DQ8 オーブと罪びとの旅   作:ぽんぽんペイン

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リブルアーチを訪れているマルチェロ一行。ハワードに会います。


レオパルド、昔の主に会う

月の薄い光が注いでいましたが、暗い街の中です。レオパルドがマルチェロの目となり、ハワード邸に向かいました。もう足がすくんだりはしませんでしたが、まだ少し緊張が残っているのでしょう、引き綱を通してマルチェロに伝わっていました。

 

「大丈夫か……レオ。辛かったら言え。私が何とかする。だから暴れたりするなよ」

「アイサー」

夜のハワード邸はひっそりとし、人の気配はありませんでした。

 

「灯はついてますね……」

ドルマゲスは門の外から中を伺いました。ためしに押してみると、門は開きます。一行は静かに門の中へ。

 

レオパルドがある方向を向いて言いました。

「あれは……俺がいた檻だ」

見ると黒い鉄格子でできた大きな檻がありました。かつて自分のすみかだった場所。あの前でレオパルドはチェルスを手にかけたのです。

 

「お前、いい暮らししてたんだな……」

ドルマゲスは大きな檻と屋敷とを交互に眺めながら呟きました。マルチェロも、あの檻はマイエラ修道院の宿舎より広いな、と思いました。

 

 

屋敷の呼び鈴を鳴らすと、すぐに使用人が出てきました。しかし、ハワードは街へ飲みに出ているとのこと。仕方がないので酒場をあたすことにしました。

 

「兄さん、リブルアーチへは?」

「ああ、騎士団時代に何度か来たことがある。ハワード氏には会ったことはないが、酒場の場所はわかる。着いてこい」

 

マルチェロは酒場を目指しました。

 

 

「お客さん、犬は困ります……」

酒場の店員は、丁寧かつ慇懃にいいました。

 

「無論、入店するつもりはない。ただ、ハワード氏を探しているだけだ。犬のことで会いたいのだ」

 

「ハワードさんですか? ちょうどおいでですよ。ちょっとお待ち下さい」

 

店員はハワードの名を聞くと、そそくさと店の奥へ入って行きました。

さすが、ハワードは有名人なのですね。

 

「お坊様、どうぞ、お犬さまもご一緒に、お席へご案内致します」

マルチェロの『ハワードに犬攻撃』が決まったようです。一行はついたてで仕切られた広いスペースに案内されました。

 

ハワードは背の低い、厳めしい顔をした男でした。派手な顔と派手な衣装が互いに主張し、黙っていてもやかましい雰囲気をかもし出しています。

 

「わしがハワードじゃが、何か…ッ…レオパルドちゃん?」

ハワードはレオパルドを見るなり一目散に駆け寄りました。

 

「やはり、ハワード殿、あなたの犬の名はレオパルドでしたか」

マルチェロは予想通りと言わんばかりの落ち着きようです。

 

「あっ、いや、そんなはずは……。失礼した。わしが大呪術師のハワードじゃ」

「私はマルセリーノ。僧侶です。この犬はレオナルド。私の盲導犬です。そしてこの者はドルトムントと言いまして、共に旅をしております」

いつもは本名を名乗るのに、なんとなく偽名を考えてみたマルチェロです。

 

「旅のお坊様が何か……? 確か、犬のことだと」

マルチェロには見えませんが、ハワードはレオパルドをじっと見つめたままです。

 

「はい。そのレオパルドのことで少し伺いたい。構いませんか?」

マルチェロの落ち着いた物言いにすっかり信頼を寄せたハワードは、椅子を勧めました。

食事も頼んでくれて、お酒も用意してくれます。太っ腹です。

 

「レオパルドは、よい犬だった。わしに忠誠を誓ってくれた。強くて優しくて……だがっ……」

ハワードは涙と鼻水を同時に吹き出させ、濃い顔を更に飾ります。

 

「クゥン(……すいません、ハワードさん……俺が早くに気づいていれば……)」

レオパルドはハワードの手にそっと鼻をつけました。

 

「本当に貴方の犬はレオパルドに似ておる。勇敢で、頭がよくて……」

ハワードはレオパルドを抱きしめ、おいおい泣き始めてしましました。

酒場にいた他の客たちも心配そうに集まってきます。その中に、ハワードに負けず劣らず頑固っぽいオヤジがいました。

 

「おい、その犬はレオパルドじゃねえか?」

「ウォン? (ライドンのおっさん?)」

 

「失礼、私は目が見えないのだが、貴殿はどなたかな? 私の犬はレオナルドというのだが、やはりハワード殿のレオパルドに似ていると?」

ライドンは、おうよと言って、マルチェロたちの席につきました。

 

「俺はライドン。石工だ。このハワードとは昔馴染みでな。レオパルドのこともよく知っている」

ライドンは、運ばれた酒を勝手にカパカパ飲んでいます。肝心のハワードは、まだレオパルドに抱きついて泣いていました。

 

「……実は、我らはチェルス殿に会いに来ました……」

「何だと?」

チェルス、と聞いて、酒場中がしんとします。しくしく泣き出す女性もいました。

 

「ライドン殿、実は私たちはリブルアーチへは以前来ているんです。その時、このレオナルドが怪我をしましてね。私はどうにも動けなくて困りました。……そこへ偶然チェルス殿が来て、レオナルドの手当てをしてくれたんです。……今だから言いますが、ハワード殿に内緒で、犬小屋に一泊させてもらったのです。あのときのお礼を是非したいと……もっと早く伺えばよかったのですが……」

「そうだったんですか。チェルスは優しい若者でした」

マルチェロの作り話に、ライドンもコロッと騙されています。女神は、「マルチェロは嘘をついてはいけない」も試練に加えればよかったと後悔しているでしょうね。

 

そんなマルチェロのウソ話に、他の客も集まって来て、皆でチェルスの思い出話に花を咲かせました。

 

「ハワードさんたら、あれからめっきり元気なくしちゃって……。また犬と暮らしたらいいのよ」

 

「そうさ、レオパルドは暗黒神に操られてたんだ。悪くない。悪いのは暗黒神だよ」

 

「しかし、チェルスはかわいそうだったな……優しくて、あんたにずいぶん気を使ってただろう? あんたもそれを反省したんだ。いつまでもくよくよしてたら、チェルスも浮かばれねえよ。あんたの呪術は俺の作品と同じで、リブルアーチの宝なんだからよ!」

ライドンはハワードの背を豪快に叩きます。

 

「そうですよ、ハワードさん。また、新しい呪術を会得して、怪我人を治してやって下さいな」

 

「それより、うちの娘に呪術を教えてやってくれ。ハワード魔法学校を今こそ開校すべきだよ……」

 

皆に励まされ、ハワードはようやく顔を上げました。

 

「魔法学校……」

「そうですよ! ハワードさんがいつまでもくすぶってたんじゃ、おうちの釜も宝の持ち腐れになってしまいます」

 

「わしは、わしのしたことは、チェルスが許してくれるだろうか。あんなに冷たくしてしまって……殺されてしまって……うっ、うっ……」

「何言ってるんだよ、これからあんたがチェルスに報いるために、呪術を広めりゃいいんだよ」

「そう。泣いてたってはじまらなねえ。……さあ、景気よくやろうじゃないか!」

 

なぜか酒盛りが始まり、一晩中わいわいと盛り上がりました。チェルスが殺されてから、リブルアーチの酒場がこんなに活気に包まれたことはありませんでした。マルチェロのウソ話も、女神は許してくれることでしょう。

 

宴が終わったのは明け方近く。マルチェロ一行はハワード邸に向かいました。べろんべろんに酔ったハワードをドルマゲスが抱えています。

 

「……チェルス……わしが悪かった……。レオパルド……かわいそうなことをさせた……あんなことをする犬じゃなかった。すまなかった……」

 

「クゥン……クゥン……(ハワードさん、謝らないで下さい。俺は大丈夫です)」

 

ハワード邸の門を入ると、レオパルドはすぐにチェルス殺害現場に向かいました。

 

「アォーーーン」

「レオ、わかるのか」

レオパルドは鎮魂の祈りを込めて遠吠えします。マルチェロも祈りを捧げました。

そして、女神の秘宝を現場に手向け、5つ目のお使いが終わりました。

 

 

「ほう、オークニスに……」

チェルスに女神の秘宝を捧げ、ハワード邸で休ませてもらったマルチェロ一行。二日酔いの冷めやらぬハワードと昼食をとっていました。

 

マルチェロ一行がこれからオークニスに向かうと聞いて、ハワードはちょっぴりさみしそうです。

 

「レオパルド……いや、レオナルドは本当にいい犬だ。……お坊様の盲導犬でなければ、譲ってもらいたいくらいだ。……いや、犬は主人と共にあるのが一番の幸せじゃ。どうかレオナルドを大切にして下さい……」

ハワードはレオパルドをなでる手を止め、マルチェロに握手を求めました。

レオパルドはマルチェロの手を鼻で誘導します。

 

自分の鼻の上で交わされる握手。レオパルドはこの二人に会えてよかったと思いました。そしてチェルスにも……。

 




次はオークニスへ行きます。
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