【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル 作:cadet
あんなに書けなかったのに、環境変わったら一日で9割書けた。やっぱ環境大事。
ハーフィンガルホールドの北岸は、常に強風に晒されている。
ノルドの祖先達の大陸、アトモーラ大陸からもたらされる冷たい北風の影響だ。
荒々しい海風と、降りしきる雪と雹に削られる山脈。夏でも雪を冠するその山々を超えた先に、セラーナの目的地はあった。
「ここですわ」
だだっ広い灰色の海岸線に紛れるように造られた桟橋。そこに、繋がれた小さなボートをセラーナは指し示す。
大きさは数メートル。とても荒波が吹きすさぶ亡霊の海に漕ぎ出せるような船ではない。
「ちっぽけな船ね」
「大丈夫ですわ。この船、波よけの付呪が施されておりますの。ちょっとやそっとの波では沈みませんわ」
そう言って、セラーナは自分から小舟に乗る。
少し不安になりながらも、彼女に続いて三人が乗ると、セラーナは桟橋に結んでいたもやい綱を解いた。
すると、小舟の底が淡い光を帯び、まるで静かな湖面の上をすべるように、ひとりでに漕ぎ出し始める。
海岸を打ち付け、白く泡立つ荒波も、小舟のそばではまるで鏡のように凪いでいた。
「これは……」
「すごい……」
小舟に仕掛けられた魔法に、ソリーヌとガンマーが驚きの声を漏らす。
声が出ない健人も、思わず目を見開いて小舟の縁から輝く船底を覗き見ていた。
そうしている間にも、小舟はまるで氷の上をすべるように、荒波の中を進んでいく。
「お前は、これからどうするつもりだ?」
跳ねる波と風が吹雪く音が小舟の周囲に流れる中、ガンマーが健人に話しかけてきた。
(どう?)
「彼女の血は間違いなく、俺が見てきたどの吸血鬼よりも古いものだろう。そんな者達がいる根城に、これから行こうとしているんだ。そこの主が、我々をおとなしく返してくれると思うか?」
「…………」
ガンマーから見ても、セラーナは見たことがないほど古い吸血鬼の一族らしい。
健人も正直、そのあたりの詳しい事情は聞き及んでいない。
「お前が彼女を護衛するのは、恩人から頼まれたからだというのは聞いている。だから、その行いはともかく、心意気には素直に感心している」
だからこそ、今からでも行いを正すべきではないか?
言外にそう述べてくるガンマーに、健人は小さく首を振る。
どんな形にしろ、健人は一度約束を交わしている。それに健人が一緒にいる間、セラーナは悪戯に人の血を吸ったり、危害を加えたりはしなかった。
セラーナ本人が他者との距離をうまく取り持っている以上、健人は約束を違えて、彼女に剣を向ける気はない。
「……そうか」
健人の意思が変わらないことを察したガンマーは、小さく嘆息を吐くと、小舟の底板に腰を下ろして黙り込み、吹き荒れる荒波を眺め始めた。
その顔には期待も失望もない。初めから、健人の回答がわかっていた表情だ。
セラーナも、ガンマーに対して目は向けず、反対側の海を眺めている。
健人としては、一時は一緒にいて大丈夫か? と思った二人。だが、思った以上に旅自体は順調だった。
もちろん、ここに来るまでセラーナとガンマーの間に会話は一切なかったが、それでも彼はノルドとして約束は違えず、監視のみでセラーナに危害を加えることはなかった。
彼が言葉ではなく、行動で語る真のノルドであることは、それだけで十分にわかる。
そうこうしている間に、いつの間にか周囲が明るくなってきた。
日が出たのではない。濃い霧が小舟の周囲に立ち込め始めたのだ。
健人は首をかしげる。霧は周囲の空気に込められた水分が飽和することで発生するが、強風が吹き荒れる中で霧ができることはまずないからだ。
「変ね、この霧……」
「この霧は、私の父の城を隠すためのものです。この霧のおかげで、父の城は何千年も見つかることがありませんでした」
健人と同じ疑問を抱いたソリーヌ。その疑問に、セラーナが答える。
彼女曰く、この霧は彼女の父、ハルコン卿が己の城を人の目から隠すために生み出したものらしい。
「それは……すごいわね。これほどの規模の魔法を使うなんて」
「それだけ、父の力は強いのです。なにせ彼は、デイドラロード、モラグ・バルから直接力を授かった吸血鬼ですから」
「……っ」
「……ちょっと待ちなさい、それ本当?」
「ええ……」
ガンマーとソリーヌの顔が、一気に青ざめる。
モラグ・バルは吸血鬼という存在の大本であり、発生原因。そんな存在から直接力を授かるということは、すなわちその者は吸血鬼の王であることを意味している。
世界で最初の吸血鬼、ラマエと同質の存在だ。
長い時を生きた吸血鬼であることは知っていたが、そんな伝説級の化け物がいるとは思わなかった。
「……着きましたわ」
二人が動揺している間に、小舟は目的地にたどり着いてしまった。
針路の先に見える霧。その上に、三角帽子を思わせる影が顔を覗かせている。
船が進むにつれ、巨大な尖塔が見え、続いて城全体が姿を現す。
まず目に飛び込んでくるのは、灰色の巨壁を思わせる正面の城壁。全体的に薄暗い威圧感を醸し出す建物であり、不気味な霧をまとうその佇まいは、来る者すべてを拒むかのようだった。
その中央正面に、正門がポツンと設けられており、正門は揺れ動く松明の明かりに照らされている。
そして正門の前には、桟橋へと続く長い石橋が架けられていた。
その桟橋に、健人たちが乗る小舟が着く。
「さ、行きますわよ。準備はよろしくて?」
セラーナの意思確認に健人が頷く。
「いいだろう。行ってやる」
「まあ、ここまで来た以上、覚悟を決めるしかないわね」
健人の首肯に続くように、ガンマーとソリーヌも意を決する。
そして四人は小舟を降り、セラーナを先頭にして、健人、ガンマー、そしてソリーヌの順で正門へと続く石橋を渡り始めた。
石橋の手すりには、悪魔を思わせる彫像が何体も置かれている。その像はどれも色あせ、塩を纏い、うっすらと苔を生やしている。この城が、長くデイドラ信者の住処である証だ。
しかし、橋の半ばまで来たところで、セラーナがふいに振り返った。
彼女はジッと健人を見つめると、今までつけていた眼帯を外す。
露になる、端正で美しい容貌。だが、健人が気になったのは、湖面に映る夜の月を思わせる、揺れる瞳。迷いながらも、覚悟を決めた目だった。
いったいどうしたのだろうか?
健人が尋ねる前に、セラーナが口を開く。
「ここまで連れてきてくださったこと、感謝いたしますわ。正直、殺されても仕方ないと思っておりましたから」
唐突に向けられる感謝の言葉。
確かに、これでクレティエンから受けた依頼は終わる。
元々、彼女を家まで送るだけの仕事だったのだから。
「これから先は、私の道になります。終わったら、貴方は家に戻って、家族を安心させてください」
スカイリムを横断するような旅路を終えたのだ。普通なら達成感を得るか、ホッとするところだろう。
しかし、健人の胸に去来するのは、安堵ではなかった。
ギュッと胸の奥を締め付けられるような疼き。今までの彼の人生の中では、無かった感覚だった。
「いいですね? 絶対に帰るのですよ?」
そんな健人の内心など気づかず、セラーナは念を押してきた。
十秒ほどの沈黙ののち、健人は静かに頷く。
胸の奥の疼きを、努めて無視するように。
そんな健人の答えに、セラーナは安心したように微笑んだ。
「では、これをお返ししておきますね」
そう言って彼女が差し出してきたのは、健人が彼女に貸していたスタルリムの短刀『落氷涙』だった。
確かに、ここまで来たらもう必要ないだろう。元々、健人の得物だ。
彼はそれを受け取ろうと手を伸ばし……そして首を振った。
『一応、まだ持っていて』
「ですが、ここまで来た以上、必要は……」
『まだ、依頼は終わっていない。きちんと終わったら、返してもらうよ』
「……わかりましたわ」
セラーナもまた、健人の言葉に一瞬逡巡したのち、落氷涙を腰に戻す。
そして再び、城の正門へと歩き始めた。
松明で照らされた正門には、番兵と思われる者が一人立っている。番兵の視線が、近づいてくる健人達を捉えた。
「止まれ、貴様ら、なにも……まさか、貴方様は……」
番兵がセラーナの顔を見て、驚愕の表情を浮かべる。
どうやら、番兵は彼女の顔を知っているようだ。
(でも、見たところこの人、吸血鬼じゃない……)
「良くお戻りになりました、セラーナ様。お父様もさぞお喜びになるでしょう」
そこで健人は疑問を覚える。
吸血鬼の従僕と呼ばれる、吸血鬼に仕える人間の存在は、健人も知っている。実際、モーサルの支配をたくらんだ吸血鬼にも、従う小間使いの人間がいた。
だが、セラーナは数千年間封印されていた。直接顔を知る人間がいるはずもない。
(となると、城の主が常に娘が帰ってきてもいいように教育を施していた、ということ……)
この城にいる彼女の父は、数千年間行方不明だった娘に対して相当入れ込んでいることがうかがえた。
そして健人達は、門番の従僕に促されるまま、城の中へと足を踏み入れる。
最初に感じたのは、ねっとりと体に纏わりつくよう陰気な空気だ。
薄暗い石造りのロビーは、外と同じくらい冷え切っていた。
続いて、血の匂いが鼻を突く。
「ひどい匂いだな……」
「いかにも、吸血鬼の寝床みたいな空気ね」
ガンマーもソリーヌも、異様な場内の様子に顔をしかめている。
そこに、咎めるような声がかけられる。
「おい、どこの誰だ。門番は何をしている!」
正門を入ったすぐのロビー。そこに、一人の男性が、唐突な来訪者達を睨みつけている。
見たところ、ハイエルフの男性。その瞳は吸血鬼らしく、不気味な光を帯びている。
「人間か。よくもここに足を踏み入れることができたな」
警戒心に満ちた目。しかし、セラーナを見た瞬間、彼のその瞳が一気に見開かれた。
「ちょっと待った……セラーナ? 本当に君なのか? 信じられない」
「ヴィンガルモ。父はいるかしら?」
「もちろん! ずっと君の帰りを待っていたよ。さあ、こちらへ……」
後ろにいる健人達のことなど忘れたかのような態度で、ヴィンガルモと呼ばれた吸血鬼はセラーナを奥へと案内する。その声には、歓喜の色に満ちていた。
一方、彼の後についていくセラーナの目は冷淡そのもの。そんな彼女の視線には気づかず、ヴィンガルモは上ずった声で話を続ける。
「ちょうど、今は宴の最中だったんだ」
「宴?」
「今日は特別豪勢だ。きっと、我らの主神の思し召しがあったのだろう」
ヴィンガルモのセリフに眉をひそめたセラーナが、ぼそりと呟く。
「私が来ると、分かっていたようですわね」
セラーナの言葉に、健人も眉を顰める。
自分たちが来ることがわかっていたとは、どういうことだろうか? 思い当たる節は、健人にはない。
そしてロビーを抜けた健人達は、眼前に広がった光景に、思わず目を見開く。
ロビーの出口からは二股の階段となっており、階下には百人は余裕で入れる大広間になっていた。そこでは、ヴィンガルモが言う「豪勢な宴」という名の、凄惨な光景が広がっている。
コの字に並べられたテーブルに乗せられているのは、大小様々な豪華な銀の皿と杯、そして数多くの人間達の体。吸血鬼たちは各々好きなように、その“豪華な食材”に舌鼓を打っている。
ナイフで切り裂いた傷口から流れる血を杯にいれ、一気に飲み干す者。
直接遺体にかぶりつき、血を肉ごと貪る者。
そして、腹を裂き、内臓と骨を抜いて皿に乗せ、ナイフとフォークでゆっくり味わう者。
多種多様な、しかし例外なく鮮血に塗れた食事風景だった。
(これは……酷い)
「っ……!」
喉元まで込みあがった不快感。健人はそれを、とっさに飲み込む。
思わず、今は声が出ない身であることがよかったと考えてしまった。
彼の後ろにいるガンマーとソリーヌも、叫びそうになる声を必死に抑えている。
「主様! 皆! セラーナが戻ったぞ!」
ヴィンガルモが声を張り上げる。
その声に、宴の席にいた吸血鬼達の視線が、一斉にロビーの方……すなわち、健人達に向けられた。血に彩られた宴の喧騒が止み、吸血鬼達の顔が驚きに染まる。
「そんな、まさか……」
「信じられない」
彼らとしても、セラーナの帰還は予想外の出来事だったのだろう。彼らの驚愕の視線を浴びながら、健人達は大広間へと降り、その中央に立たされる。
そして、もっとも上座の席から立ち上がり、ほかの吸血鬼とは、明らかに違う空気を放ちながら、歩み寄ってくる一人の男がいた。
つややかな黒髪と、吸血鬼特有の豪奢な黒と赤の衣を纏った人物。
堀が深く、中年の容貌ながらも、若いころは端正な顔立ちだったことを想像させた。
だがなにより、その顔つきの雰囲気が、セラーナによく似ていた。
「長らく行方の知れなかった娘がようやく戻ったか。星霜の書は持っているのだろうな?」
健人の予想通り、彼がセラーナの父親であった。
低く、重みのある声色。上に立つものとして生まれ、なおかつ、その事に疑いを持つことのなかった者特有の高い自己肯定感と、傲慢さを漂わせた声だった。
「久しぶりに出会って、真っ先に聞く事がそれですの? ええ、その書なら持っておりましてよ」
「もちろん会えて嬉しいに決まっているだろう。言葉にしないと分からないのか? 私を裏切ったお前の母親がこの場にいれば、この再会を見せた上で頭から串刺しにしてやるのだが……」
一方のセラーナは、不遜な父親の言葉に、不満と憤りを隠すことない態度で答える。
そんな彼女の言葉に弁明するようなセリフを述べるハルコンだが、その傲慢な声色には何の変化もない。
「して、我らの殿堂に見知らぬ者達を連れて来たようだが、何者なのだ?」
ハルコンの視線が、セラーナの後ろに控えていた健人を捉えた。
無機質な、虫を見るような目。
怪しく輝く光彩に射すくめられ、ガンマーとソリーヌが思わず息を飲む。
彼らからしても、この吸血鬼の力は、他とは隔絶したものだと感じられているようだった。
「これは私の心のよりどころ。私の正体を知った上で、ここまで連れてきてくれた方ですわ」
セラーナの言葉に、ハルコンの瞳に僅かだが、興味の色が覗く。
彼は「ほう……」と小さく唸ると、改めて三人……特に健人をじっと見つめ始めた。
交わる古の吸血鬼と、異端のドラゴンボーンの視線。
生物として隔絶した存在である吸血鬼の王に見つめられても怯える様子を見せない健人に、ハルコンはさらに好奇心を刺激されたのか、口元を僅かに吊り上げた。
「娘が無事に戻った事、感謝している。お前の名は何だ?」
「…………」
「どうした?」
「ハルコン卿を前に無礼な奴め! 引き裂いてやろうか!?」
「彼は、喉に深い傷を負っているのです。話すことができないのですわ」
名を問うハルコンに答えない健人に、控えていたヴィンガルモが声を荒げるも、その言葉は、セラーナの一声に押し止められた。
しかし、同時に周囲の吸血鬼から「声なしか」などという嘲笑が囁かれ始める。この世界の障碍者に対する認識など、こんなものだ。
健人は特に気にせず、黒板を出して白墨を走らせる。
『ケント・サカガミ』
「ふむ、珍しい名前だな。私の名はハルコン、この一族を率いている。私の素性については、娘から聞いている事だろう」
『古く、強い吸血鬼の一族とは聞いている』
「その通り。スカイリムにおいて、最も古く、最も強大な種族だ。我々は世の気苦労から遠く離れ、長い時をここで暮らしてきた。しかしそんな時代も、妻が私を裏切り、最も大切にしていたものを奪い去った事で終わりを告げた」
ハルコンの視線が、セラーナに向けられる。渇望していたものが手元に来た、歓喜の目。
それは彼女に対してか、それとも、持っている星霜の書に対してか。傲慢な声色から、その真意は判断がつかない。
「さて、ここまで無事に娘を送り届けてくれたのだ。当然、褒美を取らせるべきだな」
『要らない。家に帰してくれればそれでいい』
この城は化け物の巣窟だ。しかも、周囲を囲む吸血鬼達は誰も彼もが、あのロキルと同等か、それ以上の強大な魔力を漂わせている。
少なくとも、健人はここで戦いになった場合、無事に脱出できる光景が想像できなかった。
「そうはいかない。この城の主として、星霜の書と我が娘、それらと同等の価値となるものを送らねばならん。そして思い当たるものは、一つしかない」
しかし、そんな健人の願いとは裏腹に、ハルコンは無理にでも褒美を取らせようとしてくる。
「私自身の血だ。これがあれば羊達の間を狼として歩め、近づけば人々がふるえ上がることだろう。死を恐れる必要もなくなる」
血を与える。
吸血鬼にしてやるというのが、ハルコンが提示してきた褒美だった。しかも、吸血鬼の王直々に。
周囲の吸血鬼達が、ざわめき始める。
吸血鬼達にとって『血』というものは重い。その尊さは、どれだけ彼らが純血か、というものに大きな比重が置かれていた。
当然、吸血鬼の王は、吸血鬼達の階級の中でも頂点に位置する。
その尊き王族の末席に加えてやると、ハルコンは言っていた。
『もし、断れば?』
「ならばお前は他の定命の者同様、獲物に過ぎん。今度だけは見逃してやるが、この殿堂からは追放とする」
吸血鬼達から見れば、望外とも呼べるような褒美。
しかし、健人は当然ながら、まったく嬉しくはない。
そんな彼の隔意が、ハルコンの癇に触れた。
「まだわからんのか? わが力を見るがいい!」
直後、ハルコンの体が漆黒の影に包まれ、膨大なマジカが噴き出す。
大広間に局所的な嵐が吹き荒れ、宴の料理が吹き飛ぶ。他の吸血鬼達は、主の癇癪に思わず広間の端に避難。
そして嵐が収まった後、その中心には、一体の異形が佇んでいた。
灰色の肌と蝙蝠のような翼。長く伸びた腕の先には鋭い爪が鈍い光を放っている。
顔は人間からかけ離れ、長く伸びた耳と開いた鼻腔、巨大化した牙が、明らかに普通の吸血鬼とは違う存在であることを誇示していた。
なにより、その身に纏うマジカは、健人が相対してきたミラークやヴァーロックと同等かそれ以上。
「この力が手に入るのだぞ!? さあ、選ぶがいい!」
とても、今の健人が叶う存在ではない。
下手をしたら、気まぐれに指先一つで殺されそうなほどの力の差だ。
『断る』
だが健人は、そんな状況にもかかわらず、ハルコンからの提案を断った。
別に、彼が「殺さない」という約束を守ると思ったわけではない。
ただ、自分の心に従ったまでだ。
そんな健人の答えに、ハルコンは落胆にも似た嘆息を漏らす。
「ならば、お前は獲物だ。約束通り、ここではその命は刈り取らないでおいてやる。だが……」
そこで、ハルコンの視線がガンマーとソリーヌに向いた。
健人の胸の中で、嫌な予感が一気に膨れ上がる。
「そこの者たちは別だ。吸血鬼ハンターだろう? 見ればわかる」
いかがだったでしょうか?
ゲーム本編ならこのまま外に追い出されて終了ですが、ガンマー達がいたことで不穏な空気に……。
以下、登場人物紹介。
ハルコン
言わずと知れた、DLCドーンガードのラスボス。
吸血鬼の王と呼ばれる、モラグ・バルから直接力を授かった真祖の吸血鬼。
タムリエル最初の吸血鬼と同質の存在。
ヴィンガルモ
ハルコンの相談役の一人である、ハイエルフの吸血鬼。
セラーナとも顔見知りであり、それだけ長い時を生きている。
ハイエルフらしく、慇懃な態度であるが、あくまでそれは同族相手のみ。
人間相手には、傲慢な態度を崩すことはない。