ツイスターゲームのルールは極めて単純である。
赤・青・緑・黄色の4色が規則正しく6つ並んだシートの上で、ゲームマスターがルーレットで出した色にプレーヤーが決められた手足を乗せていくというルール。あとは手足以外の部位が付いてはいけないし、シートに乗っている間は指定されるまで動かしてはいけない。
ここまで全部パッケージの受け売りで実際にはやったことはないけど大体想像はできるな。
「あれ? でも師匠、これ書いてあるの3人~5人ですけど2人でやるんですか?」
「うん? ああ、2人に合わせてちょっとルールを変えるよ」
シートをぴっちり床に貼り付けた師匠は俺と向かい合うように正座する。
「一つ、相手のターンに相手が触れる場所を指定する。
二つ、その時分かりやすいように雅側から例えば赤1,赤2,赤3……と色に番号を名付けて呼ぶことにする。
三つ、相手の体に当たってもいいが、もし当たって相手がアウトになれば無条件で敗北となる。
四つ、最後はいつも通り。楽しく遊びましょう」
指折りルールを追加していった師匠。俺はそのルールを一つ一つ注意して聴き、不利なルールではないか精査していった。
こう聞く限りでは師匠が何らかの抜け道を作っているようには思えない。
普段遊ぶ中で師匠が含みのあるゲームをすること自体稀ではあるけど。
「まあ、大丈夫ですかね」
「うんうん! さあ、ゲームを始めようか」
「その台詞どこかで聞いた気がするんですが……」
「気にしない♪ 気にしない♪」
適当にはぐらかす師匠にこれ以上言うのもあれだし、公式ルール通りに丸の上に立つ。
追加ルール的には俺は右足を青1、左足を緑1に乗せて立っている。正面に同じように立った師匠は右足が緑6、左足が青6だ。
「言い方分からないと思うから私が先制でいいね。左足を緑4に」
可愛い笑顔で進行させていく師匠の指示により俺は脚を前に出す。
2メートルもないシートの上では広くないといえ4まで大股に開かねばならない。
師匠の体に一気に近付き、それでも大きく見上げなければ師匠の顔が見えない高低差が生まれる。
愉悦そうにニヤける師匠に無性に腹が立ち言い放つ。
「右手を赤4に置いてください」
「おっけ~」
滑らかなウエストラインは上体を捻る体勢になっても弛むことなく立体的な曲線美を描き出していた。
「……なんでTシャツ脱いでいるんですか? というかいつの間に脱いだのです?」
「ん~? 動きやすいのもあるけど、雅と少しでも肌で触れ合いたくて」
師匠の柔らかな巨乳をスポーツブラは横にはみ出すこともなくすっぽりと包み込んでいて、猫型に開けられた穴から見える谷間は圧迫されて深い影を落としている。猫ブラジャーとは中々乙な……。
あー……なにこれ。真ん丸の胸肉が乳圧で押し合っていてそこに出来た直線に手を入れたら物凄い圧力で押し潰されて気持ち良く壊死しそう。触りたい。手を突っ込みたい。なんなら顔でもいいから。
ワキワキと師匠への性欲が昂ぶっていくが、そういうことをするなと昨晩師匠を叱ったばっかりの俺がするわけにはいかない。
師匠はクロスさせたような体勢になったのに関わらず体を仰け反らせて俺と目を合わせてくる。
仰向けに上体を逸らせている現在、身長差で普段は斜め下からしか見えない谷間をちゃんと真上から見る形となっていた。
「うっふっふっふっ! 下から見る雅も好き♡ ……うっ、この体勢で雅見るの辛い」
「だったら見なきゃいいじゃないですか」
「だって雅の顔見えなきゃ面白くない、あっ! 右手赤6! 右足の解除を許可!」
「うえ!? 解除許可ってなんですか!? いや、ああ、そういうことか」
前述の通り2メートルしかないこのシート上、180センチ近い俺でも大きく踏み込んだ今の体勢では6まで届かない。
それを見越した師匠は右足を解除したという訳だ。
右足を取り、一度左足に重心を乗せる。その後師匠の上を越えるように赤6に手を伸ばす。
「えへへへうふふふ♡♡♡」
眼前には目を細め口角の垂れた師匠の顔があった。
桜色の艶の良い唇は見た目の想像以上に柔らかい。
見つめれば見つめる程、体に刻まれた柔らかい感覚がそれはそれは鮮烈に蘇ってくる。
ああ、キスしたい。もうキスがとか言わないから上唇を唇で挟んで、それを舌で舐めてプニプニの感触を愉しみたい。
この状況でキスしたら師匠でも驚くかな? キスしたいなぁ……しようかな……。
「雅、キスするね♡」
「ちょっ、やっダメですよ! めっ! 右手を青3!」
さっきまでの揺らぎはどこへやら、NOと即答した俺は師匠を引き剥がす為、少し遠いポイントを指示した。
「ぬうううう……みや、び、を……見た……ぃぃ……」
離れた場所に手を移しながら、ぐぎぎぎ……とエクソシストさながらの動きで俺が見えるようにと首を捻ってくる。
普通に怖いんですけど。
「あーもう、まったく。しょうがない、雅もいけずなんだから。左手青の4に」
「青の4!? 師匠のお腹の下じゃないですか!! どうやれば……」
「言うの忘れたけど、降参もアリだからね」
「降参しろって事ですか!? 分かりましたよ!」
ここでの分かりましたは当然降参ではない。師匠の指示通りにするという意味の分かりましただ。
できるだけ師匠の体に触れないように体を反らしゆっくり腕を入れていく。
しかし、右手の位置が師匠越しだと辛いポイントにありその滑らかな脇腹を擦りそうで、避けようと肘を曲げれば今度は俺の胸が付きそうになり無理矢理当たらない所に顔を、視線を、どこか遠くに背けた。
「ふへへ♡ 雅が抱き付いてる♡♡」
「というか体勢低くしてもらえません!?」
それもこれも師匠が背筋を曲げていることが原因なのだ。曲げていなければ顔が付きそうになる必要もないわけだし。
「戦略だよ、戦略♪ さあ雅、次の指示はどうする?」
「うっ、え、えっと、左足緑の5!」
困惑していた俺は師匠に促され慌てて指示を出した。そして……。
「ごぶっ!!」
背筋を曲げ高さが上がった腰は、師匠に抱き付くような体勢だった俺の顎にクリーンヒットをかました。
当然、持ち上げられた俺の手は丸から離れてしまいなんとも呆気なく敗北が決まってしまった。
「あ~、負けちゃったな~。雅ってば中々えげつない所指すから~」
ルール通り俺を突き上げアウトにさせた師匠の敗北が、だ。
「師匠だってそれが目的でこんなセクハラじみた場所指してたじゃないですか」
「違うんだよ! 私は、私が隙だらけの淫らな格好になって接近することによって、性欲を抑えきれなくなった雅が私を襲い、合法的に雅の手で第2ラウンドを目指していただけであって、偶然それが戦略になっただけなの」
「この人はわざわざそんなまどろっこしい真似を……。はぁー……もー……」
呆れて仰々しく溜め息をつけば師匠はそれをどう受け取ったのだろう。シートの上に脚を投げ出した俺に近付いて来ると、太ももに手を置いて唇を尖らせる。
「んぅーー♡♡ ……っ!? んんぅっ!!」
尖った唇を優しく摘まめば、師匠は驚いて目を見開いた。
「……逃げないんですね」
ビクビクと体を揺らしてはいるものの避けようとしない師匠。
瑞々しい肉の感触を指で感じた後、そっと手を離した。指先に付いた液体を舐め取りながら師匠に問いかけていた。
「私は、もう離れないって決めたから」
唇程度、摘まんでも離しても師匠の体の位置は変わらない。それは、この数年で心の距離が少しずつだけれど近付いていると実感出来たことだった。
「あー、それと、師匠。このゲーム二人だと面白くないですね」
「えー!?!? まだ1ゲームしかしてないんだよ? もっとやろうよ!」
俺の太ももをてしてし叩く師匠に付き合い、1日中ツイスターゲームで遊ぶことになったのだった。