俺とアタシの居場所《一応 完結 》   作: 紅葉 

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今回、すごくすごく懐かしいキャラが本当に少しだけ登場します。
ある人に言われて唐突に登場させたくなっちゃいました‪w
まぁ、関係はないのでスルーしてもらって大丈夫です!

そして、投稿ペース、有言実行しましたよ!


英雄の影

 

 

「クソっ!アイツ、どこ行ってるんだよ!?」

 

 

 日が落ち始めてから既に30分は経っている。東の空から徐々に暗がりが広がり、対向車線を走る車のライトが時折眩しい。秋とはいえ、まだ9月。額に流れる汗を腕で拭う。

 知夏良は考えうる多くの路地を回り尽くしたが、それでもまだ遥都は見つからない。ここに来るまでに何度か通った遥都の家の前で、電気が一つもついていないことは確認済み。まだ、遥都は外にいるはずなのだ。

 

 

「もうすぐ、7時だもんな……。母ちゃんが帰ってきちゃう」

 

 

 背中に背負うランドセルをチラリと見ながら、知夏良は呟いた。まだ、小学生の知夏良だ。ランドセルを背負ったままならば、学校から一度も家に帰らずに遊んでいたことになる。そんなことをすれば、長々とした説教を食らってしまうのは目に見えていた。

 

 

「あと、10分だけ!ラスト10分だけ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──第32話:英雄の影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の10分。もう知夏良に考えうるところは全て回った。ならば、どうするか?遥都ならここは立ち止まり、考える。だが、知夏良はそんなタイプじゃない。

 

 

「遥都なら合ってる答えが分かるんだろうけど、自分じゃわかんないから……、とりあえず、できることを……!」

 

 

 本人は過小評価しているが、これも知夏良も長所だろう。とりあえず、行動出来る強さと行動力。異様なまでの冷静さと大人びた合理的考えの遥都とは対照的なこの性格。それ故に遥都と仲良くなれたのかもしれない。

 

 

「んーーー、コッチ!!」

 

 

 自らが感じた方へ足を走らせ、感じるままに体を動かす。そして、また感じるままに交差点を曲がり、また走る。ただひたすらにそれを繰り返していた。

 

 そして、彼は彼なりのやり方で成し遂げる。

 

 

「見つけたーーーーーっ!!!」

 

 

 約15m程だろうか。反対車線の歩道で信号待ちしている遥都をついに見つける。知夏良は急いで、遥都が渡ろうとしている横断歩道の歩道へ走った。

 

 

「うわっ!んだよ、知夏良か!」

 

「なんだじゃねぇよ!!やっぱり嘘ついてやがったな!なぁあにが、『コケた』だぁ!?『体育で怪我した』だ!?殴られてただけだろ!?」

 

「ぐっ…………。友希那のとこにもいったのかよ……」

 

 

 観念したかのように遥都がため息をついて、その場に座り込む、そんな様子を見ながら、知夏良は泥や砂で汚れている遥都を見つめる。体を張ってきていることはそれを見れば一目瞭然だった。

 

 

「さっきもやられたのか?」

 

「……まぁ、そんな感じ」

 

「ったく。言えば助けに行ったのに」

 

「助けに来ると思ったから言わなかったんだよ。……ゴメンな、学校で嘘言って」

 

「そんなの、別にどうだっていいよ。てか、嘘ついてること、分かってたし」

 

 

 親友の無事な姿をみて、ホッとしたからか、怒る気にもならない。むしろ安心して心はスッキリとしている。

 

 

「とりあえず、遥都も帰ろうぜ」

 

「そのつもりだよ……。明日、本番だしな」

 

 

 そう言うとちょうど信号が変わり、目の前の横断歩道が通れるようになった。開けた道を知夏良は遥都と一緒に歩き出す。周りの大人や車が忙しそうに走る中、遥都を気遣いゆっくりと歩く知夏良が、遥都に不意に尋ねた。

 

 

「そういや遥都、そのケンカ、勝ったの?」

 

「勝ったも負けたもないだろ。ケンカになってねぇんだから」

 

「え?どういうこと?」

 

「ただ、ひたすらにボコられてた」

 

「…………なんで!?」

 

 

 急に浮かんだ質問からあまりに驚愕の事実が飛び込んでくる。遥都は決して弱い訳では無いし、むしろ好戦的な部類だった。それだけに知夏良からしたら不思議で仕方なかった。

 

 

「なんでってお前……。合唱コンクールでもし、大量に怪我してる奴がいたら印象悪いだろ?」

 

 

 あまりのあっけらかんとした答えに知夏良は愕然とする。そして、同時に遥都を改めて凄いと認める。普通自分が殴られている中、そこまで先のことを考えて、怒りを堪えられるものなのだろうか?しかもそれが一度ではないのだ。少なくとも昨日と今日で二度は受けていたのだから。

 

 

「みんなの前で取るって言ったんだから、それくらいやるよ。俺が我慢したり、悪役になりゃいい。それだけで友希那のこと証明してやれるだろ?」

 

 

 それは紛れもない本心だった。今回は夕方のように目を逸らせていない。明らかにこっちを見て、真っ直ぐな声でそういったのだ。

 

 

「カッコつけんな!バァーカ!!」

 

 

 照れくさそうに知夏良が笑顔で遥都の頭を叩く。素直に認めてやりたい、かっこいいセリフを平気な顔をしながら言える友達を誇りに思う反面、どうも照れくさい。

 

 

「いってーな!!何すんだよ!?クソ知夏良!」

 

「バァーカ、バァーカ、バァーカ」

 

「はあっ!?」

 

「って、そんな場合やないぞ!ほら、もう信号変わる、ってか、変わった!」

 

 

 車にクラクションを鳴らされ、慌てて走る二人。走りきって歩道へつくと顔を見合わせて笑う。そんな二人の横を、高校生が走りさる。

 

 

「ねぇ〜、みずくん、お腹すいたー!バーガークイーン行こーよ!」

 

「うるせぇぞ、お前に奢ると9人全員に奢ることになるだろ!てか、もう7時だろ?家に飯もあるのにそんなことしてたらまた海未にしばかれるぞ?」

 

「た、確かに……」

 

 

 それが耳に入った知夏良の顔が急に青ざめる。それは暗がりの中でも遥都に見えるほど分かりやすかった。

 

 

「7時って……」

 

「知夏良、お前、お母さんに……」

 

「急ぐぞ、伊月隊員!!」

 

 

 知夏良の家は連絡なしに七時以降は出歩かない家のルールがあった。それを同時に察知したのだ。だが、これから怒られると分かっていても、少しだけリラックスした顔の二人。隠し事を無くせた遥都と、友のことを気づかえた知夏良。お互いの心のつっかえが取れていた、そんな瞬間だった。

 

 

 

 

 

*** ***

 

 

 

 

 

 

 そして、いよいよ当日となり、緊張からかお互いの会話が少し硬い。それでも、遥都らのクラスは最優秀賞を取った。知夏良は遥都の方を向き、すぐさま声をかける。

 

 

「やったな!遥都!!」

 

「あぁ、とりあえず一安心。最低限のことは出来たな」

 

「最低限って、お前……。まぁ、いいや!とりあえず、パートリーダー、おつかれ」

 

「ん。俺にとって大事なのはこの後だから……」

 

「え?」

 

 

 少しの疑問は遥都の視線の先への興味にかき消された。その視線の先に知夏良も思わず視線を向けてしまう。そこに見えたのは、歓喜の輪。体育館でできたかりそめの喜びの輪。その中心にいる、もう1人のパートリーダー吉田さんや川瀬だった。

 

 

「吉田さん、あの人は……」

 

「わかってるよ、知夏良。調子に乗らせとくのも今日までだから……」

 

「それってどういう……」

 

「この後、見てな。友希那の誇り、取り返すから。言ったろ?大事なのはこの後だって」

 

 

 そう言いながら、吉田さんや川瀬らを見る遥都の目はまたもや氷のような目をしていた。だが、知夏良には確かに見えた。その奥にある小さな炎。暖かみのある小さな小さな炎が。それは、遥都自身の勢いだけでない確固たる意志、それが宿っていた証拠だった。そして、代表者が呼ばれたアナウンスにより遥都は前の方へ出ていった。

 

 

 

 

 

 

*** ***

 

 

 

 

 

 その後の帰りのホームルームで遥都が友希那の誇り、自分自身の信念を言葉の矢に乗せ、放った。"同調"という名の化け物の心臓を貫き、一瞬にして凍りつかせたその矢。知夏良はこの場で先程のセリフの意味をようやく理解出来たと感じた。

 

 

「なぁ、もう、終わったからいいだろ?その気持ちの悪い仮面外せよ、スクラップ」

 

 

 真っ直ぐに弓を引き化け物の心臓に照準を合わせる。弦が軋むような音が聞こえるほど、それは強く引かれた。そして、言葉と同時にその矢が放たれる。

 

 

「なぁ、なんか勘違いしてない?もう終わったからいいだろ。キミさ、なんの役にも立ってないし。むしろ足引っ張ってただけ。友希那のこともさ、元はと言えばキミが煽ったわけだろ?煽らなければあんなことにならなかったし、注意されたのが図星で仕方ないからそれ以外のところで怒らせた。違う?それに、後半練習仕切ってたの俺だから。キミがあまりに使えないから。キミさ、友希那に『笑える』とかなんとか言ってたらしいけど、俺から言わせればよっぽどキミの方が滑稽だったよ?」

 

「あぁ、それとさ、みんなにも言っときたいんだけど、俺が練習中、なんか言うときに見てたこのノート、友希那が書いてたノートだから。その内容をそのまんま読んでるだけ。注意されたこともメモって、病院で友希那にアドバイス貰ってたりしてたの。俺はそれを伝えてただけだから。確かに友希那にも伝え方とかには問題があったと思う。それでも、結果が最優秀賞だったってことは、あの人は何一つ間違ってない。そういう事だよね?スクラップさん??……って、返事することも出来ないのかよ。ホント、スクラップ。」

 

 

 一瞬にして凍らせた化け物を更なる矢で仕留めに行く遥都。吉田さんや川瀬だけではない、今度はクラス全員に弓を引く。

 

 

「このスクラップ同様、友希那のことをバカにしたゴミクズはまだ沢山いるだろ。生ゴミ見てぇなくっせぇ匂いがプンプンするからよぉ。そいつらにも、そいつら以外にも言っとくぞ。友希那がこれから、音楽関連のことをするときがあると思う。だけどよ、友希那は何一つ間違っちゃいない。邪魔、すんじゃねぇよ!」

 

 

 

 




「こんにちは紅葉さん」
「お久しぶりですですね、瑞希くん。元気だった?」
「はい、お陰様で……」
「今は何してるの?」
「ある学校で教員の方をやらせてもらってます。せめてものあいつらへの恩返しですね」
「そりゃ、良かった」


評価してくれた、キズカナさん、ありがとうございました!
まだまだお待ちしております!!
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