【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル   作:cadet

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注意
・前話にてリータが転移門を破壊するシーンが不自然との指摘があり、確かにその通りと思ったため、修正してあります。
その点を踏まえまして、読んで頂けると幸いです。


第十話 ソブンガルデでの再会と転移門防衛戦

 落下する感覚と共に、光の渦が網膜を焼く。

 しかし、鮮烈な光の暴力もすぐに収まり、続いて僅かな浮遊感と共に、両足が地面につく感覚が戻ってくる。

 

「着いた……のか?」

 

 気がつけば、健人は祭壇を思わせる場所に立っていた。

 両脇に屹立するローブを纏った石像。

 空には全天を覆う星空とオーロラ。スカイリムと比べて、なお冷たい空気。

 岩に覆われた地面にわずかに残る土の上には、これまた小さくも華やかな草木が生い茂っている。

 常夜の冥界と呼ぶにふさわしい、荘厳な風景に、健人はしばしの間、見入っていた。

 

「いけない、アルドゥインを探さないと……」

 

 すぐに我に返り、遠くへと続く坂道の先に目を向ける。オーロラと星明りに照らされた、一際大きな建物が見えた。

 

「あれは……?」

 

 冥界とはいえ、そこに建造物があるということは、住む者がいるということ。

 アルドゥインを探すためにも、行かないという選択はない。

 しかし同時に、そこへ続く道の先には重く、濃い霧が沈殿している。

 それを見て健人は、目を顰めた。

 どこか不自然で、強い力を纏う霧。明らかに自然のものではないと、ドラゴンボーンの直感が訴えてくる。

 

「ロゥク、ヴァ、コーール!」

 

 健人はおもむろに“晴天の空”のシャウトを切りに向かって放つ。

 しかし、彼のシャウトは一時的に霧を吹き飛ばすものの、まるで押しのけられた水が元に戻るように、霧は再び周囲を覆い尽くしてしまう。

 健人の脳裏で、ミラークが呟く。このシャウトの正体と、その使い手について。

 

「アルドゥインのシャウトか。厄介だな……」

 

 とはいえ、先に進まなければならない。

 健人は意を決し、霧の中へと足を踏み入れる。

 

「定期的に霧を吹き飛ばして、方向を確認していくしかないな」

 

 一メートル先も見えないほどの濃霧の中、晴天の空が数秒だけ生み出す切れ目から遠くの建物を確認しつつ、道を進む。

 一時間ほど進むと、坂道は徐々に平坦になって行く。

 両側には相も変わらず高い峰が聳え立っているが、足元も岩場から土へと変わり、だいぶ歩きやすくなっていた。

 やがて、何度目かの晴天の空を唱えた時、健人の目が、明らかに自然物ではない存在を捉えた。

 それは、二人の人影。

 一人は青いストームクロークの装具を纏っており、もう一人は帝国軍の装いをしている。

 二人の視線が健人に向けられる。その時、健人は思わず目を見開いた。

 

「ハドバルさん?」

 

「君は……ケントか?」

 

 帝国軍の装いをした男性は、ヘルゲンで健人達を助け、そしてホワイトランを襲撃してきたドラゴン、ミルムルニルに殺された人物だった。

 互いによく見知った者同士。予想外の場所での予想外の再会に、二人は目を見開いていた。

 

 

 

 

 

 

「ふうううう!」

 

 スクルダフンにあるソブンガルデの門前では、リータが迫り来るドラウグルの軍勢とコナヒリクの猛攻に晒されていた。

 

“エヴェナー!”(消えよ!)

 

「はあああ!」

 

 振り抜かれた両手斧が三体のドラウグル・デスロードを纏めて両断し、間隙を縫うように放たれる灼熱の砲撃すら弾き返す。

 虹色の竜鱗を纏ったリータは人型のドラゴンとしての能力を存分に振いながら、迫りくる津波のような不死の軍勢を撥ね退け続ける。

 

“ストレイン、ヴァハ、デネクトル!”

 

 上空へと跳び上がったオダハヴィーングは氷槍のストームコールを展開。

 雨のように降り注ぐ氷柱が次々とドラウグルに突き刺さっていくが、生憎と痛覚が無くなっている死体には大した効果がない。精々、動きを鈍らせるくらいだ。

 しかも面倒なことに……。

 

“オダハヴィーング、フィログ、セジュン、ドゥカーン!”(オダハヴィーング、我が主に背いた裏切者め!)

 

 コナヒリクの対空砲火が、オダハヴィーングに襲いかかってくる。

 レーザーキャノンのような連続砲撃を前に、オダハヴィーングは翼をはためかせて回避しながら、その口腔をコナヒリクに向ける。

 

“ヨル、トゥ、シューール!”

 

 吐き出された炎の奔流がコナヒリクに直撃し、広がる余波が周囲のドラウグル達を焼き尽くす。

 しかし、即座にシールドスペルを発動したコナヒリクは赤竜のファイアブレスを完全に防ぎきっていた。そして反撃を放たんと再び上空に両手を掲げる。

 

「潰れなさい……!」

 

 だがそこに、虹色の影が飛び込んできた。

 オダハヴィーングのファイアブレスによってできた、ドラウグルの隙間。

 そこに滑り込んで間合いを詰めたリータが、コナヒリクに向かって勢いよく振り下ろす。

 コナヒリクはスペルストックに待機させていた空間転移で即座に離脱。

 直後、大気を引き裂きながら、リータの両手斧が地面に叩きつけらえた。衝撃が円状に走り、石床が粉砕されて土くれと一緒に巻き上げられる。

 

「しっ!」

 

 舞い上がる土砂で視界を塞がれる中、リータは即座に地面に叩きつけた両手斧を薙いだ。

 直後、土煙を突き破ってきた赤色の砲撃が、彼女の両手斧に切り裂かれて霧散。

 シャウト「激しき力」の風の刃を纏う両手斧はそのまま舞い上がった土煙すら吹き飛ばし、その先にいるコナヒリクの姿を顕わにする。

 

「ほんと、シャレにならない奴。ケント、よくこんなのに勝ったわね」

 

 嘆息しながら、ブンッ! と両手斧を振り、構えを整える。

 本当に厄介な相手だと。驚異的な威力の魔法をノータイムでつるべ撃ちし、間合いを詰めても即座に転移魔法で逃げられる。

 リータから見ても間違いなく、今まで戦った中で最強の魔法使いだ。さらに厄介なことに……。

 

“ダール、ジュン、ラーヴー”(甦れ、主の信徒たちよ)

 

 コナヒリクがドラゴン語で祝詞を唱えると同時に、彼が被る仮面が淡く輝く。

 同時に、先ほど焼き尽くされたドラウグル・デスロード達が次々と再生され、立ち上がった。

 

「ほんと、シャレになってない……!」

 

 復活したドラウグルの軍勢が、再びリータに襲い掛かる。

 不死者たちはリータという極大の嵐の前にたちまち討ち取られていくが、コナヒリクの仮面が輝く度に、即座に復活してくる。

 おそらく、これがこの仮面の力なのだろう。配下のドラウグル達を操り、無限に復活させる能力。

 そうならば、この状況はリータ達に不利だ。いくら卓越した戦士であり伝説のドラゴンボーンであるリータとして、体力に限界はある。

 それは上空から援護をしているオダハヴィーングとて同じだ。

 

“ボヴール! ズーウ、ロスト、ワー、ヴィーク、ロク!”(そこをどけ! 私はあの者を倒さねばならんのだ!)

 

「くっ!?」

 

 コナヒリク達の攻勢がさらに増す。

 オダハヴィーングが上空からシャウトを放とうとするが、コナヒリクが牽制の砲撃を放ち、さらに後方に控えているドラウグル・デスロード達も次々にシャウトを放ち始める。

 

“むう!”

 

 人数を武器にシャウトを放ち続けるデスロード達に、オダハヴィーングも近づけない様子だった。

 意識が赤竜に僅かに剥いた瞬間。コナヒリクはソブンガルデへの門の上へと転移。そのまま門を潜ろうとする。

 

「っ、させない! ウルド!」

 

 反射的に旋風の疾走を展開。

 高速でコナヒリクへと突撃し、転移を発動させて無理矢理門の傍から引き剥がす。

 このままではマズイ。物量差に押し切られそうだ。

 もしコナヒリクがソブンガルデへ行ってしまえば、アルドゥインとの戦いが決定的に不利になる。

 

「しかたない、か……ふ!」

 

 その光景を見てリータは一瞬、迷いを窺わせる瞳を浮かべる。

 だが次の瞬間、踵を返し、ソブンガルデへの門の傍にある祭壇めがけて、手に持っていた両手斧を投擲した。

 飛翔した両手斧は、祭壇を粉砕。天高く伸びていた光の柱が消え、ソブンガルデの門が閉じる。

 

「これで、少なくとも貴方達はケントの後を追えない。少なくともアルドゥインとの決着をつける時間は稼げるでしょうね」

 

“っ!? ズーウー!”(っ!? 貴様!)

 

「スゥ、グラ、デューーン!」

 

 激高したコナヒリクが、リータに向かって砲撃を放つ。

 しかし、彼女は素早く腰に差したデイドラの剣を引き抜きながら“激しき力”のシャウトを展開。迫る砲撃を斬り裂きながら、コナヒリクに向かって踏み込み、再度シャウトを唱える。

 

「モタード、ゼィル!」

 

 彼女が唱えたのは、健人のシャウトであるハウリングソウル。

 次の瞬間、強烈な憎悪がリータの全身を蝕み始めた。

 

“クリィ、クリィ……!”

 

「ぐぅう……!」

 

 脳裏によみがえる、己が殺した無数のドラゴン達の怨嗟の声。かつて飲まれた憎悪が、再び彼女を蝕み始めた。

 虹色の竜鱗が、あの時のように黒く染まっていく。

 だが、必要だった。このドラゴンプリーストを倒すには、限界以上の力を振り絞らなければならかった。

 

(これが、私の罪。私の所業の結果。でも……)

 

 以前は我を失った。しかし、それを前にしても、今のリータは飲まれない。

 

(だからこそ、私はこの憎しみに向き合わないといけない。これがもたらすであろう力を、また悲劇につなげない為に……!)

 

 どのような感情に起因しようと、力は力だ。

 問題はその力をどの方向に解き放つか……。

 

(ええ、殺すわ……。この哀れな亡霊を。彼が作るであろう、未来の為に。そして、約束を守るために!)

 

 以前は力を生み出す感情に飲まれた。でも今の彼女は、失った立脚点を再び取り戻し、未来を再び見据えられるようになっていた。

 こみ上げる殺意を制御し、一点に振り絞り、踏み込む。

 次の瞬間、地面が爆発したかのような音と共に吹き飛んだ。

 

「はああああ!」

 

 進行方向にいるデスロードも、迫る砲撃も、すべてを切り落としながら、目標へ向かって飛ぶように駆け、刃圏に捉える。この間、一秒足らず。

 同時にデイドラの片手剣が、コナヒリクに向かって薙ぐように振りぬかれる。

 

“ザイム!”(無駄だ!)

 

 しかし、この刃もドラゴンプリーストの長を捉えることはできなかった。

 無詠唱ではなく、スペルストックに待機させていた転移魔法で、コナヒリクは上空へと離脱する。

 

“トル゛、プルザー! ヌズ、ゲ、コス、トル、ホディス、ズー、ムル!”(大したものだ! だが、主の力を借りた我には及ばん!)

 

 直後、コナヒリクが掲げた両手の先に、極大の炎塊が生み出される。その巨大な炎を目の当たりにした瞬間、リータの背筋に強烈な悪寒が走る。

 それは、かつて最初のドラゴンボーンとの戦いでソルスセイムとタムリエルを切り離した大魔法。ヴォルケイノ・テンペストの準備だった

 

“これはマズい!”

 

「「「「ファス、ロゥ、ダーーー!」」」」」

 

 その魔法に覚えのあるオダハヴィーングがコナヒリクに吶喊しようとするが、地上のデスロード達から放たれる無数の“揺ぎ無き力”を前に前進を押し止められてしまう。

 

“ぬう、クォ、ロウ、クレント!”

 

 それでも何とかサンダーブレスを放つも、十分に狙いをつけることが出来なかったために、雷の吐息はコナヒリクの背後の雲を斬り裂くのみ。

 

「くぅ……」

 

 一方、遠距離に対する明確な対抗手段のないリータは地上で迫るドラウグル達を一蹴しつつも、歯噛みしていた。

 既にコナヒリクが生み出した炎は人の丈の数倍に及び、今にもその内包した膨大な力を解放せんと瞬いている。

 その時、コナヒリクの背後。斬り裂かれた雲の奥から、淡黒色の影が飛び出してきた。

 有翼の影はその翼に風の刃を纏いながら、猛烈な速度で無防備なドラゴンプリーストの背後を強襲。淡い光で構築されたその体を、真っ二つに斬り裂いた。

 

“ぐああああ!”

 

“ヴィントゥルース……”

 

「あいつ……」

 

 強襲してきたのは、ここに来るまでに振り切ったと思っていた伝説のドラゴン、ヴィントゥルースだった。

 

“フン……”

 

 彼は自身が両断したコナヒリクとリータ達を一瞥すると、彼女達の上空を飛び抜けていく。

 

“っ、ドラゴンボーンよ、今だ、奴の仮面を狙え!”

 

 オダハヴィーングの言葉に、リータはハッと視線を戻す。

 下半身を両断されながらも、コナヒリクはまだ健在。

 

「ああああああ!」

 

 ようやく訪れた明確な機会に、リータが吼える。

 ドラゴンアスペクトとハウリングソウルによって激増した全身の筋力を全て総動員し、右手のデイドラの片手剣を投擲する。

 腕を振り抜いた瞬間、投げられた片手剣は音速を突破。周囲に衝撃波をまき散らしながら、一直線にコナヒリクに向かって飛翔する。

 

“!?”

 

 コナヒリクは反射的にシールドスペルを展開するが、リータの投擲剣は魔力の障壁を貫通し、その仮面に突き刺さる。

 奇しくもその場所は、先の空中戦で健人が傷をつけた場所だった。

 

“ッ、ガアアアアア…………!”

 

 直後、割れた断面から堰を切ったように光があふれ、コナヒリクが苦しみ始めた。

 展開していた炎塊が霧散し、仮面を押さえてのたうち回り始める。

 

“ディノク、ディノク、ズーウ、ムル……!”(消える、主の力が、消えてしまう……!)

 

 散っていく光をかき集めるように腕をバタつかせるコナヒリク。

 ビキリ! と仮面の傷が広がり、光が消えると、コナヒリクの体は風の中に霧散して消えてしまった。

 同時に、全てのドラウグル達の瞳から光が消え、その場に崩れ落ちる。

 カラン……と仮面が地面に落ち、二つに割れた。

 

「終わった……?」

 

“奴はアルドゥインから与えられた仮面で復活していた。その仮面が壊れれば、この世に止まることはできない……”

 オダハヴィーングがリータの傍に降り立ち、割れた仮面を見下ろす。その目はどこか哀れみの光を湛えていた。

 

“オンド、ロウ、ウェネス、コス、ドヴァーキン!?”(おいこら、ドヴァーキンはどこだ!?)

 

 二人がしんみりしていると、先ほど上空を飛び去っていたヴィントゥルースがUターンして戻ってきていた。

 彼はリータ達の前に舞い降りると、健人の居場所を詰問してくる。

 

“ロク、ヒン、ソブンガルデ。ヌズ、ニス、ドック。コス、ヒン、ドック、ドヴァーキン、ナルザー、ジン、グラー、アルドゥイン?”(ソブンガルデだ。だが、追うのは無理だな。というか、お前この状況でまだ彼と戦うことを優先するのか?)

 

 ヴィントゥルースを、義弟を襲い続けているストーカーと判断しているリータは、スッと瞳を細め、祭壇を破壊したデイドラの両手斧を回収して構える。

 既にソブンガルデへの門は破壊された為、このドラゴンが追うことはできない。しかしそれでも、義弟に迫る脅威を放置することも出来ない。

 再び高まる戦意。しかし、そんな彼女の覚悟も、眼前のドラゴンが次に言い放った言葉に、一気に冷や水を掛けられることになった。

 

“ゲ、フン、グラー、ドヴァーキン、アースト、ガインス! ズー、グラーン、ドヴァーキン。ヒン、フォラ゛ース、ヴァール”(おい、我は一度もドヴァーキンと戦うとは言っていないぞ! 我はドヴァーキンを探していただけだ。お前たちが勝手に勘違いしただけだろうが)

 

「……んん? え、どういうこと?」

 

“グラー、ドヴァーキン! コス、デズ! ヌズ、グラー、アルドゥイン、コス、デズ、ワール!“(奴との決着は当然つける! 当たり前だ! だがアルドゥインにも落とし前をつけねばならん!)

 

「ええっと、つまり……」

 

“コド、ムル、ズー、アブニシュル?(初めから協力するつもりだったのか?)

 

“ゲ! ア、アーム、ヒン、ヌズ、ゼィンドロ、アルドゥイン、ズー、ゼンド、ゼイマー、アルーク、グラー、ドヴァーキン、ラーズ!”(そうだ! あ、いや、お前たちでは無理だろうから、その前に我が先にアルドゥインを倒し、そしてドヴァーキンと決着をつけるつもりだったのだ!)

 

 よくよく思い返してみれば、先の空中戦でヴィントゥルースが初撃で攻撃していたのはコナヒリクだった。しかも、健人に切迫した事態が迫った時の介入である。

 もしヴィントゥルースが健人を倒すことを最優先しているなら、あの時に健人を攻撃すればよかったはず。

 そして、スゥームで紡がれる彼の言葉には、嘘偽りといった後ろ暗い感情は微塵もない。

 オダハヴィーング自身、彼の性格はよく知っている。良くも悪くも、嘘が付けない性格だ。

 

“……”

 

「……」

 

 とはいえ、その後に離脱しようとしていたオダハヴィーング達を追いかけながらシャウトを放ってきたことは事実。故に、二人はジト目でヴィントゥルースを睨みつけずにはいられない。

 

「あの状況で察しろというのは無理があるんじゃ……」

 

“トル゛、コス、ドゥカーン、ナックス……”(今までのお前の行いのせいだと思うのだが……)

 

“ア、アムエイ! ヒン、ドロム、ズー、ナール、フォヴラース! ディコ、ウォト、コス、スゥーム! ヌズ、ヴィルーク!”(と、とにかく! お前たちが早合点して我を落としたのだ! というか、なんだあのスゥームは! 全然飛べなくなったぞ!)

 

“ラクト、ドレ、ニ、メイツ、ナーンスル、テイ”(おいこら、話を逸らすんじゃない)

 

 まるで論破された子供のように話を打ち切り、話題を逸らそうとするヴィントゥルースに、オダハヴィーングがツッコミを入れ始める。

 一気に弛緩した空気に、リータはやれやれと溜息を漏らしながら、構えていた両手斧を降ろした。そして二頭に背を向け、自分が壊したソブンガルデの門を見下ろす。

 

「門、壊しちゃった。なんとか健人を連れ帰る方法を探さないと……」

 

 祭壇を壊しただけで、門自体は無傷なのだから、まだ直せるかもしれない。

 そんな事を考えている彼女の目の前。ちょうど円形の門の中央で、なにかが動いた。

 

「ん?」

 

ゴト、ゴトゴト……と、不規則に揺れる門。

 祭壇を破壊したことで一時的に閉じたが、また開くのだろうか?

 リータが首をかしげたところで、揺れていた石がズズズ……とずれ、隙間から黒い何かが顔を覗かせた。

 

「なに、あれ……え?」

 

 次の瞬間、ソブンガルデの門から巨大な闇が広がったかと思うと、リータ達を飲み込み、彼女達の意識は消えていった。

 

 

 




ヴィントゥルース
実は協力するつもりだったが、そのツンツンな態度により誤解を招いてしまったうっかりドラゴン。本作のツンデレ枠。真言を操るくせにコミュ障。
初めから素直に対話しようとしていれば別だったが、健人を目の前にするとどうしても制御が効かない様子。
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