【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル 作:cadet
「……ええ、そうですわ。此処の洞窟はレッド・ウォーターの洞窟と申しますけれど、ブラッドストーンの聖杯は、ここの遺跡から湧き出す赤い水と組み合わせることで、大きな力を発揮するとか」
やはり、その聖杯とこのレッド・ウォーターの洞窟は関わりのある場所らしい。
同時に、ケントの思考が高速で回り始める。
『それだけじゃないな。ブラッドストーンの聖杯を奪った吸血鬼、協力者がいたんじゃないか?』
デスハウンドを手なずけたとはいえ、あのハルコンがいる城から遺物を盗むことは簡単ではないはずだ。
当然、協力者がいたと考えるのが妥当である。
「……そこは定かではありませんわ。ただ、聖杯を盗んだ者が偶然、ここにたどり着けるとは思いません。第三者からなにかしらの入れ知恵があっても、可笑しくはありませんわね」
腕を組み、淡々した様子のメリエルナだが、その一瞬の沈黙に、健人は眉ひそめた。
(話す気がない? もしくは……聞かされていないのか?)
ブラッドストーンの聖杯の奪還について、最も事情を説明されているのはメリエルナだ。
そのはずの彼女が見せた、僅かな戸惑い。それが、健人に違和感を覚えさせる。
(とにかく、情報を収集しながら先を急ぐしかない……)
浮かんだ疑念を抱きつつもさらに先へと進んでいくと、健人達は広い空間にたどり着いた。
二階建ての建物がすっぽり入るほど高い天井。目の前には空中回廊を思わせる石橋があり、その橋の脇には下の階へと続く階段がある。
回廊自体はすでに崩れ、支柱にわずかな足場を残すのみ。
下の階には鍋の掛けられた篝火が焚かれ、大きなテーブルと長椅子が複数据え付けられていた。
テーブルの一つでは吸血鬼と思われる二人の男達が談笑している。
おそらく、調理場と団らん室を兼ねた部屋なのだろう。
また、部屋の端には鉄製の檻が設置されており、中には襤褸を纏った老若男女達が押しこまれている。こちらはおそらく、吸血鬼達の食料とされた人達であることが考えられた。
「喉が渇いたな。少しつまみ食いをするか?」
「それもいいな。そういえば、あの若い小僧はどうしたんだ? スクゥーマに毒されてもいなかったし、今ある食糧の中じゃ一番飲みがいがありそうだったんだが?」
「バガンの奴が奥に連れて行ったよ。ヴェナルスとそのお相手がご所望だそうだ。ビービー鳴いてうるさかったが、ああいう悲鳴を上げながら懇願する若い男が好みらしい」
「あの女か。北の城から、なんだかよく分からない古ぼけたものを持ってきていたな」
健人達が静かに崩れた空中回廊脇の階段を下っていると、男達の会話が聞こえてきた。
(まだ先があるのか。それに、ヴェナルスとあの女……。聖杯をヴォルキハルから持ち出すのに協力したのは、そのヴェナルスって男か?)
人を食料にしているというあたりから、そのヴェナルスという男も吸血鬼であろう。
気配を気取られないようにしながら、健人は静かに二人の会話に耳を傾ける。
「ヴェナルスがここの紅い水を使ってスクゥーマを作るようになってから、獲物に困ることは無くなったが、いい加減見下されるのはうんざりしてきたな」
「気晴らしに外に出かけるか? 村の一つや二つ燃やせば、多少はすっきりするだろ」
吸血鬼らしい、吐き気がこみ上げてくるような会話である。
健人は嫌悪感に顔を歪ませつつも、サッサと排除しようと動く。
静かに階段を降り、空中回廊を支えていた柱に身を潜ませる。
息を殺しながら吸血鬼達の様子を探っていると、ふいに隣に人の気配が近づいてきた。
(レキナラさん?)
「私が右の吸血鬼を殺す。お前は左を……」
気配の主はレキナラだった。彼女は言うが早いか、身をかがめながら、スッと柱から滑るように移動。右の吸血鬼の背後にある影に身を隠した。
「…………」
レキナラに促されるように、健人もまた左の吸血鬼の背後へと移動。
談笑をしている二人の吸血鬼の視界に入らないように物陰に隠れながら、反対側に回り込んだ彼女とタイミングを合わせる。
「すう……ふぅ!」
レキナラが動く。しなやかに、まるで黒猫のように身を沈ませたかと思うと、腰の片手剣を引き抜きながら左足を踏み込む。
そのまま一閃。頸椎を支える骨の間に正確に吸い込まれた刃が、一太刀で吸血鬼の首を切断する。
「な、きさまは……ガフ!」
もう一人の吸血鬼が、突然の襲撃者に驚いてレキナラに手の平を向けるも、マジカが収束する前に、健人が背後から心臓を貫く。
目を見開き、自分に何が起きたか分からないまま、二人の吸血鬼はその場に崩れ落ちた。
(ふぅ……これで、残っている吸血鬼は四人か)
ブレイズソードに付着した血を拭い、鞘に納めながら、健人はレキナラの様子を覗き見る。
彼女は少し顔をしかめ、古傷のある右足を気にしている様子だった。
蒼の艶百合で演劇をした際はそれなりに激しく動けていたレキナラだが、おそらくここに来るまでの旅の疲労が、かなり影響しているのだろう。
ほとんどの行程を船で移動できたとは言え、途中から陸路をそれなりに歩いている。
彼女が吸血鬼と正面切って戦うのは、かなり厳しいことが予想できた。
以前女装させられたことを思い出し、健人は複雑な感情からしかめっ面を浮かべる。
過ごした時間は短かったし、正直馴染みづらい仕事をやっていた場所ではあったが、居心地は決して悪くなかったのだ。
「……なんだ」
(いえ、べつに)
見られていることに気づいたレキナラから、冷淡な視線が返された。
既に、健人と彼女達は道を違えている。今彼が感じている思いは、この世界では、行き過ぎた感傷にしかならないだろう。
健人はレキナラからの視線から逃げるように、部屋の片隅に固められた牢に視線を移す。
歩み寄って中に捕らえられた人達の様子を窺うと、誰もが視線が定まらず、天井を見上げながらぼんやりとしていた。
「典型的なスクゥーマ中毒だな」
健人と同じく剣を納めたレキナラが隣に来て、そう呟く。
心身虚脱状態になっている彼らは、自分達を捕まえた吸血鬼達が殺されても、まったく表情を変えない。
あらゆる外的刺激に対しての反応が著しく衰えている証拠だ。
健人はよく知らないが、その症状は地球で蔓延している代表的麻薬、アヘンによく似ている。
また、部屋の脇には、木箱などが雑多に置かれており、その中にはかなり珍しいものが置かれていた。
(アルケイン付呪器か……)
おそらく、ここの吸血鬼の誰かが使っていたのだろう。
付呪器のそばには、小袋が置かれており、健人はその袋を手に取って開けてみる。
中には、魂石は大魂石が四つに、金と銀の指輪、ルビーのペンダント、いくつかの宝石。それから、見たことのない緑色の石がはめられた指輪が入っていた。
(これは……使えそうだな)
見たところ、まだ付呪はされていない。おまけに、アルケイン付呪器もある。
うまく使えば、色々と役に立つだろう。
「ちょうどいいですわね」
健人が手に入れたアクセサリーを片手に考えている中、メリエルナが何かを確かめるように、今しがた健人が倒した吸血鬼を覗き込む。
背後から心臓を一突きしたためか、肉体の損傷はほとんどない。
そんな死体に向かって、彼女は手をかざした。続いて青白い光が、吸血鬼の遺体を包み込む。
すると、死体がひとりでに立ち上がった。
「うううう……」
(死霊術?)
「まあ、そうですわね。吸血鬼の力あってのものですが。それから、面白そうなものがテーブルの上に乗っていましたわ」
メリエルナが差し出してきたのは、スクロールと本だった。
数は、それぞれ二つずつ。スクロールの方は治癒の光とエクスプロージョンであり、本の方はボーンマン召喚と、何かの研究記録。
題名はヴェナルス・ヴルビンの研究。さきほど、吸血鬼達の会話に出てきた男の名前である。
どうやら、ここから湧き出る赤い水についての研究を記した日記らしい。
日付は、第四期201年。健人がこのタムリエルに落ちた頃だ。
「ふむ……これを読む限り、どうやらここを支配していた吸血鬼は、泉から湧き出す水の力を制御することに苦慮していたようだ」
この日記を記したヴェナルスという吸血鬼は、吸血鬼に強力な力をもたらすといわれる「血の泉」を探し、サマーセット島からこのスカイリムにやってきたらしい。
そして念願の「血の泉」を見つけたものの、その力は短時間しか効果がなく、しかも強い依存性を持っている始末。
それをどうにか解決できないかと研究を重ね、そしてハルコンが所有していると言われるブラッドストーンの聖杯にたどり着いたことが記されていた。
「なるほど。だから、ハルコン卿に不満を持っている吸血鬼に接触し、協力して聖杯を盗んだわけだな」
レキナラが、パラパラとさらにページを捲り、ヴェナルスの研究記録を探っていく。
どうやらこの場所は、元々第一期にレンガイアという名のアーケイの司祭が管理していたらしいが、吸血病の蔓延により壊滅。司祭と元凶の恋人は、泉の源泉で死んだらしい。
結果、神秘の泉の力は汚染され、吸血鬼の力を増幅するマジカを放つようになった。
また、聖杯により、泉の水に込められたマジカは強まり、さらに永遠に赤い水が盃から流れ続けるという記述もある。
「これが、その聖杯の外見か」
研究記録の中には、ブラッドストーンの聖杯の外観デザインも出てきた。
黒い光沢を帯び、持ち手だけでなく、器の内側にも棘を思わせる装飾が施されている。
いかにも、吸血鬼と係わりがありそうな遺物だった。
「ブラッドストーンの聖杯を手に入れた彼らは、既に“強化された赤い水”を手にしていると思っていいでしょうね」
「そうだな。それで、どうするか……」
残りの吸血鬼は四人。まだまだ数の差は大きい。
下手に仕掛ければ、圧倒されて殺されるだけだろう。
何か手を考えなくてはならない。
「それで、ケント様は何を手に入れましたの?」
健人が手にした小袋に視線を送りながら、メリエルナが興味深そうに尋ねてくる。
中身を取り出して、見つけた装飾品を見せた。
「あら、なかなか良い品々ですわね。ルビーのペンダント、サファイア、ガーネット、銀と金の指輪……それから血玉石の指輪」
(血玉石?)
「別名、ブラッドストーン。献身と聡明、勇気と救済を意味する石ですわ。よく戦に赴く殿方へ送られるお守りですの」
血玉石。別名ブラッドストーンは、濃緑色の中に所々紅い斑点を抱いた石だ。
見た目は地味ではあるが、なんとも言えない縁を感じずにはいられない名前の宝石である。
「……健人様、もしよければその指輪、くださいませんか?」
健人が見たことがない血玉石の指輪を矯めつ眇めつしていると、メリエルナが控えめな声で頼みごとをしてきた。
「レキナラに差し上げたいのです。これから格上の吸血鬼と戦わなければなりませんし……」
なるほど、恋人の無事を祈りたいということなのだろう。
突然の頼みごとに、健人はある程度納得しつつも、首を傾げた。
そもそも、今の健人は首輪をつけられている身である。その気になれば、一言命じればいいだけだ。
しかし、今のメリエルナの態度は、妙に殊勝だ。
ヴォルキハル城で健人に首輪をつけたときとは、別人に見える。
一方のメリエルナは、時折ちらちらと健人から視線が外れる。彼女の眼の先を見れば、レキナラの姿があった。
(多分、レキナラさんの足が予想以上に悪いんだろうな)
吸血鬼になろうと、彼女のレキナラへの愛情は本物らしい。
健人は少し考えこむと、彼女に背を向けた。
「……ケント様?」
向かう先は、この部屋に置かれていたアルケイン付呪器。そこにブラッドストーンの指輪とルビーのペンダント、魂石を乗せると、付呪器を起動させる。
「おい、まさか……」
「ケント様、もしかして、付呪もできますの?」
(よかった。付呪は使えそうだ……)
驚く二人をよそに、健人は内心ほっとしていた。
喉が潰れている今の健人は、詠唱が必要な魔法は使えない。
詠唱が要らない付呪なら使えるかもしれないと思っていたが、実際に使う機会が今までなかったので、不安があったのだ。
安堵している姿を見られないように無表情を務めながら、健人は手早く付呪を済ませていく。
彼はソルスセイムに滞在していた時、ダークエルフの魔法の大家、テルヴァンニ家のネロスから魔法の知識や付呪の技術を学んでいた。
また、黒の書「白日夢」から出てきてしまった書物からも知識を身に着けており、かなりの種類の付呪を施すことができるようになっている。
(とりあえず、血玉石の指輪には治癒率向上、ルビーのペンダントには召喚術関係の付呪がいいか……)
血玉石の指輪とルビーのペンダントの付呪を施し、出来を確かめる。
どちらも、十分実用的。おそらく、足の痛みは二、三割軽減してくれるだろうし、召喚魔法の効率も二割ほど増すだろう。
ついでに、自分の装備にも付呪を施そうと、付呪器を再起動する。
とはいっても、魂石の数から、可能な付呪は二回。
(とりあえず、魔法耐性が必要だな。あとは……水中呼吸とかあれば便利か?)
幸い、残ったのは小さく、持ち運びやすい指輪のみ。
健人は銀の指輪には魔法耐性を、金の指輪には戦闘系は違う、別の付呪を施すつもりだった。
正直、彼はこれから先、正面切っての戦いは難しくなっていく。戦闘以外で役に立つ付呪が必要だろうと。
だが……。
「……ッ!?」
バチン!
突然はじけるような音とともに、魂石が砕け散り、破片が指の皮を裂く。
先ほどまできちんと付呪ができていたのに、いったい何が起きたのか?
たらりと落ちた血が、アルケイン付呪器の上に斑点模様をつけていく中、健人は自分の血とは違う赤い液体が付呪器の上に僅かに落ちているのに気付く。
(これってもしかして、さっきの日記に出てきた赤い水か?)
天井を見上げると、数十秒に一滴の感覚で、水滴が落ちてきていた。
落ちてきた水滴の色はかなり薄く、じっくり見ないと赤色が混じっているとはわからない。しかし、本当にごくわずかではあるが、魔力の残滓を感じ取ることができた。
この魔力が、アルケイン付呪器の上に展開されていたマジカの通りを一部遮断した結果、別の術式に魂力が過剰に注がれ、術式ごと魂石が砕けてしまったのだ。
地球で言うなら、電気回路がショートしたようなもの。付呪を扱う上では、時折ある事故だった。
しかし、その影響は予想外なところにも被害を出していた。
(くそ、もう一つの魂石も……)
最後の魂石を確かめ、健人は思わず奥歯を嚙みしめる。
破裂した魂石の破片が最後の魂石に傷をつけ、充填されていた力を霧散させてしまっていた。これでは、付呪を行うことはできない。
仕方なく健人は気持ちを切り替え、血玉石の指輪とルビーのペンダントのペンダントを二人に手渡す。
『治癒率向上と、召喚術向上の付呪を施しておきました。指輪の方は、戦闘中につけていれば古傷の影響を少しは抑えられると思いますし、ペンダントの方も多少の役には立つでしょう』
治癒率向上はその名の通り、自然治癒力を高める付呪である。
回復魔法のような急激な治癒は望めないが、古傷の影響を抑えることくらいはできるはずだ。
召喚術向上の付呪も同様であり、消費マジカを抑えてくれる。こちらも、メリエルナにとってはとても有用だろう。
付呪された装飾品を渡されたレキナラとメリエルナは、ぽかんとした顔を浮かべ、手渡された品と健人の間で視線を何度も行き交わせる。
彼女達が戸惑うのも無理はない。
二人は、健人を無理やり従属させた側の者達だ。しかも、メリエルナに至っては「嘆きの首輪」を彼に直接つけてもいる。
このような品を作ってもらえるとは、到底考えていなかったはずだ。
『先に行きますよ』
健人は黒板を掲げると、揺れる視線を向けてくる二人から逃げるように、健人は広間の奥へと足を向ける。
「……お待ちください」
そんな健人の足を、メリエルナの声が止めた。
「なぜ、私達に、このような品をお贈りになるのですか?」
『現状、俺たちが一蓮托生だからだ』
相手はかなりの強敵であることが予測された。
シャウトを失った健人に、強力な吸血鬼を複数相手にする余裕はない。
彼としても、今レキナラたちに死なれるのは困るのだ。
そんな健人の真意を探るように、メリエルナが睨むような視線を向ける。
男を手玉に取り、蝶のようにつかみどころのない彼女とは思えないほど、むき出しの意志を秘めた瞳。
そんなドロリとしたマグマのような熱を帯びた視線を、健人もまた正面から受け止める。
彼としても、先ほどの言葉に嘘偽りはない。そもそも『嘆きの首輪』を付けられている時点で嘘をつく必要などないのだ。
(もっとも、隷属する気もないが……)
数秒か、数十秒か。無言の会話が続く。
先に折れたのはメリエルナだった。
メリエルナが大きく息を吐き、張り詰めた空気が解く。
そして、これまでの胡乱な態度が嘘であったかのように、恭しく頭を下げた。
「貴方様の心遣いに、心から感謝いたします。レキナラ……」
「あ、ああ……」
心からの感謝が籠ったお礼に、健人は思わず当惑する。
それは、レキナラも同じだったようだ。
メリエルナは健人から受け取った指輪をレキナラに渡すと、ルビーのペンダントに頭を通した。
胸元で輝く深紅の宝石に、柔和な笑みを浮かべながら指を這わせる。
ここに来るまで散々人を魅了していた吸血鬼とは思えないほど純粋で、無垢な笑顔だった。
レキナラもまた、迷った様子を見せつつも、血玉石の指輪を右の人差し指に通す。
赤い斑点を抱いた緑石が、付呪のマジカを帯びて薄暗い洞窟の中で輝く。
同時に、レキナラは自分の足に走っていた痛みが、徐々に消えていくのを感じていた。
(これは……凄い)
魔法の品はどれも高価だ。
確かにレキナラは娼婦としても引く手あまたで、宝石や貴金属を貰ったことは数多くある。
その中には多少付呪が施された品もあったが、そのどれもが、この指輪には及ばない弱々しい力しかなかった。
なにより、この指輪を健人が作った理由は、少しでも戦いの役に立てばと思ってのこと。
(この男は、本当に気に障る……!)
戦士として見られている事実が嬉しく、しかし恋人からも頼られて真摯なお礼を言われていることがうらやましく、三人の中で最も力のない己の弱さが疎ましくてならない。
ぐちゃぐちゃと、まるで爪で腹の奥を抉られているような感情に、レキナラは気がどうにかなりそうだった。
「ま、まってよ! やだやだ、死にたくない!」
その時、通路の奥の方から、悲壮な叫び声が聞こえてきた。
かなり若い声。声色からおそらくは、少年と思える者の悲鳴だ。
健人とメリエルナは目を見合わせ、レキナラもまた一時的に妬心を忘れて通路の奥を見つめた。
いかがだったでしょうか?
ゲーム本編と比較して、アルケイン付呪器の位置が変わっています。
これは、赤い水が魔法の力を帯びているという設定を継承してですね。
魔法の力を持っているなら、当然マジカを帯びているはず。結果、付呪を行うには源泉近くは不適当と考慮し、団欒室兼食堂(という名の拷問室)に場所を変更しました。
そして、ようやく付呪を使えた健人。
拘束しているメリエルナ達は癪に障るが、現状必要ということで、彼女達に必要なアクセサリーを作成。しかし、泉の水の影響で、自分の品は作れずじまい。そこ、作者酷いとか言わない。
そして、最後に悲鳴を上げていた人物は……?
以下、用語説明
レッド・ウォーターの泉
元々はアーケイの祝福を受けていた泉だが、第一期にモラグ・バルによって汚染された。
以降、吸血鬼に対して一時的ではあるが、持つ力を増幅するようになる。
ちなみに、人が飲むと病気になるらしい。そんなもん使って麻薬作るな。
長い年月をかけて泉の水は洞窟全体に浸透しており、通り天井からも滴ってくる。