DQ8 オーブと罪びとの旅   作:ぽんぽんペイン

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トラペッタでのお使いを終えたマルチェロ一行です。次は西の大陸へ行かなければなりません。


イシュマウリに会う

「賢者はこんなところにいませんよねえ、マルの旦那ぁ?」

 

トラペッタで女神のお使いを済ませたマルチェロ一行。夜になるのを待って向かったのはトラペッタから西でした。この先は呪われたトロデーン城くらいしかありません。

 

「……兄さん、西の大陸に渡り、ベルガラック、リブルアーチ、オークニスへ行くんですよね」

「そうだ」

マルチェロは、さも当然という顔をしてどんどん西へ向かいます。

 

「旦那ぁ、西の大陸にはなんとかの翼で行ったらいいじゃないですか。トラペッタへ戻って、俺が買ってきますよ」

ドルマゲスが言うのももっともです。西の大陸へ行く定期船はもともと便が少なかったのですが、暗黒神復活のせいでほとんど運休状態でした。もちろん、このトロデーン城下は何もかもが機能していません。

 

ゴールドのかかる個人の船に乗せてもらうほどの持ち合わせもありませんし、知り合いもいません。

そうなると、キメラの翼で行くのが最も簡単なのですが……。

 

「兄さんは西へ渡ったことはないんですか?」

「ある」

「じゃあなんで翼使わねえんです? 俺じゃあんな魔法道具使えねえし、レオパルドは犬だし……」

魔法使いになりたかったドルマゲスは不思議そうに言いました。

 

「兄さん、まさかまた女神の縛りですか?」

「当たりだ、レオ。キメラの翼の使用を禁止されている。誰かにもらったり、拾ったりした場合をのぞいてな。また、手に入れたら15分以内に使わねばならない」

全く、女神様は意地悪が好きですね。

 

「旦那、また女盗賊にもらいに行きましょうよ」

「いや、『くれ』というのも禁止だ」

一体どうすりゃいいんですよ……と、がっくりと肩を落とすドルマゲス。

 

「……兄さん、船ですか?」

「さすがだなレオ。また当たりだ。私は思い出したのだ。……古い文献で見たことがある……トロデーン南西、昔海だった場所に古代船が打ち捨てられていると……それがここだ」

 

マルチェロが立ち止まった所は、何もない荒野でした。

「ここは……確かに昔は海だったんでしょうね」

レオパルドがクンクンと鼻を効かせます。

 

「旦那ぁ、船らしきものは見当たりませんね」

「……かなりの大きさのはずだ」

「ちょっと待って下さい……」

レオパルドがマルチェロの側を離れ、小高い丘に登りました。

 

「ワォン!」

「レオ、どうした!」

「船……船のあった跡があります」

「なんだと、レオパルド。どういうこった?」

「……船はあった。確かにあった。しかし、何者かがそれを掘り起こした……」

 

ザザーン…ザザーン…。

 

波の音が遠くに聞こえた気がします。

 

「どうすればよいのか……」

項垂れるマルチェロ。

 

「旦那ぁ、仕方ねえ、魔物がキメラの翼を落とすまで戦いましょう。俺も頑張りますから……このあたりにはキメラやタホドラキーもいるみたいですよ……」

「そうですね。効率は悪いでしょうが仕方ありません。女神がくれた手漕ぎボートでは西の大陸までは渡れませんし」

「……やむを得んか……」

「……兄さん、今夜は天気もいいですし、一晩中月が出ているでしょう。少し休んでおきましょう」

レオパルドの提案にマルチェロが頷きます。こうして二人と一匹は仮眠を取りました。

 

先を急ぐあまり、ろくに休息をとっていなかった彼らは、心身ともの疲れから、つい寝過ぎてしまいました。

 

ザザーン…ザザーン…。

 

聞こえるはずのない波の音。この地がかつて海だったというのは本当なのでしょう。規則的な波の音は心地好い子守唄。

 

月は中天にかかり、彼らと岩とが偶然に作り出した影が、不思議なことにぐんぐん伸びて、近くの壁に扉を作りました。

 

 

「……月が呼んでいる。女神が騒がせているようだ……」

扉が開き、中から月の精イシュマウリが人の世界に降り立ちました。

 

「……これは珍しい。この場所は以前訪れた……この地で古代の船に力を与えた……美しい音楽とともに潮が満ち……海の幻想が甦り……私のこの竪琴と歌が奇跡を起こした……………私を呼んだのは誰か? 月の悪戯か? いや、間違いなく、誰かが私を必要としている。人の子よ……」

イシュマウリはお気に入りの竪琴をポロンポロンと奏でます。すると突然。

 

キラーーン!

 

「うわっ! マブっ!」

イシュマウリの投げ掛けた光が、まっすぐにマルチェロに当たりました。デコと胸に下げた金の首飾りに反射しています。ドルマゲスがびっくりして大きな岩に頭をぶつけました。

 

「お前か? 私を呼んだのは」

イシュマウリが滑るように近づいて来ました。

 

「ぎゃあ! お化け!」

「何だ貴様っ!」

ドルマゲスとレオパルドが即反応します。

 

「どうしたのだ? つ、月は? 月は出ていないのか? 明るいようだがもう夜明けか?」

いえいえ、まんまるお月様はあなた方の頭上にいらっしゃいます。

でも、月明かりの下なのに、マルチェロの目は見えません。

 

「……人の子よ……」

イシュマウリはマルチェロのデコ……ではなく、首飾りに手をかざしました。

 

「私には見える。この首飾りが教えてくれる……。お前はマルチェロ……暗黒神の杖で法皇を殺めた男……」

「誰だ? 何をしている? 何故見えん! レオは……レオはどこだ!」

激しく混乱するマルチェロ。こんな時でも頼りにしているのはドルマゲスではなくてレオパルドなのですね。

レオパルドは、マルチェロにぎゅうと身体をくっつけます。

マルチェロは安心したようにレオパルドの背中を撫でました。

 

「お前は女神に視力を奪われたのですね……私の力もまた、お前の視力を奪うようです。目が見えぬとは辛いこと。まずは私の……月の世界に来なさい……」

イシュマウリは月の世界への扉へ誘います。超常現象など信じないマルチェロでしたが、まるで催眠術にかかったかのように、扉の中へふらふらと歩いて行きました。ドルマゲスとレオパルドも吸い込まれるように後へ続きます。

 

 

「……ようこそ。月の世界へ。私の名はイシュマウリ」

イシュマウリの世界に入ると、不思議なことにマルチェロは見えるようになりました。

 

「イシュマウリ……その名前は……貴殿は……もしや願いの丘の?」

「……アスカンタの近くにそういった場所がありますね。何度か訪れたことがあります」

「んじゃ、願いを聞いて下さるんで?」

ドルマゲスは、あの顔で子供のようにはしゃぎます。

 

「人の子よ……お前の願いがわかる。……今のお前の願いは船だ。お前たちは船が必要だ。しかし時間とゴールドがない。だから古代船を……」

イシュマウリはそこまで言うと、マルチェロの首飾りから手を離しました。

 

「月の精、イシュマウリよ……我らのことがわかるならば、お力添え頂きたい。我らは女神の命を受けている」

「違いますね。人の子よ」

イシュマウリの言葉に、マルチェロがハッと顔を上げました。

 

「違わねえよ、マルの旦那は……」

「よせ、ドルマゲス……」

マルチェロのために反論しかけたドルマゲスを、静かに制しました。

イシュマウリは目を閉じます。

 

「星の奏でる音楽を……月の歌をお聞きなさい。お前は答えを知っている……マルチェロ、お前は懸命に生きました……」

「ちょっ……あんた何を言ってんだよ、旦那はまだ死んでねえ」

「ドルマゲス……お前は女神の子。犬よ……お前も女神の子。だがマルチェロ……お前は人の子」

「私は人の子の願いを叶えよう……。ついて来なさい」

一行はイシュマウリハウスから再び現実世界に戻ります。

イシュマウリは海辺に立ち、竪琴をかき鳴らしました。

 

「人の子よ、私は無から有は造り出せぬ。よってお前に船を与えることはできない。しかし、暗黒のラプソーンを倒す目的のため、お前たちを西の大陸へ送ることはできる。その先は自分で何とかしなさい。マルチェロ、お前の罪の償いの旅です。必ず目的を果たすのです。お前を覚えている全ての者のために……」

竪琴の音が強く響き、マルチェロ、ドルマゲス、レオパルドの身体が浮いてきました。

 

「さあ、行くのです、マルチェロよ。西へ!」

マルチェロは西の大陸を念じました。

 

ベルガラック、ベルガラック……。

 




西の大陸へ向かった一行ですが、どうもベルガラックじゃないところに到着しそうです。
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