【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル   作:cadet

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第十五話 冠履倒易

 

 セラーナは様子の一変したメリエルナと向き合いながら、眼帯の下の目を細める。

 向けられる、輝く異質な虹彩。それは間違いなく、自身と同じ吸血鬼特有の瞳だった。

 

「どういうことですの?」

 

「ふふ、そんなに怖い顔しないで。分かるでしょう?」

 

 いったい何が起きているのか。

 思わず口に出たセラーナの言葉に答えるメリエルナには、まったく悲壮感がない。

 吸血鬼の中には望まずになってしまう者もいるが、彼女の場合は自らなったのだろう。

 

「吸血鬼になったのですか……いったい、どうやって」

 

「ある方の御力をいただいて。おかげで、世界が変わりましたわ」

 

 吸血鬼になるには、サングイネア血友病という病にかかる必要がある。吸血鬼に噛まれることで感染するその病は、数日から一週間ほどかけて宿主の体を変化させていく。

 彼女が感染したのも、そのくらいだろう。 

 

「レキナラの方はまだ……」

 

「ええ。残念ですけど、彼女はまだ祝福を受けておりませんので……」

 

 一方、レキナラの瞳は変わらず、まだ人間であるようだ。

 得意気な顔で微笑むメリエルナと違い、レキナラはセラーナとは視線を合わせず、気まずそうな表情を浮かべている。

 レキナラがいつ、メリエルナが吸血鬼となっていることに気づいたのかは定かではない。しかし、彼女はメリエルナの恋人であり、メリエルナが従えている吸血鬼たちが虜囚を襲うことに口を出していないところを見れば、メリエルナの蛮行を許容しているのは確かだ。

 ここでメリエルナの吸血鬼に食われた者達の中には、『蒼の艶百合』の娼婦も何人か混じっていたのだから。

 

「いったい誰が……っ!?」

 

「私ですよ」

 

 耳元に静かな、しかし底冷えするような声が響く。

 そして、セラーナを隣で支えていた力がふっと消えた。

 反射的に両足に力を入れるも、太ももに怪我をしていたセラーナは走った痛みに、思わずその場に座り込んでしまう。

 声の主はセラーナに肩を貸していた男、キーロ。

 彼はセラーナの前に移動すると、おもむろに自分の顔に手を当てた。

 ミシリ……と爪が皮膚に食い込み、ミシミシとまるで樹皮を剝がれるような音が響く。

 白く濁った瞳が完全に色を失い、角膜がはがされる皮膚と共に敗れていく。

 

「貴方は……」

 

 曝け出されたのは、皮膚を失った剥き出しの顔面。

 鼻はそげ、赤黒く、血が滲む筋肉がむき出しになっている。

 そして、その瞳はやはり、吸血鬼の特徴である金色の光を帯びていた。

 

「お久しぶりですね、セラーナお嬢様。覚えておいでですかな? ディムホロウ墓地で、貴方を救ったロキルです。ようやく、再びお会いすることができましたな」

 

 ロキル。その名前に、セラーナは目を見開いた。

 彼は、ディムホロウ墓地に封印されていたセラーナを復活させた吸血鬼。

 配下の吸血鬼を率い、襲撃してきたステンダールの番人を返り討ちにした彼は、数千年間棺の中で眠っていたセラーナを目覚めさせた者だった。

 

「彼女を吸血鬼にしたのは、貴方だったのですね……」

 

「ええ。どうにも、力を欲していたようですので。実際、彼女は良くやってくれたと思いますよ」

 

「ありがとうございます、ロキル様」

 

 メリエルナが、ロキルに対して恭しく頭を下げる。

 一方、ロキルは彼女を言葉では誉めつつも、セラーナだけを見つめている。その目には興奮と色を帯びた熱があった。

 筋肉剥き出しの顔面も相まって、普通の人間なら思わず目を背けるほど不気味な眼差し。

 しかし、セラーナも吸血鬼。しかも、その中でも特に高貴な血を持ち、血と臓腑にまみれた道を歩んできた者。故に、淡々とロキルに尋ねる。

 

「その顔は……」

 

「ディムホロウ墓地で戦った吸血鬼ハンター。不覚にも、そのリーダーと思われる者につけられました。忌々しい限りです」

 

 セラーナを目覚めさせた直後、ロキルたちは吸血鬼ハンターの襲撃を受けた。彼が殺したステンダールの番人の友人達だった。

 吸血鬼ハンターは少数ではあったが、そのうちの一人がロキルでも手を焼くほどの猛者だった。

 特に、吸血鬼に対しての戦い方を熟知しているらしく、彼が放った魔法により、ロキルの配下の大半が討ち取られたのだ。

 その際にロキルも顔の皮膚が焼け落ちるほどの傷を負い、逃走。

 この戦いの最中、セラーナは混乱に乗じて逃げ、クレティエンに保護されたという経緯がある。

 

「あの戦いの後、顔を失った私は人間の皮を被り、奴らの一団に潜入しました。その後は、あの娼婦達と共にいる貴方を見つけ、今に至るというわけです」

 

 一方のロキルは、戦いの後、偶然近くにいた青年を殺してその皮をかぶり、ドーンガードに潜入した。

 吸血鬼の特徴である虹彩を隠すため、自分の犠牲者の角膜を剥ぎ、火をつけた蝋燭で炙って白く濁らせて、眼球に被せるなどの手間もかけた。

 そこまでして潜入したのは、当然、セラーナの探索。そして、ドーンガードと呼ばれる吸血鬼ハンターの情報収集のためだ。

 

「私のような超越者が人間どもの目を誤魔化さなくてはならないのは業腹でした」

 

 上位種としてのプライドが高い吸血鬼。ロキルはその中でも、古き血の一族に仕える、特に強力な吸血鬼の一体だ。

 当然、人間相手に隠れて情報収集を行うことに抵抗感はあったが、それを飲み込んでも、彼にはセラーナを探し出す理由があった。

 幸いにして、彼のような古い吸血鬼は、自らの血の力を制御することにも長けている。

 己の力を限界近くまで落とし、血の衝動をできる限り抑制することで、ドーンガードの目をかいくぐったのだ。

 しかし、その必要ももうない。ロキルは抑制していた己の力を解き放つ。

 ぶわりと深紅のマジ力が吹き上がり、無数の蝙蝠たちが彼の周りを飛び始める。

 そしてロキルはおもむろに手を伸ばし、セラーナの眼帯をずらした。

 新雪のように白く、完全なシンメトリーを描いた美貌が顕わになる。

 

「相変わらず、とてもお美しいですな。思わず見惚れてしまいます」

 

 ロキルの喉が小さく唸り、後ろに控えていたメリエルナとレキナラも目を見開き、射すくめられたかのように体を震わせた。

 彼女達も、セラーナの素顔を見たことはない。

 吸血鬼の中でも飛び抜けた美しさ。それ以上に、自分達のような吸血鬼とは明らかに違うオーラを放つ瞳。それらに瞬く間に飲まれたていた。

 一方のセラーナは、ロキルを拒絶するかのようにフッと顔を逸らし、眼帯を付け直す。

 

「その眼帯は、もう必要ないのではありませんか?」

 

 返ってくるのは沈黙。

 しばしの間、両者の間に静寂が流れる。

 その時、セラーナでもロキル達でもない、第三者の駆ける音が、集落へと続く道から響いてきた。

 

「貴方は……」

 

 駆けつけてきたのは、混沌とした戦場から戻ってきた健人だった。

 目の前の吸血鬼の集団と、それに囲まれているセラーナの姿と、同じくドーンガードの鎧を纏った顔無しの吸血鬼を見て、思わず瞠目する。

 

(これは、一体……)

 

 座り込んだセラーナと、彼女を取り囲む吸血鬼たち。

 その中に交じっている蒼の艶百合の仲間だったはずのメリエルナとレキナラ。メリエルナの虹彩は怪しく輝き、それが彼女もまた吸血鬼であることを物語っている。

 そして、吸血鬼の中でも異彩を放つ者。顔の皮が剥げ、筋肉がむき出しになっている吸血鬼。

 

(あの鎧は、ドーンガードの鎧。ってことは、まさか……)

 

「ほう……邪魔が入ったか。メリエルナ、分かっているな」

 

「はい、お任せください」

 

 冷たく、尊大な口調になってはいるが、声質は間違いなくキーロ本人のもの。

 同時に、健人はこの事態の主犯が誰なのかを察し、眉を顰めた。

 吸血鬼の厄介さは彼自身身に染みている。モーサルでも、吸血鬼は同じように配下を潜り込ませ、内側から支配しようとしていた。

 しかし、それがメリエルナだったことに、健人は少なからずショックを受ける。

 出会ってからまだそれほど時間は経ってはいない。困ったところはあったが、それでもかなり気のいい人だと思っていたからだ。

 

「ケント様、申し訳ありませんが、死んでいただけますか? 大丈夫です、すぐに私達の仲間として、蘇らせてあげますから」

 

(っ!?)

 

 そんな健人の心情など知らぬというように、メリエルナは人であったころでは考えられないような言葉を放ってくる。

 人を化け物に変えることをなんとも思っていないようなセリフに、健人は寒気を覚えた。

 

「ふふ、どのようなことをしていただこうかしら、まずは足を舐めていただこうかしら? それとも、イスになって頂くのも面白そうですわね」

 

 まるで指揮者のように、レキナラが右手を掲げる。

 その動きに従うように、セラーナを取り囲んでいた五体の吸血鬼が、一斉に健人に襲いかかってきた。

 

「せっかくお誘いしましたのに、断られたでしょう? 私、結構傷ついたのですよ?」

 

(知るか!)

 

 心の中で吐き捨てながら戦闘に意識を切り替え、向かってくる吸血鬼達を迎撃する。

 先頭の一体の首を駆け抜けざまに両断し、続く二体の間を駆け抜けながらそれぞれの片足を斬り飛ばす。

 更に後ろの四体目が振り下ろしてきた腕を血髄の魔刀でなで斬りにしながら、左胸に落氷涙を突き込み、心臓を破壊。

 犬歯をむき出しにして背後から掴みかかってくる最後の一体を、スタルリム刀を引き抜きながら、舞うように体を反転。血髄の魔刀で下あごを斬り飛ばし、トドメとばかりに落氷涙を突き上げる。

 鋭利なスタルリムの切っ先は、なり立ての吸血鬼の上あごから脳までを音もなく貫いた。

 

「ゴ、ゴガ……」

 

 上あごから脳を貫かれたなり立ての吸血鬼の体から力が抜け、その場に倒れ込む。

 健人はスルリと流れるように突き刺した刃を引き抜き、残心を残しながら、ゆっくりとレキナラに向き直る。

 なり立てとはいえ、人を超える身体能力を持つ吸血鬼を一方的に屠るその姿に、メリエルナは一瞬驚いたように目を見開く。

 

「っ!? 思った以上に……お強いのですね。レキナラ」

 

「分かった」

 

 しかし、すぐ表情を余裕のある表情を浮かべると、レキナラが前に出てきた。

 彼女の瞳はメリエルナと違い、怪しく輝く虹彩とはなっていない。人間のままのようだ。

 暗い微笑みをしているメリエルナと違い、レキナラの表情は暗く、どこか悲壮な覚悟を決めているよう見えた。

 吸血鬼の従徒。

 吸血鬼に仕え、血を提供する者達。それに彼女はなったのだろう。

 

(レキナラさん……)

 

「すまないな、ケント。メリエルナの為に死んでくれ」

 

 レキナラが踏み込み、鋼鉄の片手剣が振るわれた。

 健人が袈裟懸けに迫る刃を受け止め、鍔迫り合いとなる。

 

(今すぐやめろ! 取り返しのつかないことになるぞ!)

 

 吸血鬼となっていないのなら、まだ間に合う。

 擦れ合う刃がギリギリと耳障りな音を響かせる中、健人は必死に目線でレキナラに訴える。

 脱出計画を進めていた時、彼女には悲壮な気配は微塵もなかった。

 おそらく、メリエルナを探しに行ったところで、吸血鬼となった彼女を見つけたのだろう。

 しかし、そこでどうしてメリエルナに協力することを決めたのかがわからない。

 確かに、二人は恋人同士だった。しかし、レキナラの性格から、吸血鬼となったメリエルナに大人しく従うだろうか?

 だが、健人自身、二人のことはまだよく知らない。共にいた時間はほんの僅かなのだ。

 だからこそ、彼女の意志を確かめたかった。

 間近で見つめてくるレキナラの顔に浮かぶのは、申し訳なさと悲しみ。そして諦観。死にたくないとか、恐怖を元とした従属ではない。

 なにがあったのか。どうして、こんなことになっているのか。

 次々と頭に浮かぶ疑問。それらをぶつけようと口を開くが、潰れた健人の喉は一言も声を発することができない。

 

(くそ! こんな時に……!)

 

 意思を伝えられないもどかしさから、健人は力を込めてレキナラを押し返す。

 数歩後退したところで、彼女の体が僅かにブレた。

 

「くっ……!」

 

(右足の動きがおかしい。古傷でもあるのか?)

 

 レキナラの動きは、典型的な軽戦士のものだ。

 柔軟かつ素早い動きで相手を翻弄し、急所に一撃を加えるタイプ。

 それは、健人と同じであり、ゆえに互いの差が明確に表れる。

 

「ぐっ、ぐううぅぅ……!?」

 

 踏み込んだ健人が、双刀の嵐を叩き込む。

 右足を庇うような動きを見せるレキナラは瞬く間に追い詰められていく。

 そして、血髄の魔刀の斬り上げが、彼女の剣を跳ね飛ばした。

 

「しま……がっ!?」

 

 がら空きになった胴に峰打ちを打ちこむ。

 腹部から肺にかけて走った衝撃に、レキナラは思わず膝をつく。

 その時、薄紅色の光が、ケントの視界の端に映った。

 

「ふふ、良くやってくれましたわ、レキナラ」

 

 次の瞬間、メリエルナの体から強烈な魔力が波動となって放たれた。

 健人は反射的に左の落氷涙を盾のように掲げるが、弾けた魔力は彼の体を包み込み、定められた効果を発揮する。

 吸血鬼の誘惑。

 特定範囲内の敵対者の精神を縛り、操る能力。

 実際、メリエルナはダークライトタワーにいた山賊達をこの力で支配下に置き、次々に吸血鬼に変えていった。

 今の彼女が持つ、最大の能力である。

 

「さあ、ケント様。私に服従してくださいまし」

 

(……断る)

 

「っ!? 私の力が、効かない?」

 

 しかし、メリエルナが放った『吸血鬼の誘惑』は、健人には微塵も効果を発揮しなかった。

 彼が少し己に活を入れるだけで、メリエルナが放った『吸血鬼の誘惑』の波動は、まるで霧のように霧散してしまう。

 当然だ。この男は、最初のドラゴンボーンが放った『服従』のシャウトに精神だけで抗った男。さらには、その『服従』のシャウトを身に着け、世界全てが失われた虚無の中でも、最後の最後まで戦い抜いた精神の持ち主。

 なりたての吸血鬼が使う誘惑程度で、操れるはずもない。

 

「ふむ、やはり無理か。どけ」

 

「ロキル様、大丈夫です。今度こそ……」

 

「お前程度がどうにかなる奴ではない。さっさと退け。邪魔だ」

 

 状況の不利を見て、ついにロキルが前に出てくる。

 メリエルナは食い下がるも、ロキルに一蹴され、悔しそうな顔で後ろに下がった。

 

(…………)

 

 改めて、健人はロキルという吸血鬼と向き合う。

 キーロと名乗っていた時には微塵も感じなかった、覇気と害意。そして、濃密な血と戦意に、背筋が泡立つ感覚が走る。

 間違いなく、依然モーサルで戦った吸血鬼、モヴァルスよりも強い。

 モヴァルスも数百年の時を生きた強力な吸血鬼であったが、この男はいったいどれほどの時を生きてきたのだろう。

 明確な脅威を前に、心臓が高鳴り、自然と呼吸が深くなる。

 一方のロキルは、だらりと両手を下げたまま、一歩、また一歩とゆっくり間合いを詰めてくる。

 そして、健人の間合いに入ったその瞬間、突然ロキルの姿が掻き消えた。

 続いて、右側面から強烈な殺意が叩きつけられる。

 

(っ!?)

 

 反射的に体をひねり、殺意の軌道に『血髄の魔刀』を割り込ませる。

 直後、ガキィイイン! という激しい激突音と共に、健人は数メートル後ろに押し流された。

 

(ぐっ!?)

 

「ほう、これを防ぐか……」

 

 ロキルの手には、いつの間にか一本の片手剣が握られていた。

 見た目はブレイズソードによく似た、緩やかな曲線を描く片刃の曲刀。しかし、その様子は健人の『血髄の魔刀』よりもさらに禍々しい。

 鮮血よりもなお紅い刀身。血を塗り固めたような色の柄。柄には無数の棘と思われる装飾が施され、刃全体からは赤黒いオーラが放たれている。

 

(なんだあの剣、いつ取り出したんだ? 普通じゃないぞ! それにさっきのは……)

 

 明らかに異様な魔剣。

 しかも先ほどロキルは、突然視界から消えた。

 健人の脳裏に、師であったデルフィンの絶技が思い出される。

 影の戦士。

 体捌きと気配分散により、たとえ全方位から監視されようと、その目全てを欺く隠形の完成形。

 

(違う、影の戦士じゃない。あれなら、そもそも殺意すら感じ取れないままやられているはずだ)

 

 影の戦士は、己が放つ気配全てを完全に操り、そこに特殊な体捌きを加えることで、確実に先手を取る技。

 当然、相手は攻撃の瞬間すらも察知できない。

 しかし、ロキルの殺気は駄々洩れだった。つまり、相手は別の能力を使って姿を消している。

 

(なるほど、透明化か。確か、吸血鬼の能力の一つだったはず)

 

『透明化』は『吸血鬼の誘惑』と同じく、吸血鬼が持つ能力の一つ。

 その名前の通り、姿を完全に消す力だ。

 攻撃の瞬間に透明化が解けるという問題はあるが、闇に潜む吸血鬼をさらに厄介な存在にする能力であることには変わりない。

 健人が思考を加速させる中、ロキルは再度透明化。視覚外から剣を振るってくるが、健人は機先を読み、再び迫る剣を弾き返す。

 

「ほう、姿を消しても対応してくるか、面白い。だが、人間ごときが、我ら古の吸血鬼に敵うと思うか?」

 

 透明化に対して二度も反応した健人に驚きながらも、ロキルは余裕な顔で再び斬りかかる。

 永い時を生きた吸血鬼は、タムリエルの中でも特に強大な化け物だ。

 数百年生きたモヴァルスは、ホールドの首都一つを落としかねないほどの脅威だった。

 そして、ロキルが生きた年月は……数千年。それほど長く生きた存在ともなれば、その脅威度は語るまでもないだろう。

 実際、ロキルの自信はその年月に裏打ちされたものだった。しかし……。

 

「こいつ……!」

 

(よし、大体読めてきた……)

 

 ロキルが繰り出す斬撃を、健人は的確に捌いていく。

 圧倒的な身体能力差。相手が放つ暴力の嵐に飲まれないように、細かい足さばきと的確な重心移動。そして、数多の困難を乗り越えた剣技で迫る斬撃を払いのけていた。

 

(この小僧……!)

 

 そんな健人の奮戦に、ロキルは徐々に苛立ちを募らせていく。

 確かに、定命の者とは思えぬ剣腕だ。外見から想定した歳を考えれば、異常ともいえる。

 これほど自分の剣を捌いた者は、近年では一人だけ。この顔を潰した、憎きレッドガードのみ。

 だが、あの時とは状況が違う。あのレッドガードは吸血鬼への対抗策を数多習得しており、それにより不意を突かれ、顔を焼かれた。

 しかし、目の前の男は吸血鬼に対抗する装備や術を持っているようには見えない。

 直後、思考に意識を奪われ、勢いが一瞬弱まった剣が捌かれ、反撃の一刀が繰り出された。

 

「っ!?」

 

 反射的に顔を背けるも、反撃の刃はロキルの頬をかすめ、一筋の傷を刻んだ。

 まさか傷をもらうとは思わなかった彼は一瞬茫然とし、続いてこみ上げてきた憤怒に、顔を歪める。

 

「貴様、調子に乗るなよ!」

 

 ロキルの声に怒声に反応するように、彼が持つ魔剣が放つオーラが拍動する。

 まるで意志を持つかのように魔剣が震え、続いて柄から棘が飛び出し、ロキルの手の甲を貫き、血を啜り始めた。

 

(っ!?)

 

 魔剣の拍動がさらに強まり、膨大な量のマジ力が刀身を包み込む。

 次の瞬間、轟音と共に魔剣が振り抜かれた。

 

「おおおおおおおおおお!」

 

 深紅の閃光が走り、健人の体を両断しようと迫る。

 健人は咄嗟に軌道に『血髄の魔刀』を割り込ませるも、あまりの衝撃に十数メートル吹き飛ばされてしまう。

 

(ぐう……!?)

 

 地面に叩きつけられながらも、咄嗟に受け身を取って立ち上がる。

 しかし、視界の端に映った鈍い反射光に右手の愛刀に目を落とし、思わず眉を細めた。

 

(刀身が……)

 

 これまで幾多の困難を切り開いてくれた愛刀。その刀身に、皹が入っていた。

 確かにこれまで、オダハーヴィング、スクルダフン、そしてソブンガルデと数多の戦いを立て続けに乗り超えてきたこともある。

 刀身に残っていた疲労も尋常ではなかったのだろう。

 しかし、このタイミングは最悪だ。おそらく、後一撃か二撃が限界だろう。

 

「ち、また防いだのか。いい加減、しぶとい奴だ……」

 

「その剣、まさか……」

 

 ロキルが持つ魔剣に見覚えがあるのか、セラーナが驚きの声を上げている。

 

「我らの主、ハルコンから拝借したこの神血の魔剣、貴様の持つ剣が及ぶものではない!」

 

 主と思われる人物の名を声高に叫びつつ、ロキルは再び己の血を魔剣に捧げる。

 再びあふれ出す、膨大なマジ力。おそらく、あの剣は捧げた血に応じた力を増大させる力を持っているのだろう。

 

(やるしかない、か……)

 

 叩きつけられる強大なマジ力を前に、健人はゆっくりと携えていた双刀を鞘に納め、腰を落とす。

 

「なんだ、諦めたのか? 殊勝なことだ」

 

 ロキルが何か言ってくるが、健人は構わず全神経を集中。納めた刀の柄に手を当て、呼吸を静めていく。

 

(すぅ……、ふぅ……)

 

 素の身体能力では、到底勝てない。

 重要なのは、脱力と緊張のタイミングだ。弛緩と緊張の落差が瞬発力の元となる以上、抜刀するその瞬間まで、可能な限り力を抜いておく必要があった。

 

「はあああああ!」

 

 ロキルが踏み込み、魔剣を振り下ろす。膨大な深紅の魔力を纏った斬撃が、健人を切り裂き、押しつぶさんと迫る。

 眼前に迫ってくる絶対の殺意を前に、健人の集中力は極限へと到達。

 視界が灰色に染まると同時に、『時間減速』のシャウトを使った時のように時の流れが遅くなっていく。

 ロキルの筋肉の動きや魔剣が放つ魔力の流れだけでなく、目に見えないはずの空気の流動すらも、明確に感じ取る。

 そして、迫る剣閃に立ち向かうように、鯉口を斬る。同時に腰を切り、全身の筋肉全てを連動させる。

 放つは極限の抜き打ち、一瞬に全てを打ち込む一刀。

 

(すぅ……はああああ!)

 

「っ!?」

 

 振り下ろされる紅光を切り裂くように、『血髄の魔刀』が引き抜かれる。

 直後、ロキルが持つ『神血の魔剣』と健人の『血髄の魔刀』が激突した。

 

「ぐう……!」

 

(おおおおお!)

 

 拮抗は一瞬。次の瞬間には、空気が弾け飛ぶ爆音と共に、両者はわずかに後退した。

 ロキルは僅かに上体が浮き、健人は愛刀を下に弾かれながら、十センチほど地面を滑る。

 先に体勢を立て直したのは、身体能力に優れたロキルだった。

 

「本当にしぶとい! しかし終わりだ」

 

 まさか、自分の渾身の一撃と拮抗するとは思わなかったロキルは瞠目しつつも、再び魔剣を振り下ろす。

 勝利の確信。思ず笑みがこぼれ、犬歯がむき出しなるロキル。

 だがその顔は、一秒足らずで驚愕の色に塗りつぶされた。

 

「なっ!?」

 

 下に流された健人の愛刀。その切っ先が、再び鞘口に叩き込まれた。

 健人の両足が力強く地面を掴み、腰が切られ、全身の運動エネルギーが再び『血髄の魔刀』へと注がれる。

 そして、抜刀。音すらも置き去りにした二太刀目の抜き打ちが、ロキルの振り下ろしを上回る速度で放たれる。

 それは、かつて彼が師を破った技。居合の重ね撃ちだった。

 

「ぐうう!」

 

 再激突。一度目よりもさらに大きな金属音が響く。

 腕に走る強烈な衝撃にロキルは瞠目しつつも、それでも己の勝利を確信していた。

 相手の剣はもう限界だ。既に皹は峰の部分まで広がっている。

 そして次の瞬間、バキン! という音と共に、『血髄の魔刀』の刀身が半ばからへし折れた。

 

「勝っ……なに!?」

 

 しかし、ロキルの魔剣が振り下ろされる前に、健人は半身になりながらさらに斜め前に一歩踏み込んでいた。

 目測がずれ、ロキルの魔剣は健人のすぐ横をかすめるように逸れていく。

 そして、ロキルの眼前には、半ばから折れた健人の魔刀の刀身が飛び込んできた。

 

「がふっ!」

 

 折れた血髄の魔刀。その根元が、ロキルの首に叩き込まれた。

 ミシミシと喉に食い込んでいく刃。強烈な激痛が、彼の脳を焼き始める。

 確信していた勝利。それが一瞬で掻き消えた、混乱するロキルの脳に敗北の二文字がよぎる。

 

「が、な、なぜ、なぜだ……!」

 

 勝敗を分けたのは、両者の戦いへの姿勢。

 剣を折れば勝利できると考えたロキルと、剣を折られることすら想定して動いた健人。その差は小さくとも、非常に大きな結果となって両者に突きつけられた。

 

(おおおおおおおおおおおおおおお!)

 

「馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な! こんなこと、ありえな……」

 

 ザン……!

 打ち込まれた刃がロキルの首の肉と頸椎を切り裂き、切断面から大量の血が噴出する。間欠泉のように吹き出す血と共にロキルの体から力が抜け、地面に膝をつく。

 切断された首は皮一枚を残して、だらりと後ろに垂れ下がっていた。

 明らかに致命傷。たとえ吸血鬼でもこの状態で生きていることは不可能な傷だった。

 

(はあ、はあ、はあ……)

 

「まさ、か。そんな……」

 

 荒い息を吐く健人を、メリエルナは信じられないものを見るような目で見つめていた。

 強大な力を持つ太古の吸血鬼。それを一対一で勝利する者など、この時代にどれだけいるのだろう。

 健人の目が、残された吸血鬼であるメリエルナに向けられる。

 

「ひっ……!」

 

 彼女の口から、思わず悲鳴が漏れる。

 ビク、ビク……と痙攣を繰り返す主の死体。そして折れた長刀を手に佇む健人を前に、恐怖に襲われていた。 

 その時、痙攣していたロキルの体が跳ねるように飛びあがり、健人に向けて突進した。

 

「グオオオオオオオオオオオおオオオオ!」

 

(なっ!?)

 

 反射的に左の落氷涙を突き入れるが、ロキルは右の手の甲を貫かせて防ぐ。

 ならばと右の折れた魔刀を繰り出すも、これもまた掲げられたロキルの左腕に食い込むのみ。

 

(くっ!)

 

 勢い良く地面に押し倒された健人の目に、ほぼ斬り落とされたロキルの首がひとりでに持ち上がる様が映った。

 よく見れば、彼の持つ魔剣が怪しく輝いている。

 繰り返される魔剣の拍動に合わせて、切断面から噴き出す血がロキルの頭の方の切断面へと繋がり、グググ……と徐々に首を元に戻していく。

 魔剣の力が、ロキルを復活させようとしているのだ。

 

(くそ、まずい!)

 

 健人は何とか拘束から逃れようとするが、そもそもの身体能力では分の悪い相手。

 なかなか逃れることができず、そうこうしている間にも、ロキルの頭は半分ほど繋がってしまっていた。

 

「死ね、人間……!」

 

 まだ頭が再生しきっていないにもかかわらず、ロキルは犬歯をむき出しにして健人に襲いかかる。狙いは首筋の動脈。

 

「がっ……!?」

 

 犬歯が今まさに健人の首に突き刺さろうとしたその時、一本の氷槍が、横合いから飛翔し、ロキルの側頭部を貫いた。

 さらに続けて、二本、三本と放たれた氷槍が、ロキルを健人の上から弾き飛ばす。

 

「なぜ、です。セラーナ、様……」

 

 アイスジャベリン。

 熟練者クラスの強力な氷雪系の破壊魔法。それをロキルに放ったのは、セラーナだった。

 いつの間にか両足でしっかりと立っていた彼女。眼帯が外れ、その類まれな美貌に、健人は思わず目を見開く。

 眼帯をしていた時にも感じていたが、やはり驚くほどの美女である。

 だが、なにより健人の目を惹きつけたのは、妖しく輝く彼女の虹彩。それは、今まさに戦っている化け物と同じだった。

 

(吸血鬼……?)

 

 健人がセラーナの正体に驚いている中、彼女は両手を掲げ、膨大な魔力を猛らせる。

 渦を巻いて彼女の両手に集束していくマジ力。瞬く間に周囲の空気が凍り付き、ダイヤモンドダストのような輝きを放つ。

 その密度は、健人がこれまで見てきた中で、五指には入るほどのマジ力だった。

 そして、集束された魔力が、詠唱と共に放たれる。

 

 アイスストーム。

 

 猛烈な吹雪を当てに叩きつける破壊魔法。

 難易度としては、先ほどのアイスジャベリンよりも下位であるが、その威力は異常の一言だった。

 突き進んだ氷嵐は、まるで液体窒素に付けた草花のように、一瞬でロキルの体を凍らせ、粉砕。砕けた破片は突き進む風に巻き込まれて更に細かく砕かれていく。

 氷嵐が過ぎ去った後、ロキルの体は欠片も残されていなかった。

 

「あぁ…………」

 

 ロキルを殺したセラーナは、小さくため息を吐きながら、諦めの声を漏らす。

 そして健人の方を見ると、ぞっとするほど冷たい表情を浮かべた。

 

「バレてしまいましたわね。ええ、私は吸血鬼。あの者と同じく、人の血を吸う化け物でございますわ」

 

 肩をすくめ、冷淡に微笑む彼女に、健人は動揺を隠せない。

 

(なにが、どうなって……)

 

「さ、ケント、どういたしますか? 私と戦います?」

 

 再び、セラーナの体から魔力が噴き出す。

向けられる氷のような視線。魔力に込められた拒絶の意志に、健人は反射的に武器を構えた。

 彼女は太古の吸血鬼ですら一瞬で葬るような魔法を使う者。

 そしてロキルが今わの際に発した「セラーナ様」という言葉を考えれば、二人は元々顔見知りであり、主従関係であり、彼女もまた太古の吸血鬼か、それに類する上位存在であるということ。

 次々と突きつけられる事実が、健人を惑わせる。

 動揺が迷いに、迷いが焦りに……。混乱する頭の中に、いくつもの選択肢が浮かんでは消えていく。

 パラパラとアイスストームで生じた氷片が舞い散る中、健人とセラーナは無言で見つめ合う。

 そんな中、更に第三者の声が、両者の間に響いた。 

 

「キーロ! いったいどこに……」

 

「ふむ、やはりまだ残りがいたか……」

 

 姿を現したのは、集落の広場で戦っていたはずのアグミルとデュラックだった。

 アグミルは姿が見えなくなった仲間の名を叫び、デュラックはセラーナとメリエルナの姿を見て、クロスボウを構える。

 

(さらに状況がややこしいことに……!)

 

 吸血鬼ハンターであるドーンガードが、吸血鬼であるセラーナを逃すはずがない。

 しかし、この二人がセラーナを止められるとも思えない。

 あれほどの魔法の使い手だ。アグミルもデュラックも、ほぼ確実に殺される。

 しかし、そんな健人の杞憂を払うように、アグミルとデュラックの後ろからもう一人の偉丈夫が姿を現した。

 オークであるデュラックに勝るとも劣らない背丈をもつ、レッドガードの男性。

 その人物を見た時、健人は全身が泡立つような感覚を覚えた。

 スキンヘッドの頭と黒く豊かな髭を持ち、背中には白銀の戦槌を背負い、ドーンガードの鎧を纏っている。

 年の頃は四十から五十くらいだろう。まるで金剛石を思わせる眼力と、静謐な空気を纏った人物。

 明らかに超一流の戦士。まちがいなくデュラック達よりも強く、下手をすれば、リータにも迫るオーラだった。

 

(この人が、多分ロキルって吸血鬼を追い詰めた……)

 

「私はイスラン。ドーンガードのリーダーだ。ふむ、デュラックからの定期報告を聞いてもしやと思っていたが、やはりキーロは奴らの仲間だったか」

 

「イスラン、どういうことだ?」

 

「以前嗅いだ吸血鬼の血の匂いが漂っている。そこの血だまりに……」

 

 そう言って、イスランと呼ばれた人物は、氷漬けにされて粉砕されたロキルの肉体が散っている場所へと向かっていく。

 半ば溶けかけ、血だまりとなりつつあるそこを見下ろしながら、イスランは鼻をヒクつかせると、足でかき混ぜる。

 

「ふむ、穢れた血に交じったドーンガードの鎧。やはり我らの中に吸血鬼が混じっていたか。早急に対応せねばならんな……」

 

 血だまりから漂ってくる錆鉄の匂いに鼻を鳴らすと、イスランは改めてセラーナに向き直る。

 そして、右手を掲げ、セラーナと同じく魔力を現出させた。

 その規模は明らかにセラーナには及ばない。しかし、湯気のように立つイスランの魔力を見た瞬間、彼女は瞠目し、思わず半歩後ろに下がっていた。

 

「さて、態々御託を述べる必要もないな。死ぬがいい、吸血鬼ども」

 

「っ!?」

 

 次の瞬間、太陽のごとき輝きがダークライトタワーを包み込み、セラーナの体をその魔力ごと、文字通り焼き尽くし始めるのだった。

 

 




ということで、いかがだったでしょうか?
セラーナが吸血鬼であることが健人にバレました!
動揺する健人と、そんな彼を冷たく見つめるセラーナ。二人の間に割り込むドーンガード。
後二話くらいで前日譚終わると思います。

登場人物紹介

ロキル
ディムホロウ墓地でセラーナを復活させていた吸血鬼。
その直後、ドーンガードの襲撃を受け、配下を壊滅させられた上に顔を喪失。
以後、近くを通りかかった青年の顔を奪い、キーロという名前でドーンガードに潜入し、セラーナの行方を捜しながら、ドーンガードの情報収集をしていた。
大昔から生きている吸血鬼であり、その実力はモヴァルスを上回る。
また、セラーナの捜索の際に主であるハルコンから彼の武器を拝借しており、その力で健人の『血髄の魔刀』を破壊している。
しかし、不覚を取って健人に敗北。その後、セラーナにとどめを刺された。

ハルコンの魔剣
ロキルが持っていた、ハルコンの愛剣。
外見はブレイズソードに似ているが、鍔や柄に無数の棘がついている。
吸血鬼と同化して隠すことができるほか、血を捧げることで膨大な力を発揮する魔剣であり、その力は健人の『血髄の魔刀』をへし折るほど。


メリエルナ
ロキルに吸血鬼に変えられていた娼婦。
力を求め、キーロと名乗っていたロキルに血を吸われ、吸血鬼となり、ダークライトタワーにて、山賊達を吸血鬼に変えていた。
その力で健人をも魅了しようとするが、彼には通用せず。

レキナラ
メリエルナの恋人。彼女が吸血鬼になっていたことに動揺しつつも、その身を守るために健人と相対する。
しかし、力及ばず敗れる。


セラーナ
類まれな美貌を持つ吸血鬼のお姫様。
太古の吸血鬼として、強力な魔力を持っており、その力は健人から見ても有数のもの。


イスラン
ドーンガードの首領。
元々はステンダールの番人と呼ばれるデイドラ狩り集団に属していたが、考えの相違から離脱。その後、ドーンガードを立ち上げ、吸血鬼狩りをしていた。
ゲームでは吸血鬼たちの襲撃を受け、スカイリムのステンダールの番人が壊滅した後、その生き残りの要請で、主人公をディムホロウ墓地へ向かわせているが、今作で本人が行っている。
元仲間であるステンダールの番人はゲームと同じく死亡したが、その後、ロキルと戦闘。彼の顔を焼きつぶしている。

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