【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル   作:cadet

154 / 191
やっと書けた……。


第十話 姉の覚悟

 パチパチと居間の中央に設けられた暖炉の薪が爆ぜる。

 食事が終わり、リータの料理で撃沈したガンマーとソリーヌが目を覚ました後、健人、セラーナ、ドルマ、リータ、そしてリディアの五人は改めて、彼らとドーンガードとの関係を尋ねた。

 

「それで。改めて聞くが、お前たちはケント達が言っていた……その、ドーンガード、とかいう組織からは抜けているのか?」

 

「ああ、それは本当だ」

 

 未だに健人達を見る目に警戒の色を残しつつも、ドルマからの質問に答えるガンマーの口調に淀みはない。本当にドーンガードとは縁を切っているのだろう。

 ガンマーの説明に補足するように、ソリーヌが口を開く。

 

「イスランとは数年前に仲違いしたの。それからは、それぞれ別の道を進んでいたんだけど……」

 

 その最中にドルマと出会い、ヘルゲンの復興に協力することになった。

 一度は吸血鬼ハンターとなりながらも、別の生き方をしていた二人だが、そこに吸血鬼を連れた者が現れた。しかも、ドルマの義弟だという。

 ガンマーとソリーヌにとって、ドルマは友人だ。そんな彼の傍に吸血鬼が現れたことで、眠っていた吸血鬼に対する警戒心が呼び起こされた結果、二人はセラーナを襲撃するに至ったという。

 改めて、ガンマーがセラーナに視線を向ける。

 睨みつけるような目。彼の中にある吸血鬼に対する敵愾心は、未だに強い。

 しかし健人が見る限り、幾分か警戒心は薄れているように見えた。

 それは多分、先の戦いで命を取られなかったこともそうだし、リータの料理で気絶している間に手を出されなかったことも影響しているのだろう。

 

「確かに、普通の吸血鬼とは違うのだろう。しかし、吸血鬼は吸血鬼だ。罪なき人の害になる可能性を無視はできない」

 

「だから、監視の為に同行することに同意する」と続けながら、憤りを振り払うように、手近にあった蜂蜜酒を飲み干す。

 

「まあ、そういうことだから、よろしく頼むわね」

 

 ソリーヌの方は元々ガンマーよりも吸血鬼に対する憎しみは薄いのか、軽く手を上げ、苦笑を浮かべている。

 

「よかった~~。二人がまたケントと戦うとか言い出さなくて~~!」

 

 心底ほっとしたように満面の笑みを浮かべるリータ。そんな彼女に、ガンマー達からジト目が向けられる。

 少し前まで、リータの料理で気絶していた二人。気絶している間に一切危害を加えられなかったことも、ガンマー達がある程度健人たちを信用する理由ではあるが、それにしてもここまでくる流れがあまりにも自然すぎる。

 もしかして、自分達がこうなることも計算ずくだったのだろうか? 

 ガンマー達はそんな疑念を抱かずにはいられない様子。それは健人とセラーナも同じだった。

 

「それじゃ、今日はもう休みましょ」

 

「そうだな、俺はガンマー達のベッドロールを持ってくる。確か、旅に使っていたやつがしまってあったはずだ」

 

「ドルマ様、お手伝いいたします」

 

 そうこうしているうちに、リータ達はさっさと寝る準備を始めてしまった。

 リータが双子を寝かしつけに二階に上がり、ドルマとリディアが奥の棚から寝袋を持ってくる。

 

「私も、もう休みますわ」

 

 ガンマー達が手渡された寝袋を火床の傍に敷く中、セラーナも疲れたようにため息を漏らすと、寝室へと戻っていった。

 健人もそろそろ休もうと腰を上げる。その時、二階から戻ってきたリータが声をかけてくる。

 

「ケント、ちょっと来て」

 

(ん?)

 

 リータに連れられ、健人は二階にあるリータとドルマの自室に案内されると、椅子に座らせられる。

 

「喉、見せて」

 

 リータの手が健人の頬に添えられ、くいっと顎を上げさせられる。おそらく、健人の喉の傷が気になったのだろう。

 黒く、醜く変質した皮膚が、リータの目に飛び込んできた。彼女の目がキュッと目が細り、指が首の皮膚に触れる。くすぐったさはなく、鉄板越しに肌を押されるような感覚だけが喉に走っていた。

 

 もう血は出ていないし、痛みもないよ?

 

 そう言いたくて、思わず口が動く。当然、声は一切出ず、健人は苦笑を浮かべた。

 多少は黒板での筆談生活に慣れてきた所だが、やはり時折、健常だった時の行動が出てしまう。

 気恥ずかしさを誤魔化すように、黒板に白墨を走らせた。

 

『リータ、今でも“声”は聞こえてる?』

 

 リータに聞こえる声。それは、彼女が殺め、取り込んできたドラゴン達の声だ。

 彼女はかつて、この『声』に掻き立てられるように戦いにのめり込み、そして暴走した。

 もちろん、それはドラゴン達の悲嘆だけが理由ではないが、彼女の心を苛んできたものに違いはなかった。

 一方のリータは、健人の指摘に一瞬目を見開き、少し逡巡する様子を見せながらも、僅かな憂いを漂わせながら微笑む。

 

「……ええ、毎晩のように、ね」

 

 健人の表情が痛ましそうに曇る。

 実際、彼女が自身の復讐とドラゴン達の怨嗟にどれだけ傷ついてきたのかを、リータ自身の『声』を通じて感じ取ったのだ。

 できるなら、癒えて欲しかった。

 

「気にしないで。これは、私が背負うべき業。ケントはもう、十分すぎるほど助けてくれたわ。おかげで、子供達にも恵まれたんだから」

 

 そんな健人を励ますように、リータは微笑む。

 先ほどまでの憂いはなく、柔らかながらも芯の強さを感じさせる笑みだった。

 

「それに三年前と比べて、彼らの憎しみの声はかなり薄れているの。それに、怨嗟の内容も変わった。前は自分が殺されたことで人を憎んでいたけど、今ではなんだか、後悔するような、悲しそうな声に変わってる。特にあの戦いの後からは……」

 

(それは……)

 

 過去の過ちから、導く者としての本質を見失ったドラゴン達。

 アルドゥインが呼び起したはるか太古のドラゴン達の姿は、死んで取り込まれたドラゴンソウルにも影響を及ぼしているのかもしれない。

 

『今のドラゴン達は……』

 

「三年前を皮切りにすっかり大人しくなったわ。被害が全くないわけではないけれど。彼らもあの戦いとアルドゥインが消えたことに、何か思うところがあったのね」

 

『ドラゴンに会ったりとかは……』

 

「いいえ、会っていないわ。そんな暇もなかったしね。ケントの方はどう? 声が聞こえたりする?」

 

(それは、大丈……え?)

 

 自らの内に意識を飛ばす。そこで思わず愕然とした。

 以前は、常に感じ取れていたドラゴンソウル達がいない。

 あのミラークの気配すら、まったく感じ取れなくなっている。

 表情が凍り付く。そんな健人の様子に、リータもまた彼の異常を察して首を傾げた。

 

「……どういうことかしら?」

 

 ドラゴンボーンが吸収したドラゴンソウルを失うということは、ドラゴンボーン本人が死なない限りまずない。

 可能性としては、アルドゥインとの戦いの後。健人がニルンを再構成したことだが……。正直、心当たりが全くなかった。

 シャウトが使えなくなった今、ドラゴンソウルがないことにそれほど大きな影響はない。

 だが、健人にとって彼らの存在は「力」の有無云々の問題ではない。

 彼らは戦友であり、友人達。そして、恩人達なのだ。

 確かに、一度は敵対し、本気で戦った者達もいる。しかし、だからこそ、彼らの魂と深く繋がれていた。その絆が消えたことは、健人にとって決して小さいことではないのだ。

 

「…………今は考えても結論が出ないわ。私も伝手で何かわからないか探ってみる」

 

 呆然とする健人を、リータが慰める。

 姉の言葉に彼も深呼吸をして、気持ちを切り替えた。

 

『すまないリータ、ありがとう』

 

 いつ彼らが消えたのか。

 考えられるのは、あのアルドゥインとの戦いと「創造」の行使だ。あれは間違いなく、人にもドラゴンにも、世界にも最も影響を与える事変だった。

 そこで健人は、セラーナが持っていた『星霜の書』が、妙な反応をしていたことを思い出す。

 

『リータ、竜の星霜の書がどうなったのか、話を聞いたことはある?』

 

 かつてリータが所持し、アルドゥインが呑み込んだ星霜の書。

 ドラゴンに関するすべての過去と未来が記されていると言われているアーティファクトであり、アルドゥインが覚醒するきっかけの一つだ。

 ニルンを再構成した『創造』は、記録にも残らない虚無の海で行われた。

 もし、健人自身に何が起きたのかを知るには、あの書を探すしかない。

 

「あれ? あの戦いの後、世界のノドの山頂にあった時の傷跡から出てきたらしいわ。その後、パーサーナックスがハイフロスガーに持って行って、今ではそこで保管されているはずよ」

 

(よりによって、世界のノドか……)

 

 直線距離としては近いが、セラーナの目的地としては正反対の方向だ。

 しかも、世界のノドに上るための登山道があるのは、山の東側。西にあるホワイトランから行くには、タムリエル最高峰を再び半周しなくてはならない。かなり気が滅入る話だった。

 

「分かったわ。星霜の書の方はお姉ちゃんに任せておきなさい」

 

 そんな中、リータが任せろと言わんばかりに胸を張る。

 彼女はこの地で名をはせたドラゴンキラー。そして、ハイフロスガーにも伝手がある。

 

『助かるよ、ありがとう』

 

「いいの、いいの! 姉は弟を助けるものなんだから!」

 

 家庭のことは全く頼りにならない義姉だが、こういう時は本当に頼りになる。

 一方のリータは、本当に嬉しそうだった。

 その晴れやかな笑顔に、沈みかけていた気持ちが消え、活力が戻ってくる。

 

「そういえば、健人は結婚しないの?」

 

(なんか、ドルマも同じこと聞いてきたな……)

 

 健人にようやく笑顔に戻って気分が高ぶったのか、リータが珍妙な質問をしてきた。どうやら姉としては弟の恋愛事情が気になる様子。

 一方の健人は、そんな姉の質問にため息を漏らす。

 

『生憎と、相手がいないよ』

 

「ええ~~? なんで? もしかしてモーサルの人達、男見る目ない?」

 

 そんなつまらない健人の返答がお気に召さなかったのか、勝手に憤る義姉。

 健人としては「いや、しらんがな」と言いたいところだが、生憎と声が出ない身。呆れた目で姉を見つめるしかない。

 

「ソルスセイムにいた時とか、モーサルにいるって子……たしか、ソフィちゃんだっけ? 気になったりしないの?」

 

 健人の冷ややか……というか、幾分迷惑そうな目を無視し、姉の追及は続く。

 普通の町娘、かつ人妻になって心の余裕ができたといえばいいのかもしれんが、気遣いを通り越しておせっかい姉と化したリータの追及は、ドルマよりもずっと執拗だった。

 

『フリアは戦友で世話になった恩人だし、ソフィは妹……』

 

 ソフィに至ってはまだ十歳……いや、今は十三歳になっているだろうが、それにしても恋愛対象に考えるには色々と問題のある年ごろである。

 日本だったら間違いなくお巡りさんに職質され、最悪タイーホだ。

 タムリエルでは十代前半での結婚というのもあるだろうが、生憎と健人の倫理観は晩婚化の進んだ日本のもの。

 

『正直、結婚とか恋とか言われてもよくわからん。故郷にいた時も、そういう色事とは無縁だったしな』

 

 父が多忙だったため、家の家事を一人でこなしていた健人。

 小学校の頃に母親が亡くなり、そこから中学にかけて何とか家事を覚え、高校に入ってからガラの悪い連中に絡まれたせいで一時孤立。そういう意味で、普通の男子が過ごすような青春からは半歩ズレた学生生活をしていた。

 そんなこともあり、自分の恋愛感情とかがいまいち理解できていなかったりする。

 健人の淡白な反応に、リータは口をへの字に曲げた後、ぼそりと口を開く。

 

「なんなら、お姉ちゃんがお相手紹介してあげようか?」

 

『いや、いいから』

 

「でも、健人も年頃でしょ? 本当に気になる人の一人や二人いないの?」

 

 何だったら、十人くらいいてくれてもいいよ、と言ってくる姉。

 お前、ドルマがそんな好色だったらどう思うんだ? と思わず突っ込みたくなる。

 

「ねえケント。もしかして、頭ドラゴンになってない?」

 

『失敬な』

 

 ちなみに、実際にドルマが好色男になったどうするんだとリータ本人に聞いてみたら、とりあえず魂をショールに委ねると真顔で言ってくる始末。

 

(それでいいのか、ダメ姉)

 

 その後も、姉の追求は続く。

 子供用ベッドに横になっているレメネが、同意するように「あうあ~~!」と一声鳴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 早朝のホワイトラン。

 ブリーズホームの前に、健人とセラーナ、ガンマー、ソリーヌの四人と、ディグナ家の面々が立っていた。

 

「じゃあ、元気でな」

 

「いつでも来ていいからね」

 

 双子を抱くドルマとリータから別れの言葉を受ける。

 健人は口元を緩ませながら、二人の言葉に小さく頷くと、双子にも別れの挨拶をするように手を伸ばす。

 

「あう……」

 

 すると、オルレナスは母の襟を掴んで身を隠すように顔を背けてしまう。

 結局、最後まで懐いてくれなかったオルレナスに苦笑を浮かべ、今度はレメネに手を差し出す。

 

「う~~、きゃきゃ!」

 

 レメネの方は、ドルマの腕の中で元気に身をよじらせながら、健人の指に、そのふくよかな手を絡ませてくる。

 その無邪気な姿が名残惜しくて、しばしの間戯れるに任せるも、一呼吸置いて手を放し、別れの言葉の代わりに頭をなでた。

 

「ケント、依頼が終わったらまっすぐ家に帰るんだよ?」

 

(俺は子供か? いや、確かに日本では未成年だけど……)

 

 お使いに行く子供を気遣うような義姉に内心突っ込みつつ、健人は掲げる。

 

『ウィンドスタッドについて、何か聞いていたりする?』

 

「ああ、お前の妹がいる土地だな。二年ほど前はかなり大変だったみたいだが、今は特に大きな騒動があったとかはないぜ」

 

(そう、か……)

 

 無事ならよかった。

 騒動というのが気になったが、健人はホッと息を吐く。

 健人が妹の無事に安堵する中、ドルマは健人達と同行することになったガンマーとソリーヌに目を向ける。

 

「ガンマ―もソリーヌも、頼む」

 

「ふん、分かっているさ。この吸血鬼が変なことをしないうちは、な……」

 

「それはこちらのセリフです」

 

 相も変わらす険悪な空気のセラーナとガンマー。

 一方のソリーヌはしょうがないというように肩をすくめている。

 忸怩たる思いを隠そうとしないガンマーと比べ、ソリーヌはそれほど憤りを覚えていない。切り替えが早いのは、彼女が技術者ゆえだろうか。

 健人がそんなことを考えていると、リータが四つの包みを差し出してきた。

 

「はい、これ。お弁当。四人分あるから」

 

「「「…………」」」」

 

 四人の警戒色を帯びた視線が、リータが差し出してきた包みに向けられる。

 まるで戦場にでも向かう新兵の顔。そんな健人達の反応に、ドルマが苦笑を浮かべた。

 

「大丈夫だ。作ったのはリディアだからな」

 

「さすがに、旅に出る方々に従士様の料理を渡すのは少し問題がありますので……」

 

「ぶ~~~」

 

 心底不満げなリータ。一方、健人達は安堵の息を漏らす。

 さすがにこれから長い旅路に向かうのだ。初日から毒味が必要な事態はご免である。

 

「これから北に行くんでしょ? もう春だけど、あっちはまだかなり寒いわ。体、冷やしちゃだめよ?」

 

『だから、俺は子供か?』

 

 今後のルートとしては、ホワイトランホールドの西の街道からハーフィンガルホールドに入る予定だ。

 健人達の馬は外の厩に預けてあるし、ガンマーとソリーヌ達も馬を調達してあるとのこと。道中の足は大丈夫だろう。

 

『じゃあ、また』

 

「ああ」

 

「またね!」

 

「再びお会いできる日を、楽しみにしております」

 

 別れの挨拶を済ませ、健人達はリータ達に背を向けてホワイトランの正門へと歩んでいった。

 遠くへと去っていく背中を見送り、姿が見えなくなると、リータの表情がへにゃりと寂しそうに変わった。

 

「行っちゃったね……」

 

「ああ。もう少し、ここにいて欲しかったんじゃないのか?」

 

「まあ、うん……。ドルマだってそうでしょ?」

 

「そうだな。だが、無事だったんだ。それを知れただけでも御の字さ。それで、ケントの喉、どんな感じだった?」

 

 抱いていた双子を持ち直し、リータは一度大きく息を吐く。

 硬く、瘡蓋のようになっていた健人の喉の傷。

 既に血は出ておらす、問題ない様に見えたが、その痛々しさは思い出すだけで辛くなる。

 

「酷かった。酷いやけどみたいになってた。でも……なんだか胸がざわつく感覚を覚えたわ」

 

 同時に、リータは妙な胸騒ぎも感じていた。

 ドルマとリディアが、リータの言葉に眉を吊り上げる。

 

「……それが何か、分かるか?」

 

「ううん。多分、パーサーナックスならわかると思うんだけど……。でも、なんだか……」

 

 しばしの間考え込むリータだが、やがて小さく首を振る。

 

「とにかく、今は竜の星霜の書について、ハイフロスガーのアーンゲールさんに手紙を渡さないと。リディア、悪いんだけど……」

 

「はい、承りました」

 

「後、伝えられるところにもケントの事は知らせておかないとなぁ……ドルマは?」

 

「俺は……すまん、同胞団の方も忙しくなりそうだ」

 

 妻の澄んだ目が、夫を見上げる。見透かすような瞳だった。

 

「コドラクさん?」

 

 そして案の定、リータの言葉は、ドルマが内心隠してきたことを完全に突いてきた。

 口元を緩めながらため息をつきつつ、ドルマはガリガリと後頭部を掻く。

 彼の妻は勘がいい。伊達に世界最強のドラゴンキラーではないのだ。

 隠し事も正直、成功したためしがない。

 

「ああ、ちょっと頼まれたよ。ウースラドを探してくれってな」

 

 ウースラド。

 かつてイスグラモルが使っていた戦斧であり、同胞団から失われていた象徴。それを、コドラクが取り戻すよう頼んだのだ。

 

「どうするの?」

 

「ヘルゲンのこともあるから、そうそうすぐにとはいかないが、あの爺さんの頼みだ。時間を見つけて探してみるさ」

 

「じゃあ、私はお爺ちゃんの方にも手紙書いておこうかな」

 

「そういえば、あの爺さんは今モーサルにいるんだったか……」

 

 かつて、リータ達と共にドラゴン殺しに協力した者達。その最後の一人。

 彼なら、シャウトを使えなくなった健人の力になってくれるはず。その確信がリータにはあった。

 今一度、リータはホワイトランの正門に目を向ける。

 弟が無事に戻ってきてくれたことは、とにもかくにも嬉しい。

 同時に、これからは穏やかに生きて欲しいとも思っていた。

 しかし、ドラゴンボーンとしての直感が告げている。困難な試練は、これからも彼に降り注ぐだろう。彼がエセリウスに導かれるか、オブリビオンに堕ちるまで。

 だが、同時にリータは思う『そんなこと、絶対に認めない』と。

 相手が世界だろうが、大切な家族を傷つけるのならば、決して許さない。

 

「ケント、気を付けてね」

 

 弟の無事を願いつつ、姉は覚悟を決めた。

 かつて、神に匹敵する最強の竜へ抱いていた戦意が、再び息を吹き返す。

 今度は、家族を守ろうとする強い母として。

 

 

 

 

 

 

 

「戻ってきたのか、セラーナ」

 

 そして数週間後、健人達は対峙する。

 古から生きる吸血鬼の王と。

 




いかがだったでしょうか?
弟の相手が気になるリータ。既に自分が結婚していることもあり、完全におせっかいをかいてしまう。
基本、弟には幸せになってほしいが、同時にドラゴンボーンとしての直感が、彼に試練が降りかかり続けることを察してしまう。
結果、色々と覚悟を決めた。
とりあえず、今は裏で手を回しつつ、弟を支えられる女性を探し始める。
現在の最有力候補は、ウィンドスタッドにいる義妹。
セラーナは論外。むしろ弟に厄介事運んだ元凶として、釘を刺している。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。