たよー』

少しして、

『高野だ』

「高野総長。まず、報告します」

文月と外で戦闘中であること。戦闘で艤装が中破したことを報告。

「続いて、相談があります」

『何かね』

「現状の装備では、文月を無力化出来ません。しかし、ある装備を使えば可能ですが、文月を殺してしまうかもしれません」

B型では、無力化は不可能であると計算結果が出ていた。しかし”G型”での無力化が1番可能性が高かった。と、同時に艤装の完全破壊=轟沈、撃沈ではなく、艦娘が死亡する可能性も高かった。

俺としては、文月を排除することにしているので問題ない。しかし、後で尋問のために生かして拘束するメリットも考えたため、上官である高野総長に判断を委ねる。まぁ、文月を殺す時の罪悪感を少しでも擦り付けようとかそんなことを考えていたり、考えていなかったり……。

 

少ししたが高野総長からの返答がない。

その間にも、文月の攻撃を回避し、反撃する。

文月が魚雷を投擲する。俺は魚雷を避ける。

俺が汎用ミサイルを発射する。レーダーの故障に伴いミサイルのシーカーしか頼れない。文月は宙を舞い、華麗に避ける。

文月が主砲で砲撃してくる。俺は弾道予測で避ける。

俺がレールガンとジェノサイド砲を文月に命中するように斉射する。文月は簡単に避ける。

『デスピナ。現時刻を持って横須賀鎮守府睦月型駆逐艦7番艦文月の軍籍を抹消。対象を排除せよ』

ついに、高野総長からも文月の排除が命じられた。

「了解」

命令を受けると同時に、文月から距離を取り上昇する。文月も追いかけてくるが、途中で上昇を止め滞空している。

俺も高度5,000m地点で上昇を止め、その場でB型と飛行ユニットのS型を解除する。

飛行ユニットが解除されたことで重力に従い自由落下を始める。

「G型展開!」

すると、持ってきた各種艤装が入ったケースから、一丁の銃が飛び出してくる。装着していたB型も機関部と壊れたままのレーダーが付いた艦橋部を残しパージされ落下していく。

そして、銃身が上下に分かれている特徴的な形をした全長約2.5mにもなる俺が持てる切り札、"艦載型グングニル狙撃砲"のグリップを掴む。元ネタは言わずとも4兵科トップの単発火力であるウイングダイバーの狙撃兵器グングニルである。

 

落下しながらグングニルを構え、備え付けのスコープを覗く。

すでにエネルギー充填率は90%を超えていた。あとは文月をスコープのセンターに入れてスイッチ。

スコープを覗き込みながら文月を探す。高度はすでに4,000mを切っている。そして、上空に主砲を向けた状態で滞空している文月を発見する。

落下しながらのため中々、狙いが定まらない。しかし、慌ててはいけない。慎重に狙いを定める。

文月がスコープのセンターに入った瞬間にグングニルのトリガーを引く。

北欧神話の魔槍グングニルの由来通り、狙いが狂うことなく文月に全てを貫くエネルギー弾が命中する。

膨大なエネルギーを持つグングニルのエネルギー弾は、文月の身体を飲み込み、そして跡形もなく消し飛ばした。

 

俺は、そのまま地面へと落下していき、足を踏ん張って着地する。

ゴキっ!

「足首をくじきました!」

……。

通信回線を開き、高野総長に報告する。

「こちらデスピナ、対象を排除。状況終了」

『…ご苦労だった』

と高野総長からの一言を貰い通信を切る。何も感じなかった。足の痛みは感じた。

 

こうして現実世界における初の対艦娘戦闘は終了した。

 

 

横須賀鎮守府

 

「ふ~ん。文月は殺られましたか…。軍令部に新たな艦娘が建造された見るべきでしょう」

男はそう呟き、席を立つ。

「そろそろ、潮時ですかね…」

男は、上官である中将に軍令部奇襲作戦の結果報告へと向かう。

「新たなデータも得ることが出来ませんでしたし…失敗ですね」

そう言ってため息を吐き、廊下を歩いて行った。




次回もお楽しみに

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