【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル   作:cadet

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第五話 一夜明けて

 初日の仕事を終え、与えられたテントで一晩を過ごした健人は、起きるとすぐに顔を洗うために湖へと向かった。

 ホンリッヒ湖。

 スカイリムの中でも最大の湖であり、リフテンの漁業と交易を支えている重要なその湖は、冷たく、そしてとても澄んだ空気に満ちている。

 健人は『蒼の艶百合』の面々のテントからは少し離れた、陰になる場所を見つけると、湖の冷水を手の平ですくい、顔にかけた。

 肌が引き締まる感覚と共に、体に残っていた眠気が覚めていく。

 

「ふう……」

 

 頭がさえたところで、上着を脱ぐ。上半身をさらすと布を取り出し、そのまま湖の中へと足を踏み入れる。

 刺すような冷たさ。腰まで水に漬かったところで、取り出した布を湖に浸して体をふき始める。

 毎日風呂に入る習慣のある日本人にとって、スカイリムの環境はかなりきつい。

 体を洗うための石鹸なども貴重なため、健人は可能なら一日に数回、水浴びをするのが習慣になっていた。

 そうして湖畔で水浴びをしていると、ふと人の気配を感じ取った。

 顔を上げて気配の方に目を向けると、美しい金髪のブレトンが、健人と同じく水浴びのために湖のほとりを訪れていた。

 

「あら、お早いのですね」

 

 ブレトンの女性、メリエルナ。

 彼女は驚く健人を他所に寝間着を脱ぎ、その豊かな裸身を惜しげもなくさらしたまま、湖面に座り込むと、水をすくって己の体にかけ始める。

 はじけた水滴が絹のような肌にはじかれ、艶めかしい曲線を描きながら流れ落ちていく。

 じろじろ見るのは良くない。そう思い、健人は気恥ずかしさと共に視線を逸らし、背を向ける。

 

「ふふ、そんなに気にしなくてもよろしいのですよ?」

 

 一方のメリエルナはコロコロと笑顔を浮かべながら、水浴びを続ける。その口調に、健人に対する羞恥はなく、むしろ興味深げな様子をうかがわせていた。

 

「聞きましたわ。ルナを助けてくださったそうですね」

 

 突然背中越しにかけられた言葉。穏やかながら、安堵を漂わせる声色だった。

健人は振り返ることなく、首を振る。

 確かに、結果的にそうなったが、実際の決め手はクレティエンが連れてきたメイビン・ブラックブライアだ。

 いや、力づくで解決できたのかと言われれば可能だっただろうが、その場合、間違いなく面倒事になる。

 モーサルに戻るまで、できるだけ騒動は起こしたくない。それが健人の正直な気持ちだった。

 

「謙遜される必要はないですわ。あの子も、内心では感謝しております」

 

 一方、メリエルナは構わず言葉を続ける。

 背中を向けているために表情は分からないが、声の端々は上ずっていた。

 

「ルナは、ここリフテンの孤児院にいたそうですが、三年前にその孤児院の院長が殺されたため、孤児院は閉鎖となってしまいました。拠り所を失った彼女のその後は……悲惨だったでしょう」

 

 つまりは……浮浪児。

 ルナになにがあったのか、健人には推し量ることしかできないが、先日の男性に対する怯えようを見る限り、絶対に碌な目にあってこなかっただろう。

 

「幸い、ルナもここに身を寄せることができ、さらに自らの身を立てられるだけの才がありました。しかし、まだ薄氷の上。最悪の場合、昨晩の内に彼女は心も体も壊されていたかもしれません。帝国とストームクロークが停戦しているとはいえ、最近はとてもきな臭くなっておりますし……」

 

 そういえば、内戦を起こしていた両陣営の状況はどうなっているのだろう。

 きな臭くなっているという話は聞いてはいたが、詳細はまだ知らない。

 健人はメリエルナの方を見ないようにしながら、持ち歩いている黒板を使い、帝国とストームクロークの現状について尋ねてみる。

 

「停戦自体は続いております。しかし、いつまた開戦となってもおかしくありませんわね。特に最近は、マルカルスからの銀が滞っているらしいですし……」

 

 ストームクロークと帝国の停戦条件の中に、マルカルスからの銀を半分ストームクロークに提供するという内容があった。

 しかし、どうやらその銀が、中々届いていないらしい。

 そのせいで、ストームクローク側がかなりピリピリしているのだとか。

 

『停戦を成したドラゴンボーンは……』

 

「今はホワイトランに住んでおりますわ。同じ女性として、彼女の名声は正直うらやましく思います」

 

 どうやら、リータは今でもホワイトランにいるらしい。

 モーサルに戻る途中で顔を出しておこうと思っていたから、健人としては安堵する情報である。

 

「それにしても……」

 

(……ん? うえ!?)

 

 突如として、背中に走る冷たい感触。

 それがメリエルナの指先だと分かり、健人は思わず背筋を振るわせた。

 

「ふふ、意外ですわね。てっきり、細身の方かと思いましたけど、服の下はこれほどまでに鍛え上げられているなんて……」

 

 服を着ているとわからないが、健人の体は度重なる戦いの中で鍛え上げられたもの。

 指先だけでなく、手のひらが背中に当てられた。

 さわさわ、さわさわ……。

 まるで秘所を愛撫するかのように、メリエルナは健人の背中を優しくまさぐり始める。

 ビリビリと背筋に走る痺れに健人が思わず身を固くする。その間、彼女はスッと流れるように彼の前に回り込んだ。

 そして、のぞき込むように、健人に顔を近づけてくる。

 

「目も、とても素敵ですわ。思わず吸い込まれそう……」

 

 まるで、これからキスをするのではと思えるほど近づく、端正な顔。

 健人は再び目を背けようとするも、その見上げてくる目に思わず目を奪われる。

 まるで井戸の底を覗き込んでいるかのような、鈍い光を湛えた瞳。

 その時、彼女の腕や首に布が巻かれているのが目についた。

 

「ああ、これですか? 昨日の殿方はとても情熱的な方だったので、少し跡になってしまったのですわ」

 

 そうして彼女は、すっと左手で首に巻かれた布をズラす。

 首の左側、布に隠れていたキスマークを思わせる赤い跡が露わになる。おそらく、昨日の情事の跡だろう。

 

「そんなことよりも……これから少し、遊びません?」

 

 昨日の男との情事を匂わせているにもかかわらず、メリエルナは健人を誘惑してくる。

 男はおろか、女ですら思わずうなずいてしまいそうになるほど魅惑的な声。

 しかし健人は、その『声』に、虫が背筋に這い寄ってくるような感覚を覚えた。目を細め、密着していた彼女の体を離す。

 

「つれないですわね。こう見えて、それなりにお誘いを受けている身なのですけど……」

 

 残念そうに口元をへの字に曲げながら、メリエルナは健人の脇を抜けると、そのまま湖から上がり、服を身に着け始める。

 

(なんというか、凄まじく二面性を感じさせる女性だな)

 

 慈愛に満ちた女性から、一転。香しい匂いを漂わせる蠱虫に代わるその様に驚いていると、湖に面した茂みがガサリと音を立てた。

 

「なにをしてる……?」

 

「あら、レキナラ。おはよう」

 

 揺れた茂みから聞こえてきた声。健人が顔を向ける。

 あきれつつも、怒りを漂わせる声をかけてきたのは、レッドガードの娼婦、レキナラだった。

 彼女もおそらく、朝の水浴びに来たのだろう。

 薄手の寝間着のまま、健人とメリエルナを睨みつけてきていた。

 

「……朝から元気だな、メリエルナ。そちらの新人も、いきなりこの旅団トップの女をひっかけるとは、見た目によらずお盛んなことだ」

 

 とんでもない誤解である。向けられる刺々しい視線に、健人は渋顔を浮かべた。

 

「ふふ、なんでもありませんよ。ちょっと気になる体つきだったので、思わず手が出てしまっただけです」

 

「まったく、お前の気になった男に手を出す速さには呆れているが……」

 

「ごめんなさい。今回はちょっと悪ふざけをしただけだから」

 

「まあ、ズボンが脱げていないということは、未遂だったのだろう……」

 

 メリエルナが先ほどと同じ慈愛に満ちた笑みを浮かべながらレキナラに近づき、彼女の首に両腕に腕をかける。

 一層強くなる、甘い香り。

 間近から微笑みかけてくるメリエルナに、レキナラが頬を朱に染めながらそっぽを向いている。

 

(ああ、なるほど……)

 

 二人の関係を察し、健人は静かに気配を押し殺す。

 できるなら、こっそりとこの場を去りたかったが、生憎と今は湖の中。自ら上がるのに、どうしても波や音を立ててしまう。

 そんな健人の気持ちなど気にせず、抱き合い続ける美女二人。

 数十秒か、数分か。水の冷たさにいい加減体が震えそうになる頃、レキナラから身を離したメリエルナが、再び健人に近づいてきた。

 

「でも、実際すごいでしょ、ケント様の体! ほらほら、これって明らかに刀傷よ? どれだけの戦いを潜り抜けてきたのかしら……」

 

「だから、いつもいつも連れ込んだ男の体を自慢するんじゃない! まあ、確かに戦士としては理想的な体をしている。もしかして、傭兵だったのか?」

 

 再び至近距離に迫ってきた美女。さらにもう一人追加されている。先ほどの倍のプレッシャーに押され、健人はバチャリと水を跳ねさせながら後退る。

 一方、二人の美女はそんな健人の体に遠慮なく指を這わせ始めた。

 ツンツン、サラサラ、スリスリ……。

 くすぐったさか、恥ずかしさか、それとも水の冷たさゆえか、彼女たちが触れるたびに、健人の体が震える。

 

「あらあら、可愛いですわね。どう、レキナラ。これなら……」

 

「ふむ、そうだな。いけるかもしれん」

 

 なんだか嫌な予感がする。

 最近よく感じるようになった悪寒に突き動かされ、健人は二人の美女から距離をとると、そそくさと岸にあがった。

 そのまま上着を手に取り、自分のテントへ。その間もメリエルナとレキナラは湖畔でずっと話続けていた。その内容を健人が知るのは、もう少し後のこと。

 その後、健人は朝食……というには少し早い食事の用意のため、炊事場に向かう。

 夜職はとにかく、寝るのが遅くなる。その為、昼には少し早い段階で食事をとるのが常らしい。

 

「あっ……」

 

 そこには既に、ルナがいた。彼女は一足先に、食事の準備を始めていたようだった。

 まだ見習いの身ではあれど、昨日の夜にあれだけの演奏を披露したうえ、トラウマをえぐられたのだ。

 しかし、今の彼女には多少の疲労は残っているように見えるが、昨日の時に見せた強烈な恐怖感は薄まっているように見える。

 

「お、おお……、お」

 

(お?)

 

「お、おは、よう……」

 

 健人の目が、思わず点になった。

 あのルナが、自分から挨拶をしてきた。男が相手になると、触れるだけで恐慌に陥るような彼女が。

 数秒の沈黙ののち、健人は慌てて黒板を取り出し、白墨を走らせる。

 

『おはよう』

 

 掲げられた文字に首を傾げながら、ルナが問いかけてくる。

 

「おはようって、書いてあるの?」

 

 健人が頷くと、ルナは興味深そうに、どこか嬉しそうに、掲げられた黒板を覗き込む。

 

「へえ、こう書くんだ……」

 

 その瞳の奥に輝き始める好奇心。その視線が、期待感と共に黒板から健人に戻る。

 向けられる期待に彼女が何を言いたいのかを察した健人は、苦笑を浮かべながら、再び白墨を走らせ、彼女を指さしながら掲げる。

 

『ルナ・フォアシールド』

 

「これ、私の名前?」

 

 書いたのは、彼女の名前。

 健人が再び頷くと、先ほどよりも強い光を帯び始める。

 

「これが……」

 

 ルナは思わず手を出し、黒板に書かれた文字に指を走らせる。

 孤児院にいたと言っていたが、基本的な読み書きを教わったことがなかった彼女。自分の名前も、文字として見せてもらったことがなかった。

 孤児院で彼女がどのような境遇だったのかを察し、健人は内心不憫に思いつつも、努めて顔には出さないようにしながら、ルナの様子を見守る。

 

「……ねえ、じゃあこれはなんて書くの?」

 

 持ち上げたのは、テーブルの上に山積みにされた木製の皿。朝食に使うものだ。

 

『皿』

 

「これは?」

 

『包丁』

 

 ルナは、好奇心にキラキラと目を輝かせながら、次々と矢継ぎ早に身の回りのものを指し示し始め、健人は質問を受ける度に、黒板に文字を書き続ける。

 わずかに残っていた負の気配が、完全に掻き消えていき、年相応の少女の明るさがでてきていた。

 そんな彼女の変化に、健人も自然と頬が緩み、苦笑が漏れる。

 

「あ……ふん!」

 

 そんな健人の反応に、ルナは自分が今どんな顔をしているのかに気づく。

 ハッと目を見開き、続いてこれまでのような、ムスッと顔を浮かべるが、直前のはしゃぐ様子に、健人は苦笑を浮かべる。

 健人の様子に、ルナの顔がますます不機嫌になっていくが、健人としてはどうしても頬が緩むことを禁じ得ない。

 

「おや二人とも。随分と仲良くなったみたいだね」

 

「あ、クレティエンにセラーナ……。べ、別に仲良くなんてしてないわよ!」

 

 そんな中、寝起きのクレティエンとセラーナが二人に話しかけてきた。

 クレティエンは質の良い絹の寝間着を羽織ったまま、ニヤニヤと意味深な笑みを浮かべている。

 一方、セラーナは一見平坦な表情を浮かべているように見えるが、健人と視線が合うと、小さく口元を緩ませ、微笑んでいた。どうやら、昨日の会話で隔意も消えてくれたらしい。

 

「そうそう、一週間後、ちょっと遠出することになったから」

 

「遠出って、どこに?」

 

「それについては、後で話すよ。とにかく、準備が必要だから、ケントには色々と働いてもらう」

 

 遠出という言葉が少し気になったが、仕事であるなら仕方ない。元々、力仕事などの雑務のために雇われているのだ。

 健人はとりあえず、朝食の用意をした後、クレティエンを手伝いながら、準備を始める。

 そして一週間後、彼らは護衛の傭兵や共に他の商人達と共に、リフテンを出て西へと向かうのだった。

 

「ああ、そうだケント、うちの売れっ子娼婦と朝から裸で水浴びなんて、随分と酷いじゃないか。どうして私も誘ってくれなかったんだい?」

 

(……うえ!?)

 

 一瞬呆け、そしてクレティエンの言葉を理解した瞬間、健人の全身からぶわっと冷や汗が噴き出した。

 

「……どういうこと?」

 

 心底がっかりといった様子で涙ぐむクレティエンに対して、隣のルナからかけられる声は背筋が凍るほど冷たい。

 誤解です。

 確かに、湖ではメリエルナから意味深な言葉を掛けられ、体を寄せられたが、そもそも断ったし、やましいことは一切していない。

 そもそも、その後にはレキナラが来ていた。その場を見ていたものがいれば、なんてことはない、偶然起きた事態だということは理解できるはず。

 というか、よく見ればクレティエンの口元が愉快そうに吊り上がっている。

 

(この女……面白そうだからという理由で出まかせを吐いた上、ウソ泣きまで……!)

 

『いや、誤解だ。俺が先に水浴びをしていたら……』

 

 そこまで書いて、健人はハッと気づく。

 ルナは文字が読めない。ということは、弁明すらできないのだ。

 一方、白墨を動かす手が止まったことで、ルナの方から向けられる視線が一層冷たさを帯び始める。

 ちらりと視線を上げてルナの顔を覗き見れば、まるでゴミムシを見るような瞳で健人を睨みつけている。

 先ほどまで上がっていた好感度が、まるでソルスセイムの大気のように急降下していた。

 

「クレティエン、悪趣味ですよ。ルナ、ケントは別に何もしていませんよ、メリエルナの悪い癖が出かかっただけです」

 

 そんな健人に助け舟を出したのはセラーナ。彼女も最初からクレティエンの妄言に気づいていたのか、額に手を当てて嘆息している。

 セラーナの言葉に、ケントの隣から発せられていた極寒の空気が、一気に消え去った。

 

「あ、そ、そうなんだ……アンタも危なかったんだね……」

 

(あの人、やっぱ相当な好き者だったんだ……)

 

 どうやら、メリエルナの好色さはこの旅団の中では有名らしい。なんというか、いかにもクレティエンと気が会いそうな女性だ。

 あの美人がこの残念貴族と一緒にいるのも、妙に納得してしまう。

 

「セラーナ、バラすのが早いよ。ケントがあたふたする様子を見ていたかったのに……」

 

「…………」

 

 さて、とりあえず危機は去ったが、落とし前はつけないといけない。

 健人は黒板をしまい、ゆっくりとクレティエンに近づいていく。

 相手は貴族だ。普通なら絶対に手を出してはいけない人物だが、調子に乗らせていい相手でもない。

 傷を残さず、さりとて十分な制裁が必要だ。この手の類のお調子者は、痛みなしに学ぶことは難しいのだから。

 

「さ、さて。新しい画材を用意しないといけないな! それでは、私はこれで……」

 

  健人の剣呑な気配を察したクレティエンが、そそくさと踵を返して立ち去ろうとする。

 そんな彼女の服の襟を、セラーナが掴み止めた。

 

「ちょ、セラーナ!?」

 

「クレティエン、さすがに今回は擁護できません。大人しく痛い目を見てください」

 

 セラーナが視線を向ける先には、ちょっと申し訳なさそうに健人を見上げるルナがいた。

 恩人を疑ったこと、少し悔いているらしい。

 昨日、あれほど男性に対して恐怖を覚えていた彼女からは考えられない反応。それだけ、健人に対して心を開きかけているとも言えた。

 そう考えれば、さすがに今回のクレティエンの行動を見逃すわけにはいかなかった。いくら何でも悪戯が過ぎる。

 ということで、セラーナは押さえ込んだクレティエンを引っ張り、肩を押さえて無理やり健人と相対させる。

 クレティエンはジタバタと暴れているが、セラーナは吸血鬼。この色欲塗れのお調子者が逃げられるはずもない。

 そして健人は、握りこんだ両こぶしをクレティエンのこめかみに押し当てた。それは、日本代表する国民的幼稚園児の母が、我が子に下す制裁。

 至近距離で睨みつけられた彼女は息を飲み、まるで蛇に睨まれた蛙のように硬直しながらも、往生際悪く声を張り上げる。

 

「わ、私は帝国貴族だぞ~~~~!」

 

(知るか~~~~!)

 

 最後の最後で情けないセリフを吐くクレティエンに、健人は思いっきり両こぶしをねじ煮込む。

 

「ぎゃああああああああ!」

 

 ホッリッヒ湖に、美しくも汚らしい悲鳴が木霊した。

 

 

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