【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル   作:cadet

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おまたせしました。いや、遅くなって申し訳ない。


第八話 空中戦

 ホワイトランホールドとペイルホールドの境界付近。上空二千メートルほどを、健人とリータはオダハヴィーングの背に乗って飛んでいた。

 眼下にホワイトランの主要河川、ホワイト川を見下ろし、右手にはタムリエルの最高峰、世界のノドを見上げながら飛び抜ける。

 流れる雲の川を潜水艦のように切り抜ければ、向かう先にはホワイト川と合流するブラックリバーと湯気を立ち昇らせたイーストマーチの火山地帯が広がっていた。

 

「すごい……」

 

“そうだろう。これが、我々ドヴァーだけに許された世界だ……”

 

 冷たく澄んだスカイリムの空気の中、遠く、どこまでも見通せる光景に、リータが思わず感嘆の声を漏らす。

 頬に撫でる肌寒くも心地よい風。世界の危機が目の前に迫っているというのに、頬が緩んでしまう高揚感。

 航空写真や動画、テレビなどで高空からの映像を見た経験のある健人もまた、実際に五感で感じとる空の世界に、思わず見惚れていた。

 

「確かに、目を奪われるよ。子供の頃、飛行機に乗った時より、ずっと広い空だ……」

 

「飛行機?」

 

「俺の故郷にある、空を飛ぶ乗り物。でも、こんな風に直接風を感じることはできない……」

 

“ほう、人の身で空を飛ぶか。異なる時間を持つお前の世界の話、気になるのだが……”

 

「私も私も! ねえケント、聞かせて!」

 

「仕組み的には鳥と変わらないよ。風を翼で受けて揚力を……って、同じ話を前にしたな」

 

 健人が思わず漏らした言葉に、リータとオダハヴィーングが食いつく。

 彼らから見れば、人間が空を飛ぶなど考えられるはずもない。

 元々知識欲旺盛なドラゴンと、初めての空に興奮している姉のねだりに苦笑を浮かべつつ、かつてヌエヴギルドラールにしたのと同じ話をし始めたその時。進行方向にある白い雲に、黒い点が浮かんでいるのが見えた。

 

“アーム?”(なんだ?)

 

「あれは……?」

 

 白い無地の綿についている黒点。

 距離がありすぎて判別が全くできないが、明らかに雲の影などではない。何かがいることは間違いなかった。

 飛行機などが存在しないこの世界。空を飛ぶものとなれば、鳥かドラゴンくらいしかない。

 健人たちが怪訝な表情を浮かべている中、黒い点が徐々に近づいてくる。

 直後、黒点がキラリと瞬いた。強烈な悪寒が健人の背筋に走る。

 

「……っ、躱せ!」

 

 健人の怒号に、オダハヴィーングが翼をはためかせる。

 深紅の巨体が高速でロールしながら、右方向へ跳ねるように高速移動。

 次の瞬間、キュゴ! っという大気を貫く轟音と共に、赤色の光線が先ほどまで赤竜がいた場所を貫いた。

 

「な、なに!?」

 

 突然の砲撃にリータが驚く中、健人は襲撃者の姿を見据えていた。

 高速で近づいてくる黒点はやがて人影になり、その正体を露にする。

 ボロボロのローブ、透けるような体、牙を生やした特徴的な白銀色の仮面。

 健人の視線が、仮面の細い眼孔の奥に揺らめく青白い瞳を捉える。

 

「セィヴ、ニ、ジョール、ムル、セ、ミラーク!(みつけたぞ、ミラークの後継者よ!)」

 

「お前……ヴァーロックか!?」

 

 ヴァーロック。

 太古の昔、ソルスセイム島にて、世界最初のドラゴンボーンを監視していたドラゴンプリースト。そしてミラークの後継者となった健人と激戦を繰り広げた古の魔導士だ。

 

“なるほど、アルドゥインめ。コナヒリクを蘇らせたな!”

 

「誰よ、コナヒリクって!?」

 

“アルドゥインのドラゴンプリースト。パーサーナックスと共に、アルドゥインに仕えた逸脱者だ!”

 

 コナヒリク。かつてヴァーロックと名乗っていたドラゴンプリースト。

 アルドウィンの従士であり、すべてのドラゴンプリーストの頂点に座していた者だ。

 

“気をつけろ、奴の魔法は尋常ではないぞ!”

 

「知ってる!」

 

 コナヒリクが掲げた両手に炎の塊が集束する。それは、彼が得意とする炎の破壊魔法が撃たれる前兆。

 無詠唱によって超高速で展開されながら岩すらも軽く貫く威力を秘めた砲撃が、オダハヴィーングに襲い掛かる。

 迫り来る二連射の砲撃を、オダハヴィーングはくるりと綺麗なバレルロールを描きながら躱す。

 しかし、ヴァーロックの砲撃は止まらない、一度でダメなら二度、三度と、立て続けに砲撃を放ってくる。

 

“むぅ、生意気な! スゥ、グラ、デューーン!”

 

 迫る砲撃の連射の中、オダハヴィーングが“激しき力”のシャウトを発動。

 赤と白に彩られた翼に風の刃が生み出され、赤竜の機動力が爆発的に引き上げる。

 

“ドヴァーキン、捕まっていろ! ウルド、ナー、ケスト!”

 

「ぐお!」

 

「きゃあ!」

 

 さらに深紅のドラゴンは“旋風の疾走”のシャウトを展開。砲撃の僅かな合間を縫うような急加速でコナヒリクの補足を振り切りながら、その口腔を件のドラゴンプリーストへ向ける。

 

“ロゥ、クォ、レント!”

 

「っ!?」

 

 サンダーブレスのシャウトが、コナヒリクに襲い掛かる。

 雷速は秒速二百キロメートル。たとえ鳥であっても、避けることは叶わない速度だ。

 しかし、雷の奔流がコナヒリクを捉える直前、彼の周囲を紫炎が包み込み、その姿が消失する。

 

「消えた!?」

 

「オダハヴィーング、後ろだ!」

 

“っ!”

 

 リータが目を見開く中、オダハヴィーングが反射的に体をひねる。直後、背後から放たれた砲撃が、深紅の鱗をかすめた。

 背後に目を向ければ、先ほどまで前方にいたはずのコナヒリクがいる。

 

「アイツ、いつの間に後ろに!?」

 

「空間転移、アイツの十八番だ」

 

 背後を取ったコナヒリクが再び立て続けに砲撃を放ってくる。

 コナヒリクは卓越した魔法使いであり、その技量は神代の中でも最上位だ。

 絶大な威力を秘めた破壊魔法と、無詠唱による術式の高速展開。

 そしてもう一つ、彼が持つ技術にスペルストックというものがある。

 これはあらかじめ展開していた術式を、任意のタイミングで発動するもの。これによりコナヒリクは、複数ストックすることができる。

 転移魔法による高速移動と、超高威力の砲撃による機動殲滅戦。それが、彼が最も得意とする戦術だった。

 

「まずいな、空中戦じゃ圧倒的にアイツが有利だぞ……」

 

 以前かつてヴァーロックであったコナヒリクと戦い、勝利を納めた健人だが、その時は、墓の狭い玄室の中での戦闘だった。

 そのため、健人はドラゴンアスペクトとハウリングソウルの重ね掛けで身体能力を劇的に引き上げ、無理やりスペルストックを使い尽くさせて倒した。

 地の利と、シャウトという極めて特別な力を組み合わせることができたからの辛勝。

 しかし、今はそのすべてが逆転している。

 空という広大な空間。健人には翼がない一方、コナヒリクは自由自在に飛翔し、更には転移魔法による機動砲撃を仕掛けられる。

 オダハヴィーングがいくら伝説的なドラゴンでも、この難敵の実力は頭一つ抜けている。

 その時、健人の視界の端に雲を貫く山々が映った。

 

「オダハヴィーング、左だ! 左の山脈に飛び込め!」

 

“なに!?”

 

「稜線と渓谷を使って射線を切る。どの道広い空じゃアイツの砲撃の的だ!」

 

“むうう……やむを得ん!”

 

 翼をはためかせ、オダハヴィーングは背後から放たれる砲撃を交わしながら、一気に降下。

 山の稜線を通過した瞬間にくるりと180度回転して背面を地面に向けると、そのまま山肌に沿って渓谷へと飛び込む。

 次の瞬間、コナヒリクの砲撃が稜線付近の山体を突き破り、吹き飛ばされた瓦礫が健人たちに降り注ぐ。

 

「ちょ、ちょっとケント! アイツの魔法、山をぶち抜いてきたんだけど!?」

 

「ああ、そのぐらいやってのけるヤバい奴なんだ!」

 

 渓谷に飛び込んだオダハヴィーングは、そのまま眼下を流れる小川の上を低空で飛ぶ。

 氷によって削られた渓谷は深く、左右にそびえる山々が斜線を遮る。

 しかし、コナヒリクはすぐさま空間転移で健人達の頭上へ移動。地を這うように飛ぶオダハヴィーングの上から砲撃を放とうとしてくる。

 

「リータ、上!」

 

「ファス、ロゥ、ダ――!」

 

 しかし、その前にリータの揺ぎ無き力のシャウトがコナヒリクに襲い掛かる。

 スペルストックに待機させていたシールドスペルで迫る衝撃波を防ぎ、再度砲撃しようとするが……。

 

「クォ、ロウ、クレント!」

 

 今度は健人のシャウトがコナヒリクに放たれた。

 コナヒリクが再びシールドスペルを発動してシャウトを防いでいる間に、オダハヴィーングは渓谷の奥へと飛び去っていく。

 その姿を見て、コナヒリクもまた渓谷に飛び込んだ。

 上空に転移するだけでは、取り逃がすと確信したからだ。

 確かに、機動力はコナヒリクが圧倒的に上回る。しかし、健人たちもまた、ソルスセイムで戦った時とは違う有利があった。

 一つが、オダハヴィーングの存在。高速で空を飛ぶ彼の速度は、それこそ時速にして数十から数百キロになる。

 いくら有利な位置に転移できるとはいっても、転移後は新たに狙いを定め直さなくてはならない。

 転移し、照準を付け直し、そして放つ。いくらコナヒリクとはいえ、5秒は必要だ。

 しかし、相手はその5秒の間に、数十から数百メートル移動する。このズレは決して小さくはない。

 高速移動する物体を撃ち抜くというのは、簡単にできるような事でもない。

 二つ目が、渓谷を飛ぶことによる射線を限定。

 コナヒリクが射撃可能な場所を自分達より上方に限定することで常に視界に納め、逆に迎撃を可能とした。

 三つめが、リータの存在だ。二人のドラゴンボーンから放たれるシャウトの連発は、いくらコナヒリクとはいえ連続で受けるのは難しい。

 

「ニド。ニ、ドレ、ボヴール゛、ジョール、ムル、セ、ミラーク!(小癪な。逃がさんぞ、ミラークの後継!)」

 

 コナヒリクは魔力を高め、速度を上げてオダハヴィーングを追跡する。

 そして赤竜の背後を視界に収めると、その両腕を掲げた。

 

“むうう……!”

 

 キュゴ、キュゴ、キュゴ! っと、立て続けに砲撃が放たれる。

 くるりと赤竜が身躱した空間を熱線が突き抜け、谷の岩肌を穿つ。

 高熱で炸裂した瓦礫が舞う中、オダハヴィーングは速度を上げる

 コナヒリクと距離を空け、入りくねった通路で射線を防ぐも、コナヒリクの砲撃は赤竜の影を捉えてくる。異様な正確さだった。

 

「ちょっとちょっと、いくらなんでも正確過ぎない!?」

 

「多分、生命探知を使っているな。岩の向こう側からでも、奴には俺達の動きが見えているんだ」

 

 生命探知は、健人が使うシャウト“オーラウィスパー”と同じく、生命力を赤い影として認識する魔法だ。壁だろうが岩陰だろうが、その先にいる生物を捉えることが出来る。

 

“ぬう!?”

 

 放たれた熱線の一本がオダハヴィーングの翼膜を貫く。

 幸い、まだ飛行に支障は出ていないが、このまま攻撃され続ければいずれ撃ち落とされるだろう。

 

「ちょっと、さすがにまずいんじゃない!?」

 

「いち、に、さん……」

 

 リータが焦りの声を上げる中、健人は冷静に何かを数えている。そして、確信を含んだ表情を浮かべた。

 

「やっぱりな……」

 

「なに? なにが!?」

 

「砲撃の間隔が長い。距離が空いて来たから、攻撃にもより多くの魔力が必要になっているんだ。リータ、俺に合わせてオダハヴィーングに激しき力をかけろ。加速するぞ」

 

「え? う、うん!」

 

 焦燥を浮かべたリータが、健人に合わせて“激しき力”のシャウトを唱える。

 

「「スゥ、グラ、デューーン!」」

 

“むお!?”

 

 オダハヴィーングの翼にさらなる風が産み出され、彼個人でシャウトをかけていた時とは比較にならない加重がかかる。

 ドラゴンボーン二人によるシャウトの重ね掛けは、まるで旋風の疾走を唱えたかのような加速を赤竜にもたらしていた。

 その速度は、空の王者の一人である赤竜から見ても、異常なほど。

 

“お、おい、ドヴァーキン、この加速はさすがに……”

 

「我慢しろ。岩にぶつかるなよ。ぶつかったら三人そろってあの世行きだからな!」

 

“む、無茶を言う……!”

 

 体を捻り、風圧で折れそうな翼に力を入れる。

 眼前をスレスレで通過する岩肌。狭まる視界。

 翼端から白い尾を引きながら、赤竜は繰り返し目の前に迫る崖を必死に躱し、渓谷を飛び抜け続ける。

 その間にも、コナヒリクからの砲撃は止まらない。

 攻撃に込める魔力を高めたからか、間隔を開けつつも、より強力な砲撃を放ち、間にある岩壁を貫きながら襲いかかってくる。

 

“む、むうう!”

 

「ケント、なんとか反撃できないの!?」

 

「ラース……」

 

 オーラウィスパーで後ろを確かめれば、岩肌の奥から距離を詰めてくる紅い影が健人の目に映った。

 コナヒリクもまた、速度を上げて追跡してきている。それを確かめた健人は、背後に視線を繰りながら、その時を待ち続ける。

 

「あと少し、あと少しだ……」

 

 数秒後、崖の影から黒い影が飛び出してきた。コナヒリクだ。

 オダハヴィーングを視界にとらえた古のドラゴンプリーストは、ここぞとばかりに魔力を高めて加速。

 一気に距離を詰め、健人の背中を打ち抜こうと一気に迫る。

 掲げられるコナヒリクの両手に、深紅の炎塊が集う。

 

「今だ、急上昇! リータ、旋風の疾走を!」

 

「うえ!? ウルド、ナー、ケスト!」

 

“グオッ……!?”

 

 健人が叫びに反応し、オダハヴィーングは反射的に上昇を開始。

 同時にリータの旋風の疾走が発動。まるでバットで打たれたボールのように、赤竜の巨体が上空へと跳ね飛ぶ。

 

「ぎ、ぎぎ……」

 

“むぐううう!”

 

 これまでで最も強烈なGが三人を襲い、視界がブラックアウトしていく。

 一方、コナヒリクも急上昇したオダハヴィーングを猛追。

 これまでにないほど魔力を猛らせながら砲撃を続ける。

 

「オダハヴィーング、うまくキャッチしてくれよ」

 

“なに? いったい何を……っておい!”

 

「ちょ、ケント!?」

 

 眼下から放たれる強烈な砲撃が大気を裂き、雲を貫く中、赤竜が上空の積雲に突っ込んだ瞬間、健人はオダハヴィーングの背から飛び降りた。

 そして血髄の魔刀を引き抜きながら、今まさに雲に突入しようとしているコナヒリクに襲い掛かる。

 

「ふっ!」

 

 コナヒリクは反射的にスペルストックに待機させていた転移魔法を発動しようとするが、バチリと耳障りな音を響かせるだけで、転移魔法は発動しなかった。

 三重のシャウトによる加速に追いつくため、魔力のほぼ全てを加速に費やしてしまっていたのだ。

 

「っ!?」

 

 仮面から覗く瞳に、強烈な動揺が走る。

 その気を逃さず、健人はコナヒリクの額めがけて、ブレイズソードを突き出す。

 

「グウゥゥ!」

 

 コナヒリクは反射的に左腕を掲げた。

 健人の刃はコナヒリクの腕を貫通したものの、狙いは逸れ、相手の仮面を削るだけに止まる。

 

「くそ、外した!」

 

 空中で激突した二人はもみ合いになりながら落下を開始。

 健人は左手でスタルリムの短刀を引き抜いて突き立てようとするも、今度は右腕を盾にして防がれてしまう。

 組み合いながら落下する中、コナヒリクが貫かれた右腕の手の平を、健人に向けた。

 向けられた右手に炎塊を集束し始める。至近距離から砲撃魔法をたたき込もうとしているのだ。

 

「ファス、ロゥ、ダーーーー!」

 

 だが、コナヒリクの魔法が発動する前に、健人の“揺ぎ無き力”が発動。

 至近距離で放たれた衝撃波はドラゴンプリーストを飲み込み、そのまま彼を渓谷の底へと叩き落とす。

 しかし、谷底に激突する直前、コナヒリクは魔力を振り絞り、落下を押し止める。

 そして左腕を掲げ、炎塊を生み出す。狙いは当然、上空から落ちてくる健人だ。

 

「っ!」

 

 向けられる殺気に健人は目を細め、双刀を構えた。

 まだ魔力は回復しきっていないはず。このまま落下しつつ、放たれるであろう砲撃を躱しきってコナヒリクを仕留める。

 一発でも避け損なえば、絶殺されるであろう。

 集中力が極限まで高まり、強風でなびく産毛の間隔すらも鮮明になっていく。

 そして、コナヒリクが掲げた炎塊が臨界を迎えたかのように膨らむ。

 だが、砲撃が放たれる直前、横合いから放たれた強烈な紫電の奔流が、古のドラゴンプリーストを飲み込んだ。

 

“クォ、ロゥ、クレント!”

 

 オダハヴィーングではない、第三者が放ったサンダーブレス。

 極太の極雷は余波だけで岩肌を焼き、谷底を穿ち、強烈な閃光と爆音を響かせる。

 いったい誰が……? 

 サンダーブレスが飛んできた方に目を向ければ、淡黒色のドラゴンが雲を切り裂いて飛んでくるのが見えた。

 

“セィヴ、ニ、ロト、ドヴァーキン!(ようやく見つけたぞ、ドヴァーキン!)”

 

 乱入してきたのは、なんとヴィントゥルースだった。

 元々荒い口調をさらに荒ませ、唾を吐きながら、絶賛落下中の健人めがけて一直線に飛び込んでくる。

 予想外の乱入者の登場に、健人は思わず呆けた表情を浮かべた。

 

「ヴィントゥルース!? お前なんでここにいるんだ……ぬあ!?」

 

 しかし、ヴィントゥルースが飛びつく前に、上空から垂直降下してきたオダハヴィーングが健人を捕獲。そのまま器用に背に乗せると、東の空へと翼をはためかせた。

 オダハヴィーングとしては、あの程度でコナヒリクが死んだとは思っていない。

 アルドゥインを止めるためにも、一刻でも早くスクルダフンにつく必要があるのだ。

 

“コス、ヒン、オダハヴィーング!? クロン、ズゥーウ、グラー、ボゼーク!(貴様、オダハヴィーング!? 我の獲物を横取りする気か!)”

 

“相も変わらず、視野狭窄で見境のない奴だ。すまないな、ドヴァーキン。このままスクルダフンに向かうぞ”

 

「あ、ああ……」

 

“スゥ、グラ、デュ――ン!”

 

 当然、ヴィントゥルースに構っている暇などない。

 オダハヴィーングは“激しき力”のシャウトで加速し、さっさとこの場から離脱を開始する。

 ようやく見つけた獲物を横取りされたことに激オコなヴィントゥルース。同じくが“激しき力”でオダハヴィーングを追いかけながら、止まりやがれというようにサンダーブレスを吐き続ける。

 

「ケント、アイツ、なに?」

 

「……ストーカー?」

 

 激高しているヴィントゥルースのサンダーブレスをひらりひらりと避け続けるオダハヴィーングの背で、リータが健人に追いかけてくるドラゴンについて説明を求める。

 そしてストーカーという言葉を聞いた彼女の眼に、剣呑な光が灯った。

 

「そう……わかったわ。まかせて。ジョール、ザハ、フルル!」

 

“グオオオオオ!?(ぬわああああ!?)”

 

「すぐに追いかけてくるでしょうけど、これで時間は稼げるはずよ。さあ、急ぎましょう」

 

 哀れ。ヴィントゥルースはリータのドラゴンレンドを受け、そのまま雲の下に落ちていく。

 

「なんか……すまん」

 

 彼の憎悪を背負うといったのは自分なだけに、健人としてはちょっと気の毒な気がしないでもない。ストーカーと表現したのも言葉の綾だったと思うが、先を急ぐのは事実。

 とりあえず、帰ったら好きなだけ相手をしてやるからと心の中で言い訳しながら、オダハヴィーング達と共に東の空へと向かう。

 ソブンガルデへの門。スクルダフンは、もうすぐそこだった。

 




いや、遅くなりました。次の話もいつになるのやら……。
以下、登場人物紹介。


コナヒリク
かつての名をヴァーロック。
相も変わらずチートじみた魔法行使能力を持つドラゴンプリースト。
しかし、ドラゴンボーン二名と最高位ドラゴンの三連シャウトによる加速に追いつこうとしたら魔力を使いすぎ、スペルストックに待機させていた魔法の発動に失敗。両腕を貫かれた上、乱入してきたヴィントゥルースによるサンダーブレスの直撃を食らった。哀れ

ヴィントゥルース
「最近我の扱い酷くないか!?」
一か月以上幼女に足止め食らったチンアナゴ。
世界のノドで健人がアルドゥインと戦った際にシャウトを使ったことでようやく居場所を察知したが、直後に星霜の書とハウリングソウルによる世界共鳴の影響で意識を失う。
更に目が覚めた後はドラゴンズリーチでの戦闘と、その後のコナヒリクとの空中戦を感じ取り追跡、乱入するも、今度はリータに健人のストーカーと断定されて撃墜されてしまった。哀れ。
ちなみに、幼女の相手をしているうちに少し人間の言葉を覚え始めた。

オダハヴィーング
「しょうがない奴だ……」

リータ・ティグナ
「今度こそ、お姉ちゃんが守る!」

健人
「いや、なんかすまん……」

ソフィ・サカガミ
「ねえ、私の活躍は!?」
一か月以上伝説のドラゴンを足止めしていた覚悟ガンギマリ幼女。
やったことは間違いなく偉業だが、文字数の都合で閑話で序盤だけの掲載となった。
ヴィントゥルースが健人のシャウトで居場所を察知して追いかけ始めた時は、挑発と罵詈雑言を件のドラゴンに吐きまくっている。
そして暴竜がハイヤルマーチホールドからいなくなった後は、本格的に兄に相応しい女性になろうと奮闘。結果、兄並みに方々で色々とやらかすことになる。
ちなみに、最近オオカミを召喚する魔法を覚えた。そして召喚したオオカミを可愛がっていたら、ヴィーヘンにイジけられた。
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