オオツキ月華伝   作:MATTE!

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蒼く輝く

「あーー甘かった……」

「……パッケージにハチミツって書いてあったし」

「限度を考えろよ?いくらなんでも瓶の中身全部入れるな」

 

 

 女子二人を先に帰らせて、ハヅキとサギトは作業を分担しながら後片付けをしていた。

 ハヅキが一人で作ったカレーはとてもとても甘かった。

 サギトは皿洗いをしながらぐちぐちとダメ出しをする。ハヅキはダメ出しと洗った皿を受け取り、皿の水気を拭き取って棚にしまった。

 

 

「素人がアレンジなんて言語道断、まずはレシピ通りに作れ。今回は目を離した俺らも悪いから説教は無しだが、次やったら火遁だからなお前」

「いきなり火遁!?あとこれは説教じゃないのか?」

 

 

 説教は無しといいながら、今現在ぐちぐちと言われていることにハヅキは疑問を抱く。

 

 

「これは説教じゃなくて甘いカレーを食べさせられたお客としてのクレーム」

「なんだよー甘いカレーも美味しいじゃないか。人の傑作をボロクソ言うなよ」

「あれを美味しいと言い切れるお前の味覚が本当に心配なんだけど」

 

 

 サギトの文句にハヅキはそんなにボロクソ言われるカレーは作ってないと主張する。その主張を聞いたサギトはハヅキの味覚を本当に心配した。

 

 

「今度病院行こう、俺も一緒についてってやるから」

「割とマジなトーンで心配するのやめてくれないか。人より甘いものの許容範囲が多少広い自覚はあるが、人を味覚音痴みたいに言うのはやめろ」

「多少の意味を辞書で引いてこい、お前のそれは多少じゃない」

「えー」

 

 

 味覚音痴と思われているのだけは避けたいハヅキだったが、それはすでに手遅れだった。ハヅキは納得のいかない表情で皿を戸棚にしまう。

 

 

「あ!忘れてた……」

「どうしたんだ?」

「いや、お前らが来る前に作って戸棚に隠しておいた和菓子があるんだ。食後に出そうとしたのに、お前らが人のカレーを甘い甘いと罵倒するもんだから出すの忘れた」

 

 

 ハヅキは皆が来る前に作っていた和菓子を戸棚から取り出そうとする。

 

 

「俺たちにあれだけ言われたのにまた団子作ってたのか……」

「失敬な、流石の俺もあれだけ言われればちょっとは学習する。これは団子じゃない、おはぎだ!」

「だから素材は一緒だよ!本当にちょっとしか学習しないなお前!?団子以外を食べればいいって問題じゃ無いからな!!」

 

 

 自分たちがあれだけ言ったにもかかわらずまた団子を作ってきたハヅキにサギトは呆れかえる。しかしハヅキは今回は違うものを作ったと自信満々におはぎを披露した。

 見せられたおはぎを見て、サギトは確かにハヅキがちょっとしか学習してないことを理解した。

 

 

「よくもまあそんな自信満々に違うもの作ったって言えたよなお前……」

「そりゃ俺の認識は団子とおはぎは違うものって認識だからな」

「世間一般は団子もおはぎも和菓子で一括りだから。俺たちは甘いもの食べるのを控えろって言ってるんだ、止めろとは言ってない。せめて一日一食に抑えろと言ってるんだ、それをあの手この手で屁理屈こねるわ、結果的に同じもの食べるわ……お前本当に馬鹿だな、この甘党馬鹿」

 

 

 何度言っても甘いものを食べるのを控えないハヅキに、ついにサギトの堪忍袋の尾が切れた。馬鹿だ馬鹿だとハヅキを罵倒する。

 

 

「この馬鹿が!」

「そんなに何度も何度も馬鹿って言うなよ、いくら俺でも傷つくからな。そもそもこのおはぎは俺が食べるためのものじゃなくて皆で食べる為に作ったんだからな」

「じゃあその夕飯に出し忘れたこのおはぎ、どうなるの?」

「え、勿体無いから責任とって俺が全部食べるけど。足が早いから早いうちに食べないと」

「そういうところが馬鹿なんだよお前」

「何でだよ」

 

 

 自分の為ではなく皆の為に作った。そうハヅキは言うが、結局自分で食べるのであれば意味はない。

 しかし、自分なりに考えて行動したのに馬鹿と罵倒されたハヅキはものすごく納得いかない様子でおはぎを見つめる。

 その様子を見たサギトはため息をついた。

 

 

「……しょうがない。おい、タッパーとかあるか?」

「タッパー?」

「おすそ分けしに行くぞ」

 

 

 

*************************

 

 

 

「別に分けなくても俺が全部食べるのに……40個くらいなら十分で軽くいけるぞ」

「だから一人で全部食べようとするな。何度も言うけれど別に俺たちは節度を守って甘いものを食べるなら別に文句は無いんだよ。好きなものは人それぞれだし」

 

 

 そう、別に節度さえ守ってくれるならサギトはハヅキに何も言わなかった。

 しかしハヅキはサギトに言われようがクシナに言われようが食生活を変えようとしなかった。結果サギトはキレた。

 

 

「ごめんくださーい!」

「クシナーおはぎ届けにきたぞー」

 

 

 クシナの屋敷に前まで来て、呼び鈴を鳴らすのと同時に二人は声を上げる。しかし、返答は帰ってこなかった。

 誰も出てこないことに、サギトは首を傾げる。

 

 

「……あれ、誰もいないのか?」

 

 

 呼び鈴を鳴らしても、声をかけても誰も出てこなかった。

 クシナが既に帰っていると思ったが、どうやらどこかのタイミングで追い越してしまったようだった。

 当てが外れたことにサギトは少々残念な気分になったが、まあ今じゃなくてもいいかと頭を切り替えた。

 

 

「ハヅキ、出直そうぜ、誰もいないみたいだし」

「……おっ邪魔しまーす!」

「ハヅキ!?」

 

 

 誰も出ないならしょうがないと、サギトは出直すことにした。

 しかし、何を思ったか突如ハヅキは扉を蹴り飛ばし、屋敷に土足で上り込む。

 どっからどう見ても無礼な行動にサギトは目を丸くする。しかし不法侵入しているハヅキを犯罪者にする訳には行かないと慌てて追いかけた。

 

 

「ハヅキっ!おま!不法侵入!!いくら留守でもそれはまずいって!」

「ど阿呆、それでもうちは一族かお前。うずまきの人間がいる屋敷だぞ?護衛対象がいなくても屋敷を守る者は何人かいる筈だ。そいつらすら出てこないってことは──」

「……っ!?」

 

 

 止めようとするサギトを振り払い、ハヅキはズンズンと屋敷に踏み進む。そうしてハヅキは一つの部屋の前に立ち止まった。

 ハヅキはその部屋の襖を乱暴に開ける。その先の光景にサギトは目を見開いた。

 

 

「出れる状態じゃないってことだ」

 

 

 襖の先には人が倒れて積み重なっていた。すぐさま彼らに駆け寄ってその体に触れたがその体は既に冷たく、事切れていた。

 サギトは彼らに見覚えがあった。彼らはクシナと紐利の護衛だ、二人と行動を共にしているときに影から監視されていたのを覚えている。

 その護衛が殺されている。なぜ彼らが殺されたのか、その答えにすぐにたどり着いた。

 

 

「……っクシナ!!」

「この屋敷にクシナはもういない。雲隠れの奴らに拐われたか……」

 

 

 声を上げ、クシナを探そうとするサギトをハヅキは止めた。

 ハヅキは屋敷を見渡し、ここで起こった出来事を理解する。理解して、自分が持つ装備を確認した。

 手持ちが心許ないが、事は一刻も争う、国境を越えられるわけにはいかない。忍具を取りに行く時間はない。

 

 

「サギト、お前は警務部隊にこの事を伝えろ」

「俺が伝えるって……お前まさか一人で追いかける気じゃ!」

「時間がない。クシナだけじゃなく紐利も拐われた。」

「紐利も!?」

 

 

 運悪く、雲隠れの忍がいるときにクシナと紐利が来てしまった。クシナと同じ赤髪であった紐利はうずまき一族と思われて一緒に拐われた。

 うずまきミトの孫である事を考えると、うずまき一族であることは間違っていない。しかし彼女は初代火影の孫でもある。

 

 

「ただのうずまき一族と思っているうちはまだ安心だが。初代火影の孫とバレればアイツが危険だ」

「なら俺も着いてく。一人で二人を助けるなんて、片方を人質にされて、どうぞタコ殴りしてくださいって言ってるものだ」

「ど阿呆。この状況を説明する人間が必要だ。言いたくはないが俺が警務部隊に説明するより、サギトが説明した方が話は通じる」

「誰がど阿呆だ、誰が。一応言っておくけどうちはの皆はお前のことはそれなりに信頼しているからな。ただお前が馬鹿だからお前の言葉を信用できないだけだ」

「誰が馬鹿だ、誰が。一族全員で人を馬鹿呼ばわりするな。連絡なしでうちはと大月が里を出るわけにはいかない、何事も報・連・相が大事だから俺はそれに準じているだけだ」

「いーやお前は馬鹿だ。上忍殺した相手に一人でどう立ち向かう気だ。俺から見てハヅキは考えなしに雲隠れの忍相手に一人で立ち向かう馬鹿だからな」

「……っち、押し問答する時間が無駄か。仕方がない」

「わっ、もっと丁寧に扱えよ」

 

 

 一人で追うか、二人で追うかで押し問答を始める二人であったが、結局サギトの一歩も引かない様子にハヅキ根負けし、舌打ちをする。

 ハヅキはクナイを取り出し、サギトは苛立ち気味に放り投げる。

 数少ない手持ちの半分を渡した。これでハヅキに残ったのはクナイ一本。

 

 

「悪いがこんなことになるとは思っていなくてな、手持ちが極限に少ない。今のお前に渡せる手持ちはクナイ一本(半分だけ)だ」

「予想以上に手持ちがないな……これでよく一人で追いかけようとしたよ。やっぱり馬鹿だよお前」

 

 

 サギトは、クナイ二本の装備で雲隠れの忍を追いかけようとした考えなしに呆れ返る。

 そして、やっぱりハヅキは馬鹿であったと再認識した。

 

 

「というか、その雲隠れの忍がどこに行ったか分かるのか?」

 

 

 追いかける。言うだけであれば簡単だがそもそも追いかけるには一番の問題がある。

 サギトのそれは当然の疑問だった。

 

 

「愚問だ、ど阿呆。分かるから追いかけるんだ」

「!?」

 

 

 雲隠れの忍の場所に当てがあるのかと聞くサギトを、愚問と切り捨てる。

 そしてハヅキは自分の瞳をサギトに見せた。

 

 

「その眼は──」

 

 

 彼の瞳は蒼く輝く、その眼はそこにはいない雲隠れの忍の姿を捉えていた。

 

 

「逃しはしない」

 

 

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