俺とアタシの居場所《一応 完結 》   作: 紅葉 

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お久しぶりです!
もうひとつの小説の麻弥ちゃんの誕生日書いてました!
暇な人は良かったら読んでみてください!!ちなみに詩音くんもちゃんと出てきます!


暇人と多忙人は暗闇の歌を辿る

 

 

 

 

「…………7時を回ったぞ?」

 

 

 チラリと見たスマホの画面によって、周囲が怪しげに照らし出される。もう、完全に真っ暗となった、俺達の街。一軒一軒の家の電気を繋げたら、なにかの模様のように見えるこの時間帯になっても、俺達の目の前の家は電気が1つもつかなかった。

 

 

「……リサ、気持ちは分かるが今日は諦めよう。氷川さんや他の2人も家の人が待っていたりするんだ。俺達の都合だけで迷惑かけるわけにはいかねぇよ」

 

「そう……、だね……」

 

 

 9月1日の19:13。俺達はついに断念した。凹むリサを見ながら、なんと声をかけたらいいのか模索する。昔から、励ますのはリサの方が得意だったから、こういうのは未だになれない。

 

 結局、何も声をかけることが出来ないまま、解散の流れとなった。自分が何も出来ないもどかしさと雰囲気の悪さに苛立ちを覚えながらも、俺はその場を後にした。リサはすぐ目の前にある家へ。宇田川さんと白金さんはそのまま帰り、氷川さんはどこかによっていくそうだ。後から思えば、こういう時、男の俺が女子を送ってくものなんだろうが、生憎そこまでの余裕が俺にはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──第18話:暇人と多忙人は暗闇の歌を辿る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人、歩く路地は暗く狭い。それぞれの家の塀や門がいつもより高く感じ、圧迫感を感じる。それが嫌で、少しでも早く抜け出したくて、早歩きでその場を通り抜けようとする。

 

 まさにその時だった。

 

 

「え………………?」

 

「……っ!?み、湊さん……?」

 

「は、遥都……?」

 

 

 街灯のみが照らす夜の住宅街を俯きながら、歩く俺の耳に、一陣の風が吹き込んできた。ハッとなり、そちらを振り返る。そして、僕の目に映りこんだのは、永らくこの目で見ようとしなかった、俺の闇だった。

 

 

「ここで、何をして…………」

 

 

 そこまでで、俺の口は止まった。いや、湊さんの表情を見て、止まってしまったという方が正しいかもしれない。涙の後が、街灯によって照らされ、頬の表面にはまだ涙があることが分かる。その表情はとても悲しげで寂しげだったのだ。

 

 この表情を見せられてしまったら、何を言っていいのか、分からなかった。リサや他のRoseliaメンバーの前ではあれだけ、啖呵を切っておきながら、いざあの表情の湊さんを目の前にすると口は開けない。

 

 

「………………あの、ごめんなさい」

 

 

 迷った挙句に、ようやく俺の口から零れたのは"ごめんなさい"という言葉。それが、正しいかどうかは分からない。けど、それしか思いつかなかった。

 

 

「…………がう、のよ……。私が、知りたい、のは……、ちが、う……」

 

 

 グッと唇を噛み締めながら、湊さんは何か言った。俯きながら言っているから、今の表情は分からない。けれど、肩を震わせながら、掠れるような声で。聞き取れはしなかったものの、心から絞り出すよう言ってくれたことは十分に伝わった。

 

 不意に横を車が通り抜ける。車音がヘッドライトが湊さんを明るく照らした。やはり、前髪に隠れて、目元は見えないものの涙のあとはくっきりと見える。リサが着ている制服に、学校のバッグ。

 

 

「……っ!?」

 

 

 車が通ったのはほんの一瞬だった。だが、その中でハッキリと見えてしまった。あれは、確か、俺が……!!湊さんを照らした車のヘッドライト、当然、湊さんの鞄も照らしたのだが、本当に少ししか付けていない、ストラップの中に確かに見えた。数年も前のものだから、汚れてはいたものの、大切にカバンに付けられていた、アレが……!!

 

 その瞬間、俺の中で殻が砕けた音がした。入った亀裂から俺の中の何かが溢れ出した。

 

 

「そ、それって……!!」

 

 

 だが、湊さんは走り出す。ここで、そのままにしたら、また、ふりだしへ戻らないと行けなくなる。それどころか、こうやって機会を作ってくれたリサ達にも……!!直感でそう感じた、俺は、無意識のうちに追いかけ始めていた。

 

 

「待って……、って、あ……」

 

 

 しまった……。大通りに出られてしまい、交差点の信号機で完全に引っかかってしまった。湊さんはギリギリで渡れはしたものの、俺は完全に間に合わない。車がこんなにとおっていなければ、無視をしてでも追いかけるところだが、この量では明らかに不可能だ。

 

 

「こういうのも、どうかとは思うけど……」

 

 

 そう言いつつ、ポケットへ手を伸ばす。いつも手に取っているから、流れるような手つきだった。パスコードを解いて、LINEを開く。その動作をしている間、やけに周りの車やバイクの音が静かに聞こえる。リサのトーク履歴は、集合する前に使ったばかりだから、一番上にある。オマケにここ最近だと、くどいと言うほど見たアイコン。押し間違いなどするはずがなかった。かけ始めてから、わずか4コール。リサはすぐに出た。

 

 

『あ、もしもし……?遥都?』

 

「リサか!?あいつ、いた!!」

 

『ちょ、いきなり大きな声出さないでよ!!』

 

「いいから!湊さん、いた!!」

 

『だから、大きな声を…………、って、え……?今、なんて……?』

 

「湊さんがいたんだよ!!今、あの大通りをリサの家の方に向かったから!信号に引っかかったから見失っちゃったけど……。とにかく、その、えっと……」

 

『うん!!わかった!!今すぐ、みんなを呼び戻す!!』

 

「いや、そうして欲しいわけじゃなくて!!」

 

『いいの!!遥都も信号が変わり次第こっちきて!!ここで話さないと、もうチャンスなんてないんだよ!?そんなの、アタシも遥都も、それから友希那もいやでしょ!?』

 

「…………あぁ!!」

 

 

 リサの言葉にまたもや心を突き動かされながら、俺は覚悟を決める。それを待っていたかのように信号が車を止めて、俺が進む道を開けてくれた。あれだけ入り乱れていたものが一瞬でピタリと止まる。

 

 

「よし…………!」

 

 

 右足に力を込めて、強く地面を蹴りつけた。正面から歩いてくる、サラリーマンや塾帰りのような中学生、ハンバーガーショップにでも行きそうな、高校生をひらりとかわし、向こう岸へと急ぐ。渡り切るとすぐさま、歩行者用信号は点滅し始めていた。その直後には、再び車が入り乱れた。まるで、俺の退路を断つかのように。

 

 

「いこう……!」

 

 

 俺は心の中でそう呟き、再び右足に力を込めた。

 

 

 

 

 

*** ***

 

 

 

 

 

『湊さん、いた!』

 

 

 その瞬間、アタシは動き出していた。脱ぎかけていた、制服を着直し、携帯を耳に当てながら階段を駆け下りた。玄関に言き、スニーカーを履いて、暗い路地を突き進む。

 

 

「友希那、どこにいるの!?」

 

 

 遥都からの電話で大通りよりこっちにいることはわかった。しかし、それだからといって、友希那が家に向かっているとは限らない。できるだけ、早く、そっちに向かって、友希那を見つけないと……!!

 

 とにかく、大通りの方へ急ぐアタシ。普段は通らない道を使ってでも、速く着きたかった。だが、こういう時に限って、信号は赤になり、行く手を阻む。別に今は車もいないが……、万が一のことがあるから逸る気持ちを抑えながら、ジッと信号機を見つめる。

 

 

「今井さん!?家に帰ったのでは……?」

 

「さ、紗夜!?」

 

 

 ちょうど、正面。反対側の道路から紗夜が何やら学校のカバンとは別のものを持って、立っていた。それを見て、別れ際に「あるものを買っていく」と言っていたことを思い出した。

 

 

「どうかしたのですか?」

 

「遥都が友希那を見つけたって!紗夜も探しに行くよ!!今、この辺りに居るはずだから!」

 

「伊月さんが、湊さんを!?……し、しかし、こんな時間に私達だけで…………って、止めても無駄ですよね。」

 

「早く行くよ!!」

 

「わ、わかりましたから……!!なら、宇田川さんや白金さんにも連絡しましょう?2人より4人の方が捗るでしょう?」

 

「そ、そうだね!」

 

 

 紗夜に言われて、遥都に電話で知らせるって言っていたことを思い出した。人知れず、紗夜にこそりと感謝しつつも、横断歩道を渡り、周りをぐるりと見渡す。紗夜が隣で携帯を触ってくれているので、2人には連絡が言っているはずだろう。

 

 

「今井さん、伊月さんはどの辺りで湊さんを見たと仰っているんですか……?」

 

「え、えっと……」

 

 

 しまった……。遥都にそれを聞いておくのを忘れてた。もう1回電話してみるのが1番得策だろう。アタシはすぐさま、遥都のLINEを開いた。

 

 

『湊さんは、二丁目のコンビニの前の交差点で見た。そこから、北の方へ走っていった』

 

『それから、落ち着いて出てきてよ?飛び出しとかして事故ったらシャレにならないから』

 

 

 電話のマークの下に2件の新規メッセージが。見事にアタシの行動を先読みされている気がする……。それを見て、少しは落ち着きが取り戻せたアタシは紗夜に友希那の目撃情報があったところを伝える。

 

 

「そうですか。ありがとうございます。白金さんには私から伝えておきますから。私達も手分けして探しましょう」

 

「うん!」

 

「あのコンビニの交差点を北に、ですか……。白金さんに、その通りより向こう側をお願いして、私達はこちら側を別れて探すのがいいですね」

 

「賛成!!それじゃ!!」

 

「あっ!ちょっと、今井さん!?…………はぁ、落ち着いてくださいよ?」

 

 

 紗夜が何かしら言おうとしていたが、アタシは直ぐに探しに向かった。とにかく、1秒でも早く友希那にあって話をしたいから。それに、友希那と遥都を呪縛から解放させてやりたいから……。

 

 普段は通らないような道もすべて虱潰しに見ていく。だが、ここの住宅街は決して狭くなどない。友希那が見つからないまま時間だけが無常にも過ぎていく。『そんなに甘くできているわけがない』アタシの中でそんな声が囁かれる。けれど、あきらめの悪さなら、遥都から、友希那から学んだんだ!

 

 

〜♪、〜♪、〜♫

 

 

 歌が聞こえた気がした。いや、歌というにはあまりにも形がなさすぎる。どちらかというと、律動……、そして、アタシの心を震わす音色。この音……、友希那しかいない!!!一瞬にして確信へと変わる。こんなのを奏でられるのは友希那しかいない!!いつもとは打って変わった、静かで透き通った雪解け水のような音色だったが、アタシにはすぐにわかった。

 

 すぐさま走り出す。耳をすましつつ、周りの雑音をシャットアウトし、歌声だけを手繰り寄せる。音の鳴る方へ、一歩、響く方へ、一歩、震える方へ一歩。アタシはゆっくりと、されど確実に一歩ずつ歩みを進める。そして、遂に…………、

 

 

「いた……!!」

 

 

 公園のベンチに腰掛けながら、夜空を見上げる歌姫をアタシは見つけた。

 




「最近、いい所が全部取られてる気がする……」
「何がよ……?」
「いや、なんか俺のいい所が全部リサに取られてる気がして」
「そもそもいい所なんて、遥都にはないだろ?ま、もちろん、この知夏良様にはあるけどな!!」
「Shut up!!」


評価してくれた、N.N. さん(☆9)ありがとうございます!

まだまだお待ちしております!!
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