俺とアタシの居場所《一応 完結 》   作: 紅葉 

23 / 38
端末変更の際、IDとメアドの不明が重なりログインが出来なく投稿ができない状態が続いておりました。ありがたいことに周りの作者さんから教えていただき、なんとかログイン出来るようになりました!
きっかけを作ってくれた感想をくれた方には感謝しています!ありがとうこざいます!

では、かなりのすきまがあきましたが!


歌姫の残した燻りは雨をも降らす

 

 

 

 

 それから、多少、時間割変更があったものの授業が始まった。だが、いつも通りとは言い難い空気が流れる。歯車が抜けてクラスという機械が機能してはいるものの、内側では大きな影響が出ている。リサは友達に話しかけられてもどこか上の空だったり、遥都も知夏良が話しかけてもいつもの様に会話が弾むことはなかった。

 

 

「なぁ、遥都。宿題見せてくんね?」

 

「ん?あぁ……」

 

「…………これ、連絡帳だろ?大丈夫か…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──第22話:歌姫の残した燻りは雨をも降らす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明らかにリズムが違う遥都に知夏良も流石に混乱を隠せない。しかも、ただ渡すのを間違えただけじゃない。いつもなら、遥都はすんなり知夏良に宿題を見せない。それなのに、渡した上に、その渡すものすら間違える始末なのだ。

 

 

「そんなに、湊さんのこと心配か?」

 

「……心配しないわけないだろ?これでも一応、幼馴染のうちの一人なんだから。それに、友希那のことも心配だが、6限目の特活の時間、新しく決めるだろ?そっちのこともな……」

 

 

 唯一、時間割変更が行われたのは6限目。元々、パート練習とされていたのだが女子のみ、特活とし、パートリーダーを再び決めるということで特活になった。というのも、友希那が階段から落ちた際、頭を強打していて、頭から血が出ていることもあり、大事をとって2、3日の入院が必要となったから学校に来れなくなったのだ。だから、先生が新しいパートリーダーを決めろと言い、そのようなことになった。

 

 

「確かにな……。まぁ、流れ的に吉田さんになるとは思うけど……」

 

「無難にパート練習が出来たり、話せたりする人がいいな……。とりあえず、平穏に終わって欲しい……。まぁ、無理だとは思うけど……」

 

「さぁ〜。どーだろ?でも、遥都が言う通りにならないかもしれないだろ?」

 

 

 遥都は見抜いていた。それが尚更、友希那の孤立化を助長してしまうことを。それ故に、友希那の身体の心配よりも、そちらのことを心配していたのだ。

 

 

「まぁ、そうだよな……」

 

 

 遥都は知夏良に力なくそう返事をした。

 

 そして、いよいよ迎えた6限目。遥都らは心配しつつも、自らの仕事を果たすため、女子を教室に残したまま、男子を連れて、音楽室へと移動した。

 

 

(何事も起きるなよ……)

 

 

 その後、男子はいつも通り練習を行った。強いていつもと違うと言うならば、遥都のテンションと、それに少し気遣う、遥都と仲が良かった知夏良を含む数人がどこか上の空な所だろう。だが、さほど影響がある訳ではないので、男子の練習は何事もなく終わって行った。

 

 そして、いよいよ6時間目終了10分前となり、男子も教室へと戻った。遥都は教室に入ると一番に黒板を見た。そこには当然、新しいパートリーダーの名前が書かれている。

 

 

「吉田さん、か……」

 

「みたいだな。どーした?遥都。友希那ちゃんの方がよかった?」

 

「いや、そういう訳じゃないけど……」

 

 

 少し冗談めかしながら、知夏良が遥都をからかいがてら首に腕を回していた。当の遥都は小さくため息を吐いて、気持ちに蓋をすると、その新しいパートリーダーの吉田さんの元へと、歩み寄る。遥都が歩み寄った彼女の周りには既に多くの取り巻きがいて、まるで悪を退治したように、英雄状態だ。

 

 

「新しい、パートリーダーになったんだよね?よろしく」

 

「あ、遥都くん!よろしく!!」

 

 

 動物的勘なのか、遥都は一瞬で察した。こいつ、猫かぶってる、と。そして、同時に苦手なタイプだとも思った。とはいえ、男子にも人気がある吉田さん、ここで敵対するような態度をとってみれば、いよいよ合唱コンクール所ではなくなる。表情をにこやかに作りかえ、応対をした。

 

 

「律儀だね〜。新しいパートリーダーにご挨拶?しかも、あの吉田さんに好感触ときた」

 

「シャラップッ!礼儀だよ礼儀」

 

「ハイハイ。でも、まぁ、遥都が行けばそうなるか……」

 

「ん?どういうことだ?」

 

 

 適当に吉田さんと話を合わせたあと、遥都は席に戻る途中で、友達にそう言われた。ちょっとだけ、嫉妬心に燃え、不貞腐れながら話すそいつは確か、吉田さんのことが好きな1人だ。

 

 

「遥都は知らないと思うけど……。吉田さんな?遥都のことが好きなんだって……」

 

「…………で?っていうか、まさかそっちとはな」

 

 

 さらなる落ち込みを見せるそいつに、若干の戸惑いと面倒くささを感じながらもそう返す。話の内容自体、遥都は聞いたことはない。だが、それでも驚かなかったのは、以前から遥都に妙に絡みに来るのを見ると、なにかあるのか、恨みの方向で考えていたが、友達に言われ、もしかしたら程度には思っていたから、遥都からしたら完全な想定外なことではなかったのだ。

 

 

「遥都が興味持ってくれないかな!遥都に私のいい噂が伝わらないかな!ってことじゃないかな?」

 

「なるほどね……」

 

「あーーー!羨ましいなぁーー!!」

 

 

 嘘泣き兼行きどころがなくなった怒りの処理か、そいつはそのまま突っ伏し、頭をゴロゴロさせる。小学六年生にもなって情けない、そういうかのように遥都は頭を抱え、その場をあとにした。

 

 席に戻ると、今度は知夏良から、吉田さんと何を喋っていたのかと説明を求められるも、適当にはぐらかす遥都。

 

 

(あ、雨か……)

 

 

 知夏良の相手をしていたら外から聞こえてきた、静かな雨音。それは徐々に大きくなりつつ、校庭の土の色を少しずつ黒く、濃く染めていく。

 

 

「傘、持ってきてたっけな……」

 

 

 遥都は がそう呟くと、6限目の終わりを告げるチャイム、そして、帰りのホームルームの開始を告げるチャイムがなった。

 

 

「はーい、みんな席に着いてね〜」

 

 

 先生の声でざわめきだっていた教室が、静かになり、みんなが席に着く。知夏良も前を向き、先生の話を聞き始めた。

 

 

「〜ということが、今日の連絡です!みんなお家の人にちゃんとプリントを見せてくださいね〜。それじゃ、最後に……、今日、早退しちゃった、湊さんのところに持って行ってくれる人を探したいんだけど……」

 

 

 教室が一層静まりかえった。付け加えるとすれば、いい意味でなく悪い意味で。ほぼ全員が下を向き、自らを当ててくれるなアピールをする。先生も困った様子で、クラス中を見渡した。

 

 

(だれか、行こうとは思わないものかね……)

 

 

「……はぁ、なら、俺、行ってきます。一応、一緒にパートリーダーやってましたから。」

 

 

 理由はそれぞれあっただろうがあまりに出ない現状に遥都が手を挙げ、そう言った。遥都自身はクラス中の視線が彼に集まり、いい気分はしていないものの、先生は人が見つかり、とても安心した顔をしている。

 

 

「それじゃあ、これ、よろしくね!あぁ、それと、今日は先生も行くから一緒に行こうね」

 

「……はい」

 

 

 プリントなどが入った袋を受け取り席に戻る。その途中、遥都に突き刺さるのは視線と言うにはあまりにキツすぎるものだった。特に吉田さんのものは……。遥都は苛立ちを覚えながらも席に座った。

 

 

「遥都、よく行けたな……」

 

「なんだよ、知夏良。誰かが行かないと終わんないだろ?」

 

「いや、そうなんだけどよ……。吉田さんが、誰も、湊さんの味方をすんなって言ってるようなオーラ出すだろ?遥都もこのクラスにいるなら、分かるだろ?あの人に逆らったら居づらくなることぐらい……」

 

 

 何かにヒビが入る音。遥都の耳に聞こえてきたのはそんな音だった。だから、誰も手を挙げなかったのか。だから、全員の視線が冷たかったのか。だから、今こうしてるうちにも吉田さんに睨まれているのか。知夏良に言われたことで結びつく。

 

 

「吉田さん……。そんなことまでやるか、普通……」

 

 

 遥都は吉田さんから視線を逸らしながら大きなため息をつき、ランドセルにプリントを入れた。ランドセルを背負い、窓の方へ外の様子を確認しに行く。外の窓は内側に曇りが見られ、そこを袖を使い吹き、外を見渡す。それでも、灰色の雲が空を包む風景はモヤがかかっているように見えた。

 

 

 

 

 

*** ***

 

 

 

 

 

 放課のチャイムがなってから既に35分が立っていた。遥都は1人、図書室で本を読んでいた。元々、教室にいたのだが、吉田さんの息がかかった子による視線が不快だったようで、先生から図書室の鍵を特別に貸してもらい、そこに入って時間を潰していたのだ。

 

 

「お待たせ、遥都くん。それじゃあ、行こうか」

 

 

 先生が来てくれて、読んでいた本を遥都は本棚に戻す。そして、座っていた位置の隣に置いておいたランドセルを背負うと先生の元へと向かった。

 

 それから、先生の車に乗せてもらい、友希那がいるという病院に向かった。先生が何やら、カウンターにいる受付の人と話をしていて、しばらくすると遥都の方を向きを向いて手招きをする。おそらく、友希那の病室が分かったのだろう。エレベーターに乗り、3階の314号室、その部屋の前で止まった。

 

 

「失礼します……。友希那ちゃん、大丈夫?」

 

「先生……?それから、遥都……?」

 

 

 俯き気味で喋っているから表情はあまり見えない。しかし、その声で分かってしまった。いつもの凛々しさはどこにもない。弱々しく、声量も少ない。少なくとも、遥都の知る、湊友希那という人物ではなかった。

 

 

「大丈夫……、じゃねぇか……」

 

 

 友希那の頭と脚に巻かれた包帯を見て、かけようとした言葉を途中で止める。元々、強がりで、表情にも出さない友希那だ。それが、今回ここまでやられているということは……。遥都の頭がそう考える。結果として、遥都は何も言うことが出来なくなった。

 

 それから、少しして、先生と友希那が話始めた。今後の話をするらしいが、遥都は自分がいては話しにくいこともあるだろうと感じ、一度、病室を出て、ランドセルの奥底にあった、百円玉2枚と十円玉6枚を持って、1階の待合室にある自動販売機に向かった。そこで、カフェオレとイチゴオレを買った。

 

 

「あら?遥都くん、よね?久しぶり。覚えてる?」

 

 

 トントンと方を叩き、後ろから声をかけてきたのは友希那の母親だった。遥都は戸惑うような顔を見せるものの、ぺこりとお礼をして、挨拶をする。

 

 

「わざわざ、あの子のためにお見舞い来てくれて、ありがとね」

 

「い、いえ……」

 

「相変わらず、遥都君は謙虚ねぇ〜。あ、そうだ。先生も来ていらっしゃるの?」

 

「あ、はい。今、病室で友希那と2人で喋ってると思います」

 

「そっかぁ〜、ありがとう。なら、私たちも行きましょうか。一緒にいこ?」

 

 

 手を引かれるまま、遥都はエレベーターに乗り込む。だが、その顔は下を向いてしまっている。そう、どこか、申し訳がない、そう言うかのように……。

 

 

 

 

──合唱コンクールまで残り6日

 




「紅葉さんいない間に色々ありましたよー」
「っぽいね〜、リサさんたちのライブや新曲とか」
「そーそー!今度ライブやるから見に来てねー!」

今度、富士急でライブがあるみたいですね!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。