オオツキ月華伝   作:MATTE!

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大月ハヅキとは

 大月一族──森の千手一族とうちは一族と共に木の葉隠れの里を築いたとされる一族。

 しかし、木の葉にいる大月一族は少ない。大月の長は第一次忍界大戦後、木の葉隠れの里を外側から守る事を選び、木の葉の外にもう一つ、一族だけの里を築きあげた。

 その名も月隠れの里、殆どの大月一族はそこに住んでおり、木の葉にいる大月一族は月隠れの里から移住してきた者達だ。

 大月ハヅキは幼少の頃、数人の大月一族と共に木の葉にやってきた一人だ。

 余所から移住してきたハヅキへの風当たりは強く、ハヅキは奇異の目線にさらされた。しかしハヅキは人の事情をものともせず、人の懐に入り込むのが得意だった。いつの間にかハヅキが起こす馬鹿騒ぎに巻き込まれて、一緒に馬鹿騒ぎをする誰かをいつもどこかで見る。

 

 

「死ぬ覚悟はいいってばね?」

「お前……よくもまあここまで聞く相手と聞くタイミングを間違えられるよな」

 

 

 そしてハヅキは人の地雷も踏み抜くのが得意だった。

 

 

「落ち着け、まずは落ち着くんだクシナ」

 

 

 トレードマーク(頭のアホ毛)と首根っこを掴まれた状態でハヅキは目の前の少女に命乞いをした。

 

 

「今度こそ、そのアホ毛引っこ抜いてやるってばね!!」

「止めろ抜くな!これは俺のトレードマークだ!禿げる!」

「むしろ禿げろ!」

 

 

 アホ毛が抜かれると聞いて、ハヅキは赤髪の少女──うずまきクシナに掴まれた自分のトレードマークを守るためクシナの手を押さえつけた。

 そんな二人の攻防をサギトは緑茶を嗜みながら呆れた様子で見守っていた。そんなザギトの様子に気づいたハヅキが叫ぶ。

 

 

「サギト!暢気に茶ァ飲んでないで助けてくれ!!」

「いやだってどう考えてもなあ……クシナに聞こうとするお前がどうかと思う」

「何でだよ!トマトかババネロ。どっちがいいか聞いただけだろ!!痛い痛いいふぁい!!頬引っ張るな!」

「ま~だ~い~う~か~ア~ン~タ~は~!!!」

 

 

 ハヅキの首根っこを掴んでいた手は頬に移動し、クシナは力一杯ハヅキの頬をつまみ引っ張り上げた。

 

 

「いやだからそれをクシナに聞くのが間違いなんだって。後“ハバネロ”な。何だよ“ババネロ”って」

「ハもバも変わらないだろ!転々ついてるだけだ!」

「いや、変わるから。“うちは”と“うちわ”くらい変わるから」

「変わらない。まったく最近の若いもんは一文字違いでぐちぐちと……」

「……よーし分かった。クシナ」

「何?」

「やれ」

 

 

 何度も何度も言っても“うちわ”と“うちは”の違いが分からないハヅキに流石のサギトも腹が立った。少しは助けてやろうかと考えていたがハヅキの全く反省がない姿にサギトは一切の慈悲を捨てた。

 サギトの許可を得たクシナは拳を振り上げる。その姿を見たハヅキは慌てふためくがもう遅い。

 

 

「了解」

「待て!!話せば分かる!話せウボァ!?」

 

 

 ハヅキは人の地雷をタップダンスで踏み抜く才能に掛けては誰にも負けなかった。

 

 

 

*************************

 

 

 

「いてて……少しは手加減しろよクシナ」

 

 

 殴られて切れた唇に薬を塗りながらハヅキはクシナに不満を漏らす。

 

 

「手加減はしたってばね」

「うん、手加減はされたと思うぞ。多分本気で殴られてたらお前の歯何本かすっとんでたって」

 

 

 公園のベンチに腰掛け、ハヅキが持ってきた団子を頬張りながらクシナとサギトは懲りていないハヅキを睨みつける。

 

 

「なんでトマトかババネロどっちがいいか聞いただけで歯がすっ飛ぶんだよ。世の中怖いにもほどがあるだろ」

「だからハバネロな、そこは本当に直せ」

「まだ殴られたりない?」

「いや待て、待つんだ二人とも」

 

 

 クシナが握った拳を見て、ハヅキは冷や汗をかく。

 

 

「だから落ち着いて最後まで聞け。もう一回言うがな、俺は今度作る新作野菜団子の味を聞いただけだぞ」

「……団子?」

「そう、団子。朝に団子、昼に団子、おやつに団子、夜に団子。団子三昧の日々を俺は送っているんだがな」

「健康に悪すぎるってばね……」

「いくら好物でも普通飽きるだろそれは……」

 

 

 ハヅキから明かされた衝撃の食生活に二人は彼の健康状態を心配した。常日頃団子を食べているとは思ったが流石に毎日毎食団子三昧だとは予想していなかった。

 というよりはそれだけ食べても団子に飽きることがないハヅキに若干感心した。

 

 

「そう、その健康だ」

「どの健康だ」

「俺は今日ふと思い至った。流石に毎日毎日団子じゃ、健康に悪い」

「今まで団子三昧になんの疑問も思い浮かばなかったのね……」

「だから健康にいい野菜団子を俺自身が作り出してやろうじゃないかと一気奮闘した」

「どうしてそうなるってばね!?」

「そこまでして団子を食べようとするその執念はなんだよ」

 

 

 なぜハヅキは毎日団子は健康に悪いと分かっていて団子を食べようとしているのだろうか。

 クシナとサギトは目の前のハヅキの思考回路に疑問を抱く。こいつは頭のねじを一本どころか二、三本すっとばしてるんじゃないかと。

 

 

「どうせなら七色団子でも作ってやろうと思ってな。記念すべき赤色をトマト味かハバネロ味かどっちにしようか迷ったからお前らの意見を聞こうとして、右ストレートを盛大に食らった、めっちゃ痛い。なんでだ」

「トマトかハバネロか……その二択をクシナに聞くのがまず間違ってる。むしろ一発ですんだことに感謝しなよ」

 

 

 ハヅキの言い分は分かった。しかし聞く相手をハヅキは盛大に間違えた。他の子供達に髪の色をからかわれ大暴れした後のクシナにそんなことを聞けば、そうなるのは最初からわかりきっている事だ。

 やっぱり自業自得だった。サギトは改めてハヅキの馬鹿さ加減を理解した。

 

 

「全く、それでアカデミーを卒業できるの?」

「安心しろ。アカデミーは卒業できる。その後俺が立派な忍者になるかはまた別の問題だが。案外すぐにヘマで引退して団子屋を経営しているかもしれん」

「自分でそれを言うなよ……一気に不安になったんだが」

 

 

 ハヅキは馬鹿ではあるが弱くはない。本人の言うとおりアカデミーは簡単に卒業できるだろう。しかし、ハヅキの性格でその後忍者をつづけられるかは別の問題。

 サギトもクシナもハヅキの今後をものすごく心配することになった。

 

 

「まあ、ハヅキの作る団子は美味しいし。お店を作ったらお得意様になってあげるってばね!」

「ああ、そのときが来たら半額で団子売ってやるよ」

「だからもしもの話を進めるなって……」

 

 

 ナチュラルにハヅキが忍者を引退した先の話をしている二人にサギトは突っ込みをいれる。確かに可能性はあると思うがそれ以上は仮定の話でしかない。

 

 

「ごちそうさま!」

「おう、お粗末様だ」

 

 

 ハヅキが持ってきた団子を食べ終えると、クシナはスッと立ち上がった。

 

 

「ああ、そうだハヅキ。赤色の団子だけど。トマトの方が健康にいいと思うてばね!」

「む、そうかなら記念すべき赤色はトマト味ということだな」

 

 

 懐から手帳を取り出し、ハヅキは赤色団子トマト味に決定!とメモ書きを残す。

 

 

「よし後はオレンジと黄色と緑と青と紺と紫を埋めれば虹色団子の完成だ!」

「うん、つまるところ他の色はまだ決めてないんだな」

「本当に今日思い至ったんだ……いや、ハヅキのことだから嘘はついてないと思ったけど、それまでまったく疑問抱かず団子三昧……ハヅキ、今度野菜届けるから」

「だな、俺も今度米支給するから」

「「頼むから(お願いだから)まともにご飯を食べろ(食べて)」」

「二人してひどくないか?まるで俺がちゃんとご飯食ってないようにいうなよ」

「いやどう考えてもお前はまともにご飯を食べてない」

 

 

*************************

 

 

 

「じゃあ、また明日ねってばね」

「おうーまたなー」

「また明日!」

 

 

 クシナに手を振って別れをつげ、ハヅキとサギトは帰路につこうとするが、その中でサギトはクシナを尾行している黄髪の少年に気がついた。

 

 

「なあ、あれ……」

「ああ、ミナト。なんだ気がついてなかったのか、まあいつも通りだろ」

 

 

 クシナと合流してから実はずっと視線を感じていた。その犯人にようやくサギトは気がついた。その犯人は同じアカデミー生で友達である波風ミナトだった。

 

 

「え、ハヅキは気づいてたの?」

 

 

 ハヅキはミナトがクシナを尾行していることに全く驚いた様子を見せなかった。サギトは驚いてハヅキに気づいてたのかと問いかける。

 

 

「クシナと会ってからずっと視線を感じるなら犯人はミナトだろ。あいつ、いつもクシナを陰から見守ってるし」

「え、うそ気づかなかった……でもどうしてだ?」

 

 

 ミナトは意味もなく人を蔑むような人間ではない。クシナを付け狙う理由に思い至らずサギトは頭をひねった。

 

 

「そりゃクシナのことが好きだからに決まってるだろ」

 

 

 いつも人の地雷をタップダンスで踏み抜いているハヅキだが、色恋沙汰に関しては彼は鋭かった。

 周りの人間にどうしてそれが他のことに発揮されないのかと言われるくらいには鋭かった。

 

 

「基本はクシナがなんとかするから手を出さないんだろうが、何かがあったら大変だから陰から見守ってるんだろ」

「なにそれまどろっこしい。男ならガツンといけガツンと!もういっそのこと今度はこっちから声かけて巻き込んでやろうかあいつ」

「やめとけよ。人の恋路に手を出す奴は、顔面殴られてぶっ殺されるぞ」

「馬に蹴られるんではなく!?」

 

 

 今度気がついたら巻き込んでやろうかと画策するサギトはハヅキの物騒な単語に冷や汗を流す。

 

 

「……というかさ、普通逆じゃないか?」

「何がだ?」

「いやクシナとミナト。普通女の子の方が好きな子を影から見守ってないか?」

「……よく考えてみたら逆だな」

 

 

 サギトに言われて、ハヅキはミナトがやってることをよく考えてみる。確かにサギトの言う通り、普通それは内気な女の子がする行為だった。

 よくよく考えてみればそれは少年がするにはものすごく女々しい行為だった。いやというか完全にストーカーだった。

 

 

「まあ、いいんじゃないか?その分クシナが図太くて勇ましくて男らしからで十分釣り合いとれてるって」

 

 

 うんうんとハヅキはクシナの図太さと勇ましさを思い返しながら納得する。

 それを見たサギトはこいつはそんなんだから……と飽きれた目線を送る。

 

 

「……それ絶対にクシナに言うなよ」

「え、何でだ、褒め言葉のつもりなんだが」

「うん、だから言うなよ。というか少しは考えろ。男らしいは女の子とって褒め言葉じゃない」

「マジでか」

「マジでだ」

 

 

 ハヅキはサギトの言葉に衝撃を受けたように驚く。

 サギトはハヅキの何も分かってない反応に今日一番のため息をついたのであった。

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