俺とアタシの居場所《一応 完結 》   作: 紅葉 

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最近、投稿ペースが落ちてますね……
狭めたいとは思いつつも、普段のやらなきゃいけない事が立て込んでおりまして、、、
もうしばらく落ちるかもしれませんが、お付き合いください!

ではでは〜、


英雄と薄暮

 

 

 

 

 始まりはいつからだったかあまり覚えていない。だが、遥都が友希那へ連絡帳を渡すためにお見舞いに行くようになってからだったのは確かだ。

 

 

「ねぇ、遥都くん」

 

「…………なに?」

 

 

 傾いた日が教室に差し込む。電気が消されていて、外の光のみのいつもより少し薄暗い教室はHR終了のチャイムがなってから既に15分が経過している。周りの子はほとんど居らず、いるのは吉田さんとその取り巻き女子4人と男子3人。

 

遥都は先生に送って貰うため、荷物をまとめ机に突っ伏していた。そこに、吉田さんが取り巻きを連れて話しかけてきたのだ。まだ、遥都に対する悪意はそこまで見えなかった。むしろ、こちら側へ引っ張りこもうとするような、そんなイメージだ。友希那の相手をしないという指示を出し、遥都を自分たち側に引っ張り込むことで友希那の孤立化を狙ったのだろう。

 

 

「今からさ、あの子らと遊ぶんだけど来ない?」

 

「わり、友希那のとこ、先生と行かなきゃ行けないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──第30話:英雄と薄暮

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日も変わらなかった。理由をパートリーダーとしての何かといったところしか変わらず、それも遥都は断った。だが、その次の日、流れが変わる。ちょうど、遥都がみんなの前で決意を言葉にする日の後だった。

 

 

「ねぇ、伊月……、だっけ?」

 

 

 あまり関わりのないある男子が声をかけてくる。名前は確か、川瀬。吉田さんの取り巻きの男子のうちの一人だ。遥都はなんのことか思い当たる節がないものの、そちらに体を向けた。すると、その子はここでは話しずらいからと階段の踊り場へと遥都を連れていく。

 

 

「あの、何の用ですか?」

 

「吉田のことさ、邪険にすんなよ」

 

「……なんのことですか?放課後のことなら、用事があるからと言っているじゃないですか?」

 

 

 踊り場に着いた途端向けられる敵意の視線。それを遥都は「あぁ、やはりか……」と呆れの目で受ける。外から見て、あのグループの中心はやはり吉田さん。その人に積極的に話しかけられるのが川瀬にとっては面白くなかったのだろう。

 

 

「惚けるなよ……!あんま、調子のんじゃねぇよ」

 

 

 それだけ言うと、舌打ちをして教室に戻ろうとする。すれ違いざま、彼は遥都の脚をわざとらしく踏みつける。『理解しあえない』遥都は直感でそう感じる。そして、遥都は言った。

 

 

「調子になんて乗ってません。これでもくそ真面目です。だから、邪魔、しないでくれますか?万が一、邪魔するようなら……、」

 

 

 

 最後、振り向いた時にはもう彼はいなかった。軽くため息を着く遥都。疲れか呆れか、いずれにしろ気持ちがいいものではなかった。

 

 その嫌な気分の中、教室へ戻る階段を降り、廊下へ出る。そこであることに気づいた。フッと視界から何かが慌てて消えたのだ。位置はおそらく遥都らの教室。今思えば、これが本当の始まりだったかもしれない。疑問に思いながらも教室へ戻る。だがそこには……、

 

 

「…………下衆が」

 

 

 引き出しの中が御丁寧に床へ散らばされていた。周りの人間も遥都と誰も目を合わせようとしない。"見ていたから"、そんなことは小学六年生にも理解出来た。だがやっている事が悪だとしても、権力者の行為ならば黙認せざるを得ないのだろう。なぜなら、歯向かおうものなら、次は自分の番になるから。舌打ちしながら淡い緑のプラスチック引き出しに教科書やノートを戻していく。チラリと右を見ると、ニヤニヤとする川瀬を含めた男子4人。おそらく、川瀬と遥都が喋った間に残りの3人がやったのだろう。

 

 これだけでは終わらなかった。その放課後は、下駄箱に置いてある靴が違う学年のところに入れてあった。しかも、大量の湿った泥入りで。その次の日は遥都の席で4人で喋られ続け、全く用意もできないようにしてきた。川瀬はこういうことに関しては無駄に頭が回るやつだ。故意的だ、あるいは犯人特定が難しいようなことをする。だから、遥都がここで逆上しても意味はなかった。遥都もそれを分かっているから何も動けなかったのだ。

 

 だが、さらに一日後、大きく事態が動いた。ちょうど、音楽の先生に吉田さんが見せしめのように皆の前で怒られた、そして、遥都が"スクラップ"と言い放ったあの日だ。スクラップと言った時、おそらく、遥都には今までの嫌がらせのストレスもあったのだろう。かなりイライラしていたのは見ていて分かる。それが吉田さんの返答により爆発したのだろう。

 

 それにより恥をかかされた吉田さんが遂に動いたのだ。チャイムがなり、放課後となる。ゾロゾロと帰り始める中、教室の隅が燻りを見せる。

 

 

「ちょっと、吉田。耳貸して、………………で、……………………!」

 

「ウソ!?それマジ!?川瀬、あんたやるわね……!」

 

「だろっ!?」

 

 

 教室の隅から、そんな声が微かに聞こえてきた。そして、そこにいる8人がこちらの方を向いてニヤリと笑っていた。その目は数日前の好意を寄せていた頃の目とはかけ離れていた。敵意、その言葉がピッタリと当てはまっていた。そんな視線から遥都は、視線を下に外す。

 

 

(めんどくさ……)

 

 

 視線を下ろした先に見える、自らの手。冷めた目で遥都はその手を見る。遥都は眺めていた手をギュッと握りしめると、そのまま、席を立つ。廊下へ向かう途中もまわりの視線が突き刺さる。視線だけでなく、ざわめきも。皮肉なもので、視線やざわめきは止まらず、遥都の前へ固められる。だが、遥都は不思議と気にならなかった。吉田さんへの怒りか、それともそれ以外の感情か、いずれにしても遥都の中に大きな感情が渦巻いていたのだ。

 

 

 

 

 

*** ***

 

 

 

 

 

「それじゃあ、そんな感じでやってみるよ」

 

「えぇ、それで問題ないと思うわ」

 

「ありがと。それじゃあね」

 

 

 何かを隠すような作り笑顔。友希那にそんな笑顔を向けながら遥都は病院を後にした。パタンと扉が閉まる音を聞くと同時に大きく息を漏らす。

 

 

「さっさと帰らなきゃ……、そんでもって……」

 

 

 疲れを見て見ぬふりをして無理矢理前をむく。目に映るのはほぼ沈んでしまった太陽が怪しげに照らし出す雲。夜の暗さと太陽の明るさが絶妙に混ざり合い、なんとも言えない雰囲気を醸し出す。

 

 その夕方か夜か分からない、世にいう黄昏時という時間帯。遥都はいつもより少し早歩きで家路についていた。視界の脇を流れる路地の街灯が少しずつ灯りだしては、また消えて。そんなことを繰り返しながら、徐々に街灯の大半の明かりが灯りだす。

 

 

「あそこ、電球、切れてんのかな……」

 

 

 何気なく目に入った一つの街灯。その街灯はその辺では、たった一つだけ、明かりを灯せていない。寂しげに行き場をなくした電気だけが小さな音を立てていた。そして、やがて、その音も……、

 

 

 

 

 

 

「い〜づきくん、遊び〜ましょ」

 

 

 

 

 

 

 急に背後の至近距離からなにかの映画で聞き覚えがある声。バッと首を後ろに返すが、最早無駄だった。遥都の目に辛うじて映ったその人影はその脚を遥都の腹に向かって撃つ。

 

 

「ぐっ…………」

 

 

 後ろに2mくらい後ずさりさせられて、反射的にか遥都は殴られた腹を手で覆う。口の中にはあの独特な苦味のある鉄のような味。

 

 

「アハっ!大丈夫〜??そんなに大怪我して!これから、いっぱい遊ぶってのに」

 

「川瀬ぇ、やりすぎ!」

 

「確かにっ!」

 

 

 後ろには数名笑いを堪えながら、やる気もない注意をする。そこには吉田さんの姿もあった。そして、今殴ってきたのは、今日、俺に喋りかけてきた、川瀬とか言うやつだ。

 

 

「てめぇら……」

 

「うわっ!その熱すぎた視線、マジ無理〜!!」

 

「てかさ、俺らや吉田いんのに断って湊さんのとこいくとかマジなんなの?あ、分かった!湊さんのこと、好きなんや!!」

 

「あーーーー!痛いげな姫のとこに助けに行くのは白馬の王子様ってか!!マジキモっ!!ウケるんだけど!!」

 

 

 川瀬や吉田も含め全員が腹を抱えて笑い出す。こちらは当たりどころが悪かったのか、未だに嫌な痛みが腹に残る。グッと歯ぎしりをして、その場になんとか立ち上がれども、まだまともに動きは出来ない。

 

 

「あれ?まだ元気そうじゃん?川瀬、追加オーダー入りましたよ〜!」

 

「お?まじ?俺、空手やってるから中々みんな立ち上がってくんないんだけどな……」

 

「てか、もう顔面にラッシュ決めちゃったらいいじゃん」

 

「バカだなぁ、吉田。顔面いっちゃったら先生や親にバレちゃうじゃん」

 

「あ、なる!川瀬、無駄に頭いい〜」

 

 

 ヘラヘラと笑いながら会話をする2人とそれを見る取り巻き共。その様子は最早、異形だった。『無抵抗なやつでも殴ってもいい、なぜならばムカつくから』そうとも言わんばかりの空気。取り巻きもそれらに"同調"を決め込んでいて、皆、同じ色で光り出す。

 

 

「はい、それじゃあ、1本目〜!スネに〜〜〜、バァン!!」

 

 

 鈍い音が遥都の脚と川瀬の脚からする。激痛が走り膝をつく遥都。だが、その異様な空気がそれで終わらせてくれるはずがなかった。

 

 

「もういっちょう〜!今度は脇腹に〜〜〜、ドォン!!」

 

 

 横に転がる遥都。カハッと小さく声を漏らして、背中に背負っていたランドセルも転がり出す。中身の教科書も道に散らばる。

 

 

「これ以上なんかやると、誰かにバレそうだからな。とりま、こんなもんでいいでしょ。明日からも、まだ湊さんとこ行くようならまた待ち伏せして同じことやるからな」

 

 

 顔の近くにしゃがみ、耳元でそう囁く川瀬。声は低く、遥都にしか聞こえないように。そして、彼はすぐに立ち上がると、後ろの集団を振り返り言った。

 

 

「ほんじゃ、みんな、遥都くんも分かってくれたらしいから帰ろーぜ」

 

「「は〜い」」

 

 

 ゲラゲラと笑いながら歩くその複数の背中。遥都はうっすらと空いた目でそれを見る。憎悪か、敵意か、決して穏やかでは無い目が彼らの背中を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 




「おい、高校生の遥都くんや。大問題だぞ」
「どうしました?紅葉さん」
「いやね、ここに書くネタがそろそろ尽きてきたし、ふざけづらい」
「…………そうですね」
「どうしょ!?」
「知りませんよ!だから、泣きついて鼻水とか擦り付けないでください!」

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