【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル   作:cadet

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ついにメインクエスト最終話。


最終話 開闢の虹石

“前へ……”

 

 思考すら凍り付き、全てが停止した、永遠の沈黙。その中に一欠片の火花が散る。

 それは僅かに残った健人の情動のかけら。闇の中に僅かに顔を覗かせるも、直ぐに『永劫の沈黙』によってかき消されてしまう。

 

“前へ、前へ……”

 

 パチ……パチ……。火花は何度もかき消される。繰り返し、繰り返し。永遠に消され続ける。それでも火花は愚直に、その身を弾けさせることを止めようとしない。

 

“前へ、前へ。たとえ死んだとしても、前へ……”

 

 弾け続ける衝動は、少しづつ、少しづつその頻度を増していく。そしてある衝動をほんのわずかな間だけ、顔を出した。

 

“魂を、震わせろ”

 

 ここまで歩み続ける原動力となった想い。その衝動が顔を出した瞬間、一気に無数の火花が弾けた。

 あっという間に閾値を超えた情動。

 一度噴き出した激情は止まらない。まるでダムが決壊したように、瞬く間に『永劫の沈黙』を打ち消していく。

 

“己の命を燃やせ。魂を震わせろ”

 

 闇に包まれていた意識が戻り、身を焦がすような熱が戻ってくる。

 視界の闇が解かれ、モノクロの光景に色が戻ってくる。

 目の前には、アルドゥインの姿。そして、眼前に浮かぶ、小さな石。

 

“たとえ力を失っても、大切な人達と二度と会えないのだとしても震わせろ”

 

 そこにあるはずのないものを掴もうと、虚空に手を伸ばす。バキバキと凍り付いた時空間を引き剥がしながら。

 

“過去を憂うな。未来を悲嘆するな。全ては今、この瞬間の連続でしかない。あの世界で見続けた勇敢な彼らのように。最後まで……”

 

 伸ばした拳を握りしめ、声にならない雄叫びを上げながら振り払う。

 次の瞬間、『永劫の沈黙』は限界をむかえ、パリン! と乾いた音を響かせながら霧散した。

 

「っ――――――――――!」

 

 空間、時間はおろか、次元すらも凍らせたはず。にもかかわらず、健人は僅か十秒ほどで復活していた。

 眼前には、目を見開きつつも、どこか悟ったような表情を浮かべたアルドゥインがいる。

 

“やはり……お前が私の石か!!”

 

 虹色の竜人が掲げる手。そこには彼が纏う鎧と同じ、虹のように輝く石が乗っていた。

 小指の先ほどの、小さな、小さな石。

 

“ドレム、ウル゛、ナーロッド!”

 

 その石を見た瞬間、反射的にアルドゥインが『永劫の沈黙』を放っていた。

 全力以上の力を込めて放たれたシャウトは、瞬く間に健人を飲み込み、再び彼の魂と肉体を氷漬けにする……そのはずだった。

 

「っ!」

 

 健人が石を握りこんだ拳を突き出す。

 虹色の渦巻く光を纏った拳が『永劫の沈黙』と接触した瞬間、アルドゥインの絶対零度のスゥームはまるで存在しなかったかのように霧散した。

 始原の声の力も使わず、絶対が覆されたその光景を目の当たりにして、竜王は確信をもって叫ぶ。

 

“っ、石が……完全に覚醒したか!”

 

 石。

 世界を繋ぎ止めると言われる“塔”と対をなす存在。そして“塔”を動かすために必要不可欠なもの。

 

“開闢の虹石”

 

 殻の塔“アルドゥイン”と対をなす“石”である。

 その石を、タムリエルの人々はこう呼んでいた『ドラゴンボーン』と。

 持つ力は、その名が示すとおりの開闢。完全な“永遠と静”を体現するアルドゥインと正反対の“混沌と動”を司り、ただ力を込めて殴りつけるだけで、アルドゥインの『永劫の沈黙』すら霧散させてしまう。

 その力の本質は、たとえ可能性が完全な『0』であっても、那由多分の一の例外を作り、それを必ずつかみ取るという規格外の能力である。

 

「っ……っ!!」

 

 喉が潰れてしまっているからか、声にならない雄叫びを上げながら健人が踏み込む。

 開闢の虹石に触発されたのか、虚無の海から虹色の光が無数の帯となって宙を舞い、健人に集約。まばゆい燐光を纏いながら健人はアルドゥインに突撃していく。

 残り10歩。

 

“ぐ……っ!?”

 

 アルドゥインは己が知る限りのシャウトを全力で放つが、健人が振るう『開闢の虹石』の力を前に、瞬く間に消し去られていく。

 残り5歩。

 今の健人を突き動かすのは、ただ只管に強い想い。たとえ死に直面しようが、世界が滅ぼうが消えることのない、文字どおり不滅の意志。

 そして、その意思こそが、『開闢の虹石』そのもの。

 今この瞬間、アルドゥインと本当の意味で同格となった健人は、竜王の力を全て散らしながら吶喊する。

 

「――――――――――!」

 

 残り3歩。

 アルドゥインが迫る健人を迎撃しようと、右の爪を振りかぶる。

 突き入れた爪撃は音速を超えて健人に迫るも、彼は拳を振り上げ、正面から迎撃した。

 開闢の虹石の力を込めた拳は、はるかに巨大なアルドゥインの右爪を粉砕する。

 

“ぐう……!”

 

 残り2歩。

 竜王は咄嗟に残った左爪を薙ぎ払うも、これも健人の拳に振り払われて消滅させられる。

 

「っ―――――!」

 

 残り1歩。

 健人が最後の力を振り絞って踏み込み、掲げた拳に、己の存在全てを込めて振り抜く。

 迫る拳を前に、アルドゥインは目を見開き、そして悟ったかのように小さく笑みを漏らした。

 

“ああ、これが我の結末か……”

 

 振り抜かれた拳が、アルドゥインの胸板を捉える。

 次の瞬間、まばゆい閃光が虚無の海に走った。

 

 

 

 

 

 

 視界に満ちていた光が、徐々におさまっていく。

 全身に走る痛みをこらえながら健人が顔を上げると、そこには首を垂れ、見下ろしてくるアルドゥインがいた。

 

“お前の勝ちだ、ケント。我の対となったドヴァーキンよ”

 

 静かな、しかし威厳のある声が、健人の耳に響く。

 先ほどまでの戦意が嘘のように消え去り、微動だにしない竜王。全身からは諦観にも似た空気を醸し出しながらも、その目にはなぜか達成感が垣間見えた。

 

“ケール゛、セ、ドヴ、ジュン。我を破った勝者よ、魂の番よ。これを受け取れ”

 

 アルドゥインが口を開く。するとそこから、黄金の巻物が姿を現した。

 それは、アルドゥインが奪い取っていたはずの星霜の書。だが、健人の前に出現した星霜の書は、世界のノドで見た時よりもはるかに荘厳な光を纏っていた。

 

“ケル、ユヴォン。完全なる星霜の書。これと我の虚無の海、そしてお前の開闢の虹石を使うことで真に新たな創造を行うことができる”

 

 それは、無数に分裂し、タムリエル中に四散していたすべての星霜の書が、アルドゥインの腹の中で合体したものだった。

 まさしくアルドゥインの言う通り、完全なる星霜の書である。

 そして星霜の書は、まるで差し出されたように、健人の前へとゆっくりと降りてきた。

 

 ビキリ……。

 

 何かがひび割れるような音が響く。よく見れば、健人が拳を打ち込んだアルドゥインの胸板に、大きな亀裂が張っていた。

 刻まれた傷は瞬く間に広がっていく。

 同時に、虚無の海の空にも、皹が入り始めた。

 

“我は世界卵の殻。殻は雛が生まれればその役目を失う。世界がどのような形に生まれ変わろうと、我は死ぬ運命。初めからわかっていたことだ”

 

 胸板から広がった傷がアルドゥインの足を砕く。

 あれほど強靭で鋭かった爪も、しなやかで艶やかな尾も、世界を覆うほどの闇を抱く翼も、千々に引き裂き、飲み込んでいく。

 

“それでも、我は望んだ。兄弟たちが、新たなチャンスを得られることを……”

 

 己の体が消滅に向かう中も、アルドゥインの独白は続く。

 同格になった存在に、対となった者に、せめて自分の想いの足跡を残しておきたいのだろうか。

 そんな彼の言葉に応えるように、健人は口を開く。

 

「ひゅっ……ひゅっ……」

 

 だが、出てくるのは破れた喉から溢れる息遣いのみ。

 今、思いを言葉にして伝えられないことが、健人は残念でならなかった。

 もう、わだかまりはない。人とか竜とか、そんなことは関係ない。

 互いに全力を尽くしてぶつかったからこそ感じる一体感。

 それが妙にこそばがゆく、同時に寂寥を覚えさせる。

 

“プルザー。良い、たとえ完全にやり直せなかったとしても、ここでの記憶は兄弟達の魂に刻まれるだろう。それが、ゼイマー、アーク。兄弟達、そしてこれからの世界に生きるすべての者達の道しるべになることを願う”

 

 ここに来てもなお、真なる竜王は只々、彼が守ってきた世界を案じていた。

 そうこうしている間にも、世界殻に走る皹が、加速度的に増していく。

 

“時間はない。今我が消えれば、この世界卵は産まれる前に死んでしまうことになる”

 

 アルドゥインの言葉に、健人も小さく頷いた。

 沈黙を保っていたはずの虚無の海が、激しく震えはじめた。健人の開闢の虹石に触発されているのだ。そして、アルドゥインの世界殻は、今まさに砕けそうになっている。

 このままでは、世界は何の形も持てないまま、消えてしまう。

 もう……時間がない。

 

“我は、自らの願いをかなえようと、全力を尽くした。お前も、己の願いの為に、最後の務めを果たすといい。己の魂の、震えるままに……”

 

 アルドゥインの言葉に健人は再び頷く。

 その答えに、世界の全てを背負おうとした竜王は、満足そうに笑みを浮かべる。

 それは、かの厳めしいアルドゥインには似つかわしくないほど穏やかな笑顔だった。

 すでに体の大半が消えているアルドゥインの前で、健人は彼が吐き出した『完全なる星霜の書』に手を伸ばす。

 そして黄金の巻物を手に取るとそれを一気に開いた。

 引き出された巻物は無限に伸び、渦を描きながらひび割れた虚無の空を覆い尽くしていく。

 そして、虚空に巨大な魔法陣を描き出す。

 世界のノドで見た時よりもずっと複雑で、神秘的で、そして穏やかな光を湛えるそれが、健人に語り掛けてくる。

 どんな世界を望むのか? と。

 これまでのタムリエルの全ての歴史、そしてあらゆる世界を生み出す法則を内包した魔法陣。その問い掛けに、健人は声にならない声で答える。

 

“……決まっている”

 

 魔法陣の一角に手を伸ばす。

 彼の意思に答えるように、全天を覆う魔法陣がひときわ大きく輝く。

 そして、呼応するように黒に染まっていた虚無の海は虹色に眩く光り、アルドゥインと健人の意識は世界創造の閃光の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 エセリウス。

 神々が住まうこの領域で、九柱の神々が顔を突き合わせていた。

 彼らの眼下には、今まさに作り直されたニルンの姿がある。

 アルドゥインの暴走。

 元々は自分達の保険として作り上げていた者は、まだ世界が安定しなかった時代に神々の思惑とは違う行動を取り、結果、その存在意義を失った。

 彼の役目は、世界を統治しつつ、その世界が修復不能なほどに荒廃した際に、全てを滅ぼし、新たな世界の卵となること。

 かつて、今の世界を作るための『創造』により、数多の神々の消滅、そして不死性の喪失という、大きな代償を払ったエイドラ達が、再び『創造』を行うための手段。

 それが、アルドゥインとドラゴンボーンだった。

『創造』は、相反する強烈な概念の衝突が必要不可欠。かつてのニアとパドメイ、そしてアカトシュとロルカーンのように、強い『秩序、定常、永遠』の概念と『混沌、有限、定命』の概念が。

 そして、今回の『創造』も、神々たちが思う通りの存在によって行われるはずだった。

 アカトシュの長子アルドゥインと、最も強力な最後のドラゴンボーンによって。

 また、この工程はエイドラ達の保険であると同時に、ロルカーンの干渉力をさらに削るためでもあった。

 定命の者は、ロルカーンの影響を強く受けた、彼の子供。だからこそ、その者達の中から新たな世界創造の担い手をアカトシュが選ぶことで、ロルカーンの影響力を完全に消し去るつもりだったのだ。

 定命の者にアカトシュが祝福を授け始めた時、この計画は、本格的に始まっていた。

 だが、アカトシュの番として世界創造を行ったのは、異世界からの来訪者。

 自分達でも全く干渉できない、文字どおりのイレギュラー。

 これの存在によりアルドゥインがかつての記憶を取り戻し、同胞が抱えた歪みを正そうと世界を食い始めた。

 この時は流石にアカトシュもニルンに直接干渉すべきか迷った。

 しかも、そうこうしている内に、アルドゥインはこのイレギュラーの力すら利用し、父親が考えつかぬ速度でニルンを食い尽くす始末。

 こうなると、神々ももはや手出しできない。下手をすれば、せっかく用意した保険を自分達の手で壊しかねないのだ。

 そのため、神々は戦々恐々としながら、この戦いの結末を見守るしかなかった。

 

 結果は……とりあえず胸を撫で下ろすもの。

 

 世界はアルドゥインが食い尽くす直前の状態に再構築。全ては元通りに戻ったのだ。

 自分達が再び『創造』を行う機会を失ったことを除いて。

 アルドゥインは消滅した。エイドラ達は自分達が施した保険を失った。

 これはもはや仕方のないこと。失われた以上、もはやどうしようもない。

 

 残った問題は『開闢の虹石』について。

 

 異界の存在が『殻の塔の石』に至ったことで、開闢の虹石はエイドラ達の手から離れてしまった。

 ある神は言った。この者は我らに遺された最後の保険足りえる。故に、我らと同じ存在へと昇華させるべきである。

 また別の神は言った。いや、こやつはロルカーン以上の混沌の体現者。今ここで、消しておくべきである。

 神々の討議は紛糾するも、答えは出ないまま、只いたずらに時が過ぎていく。

 そして結論は、この存在を生み出すきっかけとなった、神々の長へと向けられた。

 向けられる八対の視線に時の竜神は静かに瞑目すると、今一度、アービスの中を漂う末子へ目を向ける。

 時の竜神にとっても、頭の痛い存在。事の元凶であるが、自分たちの子供を救ってくれた者でもある。

 神々への敬意はないが、その善性は疑うべくもない。

 今一度、溜息を吐きながら時の竜神は瞑目する。そして、長い間、沈黙し続けた彼は、重々しく口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくりと意識が戻ってくる。

 眩い陽の光に思わず右手をかざし、目を細める。

 空に浮かぶ太陽から感じるマジカ。スカイリム特有の冷たい空気が、肌を刺す。

 間違いなく、スカイリムの空気だった。

 なぜタムリエルに戻ってこれたのかという戸惑いを抱きながらも、込み上げる嬉しさに、健人は思わず「帰ってきた」と呟く。

 

「っ…………っ!」

 

 だが、僅かに開いた口から声は出ず、擦れた息が漏れるだけ。

 上げていた右手を喉に手を当てれば、堅く、ひきつった皮膚の感触が返ってくる。

 本能的に直感した。声を無くしたのだと。

 再び右手を掲げ、手の平に視線を移す。あの虚無の海で溢れていた力も、すっかり消え去っていた。

 もしかしたら、あの力は殻の塔であるアルドゥインの中にいたからこそ、使えた力なのかもしれない。

 声を無くし、開闢の虹石としての力も失った。

 でも不思議と、後悔は湧かない。この世界に来たばかりの時のような悲嘆の感情もこみあげてこない。

 空には、刺すような肌寒さとは相反するような、まばゆい太陽が見下ろしてくる。

 体を起こせば、ばらばらと乾葉が服から落ちてくる。

 傍らには、蒼い刀身の短刀と、黒紅のブレイズソードが落ちていた。

 それを大事に鞘に納めて立ち上がる。ボロボロになり、既に用をなさなくなった竜鱗の鎧を脱ぎ捨てると、周囲を見渡してみる。

 どこか高い山にいるのか、眼下には松の木が生い茂る森と、大きな湖、そして湖畔に築かれた街が見えた。

 

(さあ、帰ろう)

 

 アルドゥインは消え、世界は再構築された。

 一度大きく深呼吸をして、足を踏み出す。

 丘を降り、ひとまずは湖畔に見えた街へ。その足取りは力強く、しっかりと大地を踏みしめていた。

 空にから見下ろす太陽が、彼の行く末を見守るように、揺らめく。

 一つの物語が終わり、そして新たな物語が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第4期205年。

 ウィンドスタッドにて、一人の少女が肌寒い風の吹き荒ぶ中、丘の上から広大な湿地帯を眺めている。

 アルドゥインとの最終決戦から三年。ウィンドスタッドにて、彼女は兄の帰りを待ち続けていた。

 小高い丘の上の邸宅。その周囲にいくつかのこじんまりとした家々が立ち並ぶ。

 三年前、世界は一度闇に包まれた。

 ずっと遠くの東方から広がった闇は瞬く間に世界を包み込み、そして全ての人達が同時に意識を失った。

 でも、目を覚ました時、世界は何も変わっていなかった。

 この出来事は『瞬きの闇』事件として、一時期世界中で話題になった。

 他に変わったことと言えば、スカイリムはおろか、タムリエル中のドラゴン達が、一時期完全に姿を消していたこと。

 最近は再び姿を見せるようになったが、これまで何をしていたのか全く分からない。 

 ただ、世界のノドの頂上で、複数のドラゴンが入れ代わり立ち代わり、誰かを待っている様子が見受けられていた。

 

「兄さん、まだかな……」

 

 兄の呼び名を口にしながら、少女は愛する兄を待ち続ける。

 三年前の頃と比べて伸びた背。まだ少女としての面影を残しながらも、彼女は徐々に女性として花開き始めていた。

 三年という月日が過ぎ、既に死んでしまったのではと口にする人は多い。あのアルドゥインと相打ちになってしまったのだと。

 必然として、少女は兄の後を継ぐことになった。

 ハイヤルマーチホールドの端ではあるが、元々農業が可能な土地。食べていくためにも開拓は必須であった。

 兄が残してくれた黒檀の鉱山の採掘権からの定期的な利益で人を集め、畑を耕し、作物を作る。最初の一年は全くうまくいかず、二年目でどうにか小麦と少しの野菜を作れるようになった。

 そして三年目、事業はようやく軌道に乗り、いくらかの小麦をモーサルに送ることも出来るようになってきた。

 そうなると、必然として少女は目を付けられるようになる。

 幼い彼女から利権を掠め取ろうとする者、財産を盗み出そうとする者。挙げればきりがない。女性として魅力的になり始めた為に唾をつけようとする者も出始めていた。

 小さな村ではあるが、上に立つ者としてのプレッシャーは重く、何度くじけそうになったか分からない。

 精神的に打ちのめされたことも多い。それでも少女は、立ち上がった。

 その目に、待ち焦がれる兄の背中を思い浮かべながら。

 

「あっ……」

 

 遠く、湿地帯の脇を、二つの人影がウィンドスタッドの丘へと向かってくる。

 その内の片方を見た瞬間、少女の全身に痺れが走った。

 

 帰ってきた。帰って来てくれた!

 

 人相など分からないはるか遠くの人影。でも、少女は確信を抱いて駆け出した。

 ずっと待ち続けた、愛する人の元へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい……って、お兄ちゃん、その人だれ!?」

 

「あら、可愛らしい子ですわね。貴方の妹さん?」

 

 なぜか、黒髪の超美人を連れていたが。

 晴れた寒空の下に、少女の妬心が爆発した。

 

 

 

 

 

 FIN

 





いかがだったでしょうか。
これにてThe elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウルのメインクエストが終わりとなります。
足掛け四年と少し。総文字数約100万文字。途中で色々と個人的なイベントが頻発したためにかなりの鈍足となりましたが、ここまで長い間読んで頂き、ありがとうございました。
元々は異世界転移小説の練習目的で書き始めた小説。まさかここまで長くなるとは……。いや、相も変わらず、見積もりが甘いと言いますか……。
一応メインクエストが終わったので、完結表示といたします。
考えていたドーンガード編は……いつになるか分かりません。最後にちょっとセラーナさん出てますけど(笑

最後に、ここまで本作を読んで頂き、ありがとうございました。
評価、感想等を頂けると、今後の執筆活動の励みになりますので、よろしくお願い致します。
ついでに、筆者が書いているオリジナル小説も応援していただけたら……(欲深い!


以下、用語説明!

開闢の虹石
殻の塔、アルドゥインと対となる石。
世界創造を行うための最後のピースであり、混沌の輝石。根源の片割れ。
可能性が完全なゼロであっても那由多分の一の突破口を生み出し、それを必ず掴み取るという桁外れの能力を持つ。絶対、不変、不滅を纏めて打ち消し、定常の法則をひっくり返す。
定命の概念を持つ者のみが手に出来る力であり、創造を行う上で必要不可欠なもの。
坂上健人が至った存在であり、これにより、彼はアルドゥインを撃破。
星霜の書を用いて、世界を食われる直前まで巻き戻して再構築した。


坂上健人
本小説の主人公であり、最終的に神々の間では『開闢の虹石』と呼ばれる存在へと至る。
ドラゴンボーンとしての極致に至り、おなじくドラゴンの極致に座するアルドゥインを撃破。タムリエルを救うことになる。
その後、なぜかスカイリムに帰還するも、竜王と並ぶほどの声の力を失うことになった。
彼が行った世界再構成はタムリエル史上最大級のドラゴンブレイクである。
定命の者達は彼の偉業を認識すらできないが、時の流れに敏感なドラゴン達は何が起きたのかを察しており、この偉業に感化された数匹が、数年後も彼を探してタムリエル中を飛び回っている。
その中には、特徴的な赤い鱗のドラゴンと、黒鱗を纏う雷を操るドラゴンもいた。


アルドゥイン
世界を喰らう者としての運命を背負わされた竜王。
元々は定命の者達を神々の意志の元、統治するために遣わされたが、神々ですら持て余していた星霜の書に手を出したことで、同族を歪め、自身が守っていた世界を破壊してしまった。
以後、混沌の影響を受けた彼は強い力への渇望と支配欲を抱えることになったが、健人との戦いの中で本来の自分を取り戻す。
以降は贖罪として世界を再構成するべく、暗躍。最終的には世界の全てを砕き、己の願いをかなえるまであと一歩まで近づく。
しかし、最後の最後で己と対である『開闢の虹石』として覚醒した健人に敗北した。
己の願いが叶わなかったアルドゥインだが、文字どおり全力を尽くした彼は今わの際には憂うことなく、兄弟と己が守っていた定命の者達の未来を願い、消滅する。
その姿は、世界を見守るべく作られた王としてふさわしい最後であり、彼は最後の最後で、本当の意味で世界を守る竜王へと戻ることができたのだった。


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