【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル   作:cadet

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第三話 村民たちとの顔合わせ

 夜の静けさに沈むウィンドスタッド。

 既に暗闇に包まれたこの村の中にある一軒家。

 そこの一室で、揺れる蝋燭の元、一人の老人が書き物に勤しんでいた。

カリカリと羽ペンを走らせながら、老人は昼間村の通りで馬に乗っていた青年の姿を思い出す。

 

「戻ってきたか、もう一人のドラゴンボーン……」

 

 感慨深く、絞り出すような声色。

 最後のページを埋めると、老人は豊かな顎髭を撫でながら、今しがた書き上げた本を机の端に置く。そして、開かれた窓の外に見える、丘の上の屋敷を見上げていた。

 

「約束は果たすぞ、デルフィン……仲間たちのために」

 

 老人はそう呟き、自分が座る机の隣を見る。

 そこには、山積みにされた真新しい書物が山のように積まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 窓からさす日の光に目が覚めると、懐かしい見慣れた天井が目に飛び込んでくる。

 胸元では、ごそごそとなにかが動く感触。

 

(ああ、そういえば、帰ってこれたのか……)

 

 窓から差すウィンドスタッドの朝日に目をしばしばさせながら胸元を見下ろせば、毛布に包まった義妹の姿。

 彼女はまだ夢の中にいるのか、幸せそうな顔で目をつむったまま、健人の胸元に寄り添っていた。その光景に、健人は思わず頬を緩める。

 

「お兄ちゃん、んん……」

 

(おはよう、ソフィ。そろそろ起きて)

 

「ん、んんん!」

 

 トントンと優しくソフィの肩を叩くも、彼女は起きるのを拒否するように首を振って健人の寝巻にしがみついてくる。

 

(駄目だ、起きん。仕方ないか……)

 

 とりあえず、健人は毛布を剥がす。

 そのまま服の胸元をしっかりと握りしめているソフィを横抱きに抱え、一階へ移動する。

 一緒に寝ていたヴィーヘンも起き、健人の肩に止まってリビングについてきた。そしてソフィを昨日か彼女が座っていたテーブルの席に座らせる。

 

(とりあえず、暖炉に火を入れて食事の用意をするか)

 

 しかし、健人が立とうとしても、肝心のソフィが放さない。

 朝の冷気で起きるかと思ったものの、彼女は未だ夢の中。

 にもかかわらず、まるで「お兄ちゃん、行っちゃヤダ……」とでもいうように抱き着いてくる。

 

(いや、朝ごはん用意しなきゃいかんだろ。ヴィーヘン、相手してくれ)

 

「ピュイ?」

 

 仕方なく、健人は寝ぼけたまま縋り付いてくるソフィの手を剥がし、肩に止まっていたヴィーヘンを抱かせる。

 

「んむんむ……えへへ……」

 

「ピュイ、ピュイ! ビュィ~~~~!!」

 

 寝ぼけたソフィに力いっぱい抱きしめられ、濁音にまみれた悲鳴を上げるヴィーヘン。

 その間に健人は一度自室に戻り、着替えをしてから朝食の準備を始める。

 メニューは簡単に作れるキャベツのスープと、保存していた腸詰とシンプルなもの。

 暖炉に火を入れ、材料を入れた鍋とフライパンを火にかけると、腸詰を焙りながらパンを焼いていく。

 

「おはようございます……あら?」

 

 健人が台所で料理を始めた頃、セラーナが客室から姿を現した。

 彼女は口元をだらけさせて寝ぼけるソフィと、もがく鷹を見て目をぱちくり。続いてソフィから漂う匂いに、思わず二階の健人の部屋を見上げると、若干、口をへの字に曲げる。

 セラーナはそのまま、寝ぼけているソフィの後ろを抜けて台所へ向かう。

 そこには黙々と料理に集中する健人の姿。

 しばしの間、健人の横顔を眺めていた彼女だが、やがて悪戯っぽい笑みを浮かべながら後ろに回り込む。そして、おもむろに健人の背中にスゥ……と指を這わせた。

 

(うひゃああ!)

 

 突如として背筋に走った感触に、健人が思わず飛び上がる。

 いたずらは成功。溜飲を下げたセラーナは満足そうに微笑む。

 

「ふふ、おはようございますわ」

 

(もう、朝から一体何をしてるんだよ……)

 

「申し訳ありません。ちょっとからかいたくなってしまいまして。お詫びに手伝いますわ」

 

 振り返り、視線で文句を言ってくる健人を無視しながら、セラーナは近くの棚から木製の食器を取り出していく。

 抗議の視線にも堪えないセラーナに健人は嘆息を漏らすと、仕方なく調理に戻る。

 

「ところで、昨日はソフィさんと寝ましたのね」

 

(……はい?)

 

「昨日の夜、彼女が自室から貴方の部屋に行く音が聞こえましたわ。一応、耳ざとい吸血鬼ですので」

 

 一瞬固まる健人。

 ソフィとは兄妹であるので、別に悪いことはしていない……と思う。

 だが、ジッと向けられる彼女の視線に気まずさを覚え、思わず持っていたフライパンを置いて黒板に白墨を走らせた。

 

『いや、確かに一緒のベッドで寝たけど、やましいことは何もしてないぞ』

 

「ええ、分かっておりますわ。そのような臭いはしませんでしたので」

 

(え? じゃあ、なんでわざわざ聞いたの?)

 

 事後特有の甘い香り。蒼の艶百合にいた時にはよく嗅いでいた匂いがなかったことから、セラーナも二人がそのような行為をしていないことは察している。

 

 だけど……なんとなく面白くない。

 

 胸の内に湧き上がる、小さなモヤモヤ。そんな自身の妬心を柔和な笑みで誤魔化しつつ、セラーナは健人の後ろで白い煙を上げるフライパンを指さす。

 

「ところで、いいのですか? 焦げてしまいますわよ」

 

(……あ、ヤバ!)

 

 煙と共に立ち上る焦げ臭いにおいに気づき、健人は慌ててかけたままだったフライパンを火から離す。

 しかし、数本の腸詰の表面が真っ黒くなってしまっていた。

 

(あちゃ~~。やっちゃった)

 

「珍しいですわね。貴方が料理に失敗するなんて」

 

『セラーナが変な事するからだろう……!』

 

「あら、心外ですわ」

 

(まったく……)

 

 健人は仕方ないといった様子で肩を落とし、ソーセージの焦げた面をヘラで軽くこすり、焦げを落とし始めた。

 そんな彼の背中を、セラーナは腕を抱きながら静かに見つめる。

 信頼、親愛、そして、ほんの少しの淡い想いと寂しさを漂わせながら。

 

(よし、こんなものかな……)

 

 そんな想いを抱いているセラーナの視線には気づかないまま、健人は料理を仕上げると、台所のテーブルに彼女が並べてくれた皿や器に、できたばかりの朝食を盛り付けていく。

 

『運ぶの手伝ってくれる?』

 

「……ええ、承りましたわ」

 

 少し間を開けつつも、セラーナは静かに頷く。

 

『どうかした?』

 

「いえ、なんでもありませんわ。少し、寝ぼけてしまっておりましたの」

 

 少し様子のおかしい彼女に首を傾げつつも、健人はセラーナと一緒に、出来上がった料理をテーブルに運ぶ。

 

(おはよう。ソフィ、そろそろ起きなさい)

 

 未だ寝ぼけているソフィの頭をポンポンと叩くと、彼女はようやく目を覚ましたのか、目をぱちくりさせながら健人を見上げる。

 その間にヴィーヘンは拘束から脱出。翼をばたつかせながら、天井の梁に一目散に避難していった。

 

「……お兄ちゃん? あれ? 確かお兄ちゃんの部屋で一緒に寝てたはずじゃ……あ」

 

 寝巻のままの自分の姿とテーブルに並べられた朝食を見て、ようやく状況を理解。そしてセラーナと視線が交わり、ソフィは顔を真っ赤に染める。

 

「なんというか、昨日とはずいぶんと印象が変わりますわね。ふふふ、可愛らしいですわ」

 

「あ、ああ! ちょ、お兄ちゃん!? どうして起こしてくれなかったの!?」

 

(起こしたけど、起きなかったんだよ)

 

 寝ぼけていた姿を見られたのがよほど恥ずかしかったのか、ソフィは跳ねるように椅子から立ち上がると、ドタドタと自室に飛び込んでいく。

 

「おはよう……って、何かあったの?」

 

「ソフィ様? いったい何が?」

 

 起きて母屋に来たカシトとヴァルディマーも、二階の騒音を聞いて首を傾げる。

 向けられる疑問の目に、健人とセラーナは顔を見合わせ、騒がしくも穏やかな朝に苦笑を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、今日は兄さんとセラーナさんを村の人達に紹介します。

 その一言に健人達は朝食の後、ソフィに案内され、村人たちと会うことになった。

 とはいえ、狭い村。ウィンドスタッドの領主が帰ってきたことは既に昨日のうちに広まっていた。

 

「こちらが服の仕立てをしてくれるカザンさん、こっちが、牛飼いのババカスさん、それから野菜を作っているアグリコラさん」

 

「よ、よろしくお願いいたします」

 

『こちらこそ』

 

「領主様にわざわざご足労いただき、恐れ多いのですが……」

 

「大丈夫ですよ、アグリコラさん。今は色々忙しい時期であることを、兄さんもわかってくれていますから」

 

 村の南の通りで、健人はソフィから集まってきた村人達に面通しを行う。

 本来なら、村人たちが屋敷に来るのが普通なのだが、今は初夏。短い夏の季節であり、この時期に長い冬に向けて準備を既に始めていた。

 小さい村で人手が不足していることもあり、村民各々が様々な仕事で忙殺されているのだ。忙しい彼らへの配慮である

 健人も村の状況は昨日のうちにソフィから大体聞いており、特に気にしてはいない。

 むしろ、村民たちの方が緊張し、過剰にかしこまってしまっている。

 この土地本来の領主との初対面なのだから無理もない。

 ちなみに、この村に来た時と同じく、健人は馬に乗っており、ソフィが先導、後ろには同じく馬に乗ったセラーナ、カシト、ヴァルディマーが続き、その周りを三人の衛兵が囲んでいるという状態だ。

 正式な領主のお披露目として、ソフィが主導した隊列であり、健人としてはどうにも肩ひじが張って仕方ない。

 

(通りにある店は雑貨屋と酒場程度か。まあ、小村だからな)

 

 村民たちに挨拶をしながら、村の通りに目を向ける。

 馬車一台がようやく通れるほどの幅の道に並ぶのは雑貨屋程度。

 ソフィ曰く、これは村の外から来た商品を売るための店であり、必要なものがあるときは、基本的に作るのが得意な家に出向いて頼むというのが主になっているらしい。

 他にめぼしい店はないのだが、驚くことに酒場だけはちゃんとあり、夕方になると多くの村民が来るとのこと。

 酒だけは手放せないあたりが、いかにもノルドである。

 

「ねえお母さん、あの人だれ?」

 

「こ、こら! やめなさい! も、申し訳ありません領主様! 何卒、ご容赦を……!」

 

 挨拶をして回る中、建物の陰から覗いていた子供が無邪気に健人を指さしてくる。その子供を、母親と思われる女性が慌てて咎めて跪いた。

 服や顔が泥で汚れることすらかまわず、必死に懇願してくるその顔には、隠し切れない不安と恐怖が張り付いている。

 

(いや、別にそのくらいで怒る気ないから。というか、そこまで怯えられると心にグサグサ来るんですけど……)

 

 この世界は命が安く、現代では目をしかめられるような差別や横暴もまかり通るのだから、母親の不安も無理はない。実際、四方八方から向けられる視線には、好奇だけでなく、隠しきれない怯えと不安が混じっていた。

 感性が一般人の健人にとっては、かなりきつい。

 

(まあ、このまま跪かせているのはよくないな)

 

「ひっ……!」

 

 馬から降りて歩み寄ると、母親は引きつった悲鳴を漏らす。

 その怯え方を見るに、もしかしたら過去に何かあったのかもしれない。

 とりあえず、健人は頭を下げたままの母親に手を差し出す。

 しかし、母親は子供の頭を押さえたまま、顔を上げようとしない。子供の方も、尋常ではない母親の様子に、すっかり黙り込んでしまっていた。

 健人は仕方なく、彼女の肩を優しくポンポンと叩く。ビクリと母親の体が震えた。

 数秒の間、硬直し続ける母親。だが、なにもされないことにようやく顔を上げる。

 視線を合わせてくれたことに、健人はほっとすると、母親の手を取って優しく立たせた。

 

「あ……」

 

 彼の丁寧な配慮に、母親から思わず声が上がる。

 その間に健人は母親と子供の膝に着いた土を払い落とすと、静かに黒板を掲げた。

 

『この程度で処罰する気はない』

 

「え、あ、その……」

 

 額に泥を付けたまま戸惑う母親。

 健人は持っていた手拭いで、ついた泥を拭い取りつつ、彼女の様子を観察する。

 思っていたよりも若い。年齢にすれば、二十代前半だろう。

 傍にいる子供は五歳くらい。おそらく、十代後半で出産したことは間違いない。

 

(この世界の結婚年齢って、正確にはどのくらいなんだろう。日本より低いことは確実だろうけど……)

 

 健人の脳裏に、結婚して子供を産んだ義姉のことが思い出される。

 ちなみに、日本も百年ほど前まで、初婚年齢の平均は二十歳前半だった。もしかしたら、彼女とリータが早いのかもしれないが、少なくとも晩婚化が叫ばれる現代日本より、初婚年齢は遥かに低いだろう。

 健人がそんなことを考えている間に、彼女の顔についていた泥はすっかり取れて綺麗になっていた。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 彼女は、ようやく害されないことを理解したのか、恐縮した様子でお礼を述べてくれた。

 緊張していた空気がようやく弛緩し、事の成り行きを見守っていた村人たちも安堵の息を漏らす。

 ちなみに、綺麗になった母親の頬は朱色に染まっており、後ろで控えていた義妹と吸血鬼のお姫様が、口元を僅かにヒクつかせていた。

 

「……もしかして、彼はいつもこんな感じでしたの?」

 

 セラーナがそれとなくソフィに尋ねると、義妹はこれ以上ないほどの渋顔を浮かべていた。

 

「少なくとも、モーサルのご婦人方には、それとなくアプローチしようとする方々がいました。当然と言えば当然ですが……」

 

 健人本人に自覚はないが、彼はかなりモテる。

 当然だ。強く、武勇もあり、数多の魔法の知識も持ち、そして一代で首長に認められ、正式な領主となっているだ。

 そして性格も穏やか。モテない理由がない。

 特に彼の武勇が早期に知れ渡っていたモーサルでは、彼に近づこうとする女性が数多くいた。

 しかし、当時の健人はデルフィンとの修行やら、買った土地に建てる屋敷の準備やら、時折襲撃してくるドラゴンの対処やらと忙しく、女性達が近づく暇がなかった。

 とはいえ、数多くの女性に意識されているという事実は、健人本人の無頓着さもあり、ウィンドスタッド邸建設のためにモーサルを離れるまで、幼いソフィを大いに焦らせもしていた。

 この上、ドラゴンボーンの血統とか、アルドゥインを倒して世界を救ったという功績が知れ渡ったらどうなるか……。

 

(今は兄さんの“本当の功績と血”を知る人は少ないですが、知っている人は知っています。いずれ、大変なことに……)

 

 その前に、なんとかしなくてはならない。

 ソフィはギュッと胸元を握り締め、決意を新たにする。

 

「そういえば、ルナも彼に惹かれておりましたね」

 

「セラーナさん、ルナとは……」

 

「私が身を寄せていた旅芸人の一団にいた少女です。色々と不幸な境遇であったのですが、彼のおかげで立ち直りましたの」

 

「旅芸人?」

 

「ええ、蒼の艶百合という旅団なのですが……」

 

「…………」

 

「……?」

 

 眉を顰め、口元に手を当てて考え込み始めたソフィ。

 そんな彼女になにやら妙な雰囲気を感じ、セラーナは首を傾げる。

 

「……兄さん、そろそろ行きましょう」

 

(え? あ、そう? ……なんでそんな目してくるんだ?)

 

 ソフィに促され、健人は馬に乗り直すも、妹から向けられるジト目に思わず身を逸らす。

 当然だが、健人に特別な気はない。

 あまりにも怯えていた親子が忍びないと思っての行動である。

 ソフィ自身も、そんな兄の優しさに救われた身なので、文句を言うこともできない。

 

(ちょ、いきなり手綱を引っ張るな……!)

 

 仕方なく、思いっきり手綱を引っ張り、兄を驚かせることで留飲を下げる。

 そんな年相応の少女の様子に、村民たちが生暖かい視線を向けていた。

 

 

 

 

 

 二時間ほどで村民たちへの面通しが終わると、健人達は屋敷の帰路に就く。

 最初は緊張していた村民たちだが、ソフィの取り成しや健人の領民への対応もあり、穏やかに事を済ませることができていた。

 ウィンドスタッド邸へと続く坂道を、静かに昇る。その中で、健人はこれからのことを考えていた。

 

(思った以上に変わっていたウィンドスタッドだけど、とりあえずさて、これからどうするか……)

 

 失ったシャウトの代わりとなる力をつけること。

 ある程度は考えがある。剣の腕を鍛え直し、魔法を再度学ぶ。そしてなにより、味方を増やすことだ。

 

(まず、イドグロット首長に会いに行って警告しないと。それから帝国軍に話を通してもらう。ストームクロークの方にも伝えておかないと……)

 

そんな中、先導するソフィが唐突に口を開く。

 

「兄さん、一人、会っていただきたい方がいます」

 

 義妹の言葉に交じる、僅かな緊張の色。

 いったいどうしたのかと疑問を抱いた健人だが、彼女が会ってほしいという以上、断る理由はない。

 了承するように頷くと、ソフィは坂道から脇道へと逸れ、そのまま住宅地の裏側へと進む。

 

「ここです」

 

 彼女が案内したのは、とある一軒家。

 村の家々の影に隠れるように建てられた、平屋の小屋である。

 見た感じ、一世帯の家族が住むには十分な大きさの家。

 健人とセラーナが馬から降りると、ソフィは手綱を衛兵達に預け、目の前の家の扉を叩く。

 すると、扉に設置されていた小窓が開いた。

 

「…………」

 

「…………」

 

 扉の奥にいるであろう住人の顔は見えないが、ソフィと言葉を交わすと、ガチャガチャと鍵が開けられる音が鳴った。

 

(やけに鍵の数が多い。それだけ重要な人がいるのか?)

 

 時間にして三十秒ほど。その間に聞こえてきた、五種類ほどの異なる開錠音。

 妙に厳重な施錠が施されている家に健人達が違和感を抱く中、扉が開かれる。

 

「さあ、兄さん、どうぞ」

 

 ソフィに促され、健人は少し緊張しながら扉をくぐる。

 板張りの床と壁、そして天井。

窓は少なく、日当たりは悪いはずなのに、室内は白い光に照らされており、妙に明るい。

 理由は、壁の数か所に取り付けらえている篝台が生み出している光球。おそらく、変性魔法の「灯火」を付呪により施した篝台だろう。

 玄関から直接居間に入る構造をしているのか、部屋の中央には大きめの四角いテーブルが置かれている。テーブル上には数えきれないほどの本が山積みにされている。

 そして、篝台の光に照らされた一人の老人が、入ってきた健人をうるんだ目で見つめていた。

 

「……久しぶりだな、もう一人のドラゴンボーンよ」

 

(貴方は……デルフィンさんと一緒にいた)

 

「エズバーンだ。世界のノドでは、君の仲間のリディアと猫に色々と世話になった」

 

 




ということで、いかがだったでしょうか?
兄に甘えるソフィと、そんな二人が何となくうらやましいお姫様。
とはいえ、彼女自身、ソフィの気持ちも理解できるので、代わりに健人に悪戯をして気分を晴らす行動に出る。
村民たちから見た剣との印象はかなりよく、妹と同じく穏やかな性格であることを理解してホッとしている。
そして、何故かいるエズバーン。彼がウィンドスタッドにいる理由については、次のお話で。

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