【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル   作:cadet

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第十八話 レッド・ウォーターの密売所

 ヴォルキハル城を出発してから二週間ほど。健人達はハルコン特製の小舟で亡霊の海を東へと進んだ後、そのままイーストマーチとリフトの国境近くまで遡っていた。

 そして、船をダークウォータークロッシングと呼ばれる鉱山の少し先の川岸に隠した後、徒歩で移動。

 ダークウォーター峠を越え、そして目的地へと到着していた。

 

「あそこですわ。しかし、変ですわね。ガラン様の話では、洞窟があるというお話だったのですが……」

 

 メリエルナが指し示した先にあるのは、小さな小屋だった。

 薄暗い闇夜の中、三人はその小屋を茂みの奥から覗き見る。

 壁は半分近くが崩れ、かろうじて柱と屋根が残っているような有様の廃墟。

 崩れた壁の奥からは明かりが漏れ、光源である暖炉の前には、狩人のような恰好をした者が暖を取っていた。

 だが、狩人というには、どうにも様子がおかしい。

 何度も何度も暖炉から目を放して周囲を見渡しており、明らかに怪しげな気配を醸し出していた。

 

「おそらくですが、ハルコン様から聖杯を奪ったという者が配置した見張りでしょう。何をしているのかは、正直分かりませんが」

 

「メリエルナ、その聖杯を奪ったのは、どういう者なんだ」

 

「ガラン様の話では、どうにも過去にヴォルキハルに属そうとした者とか。しかし、ハルコン様が相応しくないとして、追い返したものと聞いています」

 

 その後、件の無礼者は城のデスハウンドの一部を手なずけ、城内を混乱させた後、聖杯を持ち去った。なんでも、古い貯水槽に潜伏していたとか。

 それを聞いて、激怒したハルコンに部下の何人かが灰に変えられたらしい。

 つまり、メリエルナが受けた任務とは、聖杯を取り戻すついでに、その無礼者を始末しろということなのだろう。

 

『で、どうするつもりだ?』

 

「ご心配なく。見たところ、見張りは人間ですから、私がどうにかしますわ」

 

 そういうと、メリエルナはすくっと立ち上がり、おもむろに服をはだけさせると、小屋に向かって歩き始めた。

 彼女を守るように、レキナラもまた茂みを回り込む形で小屋へと近づいていく。二人に遅れて、健人も静かに移動を開始。

 小屋の崩れかけた壁に、レキナラと並ぶ形で張り付く。

 中から、やさぐれた男のつぶやきが聞こえてきた。

 

「くそ、なんで俺だけが外で見張りなんぞしなきゃいけねえんだ。他の奴らは、下でしっぽりと楽しんでるってのによ……」

 

 見張りは不満げな声を漏らしながら、ザクザクと燃え盛る薪に火箸を突き刺しながら愚痴をこぼす。

 

「ああ、スクーマが欲しい。あの特別なスクーマが……極上の女もだ。暖かい柔肌に包まれりゃ、この寒さもちっとは消えるだろうになぁ……」

 

「もし、そちらのお方……」

 

「あん?」

 

 そんな男の耳に、メリエルナの声が届く。

 彼女は月光を浴びて輝く長い薄青髪をなびかせながら、その小ぶりで端正な顔で男に微笑みかけていた。振り向いた男の目が、大きく見開かれる。

 

「こりゃ……こんな森の中で会えるとは思えない別嬪だ。何の用だい?」

 

「こちらで、特別なものが手に入ると聞いてきましたの。もしよければ、教えてくださらない?」

 

 特別なもの。その言葉に、見張りの目が怪しく輝き、顔色が好色に染まる。

 

「へ、へへ。ああ、そうさ。確かに、ここじゃ特別なスクゥーマを扱ってる。下に行けば手に入るぜ」

 

 スクゥーマとは、この世界における一種の麻薬である。

 ムーンシュガーと呼ばれる特別な砂糖を原料としているそれは、飲む者に強い陶酔感と開放感を与える。

 一方で、凄まじく強い依存性があり、タムリエルのほとんどの地で禁止されている危険な薬物だ。

 当然、中毒により死亡する者も多い。

 

(ここは、スクゥーマの密売所か……)

 

 壁の影で見張りとメリエルナの様子を伺いながら、健人は思考を回す。

 スクゥーマを始めとした麻薬などは、臑に傷のある者達が好んで扱う商品だ。

 現代の地球でも、この手の類の禁制品は根絶できていない。

 理由は、とにかく金になるからだ。特に貧しい地域では、手早く現金収入を得られる手段は限られており、生活に困窮した者達が違法薬物の栽培や作成に手を出す例は数えきれない。

 そして、麻薬は一度依存してしまえば、そこから完全に脱却することは不可能だ。脳に刻まれた快感は消えることはなく、もう一度、もう一度と、延々とその危険な薬物に手を出し続けることになる。

 日本のように薬事法や危険な薬物の管理体制が整っていないタムリエルでは、その危険はより身近にあると言っていいだろう。

 しかも、この場で提供しているのは「特別な」スクゥーマだという。

 

「特別なスクゥーマ? どのように特別なのですか?」

 

「バルモラ以外じゃ最高級のスクゥーマが手に入る場所だ。ここの水には特別な魔法がかかっていてな。それが飲んだ奴の心を解放してくれるんだぜ」

 

 バルモラはモロゥウインドにあった都市であり、薬物売買の温床だった地だ。

 バルモラブルーとよばれる特別なスクゥーマを作っていたが、レッドマウンテンの噴火で滅んでしまっているらしい。

 つまり、この見張りは「ここにあるスクゥーマは、タムリエルで一番だ!」と標榜しているのだ。

 ブラッドストーンの聖杯とここで売っているスクゥーマとの関係は不明だが、普通の麻薬よりはるかに危険な代物であることは容易に想像がついた。

 

「それにしても、お嬢ちゃん。あんまり調べないまま、こんなところまで来たのか?」

 

「ええ、こう見えて好奇心旺盛ですの。だから、“特別”なものがあると気になって確かめてみたくなってしまうのですわ」

 

 メリエルナが艶っぽい口調と共に腕を組み、その細くて美しい指を濡れた唇に這わせる。組まれた腕の中で、白く豊かな双丘がたわみ、深い谷間を強調していた。

 見張りの喉が、ごくりと鳴る。

 

「まあ、見せてやることはできるが、その前に、身体検査をしねえとな……」

 

 見張りが立ち上がり、グイっと身を乗り出す。その眼は当然のごとく、メリエルナの胸元を凝視していた。

 

「あら、どこまで調べるおつもりですの?」

 

「もちろん、隅から隅までさ……」

 

 見張りの腕が、荒々しくメリエルナを抱きよせ、その体をまさぐり始める。

 彼女もまた、特に拒絶することなく、男の腕に身をゆだねていた。

 布ごしに肌が擦れる音が、しばしの間、小屋の中に流れる。

 

「まだ、調べるのですか?」

 

「もちろんだ、どこに何を隠しているか分からんからな……」

 

「ふふ、正直ですわね。私、素直な方は好きですけど、こちらも見てはくださらない?」

 

 体をまさぐられる中、メリエルナがぐっと自分の体を見張りに押し付ける。

 美女が自分の方から誘ってくるという状況に、更に見張りの顔が歪んだ。

 

「へえ、もっとか?」

 

「ええ、熱い夜を過ごすのは大好きですから。ですので、こちらの方も可愛がってはいただけませんか?」

 

 唇を差し出すようにつま先立ちになるメリエルナ。

 必然、互いに見つめ合う形になる。その時、彼女の瞳が怪しく輝いた。

 

「ほう、ますます俺好みの女だ。いいな。っ!?」

 

「むふ、んん……」

 

 直後、好色に歪んでいた男の表情が凍り付いた。

 やがて目から光が失われ、メリエルナに回されていた手がだらりと力なく垂れ下がる。

 吸血鬼の魅了が、見張りの意識を奪い取ったのだ。

 

「ふふ、なかなか魅力的な手繰りでしたわ。それでは、中を案内してくださる?」

 

「はい……」

 

 見張りが暖炉奥……小屋の内壁へと向かい、その区で屈んだ。彼の眼前の床には四角形の扉が設置されている。

 ガチャリと見張りが扉を開けると、地下から冷えた空気と共に、甘い香りが漂ってきた。

 やはり、取引場所は地下にあるらしい。

 

「さ、お二人とも参りましょう」

 

「そうだな」

 

「ケント様、先に行っていただけますか?」

 

 一番厄介な人間を先行させ、様子を伺うつもりなのだろう。

 健人はため息を漏らしながら、地下への梯子に足をかけた。

 その時、地下への入口の傍で立ちすくむ見張りの姿が目に映る。

 さきほどまでの威勢もすっかりなくなり、メリエルナの指示に素直に従う見張りの様子を見るに、健人は彼女の力がさらに増しているように感じた。

 おそらく、ハルコンかその配下から力を授かったのだろう。

 

「ケント様、どうかいたしましたか?」

 

 様子を窺ってくるメリエルナの目が、再び怪しげな光を帯びる。

 どうやら、再び健人を魅了しようとしているらしい。

 確かに力は増しているようだが、生憎とこの程度の魅了にかかる健人ではない。

 懲りずにまたちょっかいをかけてきたメリエルナの行動に眉をしかめ、向けられる超常の力を意思で弾き返す。

 しかし、そんな隔意に首輪が反応し、その棘を健人の首に突き立て始めた。

 

(っ……!)

 

 プチリと肌が破れる音とともに、首筋とこめかみに痛みが走り始めた。

 思わず顔をしかめる。だが、健人は努めてその痛みを無視しながら、梯子を降り始める。

 

「もう、本当につれないお方ですわね」

 

 痛みに耐える健人の姿に、メリエルナは不満げながらも艶を帯びた声を漏らす。

 健人が下に降りると、木製の壁と天井が設けられた通路が目に飛び込んできた。

 通路は意外なほどしっかりとした造りであり、壁には篝火がかけられ、通路の中を明るく照らしている。

 先には階段があり、降りると少し開けた地下室となっていた。

 その地下室にはさらに奥へと続く扉があり、扉の前にも見張りがいる。

 

「お前、客か? 客なら歓迎するが、武器は置いていけ」

 

 通路から出てきた健人を、二人目の見張りが咎める。

 このような取引所で、武器の携帯を許すはずもない。

 

「あら、ごめんなさい。ですが、別に必要ないと思いますが?」

 

「ああ? 他にもいるのか。何を言って……」

 

 歩み寄ってきたもう一人の見張りが武器を預けるように言ってくるが、地上から降りてきたメリエルナが、再び魅了をかけてしまう。

 地上の見張りのように呆けた彼を放置し、合流した三人は再び奥へ。

 扉を開けた先に見えたのは、鉄格子に守られたカウンター。そのカウンターには、受付と思われるウッドエルフの女性がおり、健人達の姿を見ると、営業向けと思われる笑顔を浮かべた。

 

「ああ、いらっしゃい! ここは初めてでしょう? まずは買い物していってね。部屋に入るのは、その後よ」

 

「買い物……スクゥーマですか?」

 

「ええ。ここにあるのはバルモラに次ぐ特別なスクゥーマよ。きっと気に入ってもらえると思うわ」

 

「それは楽しみですわ。ところで“そのスクゥーマはどこで作られていらっしゃるの?”」

 

 魅了の魔法を発動させながら、メリエルナがディーラーに問いかける。

 ディーラーの営業スマイルが、見る見るうちに生気を失っていく様は、ケントとしては正直いい気分はしない。ソルスセイム島での事件を思い出してしまうからだ。

 とはいえ、相手は禁制品を売って儲けている犯罪者。

 ロクでもないことをして生きているのは事実であり、それが幾分、心の負担を和らげてくれていた。

 

「この通路の奥……そこに」

 

 ボソボソと秘密を漏らしていくディーラー。

 どうやら、この密売所にはまだ奥があるらしい。

 

「リーダーは、どんな名前の方なのかしら?」

 

「しり、ません。ただ、自分のことを“夜の女王”だと……」

 

「女王か……」

 

「何を考えてそんな名を名乗るようになったのかは、明白ですわね。それで、リーダーは吸血鬼ですの?」

 

「は、い……」

 

「確定ですわね」

 

 ヴォルキハル城からブラッドストーンの聖杯を盗んだのは、ヴォルキハルに属することを許されなかった吸血鬼だ。

 しかも、女王と名乗っているところを見るに、女性であるらしい。

 同時に三人が懸念したのは、他に吸血鬼がいるのかという点だった。

 吸血鬼は増える。

 もちろん、昼間動けないことを考えれば、増やせる数には限りがあるだろうが、相手が元凶の吸血鬼一人のみと考えるのは危険だった。

 

「他に吸血鬼は?」

 

「いま、す……七人、くらい……」

 

「やはりか……」

 

 やっぱり、ある程度戦力を増やすことはやっているらしい。

 魅了したディーラーを下がらせると、三人はさらに奥へと向かう。

 カウンターから離れたところで、複数の咳き込む声が聞こえてきた。

 

「ゲホゲホ……」

 

「グフ、グフ……」

 

 同時に、甘い匂いがより一層強くなる。

 奥は複数の小部屋に分かれており、その一部屋一部屋に、客と思われる者達が詰めていた。

 みんな虚ろな表情で虚空を眺め、時折体を震わせながら荒い息を吐いている。

 貴族と思われる身なりのいい者から、浮浪者と思われる者まで。その様相は様々。

 中にはグッタリと寝込んだまま動かず、生きているのか死んでいるのかもわからない者もいた。

 

(これは、酷いな……)

 

 健人自身、この世界に来てから凄惨な光景というのは何度も目にしているが、ここまで退廃的な空気に満ちた場所というのも珍しかった。

 だが同時に、地上にいた見張りが、なぜ突然現れたメリエルナを客だと思ったのかも理解した。

 これだけ様々な身分階級の者達がくるなら、誰が来ても客であるという可能性が頭の片隅に浮かぶだろう。

 

(長居したい場所じゃない。さっさと終わらせた方がよさそうだ)

 

 麻薬は直接体内に取り込む方が効果は出るが、量によっては気化したものを吸い込むだけでも薬効が出る。

 普通の人間である健人にも影響が出ないとは言い切れなかった。

 足早に陰鬱なゲストルームを通り過ぎた健人達。その目の前には、鍵がかけられた鉄格子が現れる。

 鉄格子の奥はこれまでのしっかりとした内装ではなく、岩肌がむき出しになった洞窟が続いていた。

 この奥でスクゥーマを作っているのだろう。そしておそらく、目的の聖杯と吸血鬼達も。

 鉄格子の鍵を開け、洞窟の奥へと進む。

 奥には縦長の空洞があり、中央には巨大な窯と鍋が鎮座していた。

 見た感じ、スクゥーマの合成と蒸留を行う施設だろうと思われた。

 窯の傍には、三人の男達が作業をしている。

 その少し離れたところでは、作業状況を見守りながら、ワインボトル片手に中身を呷る女性がいた。

 

「ぷは……。おい、屑ども休むな! 手を少しでも止めたら、そいつが私達の明日の食事になるからな!」

 

「あちらの女性は吸血鬼ですわね。ケント様、お願いできますか?」

 

 頼むような口調。だが、今の健人は、文字通り彼女に首輪を繋がれた状態だ。

 拒否すれば、また強烈な激痛に苛まれるだろう。そうなれば、面倒なことになる。

 

(ち……)

 

 メリエルナへの不満に反応し、再び頭痛が襲ってくる。

 彼女への嫌悪を努めて頭から弾き飛ばし、健人は意識を蒸留施設で作業をしている者達に向けつつ、様子をうかがう。

 健人達が今いるのは、彼らが作業をしている場所のちょうど真上である。幸い、四人は健人の気配に気づいていない。

 

(すぅ……ふっ!)

 

 静かに宙に身を躍らせ、同時に抜刀。

 重力に退かれるまま、左の短刀を逆手に構え、ワインを煽る吸血鬼の首筋めがけて刃を突き立てる。

 

「がっ!?」

 

 何が起きたか分からぬまま、崩れ落ちる吸血鬼。

 持っていたボトルが地面に落ちるより先に、健人は再び駆け出す。

 

「なんだ? がっ!?」

 

 作業員の一人が、異変に気付いて振り返るが、その前に間合いを詰めていた健人が刃を一閃。峰で相手の顎を撃ち抜く。作業員は気絶し、目をぐるりと回しながら地面に崩れ落ちた。

 同時に、吸血鬼が落としたワインボトルが、パリン! と割れる。

 

「お、お前はいったい……グっ!?」

 

「ゲフ!?」

 

 残り二人も健人の襲撃に気づくが、その時には既に決着がついていた。

 二人目の顎を返す刃で打ち抜き、三人目の腹に拳を突き立てて悶絶している間に首を絞め、昏倒させる。

 

「相変わらず、素晴らしいお点前ですわね」

 

「ふん……」

 

 胸元で両手を合わせながら、童女のように微笑むメリエルナ。先ほどまで男を誘惑していた魔性の女とは思えないが、逆にその無邪気さが健人には気味が悪かった。

 一方のレキナラは、これまた相も変わらず警戒心に満ちた目で健人を監視している。

 その目の奥に覗く口惜しさは、かつて戦士だった故か。

 しかし、今の健人には、どれも意味のないもの。とにかく、この首輪をどうにかしなければならず、それまでは何とか生き続けなければならない。

 

(いいから、先に行くぞ)

 

 後ろの二人を視線で促しながら、先へと進む。

 洞窟内は所々、人の手が入った形跡が見受けられた。

 あちこちにつるはしや岩を運び出すための荷車が散乱している。

 どうも、この洞窟を根城にしている者達は、洞窟の拡張も行っているらしい。

 掘削現場を抜けていくと、行き止まりにたどり着く。

 

「……ここで終わり、ですの?」

 

「ほかに横穴とかはなかったが……」

 

 メリエルナ達が首を傾げる中、健人は静かに岩壁に向かう。

 僅かに、頬を撫でる風の感触があった。おもむろに手を掲げ、風の出所を探る。

 風はやはり、正面の岩壁……正確には、ひときわ大きな岩の縁から流れてきていた。

 

(……古代ノルドの隠し扉か)

 

 近くの岩肌を撫でると、僅かの感触の違う石が指に触れた。それを押しこむと、天井の岩の陰から輪のついた鎖が垂れ下がってくる。

 古代ノルドの遺跡でよく見る、隠し扉を開けるための装置だ。

 鎖を引くと、案の定、正面の岩が横にずれ、奥へと続く通路が出現する。

 

「おみごとですわ」

 

「手慣れているな」

 

 後ろでメリエルナのパチパチという拍手を聞き流しながら、健人は隠し扉をくぐる。

 これまで来た洞窟とは違う、きちんと平らに均された石床。壁も同様に岩肌剥き出しではなく、苔むした石壁となっている。

 その様式は、隠し扉と同じく、ノルドの古代の遺跡を彷彿とさせた。

 健人の胸に嫌な予感がよぎる。

 力の有る遺物とされるブラッドストーンの聖杯。そして、古い遺跡の痕跡が残る洞窟。偶然ではないことは、容易に想像がついた。

 

『聞きたいことがある』

 

「あら、なんですの?」

 

『無くなったとかいう“聖杯”がここに運ばれたこと、偶然じゃないな? ここに何がある?』

 

 健人の指摘に、メリエルナの口元が吊り上がる。

 意味深なその笑顔に、健人は彼女が情報を隠していたことを確信した。

 

 

 




ということで、健人サイドに戻ります。
ブラッドストーンの聖杯を奪った者ですが、ゲームではヴォルキハル城の地下にデスハウンドと一緒にいる吸血鬼となっています。
本来、ユニークネームはありませんが、ドーンガード編を再編する中でこちらも色々といじくっております。
以下、用語説明

レッドウォーターの密売所
ゲームではレッドウォーターの隠れ家と呼ばれていた場所。違法なスクゥーマの密売所であり、ここではレッドウォータースクゥーマと呼ばれる変わったスクゥーマが取引されている。
見張りは地上部分と地下の二段階で、エルフの受付嬢が危機として違法薬物を勧めてくる。
また、スクゥーマを使うゲストルームには赤い霧が立ち込め、陰気で不気味な印象を抱いたプレイヤーも多い。
客には貧民から脱走兵、はては貴族など、多種多様。おそらく、かなり手広く薬を売りさばいていたことがうかがえる。
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