DQ8 オーブと罪びとの旅   作:ぽんぽんペイン

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二つ目の秘宝を置きに、リーザスへやってきました。


リーザスでもニアミス

「なんだここは……」

「へえ、簡単には昇れねえようになってるんです」

 

リーザス村から東にある高い塔。守護神リーザスを奉るこの塔は、魔物が多数棲みつき、村の者も一年に一度の祭りの時しか参拝できません。

 

「貴様、誰を殺めたのだ?」

ドルマゲスが道案内をするのですが、さっきから同じ場所を行ったり来たりしてちっとも進みません。とりあえず塔の渡り廊下で策を練ることに。二人と一匹がかたまって腰を下ろしたところで、マルチェロがドルマゲスにそう尋ねました。

 

「……サーベルトっていうぅ、いい……あいやっ……若い男です。リーザスの大地主の息子で……勇敢で……」

ドルマゲスは、指をもじもじさせながら白状します。

 

「おい、ドルマゲス、顔が赤いぞ。変態か?」

「うっ、うるせえ! 犬に何がわかる?」

この二人……いえ、一人と一匹は、寄ると触るとすぐにケンカです。レオパルドに敵うはずなどないのに、ドルマゲスは無駄に虚勢を張るのでした。

 

「まあいい。……して、なぜ貴様はその時この塔を昇れたのだ? 女神は塔の頂上へ行けと言った。貴様がサーベルトを殺した場所だろう?」

「へえ、旦那……。あン時ぁ杖の力が作用して、すいすい宙を飛んだもんですから……その、道順は……」

 

「……全く、役に立たねえな」

「なにっ? ならお前が行けよ、犬!」

見下ろしてくるドルマゲスに、レオパルドはウウーと威嚇します。

 

「よさないか! レオ、落ち着いて私の側にいろ!」

「すみません、兄さん。ドルマゲスのヤツがあんまり無能なのでつい……」

「わかっている。だが、ここでドルマゲスの無能さを語り尽くしたところでらちがあかない。私の目が見えればよいのだが、月明かりの入らない塔の中では私とて無能に近い。……仕方がない、今日はここで一夜を明かすぞ。明日出直しだ。朝になったらリーザスに戻り、サーベルトの実家に行く」

サーベルトの実家と聞いて、ドルマゲスが青くなりました。

 

「ええっ? サーベルトの実家に……? 駄目駄目駄目。駄目ですよぅ……旦那ぁ。俺ぁ、どの面さげてご遺族のかたに会ったらいいか」

ここへきて殊勝なドルマゲス。サーベルトを殺したことを心から反省しているようですね。

レオパルドは、ドルマゲスに向けていた牙を引っ込めて言いました。

 

「ドルマゲス、勇者の中に女がいたろう? あれがサーベルトの妹だ。俺たちは死んでるんだ。お前は家族に敵討ちされたんだから大丈夫だ」

ちょっと論旨がずれているようですが、レオパルドが珍しく励ましました。

そんな様子に、マルチェロはふっと笑みをこぼします。

「私に任せておけ。今日はもう休むぞ」

 

 

翌朝、一行はリーザス村に入りました。

 

「……どなたですの?」

田舎の代表のようなリーザス村、最奥にサーベルトの実家がありました。

使用人に取り次いでもらい、マルチェロ一行は、未亡人のアルバート夫人に目通りがかないます。

 

「アルバート家ご当主様でございますね。私はマルチェロと申しまして、旅の僧です。この度、暗黒の神を名乗る魔物が現れたというが、ご存じか?」

「ええ。知っておりますとも。ゴルドが落ち、暗黒の神が女神の内部から現れたと……ですが、それが何か?」

アルバート夫人は、目の見えない旅の僧と、むやみに細長い顔をした付き人を交互にみやりました。

 

「勇者が現れ、暗黒の神を倒すと女神はおっしゃった。拙僧も微力ながら、その手伝いがしたいのです」

「まあ、それは殊勝なことでございますのね……ですが、それが何か?」

アルバート夫人の、さっきからぴくりともしない表情に、ドルマゲスがおびえています。目の見えないマルチェロには、夫人の警戒心モロ出しの様子はさっぱり伝わっていませんが。

 

「実は、こちらのサーベルト殿は大変な剣の腕前であると、遠い砂漠の果てまで噂が聞こえておりました。私は、名の知れぬ勇者などより、サーベルト殿こそ暗黒の神を倒すにふさわしいと……」

マルチェロは、サーベルトがまるでまだ生きているかのように、美辞麗句を並べ、その栄誉を称えます。

 

アルバート夫人は、顔色を青くしたものの、やはり微動だにせず、マルチェロを真っ直ぐ見つめながら話を聞いていました。

マルチェロの隣では、いつ夫人が泣き崩れるだろうとハラハラしながら、ドルマゲスが細長い顔をなるべく小さくして様子を伺っています。ドルマゲスのそんな心配をよそに、夫人は気丈に振る舞っていました。

マルチェロは尚もぺらぺらとサーベルトを誉め称える言葉を紡ぎ、村人の話まで引き合いに出して喋り続けます。

 

──やべぇ、マルの旦那ぁ、やべぇよ、だってだってだって、怒ってるよ? このオバサン!

 

マルチェロとアルバート夫人の顔を交互にちらちらと眺めるドルマゲス。マルチェロのお世辞が続くにつれ、アルバート夫人の青白かった顔が、アップにした髪と同じくらい赤く赤くなってきました。同時に、メラメラとした火の熱さが夫人の手の辺りから放出され、その熱が頂点に達し、夫人の上品な口が「メ」の形に開きかけた正にその時!

 

「……しかし、私たちは失ってしまった……」

マルチェロは、声のトーンを5度ほど下げ、静かに言いました。

アルバート夫人の手の中では、炎になりそこねた火の粉がぱちんぱちんとはじけ、控えめな煙となり消えてしまいました。

 

「どうか、サーベルト殿の永眠の地で祈りを捧げることをお許し頂きたい。彼の勇気に恥じぬようと、旅立たれたご令嬢のためにも……」

「ゼ…ゼシカをご存知なのですか?」

娘のことを言われ、会ってから初めて、夫人は母の顔になりました。そして柔らかく目を閉じました。

再び開いたその目には、もう警戒の色はありませんでした。

マルチェロはその気配を察し、より穏やかな口調に変えて、ゆっくりと続けます。

 

「……はい。女神の告げた勇者の中に、古の魔法戦士の力を受け継いだ勇者がおり、その者はリーザスにいるとわかりました。私はすぐにサーベルト殿のことを思い出した。しかしサーベルト殿は……。……ご令嬢がどのようなかたかは存じ上げません。私はこの通り目が見えませんので。……ただ、この村へ来て確信しました。リーザスを守る魔法戦士とはゼシカ嬢なのだと。私が旅の途中で聞いてきた勇者の中の女性と、見事に合致します」

まったく、口八丁手八丁とは、マルチェロのことを言うのでしょうか。なおも適当なことを次から次へと喋りまくり、アルバート夫人の信頼を得て、とうとう夫人にリーザス塔へ同行すると言わしめたのです。

 

「まあまあ、私ったら、お茶もお出ししないで……」

「お気遣いなく……」

すっかり打ち解けたアルバート夫人。マルチェロも、言葉では一応お断りしましたが、品の良い夫人と一緒に旧家のお茶を是非とも味わいたいと思いました。何せ、ゴルドの底から放り出されてからというもの、「品」とは全く無縁な日々。ろくなものにありついていません。……ここで上質のお茶にありつけるなど……。マルチェロはああ見えていいとこの坊っちゃん育ちですから、セレブな雰囲気は得意です。

 

「うっ……!」

「だっ、旦那! 大丈夫ですか!」

なんということでしょう! 客間に通されたところでマルチェロの頭痛が始まってしまいました。

 

「まあ、お坊様、いかがされましたか?」

 

その時。

 

「奥様! ゼシカお嬢様が戻られました! 今、村中が大騒ぎです」

予想通り、マルチェロの頭痛の原因、勇者ご一行様が到着されました。

 

「まあ、ゼシカが? 皆さんもご一緒なのね」

 

アルバート夫人はいそいそとティーカップを増やします。

 

「お坊様、ゼシカに会って話をして下さいませ。きっと励みに……」

 

「いや、奥方殿……。それはできない。女神の命により、一刻も早く、リーザス塔に……」

マルチェロのピカピカの額にキラキラと汗が流れます。

 

「旦那……。ひとまず出ましょう。奥さま、さあ、塔へ……」

「でもゼシカが……」

 

そんな問答をする間も、マルチェロの頭痛はどんどん激しくなります。

 

──時間がないっ!

 

「お……奥方殿……ち……地図はござらんか……? 我々だけでなんとか詣でます……」

 

アルバート夫人は、おろおろしながら地図を探し出し、差し上げます、と言ってマルチェロに渡しました。

 

マルチェロたちは逃げるようにアルバート家を出て、宿屋の裏手に隠れました。

 

「久しぶりだわ~」

「またあの甘い菓子にありつけるなあ」

「ヤンは食いしん坊だね。でも……僕もお土産に少し欲しいな」

「ったく、お前らお子さまだなあ」

 

マルチェロの頭痛の原因である勇者様ご一行が、のんきにやって来ました。

 

 

危ないところでした。女神の決めたルールでは、もし勇者様ご一行に会ってしまったら、お使いは中止になるのです。そうなれば、マルチェロは生涯ゴルドの底から出られません。彼らがアルバート家に入ると、マルチェロの頭痛もすっと治まりました。ようやく出発できます。

 

 

妙な疲れを感じながら、勇者サポート隊は再びリーザス塔の前にやってきました。

リーザス塔の地図は複雑で、方向音痴なドルマゲスでは全然わかりません。仕方なく、月が出るのを待ち、マルチェロが地図を把握して塔に昇ることになりました。マルチェロはそれはそれは頭のいい人ですから、完璧に地図を把握し、すいすいと頂上まで上ることができました。

 

 

「美しい像だ」

塔の最上層、月明かりの中でリーザス像が白く光っています。

 

ドルマゲスは激しく混乱し、泣きながらリーザス像に許しを乞うていました。

マルチェロはアルバート夫人に宣言した通り見ず知らずのサーベルトのために祈りを捧げます。

 

 

「……これで、2つ済みましたね、兄さん」

「そうだな」

「うっ……ごめんなさいごめんなさい……えっえっ……ごめんなさい……ひっく……ひっく……」

無言で歩を進めるマルチェロ。泣き続けるドルマゲスを無視し、時おり現れる魔物をレオパルドと共に軽く捻ります。

次の目的地、トラペッタにつくまでこんな調子でした。

 




マダム・アローザは、メラができることにしました。次はトラペッタに行きます。

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