【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル   作:cadet

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第五話 成長?

 

 健人達がホワイトランに到着した頃。

 南部のリバーウッドからの坂道を下っていく二人組がいた。

 男性と女性。男性の方は、ヘルゲンで復興を手伝っていたガンマーだ。

 もう一人の方は、ブレトンの女性。名をソリーヌ・シュラルドという。

 彼女はガンマーとはかつて同じ組織に属し、吸血鬼を狩っていたこともあった。

 しかし、現在はドーンガードのリーダーであるイスランとの意見の対立から、離別している。

 ドーンガード離脱後、彼女は元々ドゥーマーの技術に興味を抱いていたこともあり、彼らの遺跡の調査を開始。

 しかし、調査中に大切な資料をなくしてしまった。それを探しているところにドルマとガンマーに遭遇。資料を探す手伝いをしてもらった代わりに、技術者としてヘルゲン復興に手を貸していた。

 

「あの街か……」

 

「ねえ、本当に吸血鬼だったの?」

 

「ああ、間違いない。かなり強力な奴だ。護衛もいる」

 

 遠くに見えるホワイトランをにらみつけるようにしているガンマーに、ソリーヌは彼が見たという吸血鬼について尋ねる。彼女はセラーナと健人の姿を見ていないからだ。

 

「でも、ドルマの妻って、あのドラゴンボーンでしょ? 簡単に手込めにできるとは思えないけど……」

 

「そうだな。だが、相手は吸血鬼だ。どんな陰湿で卑怯な手を使うかわからん」

 

 ソリーヌもガンマーも、ドルマの妻がドラゴンボーンであり、三年前のドラゴン復活の際に活躍した英雄であることは知っている。

 実際に、何回か顔を合わせたこともあった。

 会った際の印象は、とにもかくにも普通の町娘というもの。

 しかし、話をしているうちに、その声から、外見からは想像できないほどの畏怖と力を感じるようになった。

 別にリータが二人を威圧しようと思ったわけではない。しかしそれでも、卓越したドラゴンボーンの声は、どうしても相手に自分達とは違う、隔絶した『差』を少なからず感じ取らせてしまう。

 人間以上の能力を持つ者達とは関りがある、元吸血鬼ハンターともなればなおさら。

 

「街中で騒ぎにはしたくない。とりあえず、監視に留めるが……チャンスが来たらやる。悪いが、監視を頼めるか?」

 

 ガンマーはヘルゲンで、健人と視線が合ってしまっており、顔を覚えられている可能性があった。そう考えれば、監視をするならまだ顔を知られていないソリーヌが適任だ。

 

「ま、いいわよ。ドルマには世話になってるし、ドゥーマーのコグを探すのも手伝ってもらったから。それに、アンタはそのトロールの世話があるから、街には入れないしね」

 

 ガンマーの後ろには、彼が調教したトロールが三体控えていた。これを連れて町に入ることは不可能だ。

 監視役を引き受けたソリーヌは肩をすくませると、馬を進ませる。

 その軽い口調とは裏腹に、その眼には確かな戦意が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ジョルバスクル。

 同胞団の拠点であり、船を逆さにしたような形が特徴的な建造物。

 その地下で、ドルマは一人の老戦士と向き合っていた。

 コドラク・ホワイトメン。

 長年、同胞団の『導き手』を務めてきた、実質的リーダーである。

 彼の部屋は素朴でありながら、同胞団での彼の功績を示すかのように、様々な戦利品が並べられている。

 

「で、話ってのは何だ、コドラク」

 

「そう焦るな、若き狼よ。まずは茶の一杯くらい飲んだらどうだ?」

 

 ドルマは差し出された茶を一瞥すると、静かに口をつけた。

 程よい苦みと香りが、心身をほぐし、思わずため息が漏れる。

 

「ヘルゲンの話だったな?」

 

「ああ、うむ、そうだ。それで、復興の経過はどうだ?」

 

「順調だ。あと数か月あれば、街としての機能を回復できると思う」

 

 ヘルゲンの復興はかなり進んでいた。

 砦の再建にはまだ時間がかかるだろうが、宿屋や店、必要な住居もあと少しで造り終えるだろう。

 ドルマの報告に、コドラクは満足げに頷く。

 

「よくもあの廃墟の状態から、そこまでこぎつけたものだ」

 

「俺だけでできたことなんて、たかが知れてるけどな。リータの名前やバルグルーフ首長の協力があったからできたことだ」

 

 ドルマがヘルゲンを復興すると決めた時、最初に向かったのはファルクリースである。

 ヘルゲンはファルクリース領。ファルクリースとホワイトランを繋ぐだけでなく、西のリフトホールド、そして南の帝国からの中継地でもある重要都市だ。

 しかし、ファルクリースだけでヘルゲンの復興を全て行うのは難く、ファルクリース首長は難色を示す。

 そこでドルマは、バルグルーフ首長に協力を依頼した。

 ファルクリースの首長はかなり日和見でお調子者だったこともあり、バルグルーフとリータの名前に釣られる形で、共同での再建を承認。結果、数年で都市機能をほぼ復活させることができたのだ。

 

「それでも、最初に声を上げたのはお前だ。どのような荒れ地でも、開墾するには初めに鍬を振るう者が必要。その意思と行動を私は尊重し、敬意を持っている」

 

「…………」

 

 忌憚のない賛辞に、ドルマは沈黙したまま、憮然とした表情で茶を啜る。

 これが、この青年の照れ隠しであることを知っているコドラクは、その厳つい口元を静かに微笑ませながら話を続けた。

 

「兄弟が戻ってきたようだな。君としては嬉しいだろう。ずっと探していたからな」

 

「ああ、まあな……。そっちが本題か?」

 

「いや、元々は、こうして久しぶりに帰ってきた盾の兄弟と茶を楽しみたかっただけだ。だが、気にするなというのは無理な話だ」

 

 ドラゴンボーン。ケント・サカガミ。

 一般人には同じドラゴンボーンであるリータ・ティグナに隠れて馴染みのない名前ではあるが、同胞団の導き手である彼は、当然その名を知っている。

 彼が、アルドゥインを倒したドラゴンボーンであることも。

 

「アイツを同胞団に入れたいってか?」

 

「かの勇者が望めば別だが、私の方から誘う気はない。ただ、聞いてみたいのだ。彼が行ったと言われる、ソブンガルデのことを……」

 

 ソブンガルデ。

 健人がアルドゥインと戦った世界であり、勇敢なノルド達が死後にたどり着くショールの領域。そこに、コドラクは並々ならぬ思い入れがあった。

 窺うようなドルマの視線が、コドラクに向けられる。

 彼にとって、健人は義弟であり恩人。当然、それを害するような者なら、世話になっている同胞団の人間でも容赦しないだろう。

 コドラクがなぜ、ソブンガルデの話を聞きたいなどと言い出したのか。

 同胞団に属し、その事情を“それなりに”知っているドルマには、なんとなくその事情が察せられた。

 

「…………エオルンドに武器を作ってもらう関係上、明日ここに連れてくる予定だ。聞きたいなら、その時に聞け。それで、アエラの奴は今どこに?」

 

「依頼でサーベルキャットの討伐に出ておる。明日まで帰らぬよ」

 

「そりゃよかった」

 

「あからさまにホッとするな」

 

「無理だな」

 

 叱るようなコドラクの言葉を、ドルマはあっさりと受け流す。そんな若き同胞団団員の反応に、コドラクは仕方ないというようにため息を漏らす。

 

「話は終わりか? じゃあ、俺は帰るぞ」

 

「ああ、ご苦労だったな」

 

 残っていた茶を飲み干し、ドルマは席を立つ。

 そして、ジョルバスクルを後にするのだった。

 背中に向けられる、老戦士からの期待の視線を感じながら。

 

 

 

 

 

 夕暮れ時。夜の帳が降り始め、星が瞬き始めるころ。

 ブリーズホームの中でも、夕食の支度が着々と進んでいた。

 ドルマもジョルバスクルから戻り、今では暖炉の前でリータが運んできた料理を並べている。

 これから始まる、一家団欒の時間。

 だが、その暖かな空気の中で、健人は目の前に広がる料理に息を飲んでいた。

 緊張感を漂わせた表情。あまりに異質なその顔に、隣に座るセラーナが思わず質問をぶつけてくる。

 

「あの、どうかしたのですか? 緊張しておられるようですけど……」

 

「もう、ケントったら心配性だな~~。私だってこの三年間成長しているんだよ?」

 

「…………」

 

 声が出せるなら、懇切丁寧に彼女の料理がいかに危険かを語りたい健人。

 ドルマが黙っていることも、彼の不安を加速させている。

 しかし生憎と、今の彼は声が出せない身。黒板に書こうにも、なぜか引っ付いたままのレメネのおかげで手が塞がってしまっていた。

 

「ああう、うあ、きゃ、きゃ……!」

 

 肝心のお姫様は健人に抱かれたまま、未だにご機嫌な様子。

 リータが買い物に行っている間も、彼女はずっと健人の腕の中に納まっていた。

 家の中には当然、双子のためのベビーベッドがあるのだが、そこに寝かせようとするとぐずりはじめてしまうのだ。

 しかたなく、今の今までずっと抱っこしているしかなかった。

 正直、腕が痺れ始めてきてもいる。

 

「本当にレメネ様が懐いたのですね。普段はドルマ様か従士様でなければ泣かれるのですが……」

 

 そんな健人とレメネの様子を見て驚いているのは、ドラゴンズリーチに行っていたリディアだ。

 健人にとっては、もう一人の姉であり、盾術の師とも呼べる女性。

 彼女が帰ってきて三年ぶりに顔を合わせた時は茫然とされ、喉が潰れたことを伝えたら、滂沱の涙を流されてしまった。

 正直、申し訳ない気持ちにもなったが、しばらくした後に落ち着きを取り戻し、改めて帰還を喜ばれた。

 

「そうだよね~~。オルレナスはほかの人に抱かれても大人しいけど、レメネは全然ダメだったもん」

 

 そうこうしている間に、調理器具を片付け終わったリータが戻ってきた。

 暖炉を囲む健人達に混じるように、ドルマの隣にちょこんと座りこむ。

 

「さ、どうぞ、召し上がれ!」

 

 そして告げられる死刑宣告。

 満面の笑みを浮かべるリータに、健人は覚悟を決める。

 メニューはシカのローストとチーズパン、牛肉のシチューにキャベツとリンゴのサラダ、それからマッシュポテトに、デザートのリンゴのはちみつ漬け。

 三年ぶりに戻ってきた義弟をもてなすためだろうか。並べられた品数は六つと多く、湯気と共に香しい匂いを昇らせている。

 

(見たところ、怪しいところは何もないけど……)

 

 健人は片手でレメネを横抱きにしたまま意を決し、匙を手にして、シチューを口に運ぶ。

 

「…………っ!?」

 

 口の中に広がったのは、野菜の甘みと肉汁のうまみ。若干塩気が強すぎるような気がするが、ほぼ個人差の範囲だ。

 つまるところ……かなり美味い。

 自分の舌が信じられず、思わず二匙目、三匙目を口にしてしまう。

 驚きに目をぱちくりさせている健人を見て、リータが得意げに胸をそらした。

 

「ふふん、どう?」

 

(すごい、普通に食べれる……!)

 

 肉が煮すぎて、ちょっとボソボソしているが、そもそもあまりの不味さに悶絶することも覚悟していた健人としては、意外過ぎる結果に茫然とするしかなかった。

 

(これなら、何も問題ないな。セラーナさんも……あれ?)

 

「…………」

 

 隣のセラーナを見て、健人は首をかしげる。

 彼女は、サラダが入った器を持ったまま固まっていた。

 いったいどうしたのかと首をかしげていると、セラーナの手からカラン……とフォークが落ちた。続いて、ガクリとその場に崩れ落ちる。

 

(え?)

 

 よく見ると、サラダの方には手が付けられていない。添えられていたマッシュポテトだけがスプーンで削がれていた。

 

「なるほど、今回のあたりはマッシュポテトか……」

 

「他の品でなくてよかったです。幸い、量が少ないですし……」

 

(……おいドルマ、リディアさん、これは一体どういうことだ?)

 

 耳元に流れてきたドルマとリディアの呟きに、健人は問い詰めるような視線を二人に向ける。

 案の定、二人は申し訳なさそうに頬を掻いたり視線をさまよわせ始めた。

 

「ああ、まあ。リータの料理だが、一応普通に食えるものも作れるようになったんだ。だがな……」

 

「作った品の内、必ず一つはハズレが入るようになったのです。味の方に関しても、その、他の品がまともになった分酷くなるらしく……」

 

(…………なに、それ)

 

 健人は、思わず頬が引きつるのを感じた。

 自分のサラダの上にのせられたマッシュポテトを睨みつけながら、恐る恐るその一部を匙ですくって口に運ぶ。

 次の瞬間、過去に味わったことのない強烈なマズ味が、無数の針となって健人の舌を貫いた。

 痛覚の限界が一瞬にして飽和し、意識が空の上高く昇っていく。

 脳裏に移ったのは、アルドゥインが見せた夢の中で父と再会した記憶。

あの時も確か料理をしていたな~~。

 

(……はっ!?)

 

 空高くさまよい、消えかけていた意識を何とか繋ぎとめる。

 しかし、隣のセラーナは未だに意識を宙に漂わせていた。

 

「遠くから、母の声が聞こえます。父の優しい声も……。あれ? ここはいったいどこですか……」

 

(これはアカンやろ……!)

 

 駄目である、色々と駄目である。

 こんなものを作る人間を厨房に立たせては、一週間経たずに家庭崩壊だ。

 健人は非難の視線をドルマとリディアに向ける。

 

「大丈夫だ」

 

「ちゃんと常に対応策を準備しておりますので」

 

 そう言って、リディアとドルマは懐に手を伸ばし、二本の小瓶を取り出した。

 

「麻痺毒です。舌を麻痺させれば、味は感じませんから」

 

「もう一つは毒消しだ。これのお陰で俺たちは、アルカディアの大ガマに頭が上がらん……」

 

(ちがう、そうじゃねえよ……!)

 

 そもそも、危険物を作る可能性がある奴に料理をさせるんじゃねえ!

 心の中で叫び散らしながら、全力で二人を睨みつける。

 

「その、俺も料理をしようかと言ったんだが、リータが譲らなくてな……」

 

「私は従士様の私兵。従士様がおっしゃるなら、黒いカラスも白いと申します!」

 

(駄目だ、こいつら……!)

 

 残念。夫は妻に弱かった。私兵の方も役に立たない。

 

「うちのルールでは、ハズレの料理は最初に食べた奴が責任をもって処理するきまりだが……」

 

「お客様にこの料理を片付けさせるのはちょっと……」

 

「ま、まあ、仕方ないよね! うん! これは後々捨てておいて……って、ケント、どうしてそんなに私を見つめてくるのかな~~?」

 

 役に立たない二人を放置して、健人は矛先を関係者から元凶であるリータに向ける。

 義弟から向けられる、強烈な非難の視線。姉は逃げるように、視線を明後日の方に向けていた。

 

「え、ええっと、その……私、頑張ったんだよ?」

 

(うん、分かっている。普通の料理が作れるようになった時点で、エミーナさんも号泣してると思う。でも、結局プラスマイナスゼロだよな)

 

 まともな料理も作れるようになった反面、こんなマズ味の極致とも言えるような超危険物を作るようにもなった。

 進化したのか劣化したのか分からない姉の成長に、健人は内心で頭を抱えつつも、その場にいる全員のマッシュポテトをリータの皿に移す。

 責任をもって処分しろ元凶。

 うず高く山盛りになったマッシュポテト(劇毒)に元凶がさめざめと涙を流しているが、当然無視。

 抱いていたレメネをドルマに預け、セラーナの介抱を始める。

 

『セラーナさん、大丈夫ですか?』

 

「ああ、ケント……ですか? 突然、昔の情景が頭に……。それに、どうも体が動きません。何が起きたのでしょうか……」

 

 ぐったりとして、力なく床に横たわっているセラーナ。顔色も良くない。

 元々玉のように白い肌をしていたが、今では蒼白となってしまっている。体も小刻みに震えていた。

 とりあえず、ドルマから毒消しを受け取り、彼女に飲ませた。そして、少しでも楽になるよう、足を延ばさせ、自分の外套を彼女にかける。

 

(あとは、枕だけど……)

 

 敷物をしているとはいえ、硬い床の上に頭を乗せているのも良くない。

 外套を丸めて頭の下に入れられれば良かったけど、生憎と掛物に使ってしまった。

 健人は仕方なく、座った自分の膝の上に彼女の頭を乗せる。

 

「あっ……」

 

 セラーナの口から小さな声が漏れる。

 眼帯の奥にある彼女の瞳が大きく見開かれ、続いてピクリと体が震えた。

 

(こ、こんな……こんなこと……!)

 

 頭の中が、真っ白になる。

 生まれてから数千年。人間であったときから王族だったのだ。常に傅かれ、仲が良かった両親からも、このようなことをされた記憶はない。

 そんな彼女に襲い掛かってきた、突然の事態。

 こみあげてくる羞恥の感情が体を跳ね上げようとし、頬に伝わってくる熱が、それを押しとめる。

 冷たい穴倉に封印され、凍り付き、憎みあうようになった家族に挟まれていた彼女の心に積み重なった、数千年分の寂寥。

 ぶつかり合う、相反する感情。硬直する体。

 いつの間にか彼のズボンに添えていた手が彼女の心を示すように、ぎゅっと布地を握りしめていた。

 

『すみません。あまりいい気分じゃないかもしれませんけど、我慢してくれると嬉しいです』

 

「いえ、その……嫌とは、思っていません……」

 

 荒れる自分の心を隠すように漏れる、囁き声。

 一方、その弱々しさに、健人の表情が曇る。

 

(もしかしたら、毒消しだけじゃ足りないのかも。体力が戻る物が必要かな?)

 

 しかし、考えていることは的外れ。

 そんな健人は彼おもむろに、懐から注射器を出すと自分の血をシリンジに取り、彼女に差し出してきた。彼の突然の行動に、セラーナは息を飲む。

 

「あの、もう今日の分の血は頂きました。これ以上は、貴方の負担に……」

 

 実際、今日の分の血は事前に受け取っていた。

 それに、血を必要以上に取りすぎるのも良くない。

 日本でも献血は、一度に四百mlと決められている。それ以上採血してしまうと、健康に影響が出る可能性があるからだ。

 具体的には、吐き気、冷や汗、顔面蒼白。悪いと血圧低下や意識喪失などがある。

 健人が一度に採血する量はシリンジ数本分。量にして50mlほどだろう。

 少ないが、それでも数日おきに取っていれば、かなりの量になる。日本でも、献血の間隔を12週間と決められている。それだけ、失われた血を回復させるには時間がかかるのだ。

 

『いいんです、飲んでください。今回は俺の身内のせいですから……』

 

(本当に、この方は……)

 

 そんな健人の気遣いが、セラーナの心にさらに突き刺さる。

 あまりにも……優しすぎると。

 

「相変わらずだな、お前」

 

「本当ですね」

 

 吸血鬼の体調すら心配する健人を前に、ドルマとリディアは懐かしそうに苦笑を漏らす。

 実際、健人は三年前にもドラゴンに対しても、同じようなことをしていた。

 ドラゴンとの絶滅戦争を経験したスカイリムの民ではまずありえない思考と行動。

ドルマの方は不満や不信を覚え、ぶつかり合ったこともあった。今では懐かしい記憶である。

 なにより、吸血鬼の方の反応も、二人を楽しませていた。

 冷徹で、普通の人間など餌としか思わないといわれている化け物。それが、すっかり手の平の上で回されているのだ。

 一方、そんな二人の言葉を聞いても、健人はよくわからず首をかしげるのみ。

 

「こりゃ駄目だな」

 

「はい、処置無し、といったところでしょうか」

 

「ああそうだケント、お前の武具だけど、明日エオルンドが用意してくれることになった。朝になったら、一緒にジョルバスクルに来てくれ」

 

 もっとも、転がしている健人に自覚がない辺りは本当にどうしようもない。

 とりあえず、事務的な連絡だけを伝え、ドルマは妻の料理を楽しみ始めた。

 確かにとんでもない激マズ料理が混ざってしまうが、それ以外の料理は美味いのだ。愛する妻の可愛いところでもある。

 

「うえ~~ん、美味しくないよ~~」

 

 涙目になりながら自分の作ったマッシュポテトを片付けている妻を眺めながら、ドルマは愛妻の料理に舌つづみを打つのだった。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
一応、普通の料理ができるようになっていたリータ。しかし、一品は必ず劇物料理が混じるようになってしまっていました。
しかも、そのマズ味濃度も濃縮される有様。進化したのか退化したのかわからない始末。
本人のやる気や気概はあるのだが、それが空回りしているの相変わらず。タムリエル版ロシアンルーレットを天然でやってしまう。
一方、武器に関しては同胞団に話が通るも、ガンマーがセラーナを追跡して監視を開始。そこにソリーヌも交じっているという状態です。
以下、登場人物紹介

ソリーヌ・シュラウド
ガンマーと同じく、元ドーンガード。
非常に技術に長けた人物で、ゲーム本編ではクロスボウの改造などを行ってくれる。
実はガンマーと同じく、ヘルゲン復興に協力していた。
誘ったのはドルマ。彼女の技術力を買い、協力を依頼している。ヘルゲンがかなりの速度で復興したのは、彼女の協力も大きい。
ゲームではスカイリム版モイラのような人物で、主人公に色々と頓珍漢な依頼をしてくる。

コドラク・ホワイトメン
同胞団の導き手。
同胞団自体が、スカイリムでは名が通った集団であり、その実質的なリーダーであるコドラクの発言力は、スカイリムの首長たちも無視できないほど。
同胞団クエストをしていた人なら、知らない人はいない。
ソブンガルデに思い入れがあるらしく、本作ではそこに行った健人と話をしたい様子。
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