とりあえず大事なことなので先に言っておきますね!
そして、ここから、恐らくあのこの株がバカみたいに上がる気がしますw
次の日も変わらない。遥都は友希那の病室に向かう。その様子を見て、ニヤつく川瀬と吉田さん。そしてまた、病院からの帰り道に蹴りを入れられた。
「懲りないね〜!勉強はできる癖にこういうことは学習出来ないんだね〜!」
吐き出される暴言と暴力。それにグッと耐えてはまた立ち上がる。しかし今度は、川瀬一人ではなかった。
「次、俺ー」
「んじゃ、そん次は俺」
その取り巻きすらも調子に乗り始めたのだった。"同調"をして、目の前に広がる悪と言わざるを得ない状況だったが、自らが正義のように錯覚したのか。あるいは"同調"をすることによって元締めである川瀬や吉田さんのやっていることを正しいと思ったのだろうか。いずれにしても、その空気の流れが止まることはなく、ただひたすらに曇天の下に鈍い音が響いていた。
──第31話:英雄と友の想い
「…………てめぇ、なんで反抗してこねぇんだよ。面白みにかけるじゃねぇか」
あまりに無抵抗な遥都を見て、遂に川瀬が頭をつかみ、こちらに初めて怒りの目を向ける。それは自尊心の保守のためか、あるいは単純な憤りか。
「別に、好き好んで殴られたり蹴られたりしてるわけじゃねぇから……。そこは勘違いすんじゃねぇよ、カスが……」
そう言い、遥都は唾を川瀬の顔面に向かって吐き捨てた。一瞬何が起こったのか分からないような顔をする川瀬。打が、その違和感の源の頬を触り、手につくねっとりとした液体に先の出来事を理解する。
「クソがよぉお!!」
完全に線が切れる川瀬、そのまま膝で溝打ちを喰らわすとそのまま、背中にも手を使い打撃を喰らわし、蹴り飛ばした。コンクリートの壁に体ごと打ち付けられて、全身に痛みが走る。
「面白くねぇ、帰る!」
蹴り飛ばしても癒えぬフラストレーション。それらを当たり散らすかのように彼は近くのガイドポストを蹴る。その様子に周りの取り巻きすらも少し脅えながら、宥めようとしていた。
「やっと、いったか……。いって……、さすがにまともに喰らいすぎたかな……」
遥都は蹴られた所をグッと押さえつけるようにして、痛みを堪える。脇腹には見事なまでのアザが出来ており、スネにも昨日のアザが残る。決して大きくはない体が悲鳴をあげていた。だが、それでも……
「今は、まだ……」
ボロボロの体を何とか立たす。青く腫れ上がった右足を地面へ立て、上体を手を使ってでも上へ、前へ。ボロボロの体、だが、その眼は真っ直ぐにその先を見つめていた。
*** ***
そして、また日が昇る。学園祭前日のこの日は全校あげての前日準備だ。それらも終わり、帰りのホームルーム。遥都が皆の前で一言言わされているときだった。
最前列の知夏良はあることに違和感を覚える。それは昨日覚えたものよりはるかに強烈なものだった。きっかけは至極単純。七分丈の袖口絡みえた白い包帯だった。
(あれ……?遥都ってあんな所怪我してたっけな?昨日は半袖きてたはずだけど……?)
寒気がするから七分袖に長ズボンだと思っていた。だが、それにしてはおかしい。体育館で行った前日準備、終始袖口で汗を拭っていたし、今、前に立っていて帰る際も額を袖で拭った。いつも一緒にいる遥都のことだ。最初は変だな程度にしか感じていなかったが、ここまで来るといよいよ何か隠しているようにしか見えない。
「ねぇ〜、知夏良。遥都、やっぱり、大丈b……」
「ちょっと、俺、遥都のとこ行ってくる!」
「えっ!?ちょっと!ねぇってば!!遥都!?」
考えるより先に体が動いていたとはこういうことを言うのだろう。リサの手を振りほどく。知夏良は遥都の元に近寄ると同時に、強引に腕を引っ張って、人気のない踊り場へと連れ出した。
「んだよ、知夏良!」
「何ってお前……。その腕……!」
「腕?腕がどうかしたか……?」
動物は後ろめたいところや弱い所を無意識に隠す習性がある。目から感情を読まれるのが怖いから、嘘をつく時に目をそらす。瞬きをする。それは、遥都にしたって同じこと。袖口から見えた包帯部分をもう片方の手で隠した。だが、
「コイツのことだよ!」
「っ!!」
「…………何があった?」
知夏良は強引にその袖を捲り上げて、包帯を顕にさせる。そして、おちゃらけたムードは消え失せた、低い真面目なトーンで、そう言った。その目と声を見て、流石の遥都も舌打ちをして、抵抗をやめる。
「お前さ、見つけた以上、何やらかしてんのか吐いてもらうぞ。一応ではあるが、お前とは仲良いつもりだ。お前のこと、無視できる気もしないからな」
「知夏良……。わかったよ……」
そして、事の顛末を知夏良に話した。それを知夏良を黙って聞いている。遥都がプライド高いことも、同情が嫌いなことも知っていたから。
だからこそ、それだけ知っている
「って、感じ……。ほら、もういいか?」
「まぁ、なんとなくは」
「…………なんも聞かねぇんだな」
「聞かなくてもいいからな。何をしてようと、身勝手でやってるわけじゃないこと知ってるし。湊さんのためにやってることやお前が正しいと思ってることやってるって、思ってるし」
そういう知夏良はいつものおちゃらけた笑顔ではなく、暖かい包み込むような笑顔でこちらを見る。その目が遥都にとってはとても有難かった。
「お前が1人でなんとかしようとしてる限り、別にこっちから無駄に手を差し伸べようとか上から目線なことはしないよ。でもよ、遥都。一人じゃ抱え込むのはいい、けど、一人しかいないわけじゃねぇからな」
そして、更に彼は続けた。
「いざって時、2人で持てば、ちったぁ、楽になるっしょ。だから、もっかい言っとくぞ。1人しかいないわけじゃねぇからな」
そう言って知夏良は教室へ戻る。綻ぶ遥都の口元。そんな表情をした遥都は階段を上る、知夏良の後ろ姿を見ていた。後ろの腰からシャツを出ている、ちょっと抜けたやつ。だけど、ちょっと頼もしく見えるその背中。
(いつもふざけているだけのやつなのにな……。こういう時だけ……。ズルすぎだろ、全く……)
だからこそ、同時に思う。"ゴメン……"と。
一方の知夏良は急いで教室へ戻っていた。少し駆け足で昇る階段、通り抜ける廊下。そして、教室へ入り、ランドセルを背負う。
(アイツ、目逸らしたよな……。全く、めんどくせぇ性格してるよなぁ……)
事の顛末を話す遥都。彼はその時に遥都の目線を見ていた。知夏良もリサに負けず劣らずの昔からの付き合いだ。何となく遥都のクセや気持ちの表れ方ぐらいは知っている。そこから分かるのはたったひとつ。
「あのアホ……、まぁた、なんか隠してやがったな……」
苦笑いというか呆れというか、知夏良は遥都の無駄に高いプライドに思わず口元がゆるむ。バカにしているわけではない。むしろ、親近感をおぼえているし、知夏良が遥都と仲良くしている理由の一つなのかもしれない。普段はおちゃらけでふざけているようなクラスの中心に居そうなタイプ。だが、彼の本質は根っからの世話焼き人間。遥都がどうすれば動きやすいか、あるいは全力でやるかを考え動く傾向にあった。遥都の高いプライドを焚き付け、物事に対し、努力させ、全力を引き出させる。そんな遥都の姿を知夏良もまた好んでいたのだ。
そんなどうしようもない親友だからこそ知夏良は動く。まず何をしたらいいのかそれを彼なりの頭で必死で考える。あいにく、彼はこういうのはあまり得意ではない。いつもは遥都がこういうことを考えてくれるから、そして、その案を知夏良が動かすというのがいつものパターンだ。だから、彼は、こう考える。
(アイツならどう動く?いっつも、アイツは……、)
遥都の過去の言動を手当り次第に探っていく。どこかにヒントが隠れているのではないか?記憶の引き出しを次々にあけては中身を全てひっくり返す。知夏良らしいと言えばその通りなのだろう。彼も遥都とはまた違った形ではあるが、真っ直ぐなのだ。
『まずは、人の話とか聞いてみたらいいだろ?自分じゃわかんねぇんだから……』
これだ……!知夏良はそう直感する。残念だが、遥都みたいに頭は回らないし細かいところにも気づけない。彼にはそんなこと百も承知。ならば、周りの話を聞きそこから糸口を掴むに限る。では、誰の?彼のことを気にかけてみている人で、且つ、何か聞いても遥都に被害がいかない人。
「今井さんと湊さん以外いないでしょ……!!」
そして、知夏良は教室へついた。都合のいいことにまだリサも帰っていない。ならば、リサを連れて、友希那のところに行くのが一番得策だ。
「今井さん、湊さんのお見舞い行かない?」
「え?」
「だ〜か〜ら〜、湊さんのお見舞い!明日本番だし、最近の遥都の様子でも伝えに行こうよ」
少しポカンとしたリサ。それでも行ってくれるらしい。内心すごくガッツポーズを決めながら、リサと病院に向かった。
その道中で初めにリサに聞いてみる。
「なぁなぁ、最近さ遥都に変わった所とかない?」
「ん〜、あの先生に怒られた時以来、ちょっと怖くなったよね、でも、それくらいかな……。どうかしたの?」
「んや、別に」
これはリサに悟られるわけには行かない。遥都が意地張って、一人でやってるんだから、知夏良が勝手にリサに広げていいはずがなかった。
そして、病院につき、友希那にも同様に尋ねてみる。
「そこでさ、何か遥都の様子が変だったこととかない?」
「……??言ってる意味が分からないわ」
「そ、そっか!ならいいんだけど……」
「強いて言うなら……、音楽の話を良くするようになったことかしら?あとは、そうね……。アザが少し増えたことぐらいじゃない?何か、体育でぶつけたとか言っていたけど」
「っ!!!あの野郎、やっぱり……!!」
薄々勘づいてはいた。だがそれでも知夏良が血相を変えたのは、その大事に気づけなかった自分自身への苛立ちだ。
遥都は事の顛末を喋る際、最初に触れた包帯についてただコケただけと言っていた。だが、それにしては大袈裟だ。そして、極めつけに今の話だ。知夏良に言ったこととは別の理由。そして嘘だと決定づける理由があった。男女別で体育は行っているから分からなくて当然といえば当然なのだが、今男子は外でソフトボールを、女子が体育館でバレーボールをやっている。だがここ一週間は男子は雨やその影響でグランドがグチャグチャなことにより、教室での保健の授業、つまりは座学をしている。そう、怪我するはずがないのだ。
「ちょっと、自分、用事思い出したから帰るわ!リサはもうちょっとゆっくりしていって!!それじゃ!!」
知夏良は慌てて病室を飛び出し、外へ急ぐ。目的はもちろん、遥都。どこにいるのかわからない以上、手当り次第となるだろう。だが、それでも、知夏良は走り出していた。突き動かすのは友達への想いと自分の不甲斐なさ。そんな大事になっていることにも気づけなかったのかと自分自身を悔いる。
「クソっ……。そんな大事隠してたこと気づけないなんて、俺はバカかよ……!!」
だが、ここはそんな小さな街ではない。見つからないまま、体力だけが使われ、日も落ち、時が過ぎる。そして、6時の鐘が無常にも街中に鳴り響いた。
「ど、どうしたんですか?紅葉さん、急に投稿ペース早めるなんて」
「いや、諸事情って……」
「病院行った方が……」
「〇すよ?遥都くん?」
先日、すごく珍しく、『女子力を身につけるのって難しい!』の方に評価がついてびっくりしています!
こちらの作品でもお待ちしてますので、ぜひ!