俺とアタシの居場所《一応 完結 》   作: 紅葉 

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皆さん、お久しぶりです!色々大変で書く時間が取れませんでした……!!

それから、改めて言っておきます。この物語のヒロインは今井リサです!!友希那さんと思われがちだけど……


歌姫の心は動く

 

 

 

 

 

 

 

 季節は夏。太陽が沈んだとはいえ、まだ、嫌な暑さが残る夜の街に強い風が吹き抜ける。

 

 

『リサ:友希那見つけた!全員、花羽公園に集合!!』

 

 

 凛とした水色を夜風になびかせる少女が、街灯に照らされながらそれを見た。携帯がメッセージを受信し、パッと明るく浮かび上がる。そして、少女はどこか安心したような、嬉しげな表情を見せた。口角が少しだけ上がり、進行方向を変える。そのまま小さく"流石ですね"そう呟き、地面を蹴る足にさらなる力を込めた。

 

 

 

 

『リサ:友希那見つけた!全員、花羽公園に集合!!』

 

 

 夜の黒に染まらない黒い髪が風に吹かれ、ふわりと舞った。同じ仲間の願いがかなわず、悶々とした感情を抱えたまま、掴みかけた、家の門の取っ手。だが、そのメッセージの通知音によって、その手は携帯へと伸びる。そして、その手は再び取っ手に触れることは無かった。次に触れるのは、全て終わってから、そう風が告げていた。

 

 

 

 

 

『リサ:友希那見つけた!全員、花羽公園に集合!!』

 

 

 学習机の椅子の背もたれに持たれながら、上を見上げていた、紫髪の少女。背もたれから後ろに垂れた、2つの特徴的な髪束が、窓から入ってきた、真夏の夜風に揺れる。その手には画面がついていない携帯。その少女は自分の直感を信じて待っていた。あの頼もしい先輩達なら、何とかしてくれると。そして、網戸から吹き込んできた夜風と共に携帯の画面が明るくなった。その瞬間に、髪を跳ねさせ、勢いよく、自室を飛び出した。

 

 

 

 

 

『リサ:友希那見つけた!全員、花羽公園に集合!!』

 

 

 茶色の髪が街灯に明るく照らされ、夜の街によく映えた少年。電柱に片手をついて肩で乱れた息を軽く整える。右手で額の汗を拭い、携帯に映し出されたメッセージを読んだ。そして、小さく笑みを零した。その笑みはアスファルトに零れる汗とともに。

 

 

「やっぱり、こういう時、リサは神さんに愛されてるよな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──第19話:歌姫の心は動く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長針は頂点手前、短針は8にかかりかけている。時計台の麓のベンチには二人の少女が肩を並べて座っていた。二人の間に会話が少ないからか、周囲の木や草むらから虫の声が一層、響いている。

 

 

「…………なんのつもり?」

 

「友希那の仲間のつもり、友希那の幼馴染のつもり、そして、友希那の親友のつもり」

 

「そういう事じゃなくて……」

 

 

 ようやく口を開いた、片方の少女は問いかけをするが、どうもはぐらかされてしまう。先程から何度か同じような流れが続いている。最初の方は帰ろうとしてみたものの、手を握られ帰ろうにも帰れないのだ。結果、諦めてこのベンチに座っている訳だが……。

 

 

「…………どうして私にこだわるの?私に固執しなかったら、もっと楽しいことだって出来たはずよ?」

 

 

 静けさに耐えかねたのか、友希那が口を開く。それは、別にふざけてなどいない。自らがずっと思い続けてきたこと。もし、リサが友希那に拘らなかったら、今より遥かに多くの友達、遊び、オシャレが出来た。それは明白な事実なのだ。その証拠に、リサは友達の誘いをRoseliaのために多く断っているし、ネイルも剥がしている。友希那にはどうしてそこまで、尽くされるのかが分からなかった。

 

 問いかけをされた少女は上を向いた。手を口元に持っていき、少し唸りを加えて、間を作り、答えた。

 

 

「それはね、大切な幼馴染だからだよ。友希那も、それから、遥都も……」

 

「え……?」

 

「今言えるのはそれだけっ!」

 

 

 そう言って、リサは友希那の方を向いてニカッと笑った。戸惑いの色を隠せない友希那は、返事が詰まった。何か言いたいことがあるのはある。だが、こんな時に言葉にならない。作曲の時にも、作詞の時にも言葉や音色にできない時はいくらでもあった。だが、このもどかしさは今まで感じてきたどれよりも、根強い。

 

 だが、それはいつまで経っても、言葉にならない。視界に入った時計台の示す時刻はリサとあった時から大きく変わっていて、いかに自分が悩んでいたのかがわかる。そんな、自分への、情けなさ、もどかしさ、それら全てを乗せて、友希那は大きなため息を吐いた。

 

 

「そんなに、大きなため息、吐かないの!幸せが逃げちゃうよ〜?」

 

「……知らないわよ」

 

「もーー!連れないなあ〜!なら、今度はアタシから質問!」

 

「なによ……?」

 

「友希那はRoseliaのことやメンバーや遥都のこと、好き?」

 

「え……?」

 

 

 唐突な質問に戸惑う友希那は思わず聞き返した。確かに友希那自身、Roseliaに迷惑をかけてしまっていることは知っている。それが、遥都が原因であることも。だからと言って、今この質問をされる意味が分からなかったのだ。

 

 

「アタシは好きだな〜!Roseliaはアタシに居場所をくれた。友希那の隣っていうもう二度と失いたくない居場所と同時にアタシ達、5人にしかない空気がある居場所もくれた!それで、遥都は、友希那がRoseliaを作る道を残してくれた!そして、何より……、ん〜、まぁ、これはいいか!」

 

 

 2人を照らす公園の街灯を見上げながら、リサはそう紡いだ。その横顔はどこかいつもりよりもスッキリしているように見える。そして、何か強い意志があるようにも。それから、リサは友希那の方を向き直すと、顔を優しい笑顔へと変化させ、友希那にもう一度聞いた。

 

 

「友希那は遥都やRoselia、そのメンバーのこと、好きだと思う?」

 

「私は…………、多分、好き。」

 

「そっか、良かった!みんなと一緒だね!」

 

「え…………?」

 

 

 入口を指さすリサにつられ、友希那もそちらを向いた。公園内の大きな灯りが、そこにいる4人の姿をくっきりと映し出す。

 

 肩で大きく息をする、私の同じ理想を持つ、私を選んでくれた最高のギタリスト。両手を両膝につき、"やっと着いた!"と夜中にも関わらず、大声を出す、私達のバンドのために努力を惜しまない私を選んでくれた最高のドラマー。手を胸のところに起きつつも、その前に立つ少女の背中を優しく撫でてくれている、私を選んでくれた最高のキーボード。そして、私に音楽の道を示してくれた、幼馴染。

 

 

「みんな……」

 

「友希那さん!」

 

「湊さん!!」

 

「み、湊さん……!」

 

 

 友希那を選んだメンバーが、一斉に友希那の方へ駆け寄る。遅れてはいるものの、遥都も、だ。その行動こそが、Roseliaの各メンバーがRoseliaを、そして、メンバー一人一人を大切に思っている証拠なんだろう。

 

 

「アタシ達も友希那と一緒で、友希那のことが好きだし、大切に思ってる!だから、どんなことでも相談に乗ってあげたいと思うし、力になってあげたい!だから、友希那が今、悩んでること、聞かせて?」

 

 

 幼馴染の言葉が、メンバーからの期待と心配が、Roseliaとしての絆の強さが、友希那の胸へ刺さる。その光は友希那の心中にあった、殻を突き破り、想いを外へと解き放とうとしていた。

 

 

「あ、今の言葉、遥都にもそのまま返してるからね?」

 

「っるっさい……。せっかく、湊さんを励ましてんだから、そっちをやれよ……」

 

 

 昔と変わらず、遥都は面倒くさそうに、リサをあしらう。強いて言うとしたら、昔と比べ、少しあしらいの中に温かさがあることくらいだ。

 

 

「湊さん」

 

「遥、都……?」

 

「そうです。伊月遥都です。あの、すごくいきなりで申し訳ないんだけど、昔のことに、ケリつけませんか?」

 

「え……?」

 

「すいません、俺、オブラートに包むとかそういうの、苦手なもんで……。で、何が言いたいかって言うと、お互い、このままだと気を使って気持ち悪いじゃないですか?だから、ケリ、つけませんか?ってことです」

 

「そ、それは……」

 

「リサに言われるまで、俺は湊さんの気持ちなんか知りませんでした。そんで、少しだけですけど思ったんです。言葉にしないと伝わんないこともあるんじゃないか、って。腹割って話しましょうよ」

 

「…………えぇ、そうしましょう」

 

 

 しゃがむことで友希那の視線に自らの視線を合わせ友希那に喋りかけたのは遥都。頭を気まずそうにかきながら、いつぞやとは比べ物にならないくらい角のない声でそう紡いだ。それに応えるように友希那は首を縦に振る。

 

 遥都はそれを確認すると、腰をあげる。それから、リサの方を見て、よろしくとアイコンタクトを送り、一歩下がった。

 

 

「よしっ!それじゃ……、本題に入ろっか……。今回の友希那のこと、それから、それの原因になってる、遥都のこと、それぐるみでアタシ達3人の過去、全部みんなに話すね」

 

 

 リサの目線ががいつになく真剣なものへと変わり、場の空気がさらに引き締まった。これは事前に決めていたことなのだが、リサが友希那の成長の為にも、Roseliaの成長の為にも、リサと友希那が主体で話すというのだ。遥都はそれを聞いて、リサ達が知らないところ、足りないところをあとから付け足してくれるだけでいい、それがリサからの願いであった。だから、遥都は氷川さんらよりも一足分下がり、聞く体勢をとったのだ。

 

 

「………………と、言いたいところなんだけど」

 

「「「ん??」」」

 

「ここ、虫がスゴすぎ!!ここじゃ、話どころじゃないから、どっか入ろ!!?」

 

 

 真剣な空気はどこへやら。リサが自らそれをぶち壊しに来た。確かに、街灯の下に6人もの人間が群がっていたら、光、熱ともに条件が揃っているため、蚊を中心に、虫たちの格好の的だ。その証拠に、氷川さんは先程から何度も、虫を追い払う仕草を見せていた。

 

 

「誰の家が一番、近かったっけ!?」

 

「ここからですと……、湊さんの家か今井さんの家ですけど……」

 

「いや、違うわ。遥都の家よ」

 

「はぁっ!?」

 

 

 突然の友希那の発言で遥都が明らかに動揺する。それもそうだろう、そもそも、こんな時間に人が来ること自体、珍しいことだ。加えて、5人も、しかも全員異性と来たら、頭の中で処理をするのに時間もかかる。

 

 

「ちょっと待て!俺の家は、確かに近いけども……」

 

「どうして迷うことがあるの?あなたの家、私達の家に行くより10分ぐらい近くなるじゃない」

 

「決まり〜!!なら、遥都の家にしよー!!」

 

「ちょっ……、おい!!湊さんも……、って聞いちゃいねぇ……」

 

 

 渋々ながらも、5人の後につき、走り出す遥都。口では嫌がりつつも、その横顔はどこか嬉しそうな表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 




「紅葉さん、いいとこなのに〜……」
「しょうがないでしょ……?こっちもやる事あるんだから……。そういや今井さんは、やることきちんとやってるの?」
「もちろん!!宿題も完璧に出してるよ!」
「じゃあ、なんで、後ろで氷川さんが怖い顔してるの……?」
「え?さ、さよ……?」
「今井さん。また、宿題を忘れたそうですね?日菜が家で言っていましたよ……」
「ひ、日菜のヤツ〜!!」


評価してくれた
伊織庵さん (☆10)
ぶたまん茶屋さん(☆10)
新庄雄太郎さん(☆9)
ありがとうございます!
まだまだ募集してますのでよかったら!!
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