オオツキ月華伝   作:MATTE!

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突撃!大月ハヅキの晩御飯

「ジャガイモ、玉ねぎ、人参……こいつらは定番だな」

「そうね、簡単な料理から教えるならその三つは必須。カレーでもシチューでも何かしら作れるから……聞いてるのハヅキ!」

「聞いてまーす」

 

 

 赤いハバネロ事件から数日後、サギトとクシナは約束通りハヅキの家に野菜とご飯を支給しに来た。

 しかし、今、ハヅキは荷物持ちとして二人の買い物に付き合わされていた。なぜそんなことになったのか、そのときの出来事をダイジェストでお送りしよう。

 

 

「ハヅキー!あけろー!」

「約束通り野菜とお米持ってきたってばねー!」

「おーう、らっしゃーい……持ってくるとは聞いたが米袋一つに野菜入った段ボール一つって……野菜の方が多くないか?」

「クシナとの相談の結果、お前には米より野菜と意見が一致した」

「とにかくハヅキは団子より野菜を食べるってばね!」

「まあ別にいいが……そこの冷蔵庫に適当にいれておけ、一応中身は開けておいた」

「ああ、悪かったな……」

「…………」

「……おい、二人して人んちの冷蔵庫の中身を見て黙るなよ。嫌な予感がひしひしするぞ」

「「そこに直れ!生活習慣病予備軍!!」」

「なんで!!?」

 

 

 冷蔵庫の中身を知った二人は激怒した。そしてハヅキは訳も分からず正座させられ、オカンと化した二人から説教を受けた。

 そして現在に至る。

 

 

「まだ空じゃなかったからいいじゃないか……」

「まあ、冷蔵庫の中が空でも怒ったけど、冷蔵庫に入ってたのが餡子だけってのも問題だからな?しかも棚いっぱい」

 

 

 ハヅキのふてくされている様子を見て、サギトは冷蔵庫の棚の一つを占領していた餡子を思い返す。

 なぜ目の前の馬鹿はあの中身を自信満々に見せつけたのかと訝しく思った。

 

 

「アレでもお前達が来るからちゃんと整理したんだぞ。昨日までは冷蔵庫の中身全部餡子だった」

「……一つ聞く。その冷蔵庫一杯だった餡子、今はどこだ?」

「え、俺の胃の中だけど」

 

 

 昨日までハヅキの冷蔵庫を埋めていた餡子は、今朝汁粉にして全てを飲み干した。

 ハヅキは事も無げに答えた。サギトの質問の意図を理解していないようだった。

 

 

「いつか本当に生活習慣病で死ぬぞお前!」

「あんだけ言ったのにまだ団子食べてたってばね!?」

「まて!誤解するな!!今回は汁粉だ!団子は今回食べてない!」

「団子も汁粉も結局食べてるもの(素材)は同じだよ。なに自信満々に違うもの食べたって言ってるのお前、同じだよ馬鹿」

 

 

 今にも殴りかかりそうなクシナに対してハヅキは団子は食べてないと言い訳する。

 しかし、団子も汁粉もクシナとサギトには同じようなものだった。

 よくもまあ自信満々に今回は違うと言ってきたなコイツ……馬鹿かこいつ、いや馬鹿だ。と二人の意見は一致した。

 

 

「俺たちは少しは甘い物とか食べるのを控えろって言ってるんだ。年がら年中、常日頃お前は甘い物しか食べてないからな。野菜を食え野菜を」

「控えろって……無茶言うな、甘党が甘いもの食べなかったら甘党じゃ無いだろ。俺から甘党をとったら何が残るっていうんだ」

「「馬鹿」」

「……………」

 

 

 ハヅキから甘党をとったら残るのは馬鹿。

 目の前の親友とも言える二人に口をそろえて言われた事にハヅキはなんとも言えない表情をする。そんな風に言わなくてもと……

 内心わかっていたことではあった、それでも二人に口を揃えで言われたことはそれなりにダメージがあった。気を取り直して話を続ける。

 

 

「そう、俺は自他とも認める馬鹿だ。でもな、いくら認めててもな、何度も皆に馬鹿と言われるのは流石に傷つく、実際さっきちょっと傷ついた。だから俺は馬鹿なりに考えた」

 

 

 そう、馬鹿は馬鹿なりに考えた。例えそれが馬鹿の浅知恵だとしても考えた。

 

 

「馬鹿の他に甘党の属性をプラスしたらそんなに馬鹿と言われることはないのではないかと」

「その発想に至ることがまず馬鹿だよ、馬鹿」

「サギト、俺の努力を早速無駄にするのはやめてくれないか」

「安心しろ馬鹿、最初っから無駄な努力だ。馬鹿がどんなに考えようが結局馬鹿の浅知恵なんだよ」

 

 

 馬鹿なりに考えた浅知恵は、全く無駄な努力だった。

 ハヅキの努力を知ったサギトはハヅキのことを馬鹿と呼び始めた。

 馬鹿と呼ばれたハヅキは折角の知恵をボロクソに言われそこまで言わなくてもいいじゃないかと若干拗ねた。

 

 

「というか名前で呼んでくれよ!俺、お前の苗字は間違えたことはあるが……“うちわサギト”、お前の名前は間違えたことないぞ!!」

「まず苗字を間違えるな馬鹿!あと過去形にするなよ。現在進行形でたった今間違えたからなお前」

 

 

 何だかんだ自分は馬鹿だと認識はしているハヅキだが、流石に名前は呼んでほしかった。なので苗字は間違えたことはあるがサギトの名前は間違えたことないと、自信満々に苗字を間違えながらいった。

 完全に火に油を注ぐ行為にサギトの目はすわり、それを見たハヅキは“あ、やばい”と一歩引く。

 

 

「……名前は間違えてないからセーフ」

「アウトだ馬鹿」

「痛い痛い痛い!!トレードマーク(触覚)は!トレードマーク(触覚)は止めろぉ!

「えーでもこれアホ毛って言うんだろ?アホ毛抜いたらちょっとはマシになるんじゃない?アホじゃなくなって」

「逆にもっとアホになったらどうするんだよ!」

「その時は頭めがけて右斜め45度からチョップしてあげる」

「まって!俺の対処法をオンボロ傀儡と一緒にするな!」

 

 

 ガッシリとサギトはハヅキの生命線(トレードマーク)を掴み、引っ張る。

 己のトレードマーク(触覚)を引っこ抜かれまいとハヅキは必死に抵抗する。

 膠着状態となった二人の喧嘩に終止符を打ったのは二人の頭上から振り下ろされた赤い悪魔の鉄拳だった。

 

 

「「いっでえぇぇぇ!?」」

 

 

 頭を殴られた痛みに二人は頭を抱え、うずくまった。涙目になりながらも彼らは喧嘩を仲裁した犯人を見る。

 

 

「二人ともお店で騒がない!!うるさいってばね!!」

「「………………」」

「返事!!」

「「……はーい」」

 

 

 クシナに促され、男二人はお互いを睨みながら不満げに返事をした。

 お互いがお互いを悪いと思ってはいるが、クシナから見ればどっちもどっちお互い様である。

 何度も苗字を間違えて学習をしないハヅキもハヅキだが、そもそも最初に何度も馬鹿と言ったのはサギトだ。

 

 

「あれ、クシナちゃん?」

「紐利!」

 

 

 騒いだ馬鹿二人を両成敗し、自分と同じ赤髪のメガネをかけた少女に声をかけられた。

 千手紐利(せんじゅひもり)、木の葉の里を作り上げた千手柱間の孫の一人。その中でも紐利は年が近く、クシナと仲が良かった。

 

 

「紐利も買い物?」

「う、うん……皆はどうしたの?」

「私も買い物、とりあえず今は馬鹿二人を両成敗したところってばね」

「買い物に来て馬鹿二人を……りょう……せいばい?……ハヅキくんにサギトくん!ど、どうしたんですか!?頭にそんなに大きいコブを作って!」

 

 

 クシナの言葉に疑問符を浮かべた紐利は、頭にでかいコブを作った二人を見て驚いた。

 

 

「サギトが俺のアホ毛を引っこ抜こうとしやがるから、抜かせるかとそれに抵抗してクシナに殴られましたー」

「ハヅキが俺の苗字を自信満々で盛大に間違えるから、いつもどおりそれにキレたらクシナに殴られましたー」

 

 

 どうしてこうなったかを聞かれたので、二人は相手を指差して自分が怒られたのが相手のせいだと言った。

 そしてお互いに指を差した彼らは“え、何言ってんのこいつ”と相手を見る。

 

 

「え、えーと……」

「紐利、いつもの事だから気にしちゃダメ。大丈夫すぐに仲直りする」

 

 

 どう対応していいか紐利が戸惑っていると、クシナが助け舟を出す。

 いつもの事だから、ほっておけと。

 毎度毎度同じような喧嘩をして、結局仲直りするんだから心配するだけ無駄である。

 

 

「……クシナちゃんの今日のご飯は何ですか?」

 

 

 二人が心配な気持ちはある。しかし、クシナの言葉を信じて話を強引に切り替えた。

 

 

「……カレーね。まず、簡単な料理をハヅキに教えないと」

 

 

 紐利に夕飯の献立を聞かれ、クシナはハヅキに料理を教えるため今日はカレーと答えた。

 

 

「料理を、ハヅキくんに、教える?……何があったの?クシナちゃんが野菜入りの段ボール持ってハヅキくんの家に行ったのは知ってるけど、そこからどうして料理教室が始まることになったの?」

 

 

 ハヅキの家に何を持っていくか、サギトと相談していたのを紐利は見ているし、自分も相談を受けた。

 渡すだけだったのに、そこからどうして料理教室が始まることになったんだろうと紐利は疑問符を浮かべる。

 

 

「聞いてよ紐利!この甘党冷蔵庫に餡子しか入れてないってばね!!しかも和菓子しか作ったことがないって言い切るし!」

「俺たちが食料を供給しても、宝の持ち腐れにされたんじゃたまらない。だから料理教室が開催されることになった。ちなみに今はどう言ったものを買えばいいかって教えてるところだ」

 

 

 クシナとサギトは今の状況に至るまでの経緯を話す。

 とにかくハヅキの生活を正す為に自分たちは頑張っていると。

 

 

「た、大変だね……」

「そうだ!紐利も一緒に来て教えてよ!紐利も来てくれれば百人力だってばね!」

「え、で、でも……」

「別に俺は構わない。今更先生が一人増えようが俺が怒られることは確定だしな」

「まず怒られないように努力しろ」

 

 

 紐利の料理上手を知っているクシナは彼女を料理教室の先生役として誘う。

 いきなり誘われた紐利は当事者であるハヅキを横目で見るが、ハヅキは特に何も気にせず、構わないと言った。

 

 

「えっと……じゃあお言葉に甘えて、おじゃまします」

「どうぞどうぞお邪魔してください」

 

 

 そうして彼らはハヅキに料理を教えながら夕飯を作ることになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 ……余談として、副菜などの作り方をハヅキに教えこんだ三人だったが、カレーはパッケージ通りで大丈夫だとハヅキ一人に任せた結果。

 パッケージをよく読み込んだハヅキが隠し味ハチミツの文字を見て、ハチミツを大量に入れてものすごい甘いカレーが出来上がった事をここに記しておく。

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