【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル 作:cadet
「ここは……」
目が覚めた健人の目に飛び込んできたのは、木製の天井。
続いて、仕立てのいいふかふかな布団が全身を暖かく包み込む感触だった。
「目が覚めたみたいね」
健人が視線を横に向けると、ベッドの傍にたたずむデルフィンの姿があった。
「デルフィンさん。ここは……」
「首長の屋敷にある寝室よ。貴方、吸血鬼退治で大怪我負って運び込まれたのよ。覚えていないの?」
「モヴァルスを倒したところまでは覚えていますが、それ以降は、まったく」
健人はモヴァルスを倒した直後に意識を失った。
デルフィンの話では、負った傷による出血と毒のせいで、危篤状態だったらしい。
幸い、吸血鬼のアジトに毒消しの薬があったことと、ファリオンが回復魔法を使ってくれたおかげで一時的に持ち直し、モーサルに帰るまで何とか間に合ったのだ。
ちなみに、モヴァルスの一味であったアルバは、ファリオンとソンニールが倒したらしい。
フロガーもアルバを倒したことで、正気に戻ったとの事。
どうやらアルバはフロガーを誘惑する過程で、何らかの魅了の魔法を使っていたらしい。
その魔法もアルバが死んだことで解けた。
「よくもまあ、あのモヴァルスを倒せたわね。あの吸血鬼はかつてシロディールの戦士ギルドで教導役を務めていた腕の持ち主よ?」
「ええ、ですから、普通に斬り合っても勝てないとは思っていました……」
モヴァルスについて記した書籍“不死の血”を読んでいたことから、健人は自分とモヴァルスとまともに剣で打ち合っても勝てないと推察していた。
だからこそ、健人はモヴァルスに真面な剣を振らせないように誘導した。
追い詰められたフリをしてモヴァルスに毒を飲ませ、怒らせ、相手の剣から術理を奪い取る。
未熟な自分に手傷を負わせられたら、プライドの高いモヴァルスなら我慢がならないだろうという考えから編み出した戦術である。
健人の立てた戦術を聞いて、デルフィンは溜息を吐いた。
悪くない手ではある。相手が格上と分かり切っているなら、それに合わせた戦術を組むのは基本だ。
ただ、健人が考えたこの戦術、あまりにも綱渡りの要素が多すぎる。
戦士ギルドで教導役をしていたモヴァルスと、それなりに打ち合える技量、肩を貫かれても戦意を失わない精神力、最後に、追い詰められた状態で、怒りでタガの外れた相手の斬撃をいなせるだけの技量。
どれもが、デルフィンから見ても健人にはまだ無理だと思えていた要素だ。
だが、この青年はそれを成した。
ぶっつけ本番で、明らかな格上を相手にして。
戦士としても腕の立つデルフィンだからこそ分かる。自らの弟子が、この実戦の中で、数段先を行く成長をしたことを。
(まったく、前々から思っていたけど、妙な発想する上に無茶をする。もっとも、考え出した戦術を自分で実行できるくらいの実力は身についたということかしら……)
弟子の所業に呆れつつも、内心では成長を喜んでいたが、まだ彼女には健人に言っておかなければならないことがあった。
「さてケント、私は確かこう言ったわよね。私が帰るまで、大人しくしていなさいって。それなのに、何をしているのかしら?」
デルフィンが話を切り替える。
笑みを浮かべつつも、その瞳には秘めた怒りが爛々と輝いていた。
「え、ええっと、怒っています?」
「どうして怒らないと思うのかしら?」
デルフィンと健人は、この後サルモール大使館に潜入する。
当然ながら、目立つような行動は極力避けなければならない。
今回の健人の行動は、本来の目的からは大きくかけ離れているし、逆に目的遂行を阻害する行為でしかない。
デルフィンが激怒するのも当然だった。
「ヘルギの最後の言葉を聞いたら、無視できなかったんです。あの子、やっと眠れるって言っていました」
「ヘルギって、あの燃えた家の娘でしょう。
例えそれでも、無視すべきだったわ。私達はやるべき事がある。吸血鬼にしても、すぐにこの街に襲い掛かってくるわけでもなかったでしょうに……」
「…………」
健人の想いも、デルフィンはにべもなく一蹴する。
今回の吸血鬼討伐と、それに繋がる一連の健人の行動はどう見ても理に合わないのだから仕方ない。
健人もそれは自覚しているため、押し黙るしかなかった。
「モヴァルスは強力な吸血鬼だった。今回は幸い勝利を手に出来たけど、貴方は「そこまでにしておやりよ」」
さらに健人に言い含めようとするデルフィン。だが、そんな彼女を止める声が寝室に響いた。
「弟子が心配なのは分かるが、結果的にこちらは救われたんだ。彼自身も、自分が無茶をしたことは理解しているさ」
話に割って入ってきたのは、モーサルの首長イドグロッド。彼女の後ろには、健人と一緒に戦ったヴァルディマーの姿もある。
このハイヤルマーチホールド最高責任者の登場に、デルフィンも仕方ないというように肩をすくめて下がった。
ヴァルディマーと視線が合った健人が頭を下げると、彼はこれ以上ないほど礼儀正しく深々と礼をしてくる。
健人はそんなヴァルディマーの態度に首をかしげる。
しかし、脳裏に受かんだ疑念が解決する前に、イドグロッドが健人に声をかけてきた。
「体は大丈夫かい?」
「は、はい」
「それはよかった。アンタはモヴァルスに噛まれたたことで吸血鬼に成りかかっていたんだけど、間に合ってよかったよ」
「うえ!?」
そう、実は健人は、モヴァルスに毒を飲ませた際に噛まれた為、サングイネア吸血病に掛かっていた。
この病は吸血鬼に噛まれることで感染し、適切な治療をしなければ、感染者は吸血鬼になってしまう病である。
そして当然ながら、この病は通常の治療薬や毒消しでは治せない。
吸血鬼を退治しに行って、自分が吸血鬼になってしまうなど、お笑いにもならない事態なりかけていた事に、健人は思わず素っ頓狂な声を漏らした。
「幸い、どこかの親切なお弟子さんが、錬金術師の店に治療薬の素材を売っていたみたいでねえ。アンタの容態を知って、大至急ラミに薬を作らせたんだよ」
「治療薬の素材? ……あっ」
健人は、自分が仕留めたマッドクラブを思い出す。
あれは確か、吸血病を治す特効薬の原材料になったはずだ。
どうやらその素材を使い、この街の錬金術師であるラミが薬を作ってくれたらしい。
そこまで話したところで、いたずらっぽい笑みを浮かべていたイドグロッドが、急に真剣な顔つきになった。
「さて、ケント。アンタはこのモーサル、そしてハイヤルマーチに、極めて大きな貢献をしてくれた。私はこのホールドの首長として、君の誠意に報いなければならない」
「いえ、俺は……」
「ゆえに、私は首長として、君に従士の称号を与えたいと考えている」
日本人らしい謙遜をする前に、イドグロッドがとんでもないセリフを口にしてきた。
「……え?」
「受け取ってくれるかい?」
一瞬彼女が何を言っているのか理解できなかった健人。返事すらできずに呆けてしまう。
数秒の間、意識を飛ばしていた健人が、ようやくイドグロッドの言葉を理解したものの、どうしたらいいか分からずあちこちに視線を彷徨わせている。
「従士となれば、君にはこのモーサルで土地を買う権利と、専属の私兵が与えられる。私兵には、このヴァルディマーがなる予定だ」
「……ヴァルディマーさんは、いいんですか?」
健人はイドグロットの後ろに控えているヴァルディマーに問いかけるが、彼はむしろ願ったりといった様子で笑みを浮かべた。
「敬称など付けず、ヴァルディマーとお呼びください。我が身、我が命すべてでもって貴方を守りましょう。どうか、貴方様に仕えさせていただきたい!」
「え、ええ……」
これ以上ないほどの敬意をもって、健人の問いに答えるヴァルディマー。
どうやら彼の中で、健人の株はストップ高の様子だ。
健人はこの部屋に彼が入ってきた時の畏まった態度の真意を理解したが、他者から傅かれたことなどない身の彼にとって、ヴァルディマーの尊崇してくる態度は健人の困惑を一層助長させるだけだった。
夜の帳が下りたモーサル。
普段なら静寂の闇に包まれるこの街も、今日だけは焚火の明かりが無数に灯り、にぎやかな喧騒に包まれていた。
首長の家の前には各々の家が持ち寄ったイスやテーブルが所狭しと並び、あちこちで料理や酒が振る舞われている。
吸血鬼の騒動が一件落着となり、街の皆の顔は付き物が落ちたかのほうに晴れやかだった。
一方健人は、飲みなれない酒の入ったコップを片手に、宴の端で物思いにふけっていた。
「盾がパーになった。どうしようかな……」
健人が愛用していたエルフの盾は、モヴァルスとの戦いで穴が開き、使い物にならなくなった。
しかし、悪い事ばかりでもなく、付与されていた魔法防御の付呪はファリオンのアルケイン付呪器で取り出し、健人が取り込んでいる。
アルケイン付呪器は装備の破壊と引き換えに、術者に付与されていた術式を取り出し、術者本人に刻み込むことができる。
これにより健人は、魂石と付呪器、適切な装備があれば、魔法防御の付呪を付与することができるようになった。
さらに、モヴァルスの隠れ家にあった魔法装具も持ち出し、破壊して術式を手に入れている。
戦力強化という意味では、決して悪くない成果といえるだろう。
「よかったの?」
ワイン片手に歩み寄ってきたデルフィンが、声をかけてくる。
「何がですが?」
「従士の件、受けてもよかったじゃない。保留なんて……」
健人は結局、従士となることを辞退した。
自分のことで精一杯であり、モーサルの力になることが難しい事。
これからサルモール大使館に探りを入れなければならない事。
なにより、従士という肩書が持つ重圧が、重すぎると感じたからだ。
「俺には荷が重すぎますよ。それに、デルフィンさんも賛成してくれると思ったんですけど?」
「こんな大事になったのなら、今更隠そうとしても無理でしょ。
それにこの件で、モーサルの首長とはよい関係を築けるわ。弟子が勝手に動いたことには怒るけど、その功績まで否定する気はないわ」
それだけ言って、デルフィンはワインの注がれた杯に口をつける。
「フロガーさん、どうなるんでしょうね」
「さあ? モーサルは閉鎖的な街だから、これから苦労するでしょうね」
アルバに操られていたフロガーは、殺される直前、ソンニールとファリオンに助けられた。
操っていたアルバが倒されたことで正気には戻ったものの、これから先、モーサルで生活していけるかどうかは分からない。
「まあ、それでも何とかなるんじゃない?」
「え?」
デルフィンがスッと指差す方向に目を向けると、そこにはフロガーを宴の席に引きずってきたソンニールの姿があった。
フロガーは何か叫びつつソンニールを振り払おうとするが、彼は構わず自分の席の傍にフロガーを座らせると、コップを持たせてなみなみと酒を注いだ。
そして自分の杯にも酒を注ぎ、一気に飲み干した。
フロガーもそんなソンニールの態度に、おずおずとコップに口をつける。
フロガーが酒を飲み干すと、ソンニールが再び酒を注ぐ。
「吸血鬼に身内を奪われた者同士、思うところがあるのでしょうね」
やがてフロガーもソンニールに酒を注ぎ始め、いつしか二人は騒がしい宴の中で、二人だけの酒盛りを始めていた。
片や吸血鬼に復讐をした者、片や吸血鬼に操られた者。
この事件において互いの立ち位置は違えど、二人は吸血鬼に家族を奪われた者同士でもあった。
フロガーの行く先は暗い。しかし、まったくの暗闇というわけでもない。
そんな予感を感じさせる光景だった。
「まあ、よかったですよ。それはいいとして……」
フロガーとソンニールの酒盛りを見るついでに、健人は周りを見渡してみる。
宴の席の中央では、いつの間にか男達による腕試しが行われていた。
しかも、腕相撲とか重量挙げとかではなく、素手による殴り合いというガチの腕試しである。
今戦っているのは、ベノアという青年と、イドグロッド首長の従士アスルフルだった。
「やれ、ベノア! 気取ったアスルフルのケツにトナカイの角を刺してやれ!」
「アスルフル! 負けるんじゃないよ! その臆病者のタマ捩じり取って、スローターフィッシュの釣り餌にしてやりな!」
酒が入っているせいか周りを取り巻く観衆も熱狂し、日本の公共の場ではとても口にできないセリフが雨後のタケノコのようにポンポン出てくる。
大声で騒いている観衆の中にはイドグロッド首長や、錬金術師のラミの姿もある。
イドグロッドは骨付き肉とエールを入れたコップ。ラミは串焼きと……紫色の怪しい小瓶を持って騒いでいる。
健人としては首長が脳溢血で倒れたりしないか心配になる光景だ。
ついでに、ラミが手に持っている小瓶も気になる。
紫色の、どう見ても怪しい小瓶の中身を呷りながら叫んでいるのだ。健人としては、頼むからその小瓶の中身が懸念するものでないことを願うばかりだった。
「ノルドのお祭りは、いつも蜂蜜酒を飲みまくり、殴り合いをすることが相場と決まっているのよ」
「そんなお祭りいらない……」
健人はノルドが蛮族と言われるようになった理由が分かった気がした。
個人の武勇を崇拝するノルドらしいといえばそうだが、健人としては言いようのない脱力感と共に、肩を落とすようなものである。
とはいえ、日本にも、奇怪奇妙な祭りは数多存在する。
丸太に乗って坂を駆け下りたり、神様を乗せるはずの神輿を時速数十キロでかっとばしたり、子宝に恵まれるようにと公共の場では憚られるような形の神輿を煉り回したりと、中々のフリーダムぶりである。
つまるところは、どこの国でも世界が違えど、人間騒ぐときは皆一緒ということだった。
「おい! そこにいるのは邪悪な吸血鬼を倒した英雄じゃないか! 一勝負しようぜ!」
「ほら、お呼びよ」
「ええ……」
勝負が終わったのか、先ほどまで戦っていたベノアが次の相手に健人を指名してきた。
厄介事の到来に、へたりこみそうになったところで、デルフィンがこれ以上ないほど見事に健人の手首を極めて無理やり立たせ、ドンと背中を押す。
背中を押されてたたらを踏んだ健人は広場の中央、簡易闘技場ともいうべき場所に放り込まれてしまった。
今日の宴の主役の登場に、モーサル中の人達が歓喜の声を上げる。
「なんでこうなってんだ?」
「どうした? 怖気づいたのか? ほら、かかってこいよ」
「…………」
勝つ自信があるのか、ベノアがこれ以上ないほどいい顔で挑発してくる。
ダダ下がりのテンションが一周回ってヤケになった健人は、無言で近くのテーブルの蜂蜜酒とエールとワインの瓶を手に取り、全部を豪快にラッパ飲みし始めた。
強烈な酒精が喉を焼き、頭が朦朧としてくるが、もうこの際知ったことか! と一気に飲み干す。
普段は理性的にふるまおうが、健人もまた、地球では世界中から奇天烈民族に認定されている日本人である。
一度タガが外れれば、行くとことまで行ってしまうのはノルドと一緒であった。
「そう来なくっちゃな! 行くぜ!」
やる気になった健人に、ベノアが挑戦的な笑みを浮かべて威勢よく突っ込んでくる。
健人は見え見えのストレートを体を捻って躱すと、突き出されたベノアの手をつかんで引っ張る。
「ふん!」
「ごあ!」
さらに手を引いた勢いのまま腰を落とし、中学の時に体育の授業で習った背負い投げの要領でベノアを投げ飛ばした。
放り投げられたベノアは地面に背中から叩き落され、目を回す。
モヴァルスとの戦いで何か掴んだのか、健人自身も驚くほど自然に体が動いた。
英雄の勝利に観客たちが一際大きな歓声を上げる。
「さすが従士様」
「……従士じゃねえです」
労ってくるヴァルディマーに呂律の回らない返事を返しながら、健人はもう一杯蜂蜜酒を呷り、次はどいつだとばかりに手招きする。すっかり酔っ払いとして出来上がっていた。
そして乱入してくる多数の挑戦者。
最終的にこの腕試しはモーサルの男達全てを巻き込んだ乱闘騒ぎに発展し、収拾がつかないまま、男達全員が倒れるまで続けられた。
乱闘騒ぎの中で暴れる健人を眺めながら、デルフィンは一人、感傷的な溜息をもらす。
飛躍的な成長を遂げた弟子は、喧騒のど真ん中で、次々と現れる挑戦者たちを片っ端から組み伏せている。
酒が入って色々とタガが外れているらしく、普段の物静かさが嘘の様だった。
「そういえば、こんなに騒がしいのは久しぶりね……」
サルモールから追われ続けた数十年、彼女の心が休まる日はなかった。
帝都を追われ、タムリエル各地を這いずり回りながら生き抜いてきた間、一時も気を抜くことはできなかった。
このスカイリムに来て、リバーウッドのスリーピングジャイアントで過ごしていた時期が、彼女にとっては一番穏やかだったと言えるのかもしれない。
ふと、デルフィンの脳裏に、リバーウッドに残してきた人嫌いなオーグナーの顔が浮かぶ。
ぶっきらぼうで、無口な癖に、臆病なノルドらしからぬ人物だった。
店はリバーウッドを出ていくときに譲り渡してしまったが、本人はまだ“店主じゃない”と言い張っているだろう。
オーグナーの顔を思い浮かべたデルフィンの口元が、自然と笑みを浮かべる。
しかし、その笑みはすぐに消えた。彼女の脳裏に、かつての仲間達の死が蘇ったからだ。
デルフィンは大戦を経験したブレイズ。そしてブレイズという組織は、その大戦で壊滅した。
その大戦で、サルモールは宣戦布告がてら、帝国にサマーセット島に潜入していたブレイズ百人分の首を送り付けてきた。
それは、デルフィンが苦楽を共にした仲間達の首でもあった。
当時、デルフィンはサマーセット島に潜入していたが、彼女はたまたま帝都に呼び戻されていたために、難を逃れた。
サルモールに殺された百人の仲間達の顔は苦悶にゆがみ、そこかしこに拷問の跡が見て取れた。
目を焼きつぶした跡、耳を削いだ跡、歯をへし折り、頬を砕いた痕。
サルモールの人間に対する暴力的で、陰湿な性格が、これ以上ないほど示されていた。
大戦期、デルフィンは何度もサルモールの刺客に命を狙われたが、彼女は怒りと憎悪をもってその刺客を撃退し、鏖殺してきたのだ。
そして大戦が終わってもサルモールの追跡は終わらず、その因縁が彼女の人生に影を落とし続けている。
「私の意思は変わらない。すべては“ブレイズ”と“ドラゴンボーン”のために……」
その凄惨な記憶と過去が、彼女の平穏を許さない。
ブレイズのために、仲間達のために、必ずや使命の完遂を。
デルフィンは胸の奥で、僅かに灯った安らぎを握りつぶしながら、過去の仲間たちに向けて、改めて誓いを立てていた。
今回でモーサルの事件は終了。
次はメインクエストに戻り、サルモール大使館侵入となります。
以下、登場人物紹介
イドグロッド・レイブンクローン
ハイヤルマーチホールドの現首長である老婆。
未来を予知するような発言が多く、変人にみられる時もある。
帝国側についているが、何よりも彼女が優先しているのはハイヤルマーチであり、モーサルである。
ヴァルディマー
ゲーム上では従士となったドヴァキンの私兵となる人物。
私兵の中では珍しい魔法使いであるが、片手剣、重装スキルの持ち主であり、盾を持たせれば盾役もしっかりこなせる。
本小説ではモヴァルス討伐の際に健人と共闘。
モーサルの為に命を懸けてくれた健人に心酔し、彼の私兵になることを誓っている。
もっとも、健人が従士の称号を受け取っていないため、保留となっている。