【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル 作:cadet
拙作を呼んで下さった皆さん、本当にありがとうございます!
正直うまく書いていけるか分かりませんが、少しでも楽しんで頂けるよう頑張ります。
長い墳墓を歩いてきた健人たちは、ついに目的地に到着した。
彼らの眼前には、今まで道中で見てきた部屋と比べても一段と広い大広間が広がっている。
広間の中央は地下水が溜まった池となっており、入り口と祭壇を隔てている。
だが、健人達が足を進めると、まるで彼らを受け入れるように、隔てる池を渡す石橋が出現した。
「ここが、最奥部か……」
「見て。奥に台座がある」
中央にかかる橋を渡り、祭壇の台座の前まで来たリータ達。
これで終わりかと、台座の上に目を向けるが、そこには角笛と思われる品はなく、代わりに一枚の紙が置かれていた。
「これは……手紙?」
“友よ、話すことがあるが、今は危機が迫っている。サルモールの刺客が、君たちを追跡している。ここに来る頃には、刺客は既にウステングラブ内に入って、君たちが出てくる時を待っていると思われる。先の部屋の隠し通路から外に出れば、やり過ごせるだろう -友よりー”
「サルモールだと!?」
サルモール。
アルドメリ自治領を支配する、エルフ至上主義の過激派。
先の大戦で、その絶大な力を振るった、この大陸最大の勢力だ。
そんな巨大な勢力に狙われていることに、リータ達は驚く。
健人だけが、サルモールという名を聞いたことがないため、首をかしげていたが、リディアが説明すると、事の次第を理解したのか、深刻そうな表情を浮かべる。
「従士様、どうしますか?」
「まず、先にあるっていう、隠し通路を確かめてみよう」
この手紙が嘘である可能性もある。
ドルマが台座の奥を調べると、
すると、さらに奥へと続く通路が姿を現した。
「確かにあるな」
確認したドルマが、持っていた松明の明かりで通路を照らすと、ゴツゴツとした岩の壁が、奥へと続いていた。
「行ってみるか?」
「ええ、角笛がない以上、ここにいてもしょうがないわ」
現れた隠し通路を、警戒しながら進んでいくリータ達。
この隠し通路は、脱出用として作られていたのか、道は今までの墳墓の道と違い、岩がむき出しになり、壁や地面の隙間からは様々なキノコが生えていた。
中には自家発光するような奇妙なキノコもあったが、真っ暗な洞窟内では発光するキノコの明かりは有用で、その光量は松明の明かりがいらないほどだった。
隠し通路を進む健人達だが、通路の出口に差し掛かった時、奥から耳障りな怒声が聞こえてきた。
「薄汚いノルドの娘はまだ見つからないのか!?」
「現在、遺跡奥を探索中です。定期連絡では、遺跡内では争った形跡が多数あり、時間の経過もさほどないとのこと。おそらく、まだ遺跡奥にいるものと考えられます」
健人たちは思わず隠し通路の出口にあった岩陰に身を隠す。
岩陰から外の様子を覗くと、ウステングラブの入り口に黒と金を基調としたローブを纏った長身のハイエルフがいた。
彼の傍には、金色の軽装鎧を纏った兵士が控えている。
健人にとって、初めてのエルフとの邂逅だが、その容姿は日本のサブカルチャーで見知ったエルフとは、似ても似つかない。
タイ米のように細長い輪郭の顔に、三日月のように突き出た顎。
黄色みがかかった肌は文字の上では黄色人種のように思えるが、どちらかといえば黄疸のような、異質さを思わせる色だ。
細長い耳が唯一、健人の知るエルフと共通しているが、人間から見た場合、お世辞にも容姿端麗とは思えない。
健人がそんな感想を抱いている中、サルモールの高官と思われる男性は、特徴的な三日月の顔をゆがめて、ウステングラブの奥を睨みつけていた。
「ええい。ここまで来て、この高貴な私が薄汚い蛮族の墓に入るなど……」
「しかし、この遺跡の入り口は私達が抑えています。発見するのは時間の問題でしょう」
「なら、さっさと探せ! 蛮族と同じ空気を吸うのも嫌だというのに、この私にいつまで家畜の廃棄場にいさせるつもりだ!」
どうやら、サルモールの高官は、かなりご立腹の様子だった。
しかも、この墓に眠るノルドを蛮族だの家畜だの言うあたり、相当な差別主義者である。
あまりに不遜なサルモール高官の物言いに、さすがの健人も額に皴が寄った。
傍に控えている兵士も、癇癪を起こしている上司に辟易しているのか、高官の見えないところで、小さくため息を吐いている。
しかし、この状況は健人たちにとって頭の痛い状況だ。
完全に退路を抑えられてしまっているのだから。
「どうやら、サルモールがリータを追っているのは本当らしいね」
「でも、どうして私を……」
「アルトマーから見れば、アカトシュの加護を受けた従士様の存在は、目の上のタンコブなのでしょう。あれほどあからさまな態度を見る限り、出て行っても碌な目には遭いません。ほぼ確実に、私達を殺す気でしょう」
アルトマーとは、ハイエルフの本来の名称である。
そもそも、ハイエルフという呼び方自体が、人間がつけた呼び名だった。
リディアの言葉に、健人はゴクリと唾を飲み込んだ。
「数は六人。高慢ちきな人参野郎も含めると七人。少し多いな……」
ドルマの言葉に、リディアとリータが頷く。
数はあちらの方が圧倒的に多い。
おまけにウステングラブの入り口を押さえられていることも厄介だ。
「それに、あのサルモール高官は、恐らく高位の魔法使いです。狭い通路での遠距離戦は不利です」
元々、エルフはマジ力の源であるエセリウスに繋がりを持っていた種族だ。
遥か昔にその繋がりは永遠に断たれたとはいえ、魔法の源であるマジ力に対する高い適性は残っている。
アルトマーは、エルフ種の中でも特に魔法に秀でた種族であり、当然ながら、彼らの魔法行使能力は人間の比ではない。
「幸い、先に相手を見つけたのは俺達だ。先制攻撃で出来るだけ数を減らすしかないな。いつまでもここで隠れていると、奴らの探索班に追いつかれる」
とはいえ、リータたちも決して不利というわけではない。
先に相手を発見したおかげで、先制攻撃できるアドバンテージがある。これは、戦場において勝利を決める大きな要因足りえる。
「そうね、やりましょう」
リータたちは、先制攻撃でサルモールたちを排除することに決めた。
先程ドラウグル相手にやった時のように、音をたてないように弓に矢を番え、息を殺して時を待つ。
狙いは、先ほどから喚き散らしているサルモール高官。
「ん? 貴様らは!」
だが、ここで高官の周りを固めていた兵士に偶然見つかってしまった。
兵士の大声に、サルモール派遣部隊に緊張が走る。
「不味い、見つかった!」
「っ! ノルドの女だ!」
「射て!」
相手が態勢を整える前に、リータたちは矢を放った。
風切音を響かせながら、四本の矢がサルモール高官に殺到した。
「ぐあ!」
サルモール高官が、苦悶の声を上げて、矢が突き刺さった肩を押さえて蹲る。
当てることが出来た矢は一本のみ。
しかも、致命傷には程遠い。
「くそ、浅い!」
リータとドルマ、リディアは弓から素早く剣に持ち替え、隠し通路の入り口から飛び出した。
奇襲が失敗した以上、遠距離戦は一方的に不利になる。
ならば、相手の兵士がいるところまで一気に距離を詰めて、同士討ちを警戒させることで、相手の魔法を封じるしかない。
護衛のサルモール兵士は、怪我をした高官に三人が付き添い、残った三人がリータ達の迎撃の為に前に出てきた。
リータたちとハイエルフの兵士たちが、剣をぶつけ合う。
身体能力で劣るハイエルフだが、彼らが装備をしている装具は月長石と呼ばれる鉱石を精錬して作られたもので、鉄よりも頑丈で軽い。
軽装でありながら鉄よりも丈夫な鎧は、リータたちの剣をしっかりと受け止めている。
とはいえ、戦士としての技能も膂力も、リータたちが上だ。
相手の斬撃を軽々と弾き返し、晒した隙に容赦なく反撃を叩きこむ。
たとえ相手の鎧を断ち切れなくとも、中身ごと潰せばいいとばかりに、得物を叩き付ける姿は、タムリエルの全種族から脳筋認定されているノルドらしいものだ。
エルフの鎧にリータ達の剣を打ち込まれる度にメキャリと耳障りな音が響き、アルトマーの兵士達の顔色に冷や汗が浮かんでいる。
いくらエルフの鎧が頑丈でもリータ達が前線の兵士を排除するのは時間の問題だった。
しかし、ここで思わぬ邪魔が入った。
「おのれ! 劣等種の分際で、私に傷をつけるとは!」
先ほどの先制攻撃で肩を負傷したサルモール高官が、顔を怒りで真っ赤に染めながら詠唱を開始したのだ。
ハイエルフが持つ膨大なマジ力が解放され、瞬く間にサルモール高官の両手に収束していく。
その光景に、リータ達だけでなく、護衛のサルモール兵士たちも驚愕に目を見開いた。
「ま、まってください! 前には仲間の兵士たちが……」
このままでは、同士討ちになる。
慌てて上官を止めようとするサルモール兵士だが、過激な差別主義者であるサルモール高官は劣等種と思っていたノルドに傷を負わされ、すっかり頭に血が上ってしまっていた。
収束したマジ力を滾らせ、爆炎に変えて、怒りのまま解き放つ。
「死ね!」
発射されたエクスプロージョンが、リディアと彼女と相対していた兵士を巻き込んで爆発した。
リディアは爆風で吹き飛ばされ、地面にしたたかに打ち付けられる。
彼女よりも酷い目にあったのは、上官のフレンドリーファイヤを受けたサルモール兵士である。
背中から上官の強力なエクスプロージョンを受けたことで、魔法のエネルギーをもろに受けた兵士は、背中の半分が爆散。
手足と頭部、そして体の前側の鎧と肋骨を残して即死した。
「死ね!死ね死ね!」
さらに、頭に血が上ったサルモール高官は、エクスプロージョンの魔法を立て続けに放ってくる。
リータ達も前線を張っていたサルモール兵士たちも、これにはたまらず、戦う事を放棄。
回避に徹するしかなくなった。
「ちょ、マジかアイツ。敵も味方も関係なしかよ!」
「ごあ!」
「ぐえ!」
残り二人のサルモール兵士が、エクスプロージョンの嵐に巻き込まれる。
一人は吹き飛ばされた衝撃で首の骨を折り、もう一人は両足を吹き飛ばされて地面に転がった。
「きゃあ!」
さらに悪いことに、吹き飛ばされた兵士の死体に巻き込まれたリータが下敷きになってしまう。
サルモール高官のギラついた瞳が、動けなくなったリータに向けられた。
爆炎弾が、リータ目がけて撃ち出される。
「リータ!」
健人が咄嗟に、エクスプロージョンの射線上に割り込んだ。
盾を構え、さらに“魔力の盾”を発動して、爆炎弾を受け止めようとする。
しかし、健人の魔法はサルモール高官のエクスプロージョンに比べ、あまりにも未熟すぎた。
「ぐああああ!」
炸裂した爆風が健人の障壁を一瞬でかき消し、盾を粉砕。
健人の腕をズタズタに引き裂きながら彼の体をボールのように吹き飛ばした。
「ケント!? この!」
リータが立ち上がり、怒りに染まった瞳でサルモール高官を睨みつけ、剣を腰だめに構えて駆けだした。
サルモール高官もまた、魔法を発動し、リータを迎撃しようとする。
追撃のエクスプロージョンが、リータめがけて飛翔した。
「フェイム!」
リータは咄嗟に、先程覚えたばかりの“霊体化”のシャウトを使用した。
まるで全身が氷に包まれたような悪寒と共に皮膚の感覚が無くなり、彼女の体が透けるように色彩を失くす。
リータを消し飛ばそうとした爆炎弾は、霊体化した彼女の体をすり抜け、目標を見失って通路の壁を爆破するだけだった。
さらにリータは、別の力の言葉を唱えようとする。
「ウルド!」
霊体化による倦怠感が、リータの全身に広がるが、彼女は構わず続けざまに“言葉”の力を解き放った。
旋風の疾走。
グレイビアードから授けられた、己の体を風のごとく疾走させるスゥーム。
瞬間、風となったリータは一気に間合いを詰め、まるで瞬間移動のようにサルモール高官の眼前に出現した。
突然目の前に現れたリータに驚き、動きを止めた高官に、リータが剣を一閃させる。
「な!? ぐあ!」
「く、浅い!」
しかし、間合いが若干遠かった。旋風の疾走とはいえ、一節では離れた距離を詰め切れなかったのだ。
リータの剣はサルモール高官の右腕を浅く切るだけで、その命を断ち切ることはできなかった。
リータは返す刀で、今度こそとどめを刺そうとするが、横から護衛の兵士が割り込んでくる。
「させん!」
「くっ!」
振り下ろされたリータの剣を兵士の盾が受け止める。
月長石の盾はしっかりとリータの剣を受け止め、彼女がこれ以上先に進むことを阻止している。
「おのれ、おのれ、おのれえええ!」
「な、やめ……」
激昂したサルモール高官が、至近距離で魔法を発動させた。
組み合っていた兵士もろとも吹き飛ばされ、地面に転がる。
「く、ううう……」
苦悶の声を漏らすリータ。
自分を守ろうとした兵士すら巻き込んで魔法を放ったサルモール高官は、トマトのように顔を真っ赤に腫れさせながら、血走った眼でリータをにらみつつ、再びその手にマジ力を収束させていた。
今度こそ、薄汚い蛮族の娘を焼き尽くそうと、サルモール高官が収束させたマジ力を解放しようとする。
だがその時、呆れかえった声が、戦場に木霊した。
「あらあら、高尚なエルフ様が、随分と見苦しい姿になっているわね」
緊迫した戦場には似つかわしくない、弛緩した声に、その場にいたすべての人の動きが止まる。
声が聞こえてきたのは、サルモールの部隊が陣取ったウステングラブの入り口のさらに奥。
薄暗い霧の漂う螺旋階段から現れたのは、皮の軽装鎧を身に纏ったブレトンの女性だった。
腰になだらかな反りを持つ剣を携え、この緊迫した戦場の中にもかかわらず、どこかリラックスした様子を見せている。
「……誰?」
突然の闖入者に、緊迫していた戦場の空気が硬直する。
闖入者に心当たりのないリータは、乱入してきた女性に首をかしげている。
一方、サルオール高官の方は、女性の顔に見覚えがあるのか、目を見開いて、女性の顔を凝視していた。
「お前は……デルフィン!?」
デルフィンと呼ばれた女性は、サルモール高官の驚愕の声にこたえるように肩をすくめる。
それは緊張感に満ちた場の雰囲気には似つかわしくない仕草だった。
というわけで、皆さんが(殺したいほど)大好きなデルフィンさんが再び登場しました。
合流場所もリバーウッドではなくウステンクラブと、相当な原作乖離が続いております。
ゲーム上の縛りが無い事をいいことに改変しまくっていますが、分かりずらくなければいいのですが……。