【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル 作:cadet
次回が結構長くなりそうなので、ご勘弁を……。
11月7日、末尾を若干修正しました。
無数のドラウグルがホワイトランへと殺到する中、奮闘する兵士たちに交じって、ドルマ、カシト、リディアは刃を振るっていた。
ドルマの大剣とリディアの片手剣が乾ききったドラウグルの胴体を両断し、カシトの短剣が焼き尽くす。
それでも、ドラウグル達の勢いは止まらない。
倒れた同胞たちを踏みつぶしながら、正門へと続く通路めがけて押し寄せていく。
「しつこいしつこい、しつこすぎ!」
「くそ、キリがない……」
「皆、奮戦するのだ! この先にあるのは我らの家族、我らの宝だ! ここでたとえ倒れるのだとしても、ソブンガルデでも恥じぬ戦いを見せてやろうぞ!」
首長であるバルグルーフも戦闘に参加し、兵士たちを鼓舞しているが、いかんせん数が違いすぎる。
元々小高い山の上に建設されたホワイトランに入るには、正面から攻め込むしかなく、道幅も限定されてはいるが、圧倒的な数の差がある。
故に……。
「首長、用意ができました!」
「よし、皆、第一防衛線まで下がるのだ!」
首長の呼びかけと共に、兵士達はいっせいに後退し始める。
彼らが走る先には、乾いた草や木が敷かれ、その後ろに丸めた牧草、そして組んだ杭が並べられていた。
バルグルーフやドルマ達を初めとした兵士達が、杭の柵の奥へと飛び込む。
ドラウグル達は当然、追撃してくるが、杭の柵の手前まで彼らが駆けあがってきたとき、バルグルーフが叫んだ。
「今だ、火を射かけよ!」
「はっ!」
首長の命令に呼応して、後方に待機していた予備部隊から火矢が放たれる。
ひゅんひゅんと空を切り裂きながら飛翔してきた無数の矢は、次々にドラウグル達に襲い掛かり、その内の数本が地面に着弾。瞬く間に、敷かれていた枯草から火の手が上がる。
「ファレンガー、イリレス、追撃を!」
「はっ! ほらファレンガー、さっさと行くわよ」
「言われずともわかっている! くそ、もう少しで生きているドラゴンのサンプルを採取できたというのに……!」
さらに、後方で待機していたイリレスとファレンガーが、ドラウグル達の頭上から火炎の魔法を放つ。
勢いを増した火勢は瞬く間にキルゾーン内のドラウグル達を焼き尽くしていく。
ドラウグルは基本乾燥しているため、普通の人間や死体に比べてはるかに燃えやすい。
「やっぱり、まだ全然足りないね……」
「時間がなかったからな……」
カシトとドルマが、呆れたような声を漏らす。
実際、百体ほどのドラウグル火葬処分にしても、後方からはまだまだ数えきれないほどのドラウグル達が押しかけてきていた。
「用意したキルゾーンは後三つ。それでどこまで凌げるかなぁ……」
「どこまでも耐えてやるさ。それこそ、命果てたとしてもな」
「ええ。ここで死んだとしても、悔いないように戦い続けるだけです」
カシトが憂い顔を浮かべる一方、リディアとドルマはどこまでも戦意高揚した様子で、にんまりと笑みを深めている。子供にはちょっと見せられない表情だった。
「はあ……。ノルドは相変わらずだなぁ」
「だが、悪い気はしてねえんだろ?」
「まあ、ここで逃げたら、健人に絶交されちゃうからね」
相も変わらず、戦いに対してノルドらしい思い入れを持つ二人にカシトが肩をすくめるが、そんな彼にドルマが意味深な視線を送る。
「嘘つけ。お前、アイツがそんなことしないってわかってるだろうが」
「むしろ、逃げろって言ってくれるでしょうね。初めから背を向ける気なんてないくせに。ほんとうに、素直じゃない猫ちゃんですね」
「うるさいよドルマ! それにリディアも思い込みで変なこと言わないでよ! それからオイラは猫じゃない!」
むず痒い感覚にカシトが声を荒げる。そんな彼の様子に、ドルマとリディアはさらにいっそう笑みを深くした。
「なるほど、名前を呼んでくれるくらいには信頼はされているみたいだな」
「そうですね。私が知る限り、彼が名前を呼ぶのはケント様くらい。ふふ、ある意味光栄ですね」
「ぐわあああ! なんなの、このノルド達なんなの!? 全然オイラの話聞いてない!」
突き放すつもりの言葉をさらっと受け流された上に、受けた致命の一撃。
いきなりの褒め殺しの連続にカシトが叫ぶ中、二人は他の兵士と共に前を見据える。
「さて、じゃあもう一戦行くか」
「はい、招かれざるお客には、さっさと帰っていただきましょう」
「ええい、ちくしょう。こうなったのもお前らのせいだからな! せめてオイラのストレス解消になれ~~!」
圧倒的な戦力差。しかし、恐怖はない。
隣に戦友が立つ高揚に包まれながら、彼らは衛兵達と共に再度、殺到してくる軍勢を迎え撃った。
スクルダフン。
スカイリムとモロウウィンドの境界。ヴェロシ山脈の断崖絶壁に存在する寺院。
ソブンガルデへと続く門の前で、門番のドラゴンプリーストは鍵となる杖を持って佇んでいた。
彼の役目は、この門の守護。主であるアルドゥインが望む時にこの門を開き、そして邪魔者をすべて排除すること。
しかし、彼はその使命を全うすることなく、彼は倒されることになった。
「?」
突如として自身を覆う影。思わず顔を上げた直後、強烈な衝撃が彼の体を走り抜けた。
「ふっ!」
「てええいや!」
直上から飛び降りてきた二つの影が、門番であったドラゴンプリーストを両断する。
しわがれた顔で呆然と天を見上げながら、ドラゴンプリーストは息絶える。
地面に倒れた竜教団の司祭を前に、彼を倒したリータと健人はほっと胸をなでおろす。
「よかった、門番は簡単に倒せたよ……」
「いくら古のドラゴンプリーストといっても、ヴァーロッククラスの使い手はそういないからな。後は……」
健人は巨大な岩でできた円形の遺跡を見下ろす。
直径20メートルほどの巨大な陣の前に、祭壇を思われる台座が鎮座している。
ここが寺院の最上部。
ドラゴンの巨体を考えれば、ここがソブンガルデへと続く門がある場所で間違いないだろう。
よく見れば、台座の上部に何かをはめ込むためのくぼみがある。
「うん、これかな?」
健人の目に留まったのは、地面に倒れたドラゴンプリーストが持っていた杖。特徴的な竜の頭部が刻印されており、魔法が付呪されているのは間違いない。
だが、それ以上に儀礼的な意味を持つことを予想させる装いをしている。
拾った杖を、健人はおもむろに台座頂部のくぼみに差し込む。
すると、ズズズ……! と地鳴りを響かせながら魔法陣を構築していた岩がバラバラに分解され、宙に浮くと同時に円を描くようにすり鉢状に落ち込み、回転し始める。
そして崩れた魔法陣の底からはまばゆい光が溢れ、虹色の渦が姿を現した。
「これが、ソブンガルデへの門……」
門というより、渦潮を思わせる光景。よく見れば、崩れた岩の一部が階段状になって渦の底へと続いている。
思わず吸い込まれそうな感覚に、健人が息を飲む中、リータは祭壇へと上るための階段の方を睨みつけていた。
「ケント、招かれざるお客さんが来たよ」
ガチャガチャと聞こえてくる複数の足音。
リータの声に促され、健人が足音のする方に目を向ければ、数十のドラウグル達が大挙して祭壇へと押しかけてきていた。
「この寺院を守る兵士達か。まずいな、ほとんどがデスロードだぞ……」
ドラウグル・デスロード。
デス・オーバーロードには及ばなくとも、最上位クラスの難敵だ。
健人が得物を構えて迎撃しようとしたところで、リータが待ったをかける。
「ケントは行って。ここは私が残るから」
「リータ、だがこの数は……。それに、すぐにコナヒリクが来るぞ」
「ドラゴンレンドも、アルドゥインには効かなかった。あの竜を止められる可能性があるのは、私じゃない。貴方なの」
足止めを買って出るリータに健人は顔を顰めるも、そんな彼の言葉をリータは一蹴した。
ドラゴンレンドはアルドゥインにすでに対策されている。
希望があるとしたら、健人のハウリングソウルしかなかった。
それに彼女のドラゴンボーンとしての直感が告げていた。
既に時の担い手は自分ではなく、義弟の手に移り変わり、それが自分に戻ることは無い。
時の流れは止まらない。一度変化した運命は過去に遡ることなく、ただ未来へと流れていくだけなのだと。
そして二人が問答している間に、上空から仮面を被ったドラゴンプリーストが舞い降りてくる。
「コナヒリク……」
追いついたコナヒリクはまるでドラウグルの軍勢を指揮するように彼らの上空で浮遊すると、魔力を猛らせる。どうやら、この短時間で魔力はしっかりと回復しきったようだ。
“ここはまかせろ、異端のドヴァーキンよ。できる限り時間を稼ぐ”
「行って、ケント。この世界の未来をお願い」
「っ、すまん。頼む!」
リータとオダハヴィーングの言葉に健人は顔を顰めながらも、後ろ暗い感情を振り切り、ソブンガルデの門へと身を投げる。そんな彼の背に向かって、コナヒリクが右手を掲げ、炎塊を生み出す。
“ニ、ドレ、ボヴール……ッ!?゛”(逃がさんぞ、ミラークの後継……ッ!?“
「ヨル、トゥ、シューール!」
砲撃の直前、襲い掛かってきた炎の吐息を前に、コナヒリクは反射的にシールドスペルを発動。周囲に待機していたドラウグル達が一瞬で焼き尽くされる中、リータのファイアブレスを間一髪で防ぎきる。
その間に健人の姿は、ソブンガルデの門へと消えていった。
「ち、外したわね。とにかく、ここは通さないわ……」
攻撃が失敗したことに不満げな声を漏らしながらも、リータは威嚇するように、背負った戦斧をブン! と振りぬく。
“ズーウ、ジョール、メイ!”(退け、愚かな定命の者よ!?)
目の前の邪魔者を排除しようと、コナヒリクが破壊魔法を放つ。
岩はおろか、山すらも撃ち抜く超強力な火炎の砲撃。
集束された熱があらゆる物質を溶断するそれは、現代日本人なら創作に出てくるビーム砲を思わせる魔法。そんな砲撃を前にリータは……。
「スゥ、グラ、デューーン……ふうっ!」
激しき力のシャウトを纏わせた戦斧を叩きつけ、両断した。
彼女の眼前で二つに泣き別れした砲撃は奥の岩壁を撃ち抜き、空しく散っていく。
“ッ!?”
今まで見たことのない光景に、コナヒリクが動揺の声を漏らす中、リータの瞳が古のドラゴンプリーストを鋭く射抜く。
華奢な彼女の体からぶわりと強烈なプレッシャーが噴き出し、同時に虹色の淡い光が漏れだす。
それは、彼女の戦意に反応したドラゴンソウルの燐光。
ドラゴンすらも容易く怯ませるほどの戦意に意思なき存在であるはずのドラウグル達だけでなく、コナヒリクすらも気圧される。
そんな中、リータは眼前の敵を見下ろしながら、ゆっくりと口を開く。
「ここから先は選ばれた者だけが向かうことを許された戦場。私も、貴方もお呼びじゃない。まして貴方は自然の理を歪めて蘇ったアンデッド……だから」
ムゥル、クァ、ディヴ!
リータのドラゴンアスペクトが発動する。
世界のノドで暴走して以来、使ってこなかったシャウト。かつては黒く染まっていた光鱗の鎧は、今ではまばゆいばかりの虹色に輝いていた。
“ッ、エヴェナー!”(っ、消えろ!)
あれはまずい。絶対にまずい。ともすれば、あの異端のドラゴンボーンと並ぶほどの怪物だと、気圧されたコナヒリクが立て続けに砲撃を放つ。
しかし、その連撃もリータの戦斧に再び斬り払われた。
超重量武器であるはずのデイドラの戦斧をまるで食卓のナイフのように軽々と振るうその姿は、中身が華奢な少女の元とは思えないほど現実味に欠ける光景。
振るわれる刃は鋭く、重く。身に付けた赤黒い武具はまるで彼らの主(アルドゥイン)を連想させるほどの威圧感を纏う。
気がつけば、コナヒリク達だけでなく、彼女の隣にいるオダハヴィーングすら、目を見開いてリータを見つめていた。
「ここで配下もろとも、朽ち果てなさい」
灼熱の戦意を込めた、冷徹な宣言。
次の瞬間、石床を粉砕しながら伝説のラストドラゴンボーンが踏み込み、暴風の戦斧と灼熱の熱線が激突した。
ミラーク
「シャウトと魔法を織り交ぜれば勝てる!」
健人
「機動力極振りで全部躱せばいい!」
リータ
「避けれないなら斬ればいいのよ!」
コナヒリク
「ふざけんな、このファッキンドラゴンボーン共!」
リータさん、マジノルド。
コナヒリクの砲撃を正面からぶった切れるのは彼女くらいです。
しかし、時代はちがえど、ドラゴンボーンとしても歴史上最上位の三人と戦う羽目になった彼。いくら苦労の絶えない中間管理職だったとしても、マジで不幸だったのではないだろうか。
次回はついに健人がソブンガルデに到着します。