【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル 作:cadet
久しぶりの投稿。しかもちょっと短めと、少し物足りないかと思います。すみません、ここ半年以上バタバタし続けた上、ちょっとまだ調子が戻っていなくて……。
とりあえず、一日二日以内に閑話を一話投稿した後、次章へ入る予定です。
ソリチュードの西、亡霊の海にほど近い山脈。
吹雪が舞う中、かつて健人と交友したドラゴン、ヌエヴギルドラールが住んでいた洞窟の近くまで飛んできたアルドゥインは山脈の峰に降り立つと、首を垂らし、まるで死んだように硬直してしまう。
“ヴォーダミン、ズゥー、コダーヴ、ズゥー、メイ、ドレイ、ズゥー……”(思い出した、我らの過去、我らの咎、我らの……)
岩の彫像のように微動だにしない竜王。その口元だけが、細々と後悔を漂わせた声を漏らしている。
闇夜が山を包み、陽が上がり、そしてまた闇夜が包む。
そして、都合十回目の日がアルドゥインの体を照らす中、突如として彼の体を影が覆った。
アルドゥインが顔を上げれば、百を超えるドラゴン達が彼を見下ろしている。
“スリ、アルドゥイン。ゾク、サロート、ジュン。メイズ、ボウール、ヴォーダミン、ヴァールクト。フェン、ヒン、ゴウ゛ェイ、トル゛、ファラ゛ース?”(アルドゥイン。最も強き愚王よ。我らの失われた記憶が蘇った。この始末、どうつけるのだ?)
“ヒン、ドィロク、グト、フェイン”(お前が我らに致命的な歪みを刻んだ)
“ウォト、メイ、ヒン、ニヴァーリン”(よくも我らを謀ったな)
“ウォト、メイ、ヒン、ワーラ゛ーン、フォラ゛ース、ゼイル”(よくも我らの魂を穢したな)
ドラゴン達がアルドゥインに、無数の罵声をぶつけ始める。王に対する敬意も畏れもない、純粋な敵意と怒りに満ちた声。
“ドレ、ズー、トル゛? ウォト、フン、メイ、ボゼーク。コス、ヒン、ドレ、モタード、スゥーム、アーヴァン、ドィン、エヴォナール、デツ?”(我がやった? 良く言う。お前達も“あれ”に賛同し、その声を震わせたのを忘れたのか?)
そんな彼らの罵りを、アルドゥインは鼻で笑う。その表情にはどこか、諦観の色が浮かんでいた。
しかし、その態度が、彼を見下ろすドラゴン達の怒りをさらに搔き立てる。
“ウォト、コス、ヒン、ザーン! コ、フィン、アロク、ヒン、メイツ、バナール!”(なにを言う! そもそも、お前が提案したことだっただろうが!)
“オル゛、アーン、デツ、コプラーン! ボウ゛ール゛、クァーナル、ドロム、ヴェド、コガーン!”(その結果がこの姿だ! 貴様のせいで、我らはすべてを失い、堕ちた!)
“ゲ、ドロム。トル、デネク、ジー。ウォト、ヒン、ニヴァーリン、アル゛ーン、ドゥカーン”(確かに、我らは堕ちたな。その責任転嫁の思考。実に見苦しく、卑しいものだ)
緊迫した空気がアルドゥインとドラゴン達の間に満ち、パチパチと弾ける雷のように、視線がぶつかる。
そんな切迫する双方の間に、真紅の鱗をまとった一頭の若いドラゴンが割って入って来た。
“スリ、アルドゥイン”(アルドゥインよ)
“オダハーヴィング……”(オダハーヴィングか……)
前に出てきたのはパーサーナックスが謀反した後、アルドゥインの右腕となった若いドラゴン。彼は怒り狂う同胞を諌めるように、背後に鋭い視線を向ける。
その視線に気圧されたのか、ドラゴン達の罵声が止むと、オダハーヴィングは改めてアルドゥインに向き合った。
“ゲ、ドック、ワー、ドィロク、デズ、ワー、コト、ケル。ワー、クロン、ディロン、ディノク。ヌツ、ニス、ディヴォン、ヒン、コス、ズゥーウジュン、トル゛ウズナーガール、フンダイン”(確かに、我らもその“星霜の書”を使った世界改変に協力した。いずれ来る我らの終わりを回避するべく。しかし、こうなってしまった以上、もはやお前を我らの王と認めることはできない)
“ゲ、エヌーク、オブラーン。……ヴァールキル、ズー、フェン、ドレ、ゾク、ガイン。ウルド、ナー、ケスト! スゥ、グラ、デューーン!”
(そうか、そうであろうな……であるならば、我の選択は一つ。ウルド、ナー、ケスト! スゥ、グラ、デューーン!)
アルドゥインが翼を広げた。
直後、強烈な突風が吹き荒れ、漆黒の砲弾と化した竜王がドラゴンの群れを貫く。
“ウォト、ヒン……!”(く、何が……!)
強烈な突風にあおられたオダハーヴィングがなんとか体勢を立て直して空を見上げると、今しがた地上にいたはずのアルドゥインが太陽を背に見下ろしていた。
その口に、同胞であるはずのドラゴンの首を咥えて。
“ゼイマー、フェン、ナーク、メイズ、ガイン、ズー、バーロ゛ク”(兄弟よ、ことごとく我の腹に収まるがいい)
“旋風の疾走”と“激しき力”で切り裂いた兄弟の首を放り捨て、アルドゥインは淡々と宣言を下す。
殺されたドラゴンの体が燃え、虹色のドラゴンソウルがアルドゥインへと吸い込まれていく。それは、彼らの天敵と同じ姿。
“アルドゥイン、ロット、ヒン……”(アルドゥイン、お前は……)
オダハーヴィングが困惑の声を漏らす。ほかのドラゴン達にいたっては、完全に言葉を失っていた。
そんなドラゴン達を、アルドゥインの青く変化した冷徹な瞳が見下ろす。
漆黒の竜王は再度翼をはためかせると、残った兄弟たちへと襲いかかり、淡々と、そして無慈悲な殺戮を開始した。
オブリビオンの深淵。アポクリファの最奥で、この世界の主たるハルメアス・モラは覗き見ていたニルンの様子に目を細めていた。
『なるほど、こうなったか……』
静かな、しかしながら歓喜を抑えきれない口調。
憎悪の共鳴による、ラストドラゴンボーンの暴走。これと健人をぶつけることで、ハルメアス・モラはかつての彼とミラークの戦いを再現し、健人の魂を限界以上に振るわせることを試みた。
異界の魂がみせた魂の共鳴。それをニルンで実行したら、どのようなことになるのだろうか、と。
結果は……予想以上だった。
『世界から失われた記憶と記録。それらの復活と、世界を食らう者の覚醒』
元々、好奇心からリータに『共鳴』のシャウトを埋め込んだが、このような事態になるとは、知識の邪神も読み切れなかった。
星霜の書を介して、ニルンそのものと共鳴を起こした健人のハウリングソウルは、世界から失われていたものを呼び起こした。
星霜の書からも……否、神々の記憶からも消え去ったはずだった記憶。
それは、世界で最初のドラゴンブレイク。そして、ドラゴン達が、今の姿になった原因。
再生された知識に満足しながらも、ハルメアス・モラは虚空の星を見上げるように、濁ったアポクリファの空を見上げる。
『我が勇者がもたらした異なる時の流れ。すでに本筋から逸脱したこの流れは、想像もつかない未知へと続く』
本来、この記憶は思い出されるはずはなかった。
世界を食らう者は本来与えられた役割を思い出すことなく、ドラゴンボーンとの最後の戦いに赴く。それが、ハルメアス・モラが星読みで見た正史。
しかし、その道は大きく逸れた。もはやアカトシュですら修正が効かない流れだ。
まさに、未知に満たされた未来。これにより、新たな知識が生み出されていくだろう。
望外の展開に、ハルメアス・モラは歓喜しながら、その不定形な体を震わせていた。
『さて、傲慢で己の眼を曇らせていた世界を食らう者は、失われていた記憶を思い出し、アカトシュから与えられた本来の役割を全うしようとするだろう。そこには、かつてあった油断や奢りはない。まさに、最強、最優のドラゴンの復活だ』
この未知の流れの中で、我が勇者はどのような足跡を刻むのか。
オブリビオンの深淵に身を浸しながら、ハルメアス・モラは再び傍観へと戻る。
浮いては消える無数の瞳に、無限の好奇心を宿らせたまま。
というわけで、第7章はここまで。
読んで頂き、ありがとうございます。
投稿する予定の閑話は書ききっていますので、調整した後投稿します。
その後は第8章へと続く予定です。