【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル   作:cadet

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第九話 片鱗

“ヨル、トゥ、シューーール”

 

「うわ」

 

「きゃあ!」

 

 ドラゴンの口から吐き出された火炎が、舐めるようにサエリングズ・ウォッチの遺跡を縦断する。

 幸い、健人とフリアは直撃を免れたものの、巻き込まれた信者とドラウグルが、業火に飲まれたままのたうち回り、やがて地面に倒れて動けなくなる。

 

「くそ! あの忌まわしいワームを撃ち落とせ! ドラウグル共はそこの薄汚い侵入者どもを殺せ!」

 

“忌まわしい定命の者ども。裏切り者の残骸と纏めてソブンガルデに送ってやる!”

 

 信者達はドラウグルに健人達を殺すように指示し、その名に従ってドラウグルが再び健人達に襲い掛かる。

 一方のドラゴンは、地上から飛ばされる破壊魔法をヒラヒラと躱しながら、健人も信者達も関係なくブレスを吐きかけてくる。

 

「三つ巴かよ。面倒なことになった……うわ!」

 

 健人が階段を上ってきたドラウグルと斬り結んでいると、ドラゴンのブレスが真正面から二人を纏めて薙ぎ払おうとしてきた。

 健人は慌てて横に飛んでファイアブレスを避ける。

 彼と鍔競り合っていたドラウグルはファイアブレスに飲まれて一瞬で火だるまになった。さすがノルドの乾物、よく燃える。

 だが、燃え尽きた同胞の遺骸を踏み越えて、別のドラウグルが倒れた健人に斬りかかる。

 そのドラウグルを、フリアが横から斬り捨てた。

 

「でも、私たちには都合がいいわ。せいぜい利用させてもらいましょう」

 

「だけど、上空にドラゴンがいる内は俺達に攻撃手段がない。何とか消耗させて地上に引きずり降ろさないといけないから、何か手を考えて打撃を与えないと……」

 

 健人の言う通り、ドラゴンはずっと上空からブレスを吐き続けるだけで、地上にいる人間を焼き殺せる。

 ドラゴンが制空権という絶対優位を手にしている以上、上空に満足な攻撃手段がない健人にはどうしようもない。

 健人達が自分に有効な攻撃手段がないことをドラゴンもわかっているのか、ドラゴンも攻撃対象を魔法を使えるミラーク教団信者達に集中している。

 しかし、ミラーク教団信者達も負けてはいない。

 時間が彼らに冷静さを取り戻させたのか、魔法で障壁を張る役と上空に攻撃する役を分担することで、一応ドラゴンに対して抵抗して見せている。

 

「……チャンスだな。悪いけど、奴らを利用させてもらおう」

 

 健人はすぐさま方針を決めると、今まで階段の上で防衛に徹していた方針を転換、自らドラウグルへ向けて駆け出した。 

 

「ちょっとケント!?」

 

 突然の方針転換に、フリアが驚きの声を漏らす。

 

「時間が惜しい! 上空のドラゴンが焦れる前に、ドラウグル達を殲滅する!」

 

「だから、説明を……ああ、もう!」

 

 実戦では健人に振り回されっぱなしのフリアが、頭を抱えながら後に続く。

 攻勢に出た健人は、手始めに上がってきたドラウグルを蹴飛ばし、階段下に叩き落す。

 蹴飛ばされたドラウグルは、同じように上がろうとしてきたドラウグル達を巻き込みながら、下へと転がり落ちていく。

 続いてフリアが階段下で団子状態になったドラウグル達に躍りかかり、双斧を振り下ろしてなます切りにしていく。

 突然の方針転換にもきちんと対応してくれるフリアに、健人は笑みを浮かべる。

 ミラーク聖堂でも思ったことだが、健人とフリアは想像以上に息が合う。

 互いの呼吸というか、感覚が妙にマッチするのだ。

 

「うおおおりゃあ!」

 

 とはいえ、さすがはノルドの親戚筋であるスコールの女戦士。

 雄叫びを上げながら動けないドラウグルに容赦なく斧を振り下ろす姿は、気の弱い子供が見たら夜叉か物の怪かと思うほどおっかないものである。

 健人はとりあえず、彼女を怒らせることは極力避けようと心に誓いつつ、自分もドラウグルを始末して回る。

 ドラウグル殲滅が終わると、地面には彼らの遺体と、彼らが使っていた両手剣や戦槌、弓などが転がるだけとなった。

 健人は近くに落ちていたドラウグルの両手剣を拾い、サエリングズ・ウォッチの外壁の上から、ゆっくりと上空のドラゴンめがけて魔法を撃ちまくっているミラーク教団信者たちの背後に回り込む。

 

「ちょっと、どうするつもりなのよ……」

 

「今あいつらは互いの姿しか見えてない。信者達は上空のドラゴンに魔法を当てようと必死だし、ドラゴンはプライドが高いから我慢が効かない。その内、直接的な攻撃に切り替えてくるだろう。その脇腹を狙う」

 

 案の定、上空のドラゴンは拮抗したこの状況に苛立ったのか、翼を広げて急降下すると、低空を滑空するように突っ込んできた。

 後ろ足を前に突き出し、突進してくるフロストドラゴン。

 今まで上空からチマチマとブレスを浴びせるだけだったドラゴンのこの行動に、信者たちが一斉に逃げ出す。

 逃げ切れなかった信者はそのまま雪と岩にすり潰され、轢き殺されなかった運のいい信者は、地面に降り立ったドラゴンにかみ砕かれるか、尻尾に弾き飛ばされて崖下へと落とされる。

 一気に阿鼻叫喚の巷に叩き込まれた信者達。

 ドラゴンは溜まった鬱憤を晴らすように、嬉々として信者達を焼き、潰し、かみ殺していく。

 息を殺して隠れていたフリアが、喜悦交じりに人を殺すドラゴンを見て、ギリッ……と奥歯を噛みしめる。

 この光景が、かつてドラゴンによって齎された圧政を物語るような気がしたのだ。

 一方の健人は、じっと無言で機会をうかがっている。

 そして、逃げ遅れた信者が、健人が隠れている外壁のすぐ傍でへたり込み、その信者を見つけたドラゴンが、悠々とした足取りで近づいてくる。

 

「今!」

 

 健人は外壁から空中へと身を乗り出し、ドラゴンの死角となる真上から一気に躍りかかった。

 その手には先ほど拾った、ドラウグルの両手剣が携えられている。

 健人の目標は、ドラゴンの翼の付け根にある関節部分だ。

 膂力に乏しい健人の腕力では、ドラゴンの鱗を突破することは難しい。

 だからこそ、自らの体重と剣の重み、そして重力による加速を最大限に使い、一点突破で堅牢なドラゴンの鎧を打ち砕こうとしているのだ。

 一直線に落ちた健人は、その刃を目標である翼の付け根に、寸分たがわず打ち込んだ。

 天然の鎧である鱗が弾け飛び、刃の切っ先が皮膚に僅かに突き刺さる。

 

“ぐお!”

 

 突然肩に走った痛みに、ドラゴンが苦悶の叫びを上げながら暴れ狂う。

 だが、筋肉まで貫くことはできなかったのか、ドラゴンが飛翔しようと翼をはためかせ始める。

 このまま飛び上がらせてしまえば、ドラゴンの背に乗っている健人は叩き落されることになる。

 

「浅いか! フリア!」

 

「ああもう! 今日は飛び降りさせられてばっかりね!」

 

 だが、ドラゴンの体が宙に浮く前に、外壁から飛び降りたフリアが、中途半端に突き刺さった両手剣の柄尻に、振り上げた双斧を叩き込んだ。

 強烈な衝撃が両手剣に走り、刃が一気にドラゴンの肩関節にめり込む。

 

“ゴアアアアアアアアアアアアアアア!”

 

 先ほどとは比較にならない悲鳴が、サエリングズ・ウォッチに響いた。

 強固な鱗を破られていたため、浅く突き刺さっていた刃は一気に関節近くまで達し、その翼の機能のほとんどを奪い取った。

 あまりの激痛にフロストドラゴンが暴れ、背中に乗った健人とフリアを振り落とす。

 地面に転がりながらも、健人とフリアは素早く立ち上がり、ドラゴンと相対する。

 フロストドラゴンの瞳には、自らを傷付けた矮小な人間に対する憤怒がありありと浮かんでいる。

 

“わが身を傷付けるとは、許さんぞ! 愚かな定命の者よ!”

 

「怒らせたわね。どうするの?」

 

「どの道、戦わないと目的は達せられない。なら、戦うさ」

 

 健人がここに来た目的。己の正体を確かめるためには、このドラゴンは邪魔でしかない。ドラゴンも、目についた人間を見逃す気は最初からない。

 互いに倒すしか、選択肢はないのだ。

 健人の胸の奥で疼く熱が、ドクンと脈打つ。

 拍動が木霊する度に体の芯から湧く潜熱が彼の身体中を巡り、泡立つような興奮が全身を包み込む。

 それはあたかも、孵る直前の卵にも似ていた。

 

“ヨル……トゥ、シューール”

 

 ファイアブレスが健人達に向けて放たれる。

 直線上の雪を一瞬で蒸発させながら突進してくる業火を前に、健人は迷わず前に出て盾を構える。

 

「フリア、後ろに!」

 

 健人の呼びかけに、フリアは素早く健人の陰に隠れる。

 盾を突き出した健人は素早く詠唱をこなし,魔力の盾を生み出して、灼熱の吐息を受け止める。

 魔法防御の付呪を施された盾とマジ力で生み出された障壁はドラゴンのブレスを正面から受け止め、竹を割ったように炎の吐息が横に逸れていく。

 放たれ続けるファイアブレスを受け止めながら、健人は自分の体に違和感を覚えていた。

 

(なんだ? 魔法を使っているのに、体が怠くならない……)

 

 魔力効率の非常に悪い健人は、低位の魔法でも数秒でマジ力が尽きてしまう。

 普段なら魔法を使った時点ですぐさま全身を倦怠感が覆い、寒気と眩暈を感じるのだが、戦闘前に使い慣れないオークフレッシュを使い、そしてここで数秒間障壁を維持しているにもかかわらず、マジ力が枯渇する様子がない。

 確かに、自分の体からマジ力が抜けていく感覚はある。

 このまま魔法を使い続ければ、いずれマジ力が尽きるであろうことは確信できるが、体から魔力が抜けていく速度が、今までと比べても非常に遅くなっている。

 その速度は、以前がチーターなら、今は野を駆け回る小鹿と思えるほど。

 確かに、小手に施された回復向上の付呪によって回復魔法の効率は上がっているが、それを差し引いたとしてもあまりにも効率化が進みすぎている。

 

(これも、自分がドラゴンボーンだと知ったからなのか?)

 

 ドラゴンボーンとは、竜殺しの能力であり、シャウトと呼ばれる真言をすぐさま理解する能力だが、その祝福が健人に予想しえない何らかの影響を与えてことは想像できる。

 もしかしたら、アカトシュの祝福によって、この世界のマジ力に健人の体が馴染むようになったのかもしれない。

 だが、そこまで考えたところで、健人は首を振って湧き上がった思考を隅に追いやった。

 今は戦闘中だ。己が身に起こっている事を考えるのは、生き残った後でいい。

 掲げた盾の陰から獄炎の向こうにいるであろうドラゴンを見据えながら、健人は手に持ったブレイズソードを握りしめる。

 十秒ほどの間、続いたファイアブレスだが、やがて勢いを無くして霧散した。

 

「いくぞ!」

 

「ええ!」

 

 炎の時が途切れた瞬間、健人とフリアは一気にドラゴンめがけて踏み込んだ。

 同時に示し合わせたように左右に分かれ、挟み込む形でドラゴンめがけて斬りかかる。

 健人かフリアか、どちらを迎撃するか一瞬迷ったドラゴンだが、すぐに目標をフリアに定めて首を伸ばし、その顎を開いて彼女をかみ砕こうとする。

 戦士として膂力に優れ、ドラゴンの甲殻を貫ける可能性があるのは、フリアの方だ。

 健人の力では、どう頑張ってもドラゴンの強靭な鱗を貫けないことを見抜いているが故の行動だった。

 

「ぐぅ!」

 

 眼前に迫ってきた巨大な口を前に、フリアは咄嗟に横に飛んで躱した後、目の前の双斧を横殴りに叩きつける。

 顔面に走る衝撃に僅かに顔を仰け反らせたフロストドラゴンだが、仰け反った首を鞭のようにしならせ、薙ぎ払うようにフリアに叩きつけた。

 

「がっ!?」

 

 ボールのように跳ね飛んだフリアが遺跡の外壁に強かに叩きつけられ、苦悶の声を漏らす。

 魔力の鎧を纏っていたために重傷こそ免れている様子だが、叩きつけられた衝撃で全身が痺れているのか、その場から動くことにも四苦八苦している。

 

「フリア! くっ!」

 

 彼女は相当強く壁に叩きつけられた。

 魔力の鎧を纏っているものの、内臓が破裂している可能性もある。

 不味い! と感じた健人が、気を引こうとドラゴンの左側面から一気に躍りかかる。

 

“退いていろ! 邪魔なジョールめ”

 

「ふっ!」

 

 翼をはためかせて近寄ってくる健人を振り払おうとするフロストドラゴン。

 健人はスライディングで地面と皮膜の隙間をすり抜け、ドラゴンの脇腹付近に滑り込む。

 

「確か……ここ!」

 

 スカイリムでサーロタールと相対した時のデルフィンの行動を思い出しながら、健人は前腕の付け根にある鱗の隙間に刃を突き込んだ。

 鱗の隙間に入りこんだ刃を通して、ザクリと肉を割った感触が伝わってくる。

 

“ぬぅ! 貴様!”

 

 腕に走る痛みにドラゴンがわずかに呻くが、すぐに憤怒に染まった瞳で健人を睨みつけると、その鋭い牙を健人に向けてきた。

 

「くそ、俺の力じゃ浅すぎる!」

 

 膂力の乏しい健人の突きでは、やはりドラゴンに十分な痛打を与えるものにはなりえない。

 健人自身わかっていた事だが、こうして事実を突きつけられるとつい悪態をついてしまう。

 自分の力の無さに健人は唇を噛み締めるが、ドラゴンの攻撃を前に、すぐさま反射的に対応する。

 踵に力を入れて体を横に滑らせ、ドラゴンの噛みつきを回避しながら刃を返し、斬り上げを放つ。

 だが、やはり健人の刃はドラゴンの鱗を前に空しく弾かれる。

 狙いを定めていない斬撃は意味がない。

 健人の斬撃に痛痒を感じないドラゴンが、再び怒りに任せて健人に躍りかかる。

 巨大な質量の突進を前に、健人は顔を引きつらせながらも、奥歯を噛み締めて盾を構える。

 だが、双方の間に割って入ってきた影が、ドラゴンの横っ面に巨大な質量を叩きつけた。

 

「お返しよ、トカゲ野郎!」

 

“ゴアッ!”

 

 割って入ってきたのは、先ほどドラゴンに弾き飛ばされたフリア。

そして薙ぎ払われたのは、ドラウグルが持っていた戦槌だった。

 彼女が使い慣れた双斧の代わりに持ってきたのは鋼鉄製の古代ノルドの戦槌だが、その質量は折り紙付きである。

 双斧を巧みに操るフリアの膂力から繰り出された一撃の強烈な衝撃に、ドラゴンの首が仰け反る。

 

「いちち。ちょっと痺れちゃったじゃないよ!」

 

「あれでちょっと痺れた程度で済むのかよ……」

 

 フリアの頑丈さに、さすがの健人も閉口する。

 もし吹き飛ばされたのが健人だったら、回復魔法か薬による治療が必須になるだろう。

 北の民の頑強さに改めて感心している中、再びドラゴンがその牙と爪を二人に振り下ろしてくる。

 噛みつきから右前足を振り下ろし、続いて左前足を薙ぎ払う。

 ドラゴンの攻撃は絶え間ない嵐に変わった。おまけに図体がデカいだけに、範囲も広い。

 健人とフリアは再び左右に分かれて相手の注意を分散することで、この嵐を凌いでいるが、スタミナが違いすぎるためにジリ貧になることは目に見えている。

 そもそも、相手は生態系の頂点に座すドラゴンだ。矮小な人間とは生命力の基準が違う。

 

「く……」

 

 回避を始めてから数十秒後、少しづつ、フリアの動きが鈍り始めた。

 いくらフレッシュ系の魔力の鎧とノルドの鎧で身を固めていても、先ほどドラゴンからくらった一撃はフリアの体の芯に影響を残している。

 さらにここで、フロストドラゴンが一手、布石を打ってきた。

 

”ラーン、ミラ、タースゥ!“

 

 ドラゴンのシャウトがサエリングズ・ウォッチの空に響くと、舞い散る雪をかき分けて複数の影が戦場となっている遺跡の広場に飛び込んできた。

 

「なっ、クマ!?」

 

「それだけじゃない、オオカミまで!」

 

 健人たちとドラゴンの戦闘に割り込んできたのは、大きなユキクマ。地球にシロクマに似た白い体毛を持つ猛獣である。

 おまけにクマの後ろには、四匹の狼が付き従っている。

“動物の忠誠”

 近くにいる獣を従わせるシャウトだ。

 集まってきた獣全てが、フロストドラゴンがシャウトによって集めた手勢である。

 

“獣ども! その人間の女を抑え込め!”

 

「くっ!」

 

 ドラゴンの命に従い、動物達がフリアに躍りかかる。

 一対二でどうにか保っていた均衡が、ユキクマを始めとした獣たちの参戦によって一気に崩れる。

 おまけに、今フリアが持っているのは使い慣れた双斧ではなく、取り回しずらい戦槌。

 ユキクマがフリアの体にのしかかり、オオカミが回り込んでフリアの足に噛みつき、その動きを封じる。

 

「くぅ……ああああ……」

 

 そして、動きの取れなくなったフリア目掛けて、ドラゴンが大きく息を吸い込む。

 ドラゴンの意図を察した健人が慌てて斬りかかるが、健人の斬撃はやはり強固な鱗を突破することができない。

 

「この!」

 

 ならばと、再びドラゴンの下に滑り込み、比較的薄い鱗の隙間にブレイズソードを突き入れ、皮膚を切り裂こうと試みる。

 突き入れた刃から再び、ザクリと皮膚を貫く感触が返ってきた。

 だが健人がこのまま刃を突きいれ、より深く肉を貫こうとしたその時、ドラゴンが突然、体重をかけて健人を押しつぶそうとしてきた。

 

「なっ……!」

 

 健人は慌てて剣の柄から手を放し、ドラゴンの下から飛び出す。

 間一髪、ドラゴンの腹の下から退避した瞬間、ズドンという衝撃が舞い、続いてバキン! という耳障りな音が響いた。

 

「剣が……」

 

 それはドラゴンにのしかかられたブレイズソードが折れてしまった音だった。

 刀身が半ばから折れた刀の柄が、地面に転がる。

 折れた刀身のもう一方は、ドラゴンの鱗の隙間にガッチリと喰い込んでしまっている。

 得物を失い、茫然としている健人を尻目に、ドラゴンはフリア目掛けて灼熱の吐息を吐き出した。

 

“ヨル……トゥ、シューール!”

 

「あああああ!」

 

「フリア!」

 

 自分を拘束している猛獣達もろとも炎に包まれ、フリアが悲鳴を上げた。

 

 




ドラゴン戦開始。
健人の魔法効率ですが、すさまじく上昇したというよりも、今までがあまりに酷過ぎただけで、ようやく普通より少し劣る位になった程度です。
小鹿でも人間より足は速いですからね……。

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