【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル   作:cadet

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今回はカシトサイドのストーリー
本来は前話に入れるお話でしたが、長くなったために分割しました。


第五話 バルドールとカシト、新たなる刃

 時間は少しさかのぼり、健人がテルミスリンに向かう前の話。

 彼らがまだ島の岩を浄化している頃、カシトは命からがらリークリング達から逃げ切り、スコール村に到着していた。

 正確には、リークリング達と命を懸けた追いかけっこをしている最中に、村の外に出ていたバルドールを始めとしたスコール達に命を救われ、村まで連れてこられたのである。

 

「助かったよ~。ありがとう!」

 

「しかし、寒さが苦手なカジートがこの村の周辺まで何をしに来たのかと聞いてみれば、まさかケントを探しに来ていたとはな」

 

 ハムハムと手渡されたパンを一心不乱にかじるカシトを眺めながら、彼を助けたスコールであるバルドール・アイアンシェイパーは、鍛冶の用意をするため、自宅の工房に備え付けられている溶鉱炉に燃料となる薪を入れて火をつけていた。

 バルドールが、このカジートと健人が知り合いであることが分かったのは単純だった。

 このカジート、リークリング達に槍を投げつけられる中、必死の形相で逃げながら只管に健人の名前を連呼していたのだ。

 それこそ、雪崩を誘発してもおかしくないくらいの大音量で。

 普段は余所者に対して寛容ではないスコールだが、自分達を助けてくれた恩人の知り合いとなれば話は別である。

 とりあえずバルドール達は、カシトを追いかけていたリークリングを追い払って、彼を救出。スコール村に案内し、食事などの世話をしたのだ。

 

「しかし、リークリングに追われるなんて運がなかったな。最近、この島に脅威が迫っているせいか、リークリング達もピリピリしているんだ」

 

「そ、そうなんだ……。た、助かったよ……」

 

 バルドールはこの島に迫っている脅威、ミラークについてカシトに語る。

 一方、カシトはバルドールの話を聞きながらも、自分が復活させてしまったリークリングの王についてどうすればいいか分からず、狭い額に焦燥の汗を浮かべていた。

 食べ物に釣られたカシトは、崩壊して氷に閉ざされたリークリング達の城まで案内され、洞窟で見つけた頭蓋骨をリークリング達が促すままに玉座に返した。

 彼らの話では王様が復活するといっていたが、いくら王と言っても、短身痩躯のリークリング達なのだから、王様と言っても大したことはないだろうと高を括っていたのだ。

 ところが、現れたのは並の巨人をはるかに上回る巨大な雪男の幽霊。

 痩せた子供のようなリークリングとは似ても似つかない、大男だった。

 そして、茫然としていたカシトの傍で、カシトを案内したリークリングはこう言った。

 

“ワレラガオウ、カースターグサマ、タベモノノニエ、ササゲマス”

 

 そう、リークリング達は初めからカシトを生贄として捧げるために、連れてきたのだ。

 リークリングに嵌められたことに気づいたカシトは、全力で逃走を開始。追手と命を懸けた壮大な鬼ごっこをする羽目になった。

 幸いだったのは、復活したリークリングの王は、まだ幽霊であるためか、自分の城から動けなかったことである。

 彼を城外まで追いかけてきたのは配下のリークリングだけで、そのおかげでバルドール達だけで対処が出来た。

しかし、復活したリークリングの王については、カシトは話をしていない。

 ここに来るまでに話す機会を逸したというのもそうだし、明らかに厄介ごとを持ちこんだ人間と思われて、健人の手がかりも得られないまま村を追い出されるのも不味かった。

 とはいえ、復活したカースターグはそのまま残っているため、スコールたちからすれば、間違いなく厄介事が増えたことになる。

 

「しかし、お前さんどうしてリークリングに追われていたんだ?」

 

「ふ、吹雪にあって彼らの洞窟に迷い込んじゃったんだよね。そ、そうしたらあの青い小人達に槍持って追いかけられて……」

 

「ああ、ミラークのせいで、島中ピリピリしているからな……」

 

「そ、それにしても、オジサン鍛冶師だよね。外は危険だと分かっていたのに、どうして村の外にいたの?」

 

 結果、解決策を見いだせなかったカシトは、全力で話を逸らし、見なかったことにした。

 “臭いものには土をかけろ”の精神で、自分は何も見ていないという事にしたのである。

 考えが浅いといわれるカジートらしい行為だった。

 ミラークの脅威で各種族が緊張感に包まれている現状も、カシトがリークリングに追われていた状況に、バルドール達が違和感を抱かない一因になっていた。

 カシトはとりあえず追及を逃れたことに内心でホッとしていた。

 一方、バルドールはこの危険な時期に村の外に出ていた理由について、カシトに説明し始める。

 

「ケントの為に作る武具の素材が尽きちまってな。人手を借りて心当たりを探しに行ってたんだよ。まあ、当たりだったがな」

 

 火箸で薪の位置を調整し、炉に入る空気量を調整しながら、バルドールは近くの作業台に置かれた複数の大きな袋を指さした。

 どうやらあの袋の中に、健人の武具を作るための素材が入っているらしい。

 健人の武具と聞いて、カシトは目を輝かせる。

 

「ケントの武具!? なになに、何を作るの!?」

 

「まあ、一番は剣だな。健人の剣はドラゴンとの戦いで折れちまってるし……」

 

 溶鉱炉の調整を終えたバルドールは、素材を入れていた袋から、漆黒の原石を取り出す。

 

「それって、黒檀の原石?」

 

「ああ、せっかくだから、前に健人が使っていた剣よりも、もっといい素材で剣を作ってやろうと思ってな」

 

「あれ? でも剣を作るにしては、袋の数が多すぎない?」

 

「ケントの鎧に使うものもあるのさ。まあ、剣以外は素材の形を調整して組み上げるのが主だから、こっちの剣よりもすぐに出来るだろうがな」

 

 そう言いながら、バルドールは素材となる黒檀の原石を溶鉱炉に投入。

 高温の溶鉱炉の中で溶けた黒檀は純度を劇的に増し、インゴットとして炉口から取り出される。

そしてバルドールは、取り出したインゴットを、火床で再び熱し始めた。

 カシトはその様子を、目を輝かせて眺めていた。

 鍛冶については知識も興味もないカシトだが、スコール一の鍛冶師であるバルドールの気合、そして何より、これから健人の武具が作られると聞き、好奇心を刺激されたのだ。

 バルドールは二つのインゴットを熱していた。

 本来剣を鍛造する場合、一塊にしたインゴットを熱した後、叩いて成型する。

 しかし、今熱しているインゴットは二本。

 しかも、なぜか微妙にインゴットの色合いが違っている上、バルドールは熱して伸ばしたインゴットを何度も何度も二つに折り曲げ始めた。

 

「なんか、普通の剣の作り方じゃないね」

 

「まあな。あいつの剣を調べたら、面白い作り方をしていた。あいつに合った剣を作るにはそれを再現する必要があるのさ」

 

(とはいえ、これは以前の健人の剣を作る以上に困難だろうがな)

 

 バルドールがブレイズソードを調べた際、彼は健人の剣に配合の違う二つの金属を組み合わせて作られていることを看破していた。

 刀の耐久性を高める粘りのある芯材と、切れ味を増す硬質な刃材。

 さらに、その鍛造過程も独特で、何度も何度も熱した素材を折り曲げた形跡があった。

 健人のブレイズソードはこの二つを絶妙な技術で組み合わせ、剣としての性能と強度、粘り強さを落とすことなく高めている。

 

(異なる素材に多層構造。これがこの剣の特筆すべき点であることは間違いないが……どれだけ腕のいい鍛冶師が作ったんだ?)

 

 バルドールは黒檀という最高位の素材で、その技術を再現しようとしている。

 しかし、それはバルドールをしても困難ともいえるものだった。

 黒檀はその特性上、余計な不純物が混ざった場合、使い物にならない屑となってしまう。

 つまり、普通の鉄のように炭素を混ぜて粘りを増した素材として使用することはできないのだ。

 また、加工過程の火力も重要で、少しでも火力が足りなければ成形できないし、純度を増した素材も、低温で何度も叩けば、ひび割れて使い物にならなくなる。

 

(普通、黒檀に不純物は混ぜられない。だが、例外はある……)

 

「何? その氷みたいな岩?」

 

「…………」

 

 バルドールが取り出したのはスタルリムと呼ばれる魔法の氷。

 全創造主の力が大地に集まり結晶化した鉱物であり、黒檀に負けず劣らずの素材だ。

 この鉱物の鍛造技術はタムリエルの中でもスコールしか持っていない。

 バルドールもその技術を有しているが故に、この不思議な魔法の氷の特性について熟知している。

 バルドールはこのスタルリムを、黒檀に混ぜて使うつもりなのだ。

 

(このスタルリムは、おおよそ黒檀とは似ても似つかないが、その鉱物特性は非常に似通っている。それにこの氷は、全創造主の力が宿っている。私の考えが正しければ、スタルリムは黒檀と互いを蝕むことなく、その性質を補い合うはずだ)

 

 黒檀とスタルリム。性質がよく似通う二つの金属がこの島にある事実が、バルドールに自身の仮説を確信させる大きな要因になっていた。

 また、黒檀は低温下では割れやすくなるが、スタルリムは元々決して溶けることのない魔法の氷。

 バルドールは黒檀の脆い一面を、スタルリムは補うと考えたのだ。

 

(後は、気を付けるのは火力だが……これはキツイな)

 

 黒檀やスタルリムを加工するためには、鉄や碧水晶とは比較にならないほど高い火力を必要とする。

 おまけに、加工にかかる時間も膨大だ。当然、その間火を落とすことはできない。

 現にバルドールの額から流れた汗は、地面に落ちるとジュッ……と音を立てて瞬く間に消えてしまう。

 だが、バルドールは一切迷うことなく、燃え盛る炎に向き合い、長年の相棒である槌を握りしめる。

 バルドールは目的の剣を作る為に三日三晩を要し、その間只管炉の前で槌を振るい続けた。

 そして、彼はついに二本の刃を作り上げた。

 一振りは黒檀の比率を高くした、黒檀のブレイズソード。

 もう一振りはスタルリムの比率を高くした、スタルリムの短刀である。

 黒檀のブレイズソードはその刀身に流麗な刃文を描くだけでなく、所々に粉雪を思わせる青い輝きを抱いており、その鋭さは鉄片を刃に落としただけで真っ二つに切り裂くほどだった。

 スタルリムの短刀はスタルリム製の武具特有の武骨なイメージはまるでなく、まるで清流を思わせる鮮やかな刀身をしていた。

 その刀身には漆黒の鎬が刻まれ、透けた刀身から内側の芯材を覗き見ることができる。

 短刀には似つかわしくない頑強さを誇り、もしスタルリムを豊富に用いたこの刃に氷の付呪を施せば、その威力を何倍にも増してくれるだろう。

 これほどの名剣なら、銘を付けるべきなのだろうが、バルドールはこの剣達の銘をまだ掘ってはいない。

 この剣達の主となる健人の意見も聞くべきだと思ったからだ。

 さらにバルドールはこの類稀なる剣を鍛え上げた後、再び一晩かけて健人の鎧と盾を作り上げた。

 そして、剣を作り始めてから十日後。

 度を越えた鍛造による極度の疲労を癒したバルドールは、カシトと共にスコール村を発とうとしていた。

 

「さて、行くぞ」

 

「本当に一緒にテルミスリンに行くの? いや、案内してくれるのは嬉しいけど……」

 

「この剣と鎧をケントに届けなきゃいけないからな。案内はついでさ」

 

「ま、オイラは健人に会えればそれでいいけどね! 護衛は任せてくれていいよ」

 

「ああ、よろしくな」

 

 大荷物を持ったバルドールをカシトが護衛する形で 二人はスコール村を後にし、テルミスリンへと赴く。

 彼らが目的地であるテルミスリンに到着したのは、健人達がチャルダックへ出発した半日後のことだった。

 

 




カシト、命からがらリークリングから逃げ切るも、肝心の事は隠すことに決めました。
カースターグは城から出られないので、ミラークの脅威が去るまでは大丈夫でしょう。
まあ、ミラーク事変が解決したら今は引きこもっているリークリング達も外に出るようになるでしょうから、話は別ですが……。

そしてもう一つは、バルドールの武具作成。
黒檀の特性と鍛造については、スカイリムにある書籍の中の文面を参考にしています。
ただ、不純物が多いと屑になるという話は、どのような形で使えなくなるのかが明記されていなかったため、その辺は想像で補いました。
黒檀の産出については、レッドマウンテンの火山活動が関係しているようですし、そこにかつてあった強大な力や、その黒檀がソルスセイムにも多い事実。
そして、スタルリムはソルスセイムにしかないなど、色々妄想が膨らむ設定が多数ありましたことから、スタルリムとの合金について考えました。
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