【完結】The elder scrolls V’ skyrim ハウリングソウル   作:cadet

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ヴァーロック編最終話です。
文字数1万4千文字以上と、かなり長いです。

そして全く関係ない話でありますが、書籍化したオリジナル小説の方は、コミカライズ化が決まりました。


閑話 ヴァーロック編 最終話

 全身に走る痛みと、こみ上げる吐き気に、ヴァーロックは思わずむせる。

 吐き出した息に混じった血に、彼は自分の命がもう長くないことを悟った。

 焼き尽くされた大地と街並み。そして、ミラークの主を含めた大量のドラゴンの亡骸。ヴァーロックの魔法で斬り裂かれた大地の傷跡には大量の海水が流れこみ、ミラークのシャウトが引き起こした嵐が、容赦なく残された大地を削り取っていく。

 己の力の無さに、ヴァーロックは全身が焼けそうなほどの怒りがこみあげてくるが、その怒りはいっそう、彼に残された時間を削り取っていく。

 

「ぐっ、がは……」

 

 思わず力がこもり、我慢していた血を吐き出してしまった。

 灰と雲に覆われた空を見上げれば、漆黒の翼を持つ竜王が死に体になった彼を見下ろしている。

 

「竜王アルドゥインよ。我が力及ばず、裏切り者を逃してしまいました……」

 

 紅眼黒鱗の君主に、ヴァーロックは血まみれになった手を伸ばす。

 

「お願いがございます、私はもう長くありません。しかし、この地でやり残したことがあります。どうか、我が忠誠を遂げさせてください……」

 

 死の間際までドラゴンへの忠誠を誓ったドラゴンプリーストを前に、アルドゥインが咆哮を上げる。

 そして、ドラゴンに忠義を尽くした神官は亡くなり、その遺体はこのソルスセイムに埋葬された。何時か復活するであろうミラークと、彼の口車に乗った裏切り者たちを封じる、永遠の番人として。

 

 

 

 

 

 

 

 

「モタード、ゼィル!」

 

 虹色の奔流が、玄室を埋め尽くす。猛り狂う眩い彩色の嵐は紅光の群れを吹き飛ばすと、生みの親たる健人の体へと収束する。

 ハウリングソウル。坂上健人が持つ真の切り札であり、あらゆる存在を共鳴させるスゥーム。

 かつてアポクリファでの戦いの中、ハルメアス・モラの力と共鳴して邪神の肉体と白日夢の領域を消し飛ばした力の言葉は、今再び、彼の内に秘めた魂と響き合い、その力を何乗にも引き上げる。

 力強さを増した光の鎧。そして、昂る力の導くままに、健人は地を蹴った。

 

「しっ!」

 

 スゴン! と炸裂音を響かせながら、仕掛けが施された床板が粉砕される。

 設置されていた火炎放射の罠を踏み砕きながら加速した健人の体は、まるで一筋の閃光のように、空中のヴァーロックめがけて躍りかかった。

 

「ウォト、トル゛!?(なんだ、これは!?)」

 

 先程とは比較にならない程の威圧感を噴き出しながら迫り来る健人を前に、ヴァーロックは動揺しながらも、すぐさま転移魔法を発動する。

 痩せこけたドラゴンプリーストの体を紫炎が包み込み、健人の刃圏から離脱する。ヴァーロックが転移した場所は、転移前の場所と健人を挟んだちょうど反対側。先ほどまで健人がいた場所に、転移の紫炎が出現する。

 紫炎から姿を見せたヴァーロックは、がら空きの背中を見せているであろう健人を撃ち抜かんと、手を掲げ……。

 

「っ!?」

 

 すでに逆走して目の前に迫っていた健人の姿に、慌ててスペルストックで待機させていた転移魔法を発動した。

 

「ちぃ、外した!」

 

 ヴァーロックの再転位を確認した健人は、素早く周囲に目を光らせる。

 転移魔法は発動してから転移が終了するまで、数秒間のタイムラグが存在する。そのわずか数秒が、勝負の分かれ目だった。

 健人の右後方に、転移の紫炎が発生する。

 

「しっ!」

 

 転移の紫炎を確かめた健人は、勢いを殺さず、進行方向の壁に向かって突進する。

 体をひねり、壁に足をつけて跳躍。ハウリングソウルによって激増した身体能力と抜群の体捌きにものをいわせ、突進の勢いを反対側の斜め上方に変更する。

 さらに、天井を蹴って再度方向を修正。天地が逆になった視界の中、彼は転移の紫炎の中から出現したヴァーロックに、再び躍りかかった。

 

「はあああ!」

 

「アーム!(くそっ!)」

 

 ヴァーロックが再びスペルストックで転移魔法を発動し、三度健人が後を追う。

 彼はまるで玩具のスーパーボールのように、壁や天井を自在に跳躍しながら、ヴァーロックを追い詰めていく。

 自らが追い詰められ始めたことを察したヴァーロックは、転移と同時にスペルストック内のファイアボールを発動。カウンターで健人の頭を消し飛ばそうとするが……。

 

「ファイム!」

 

 一瞬だけ霊体化した健人に無効化された。慌てて転移魔法を発動して健人の斬撃を躱すも、再び追いかけられる羽目になる。

 その後も健人は“霊体化”のシャウトが一時使えなくなっても、“旋風の疾走”でタイミングをズラしたり、“揺ぎ無き力”で逆に機先を制してくるなど、多彩な攻めを見せるようになった。

 同時に、ヴァーロックのスペルストックで保管されていた魔法は瞬く間に目減りし、取れる手段が次々に減っていく。

 今の健人は、明らかにヴァーロックのスペルストックと魔法展開速度を上回る攻勢をかけていた。

 元々健人は、ミラークの塔の壁面で、迫りくるデイドラ相手にシャウトと身体能力だけで空中戦をやっていた人間である。四方を床、壁、天井という足場で囲まれている玄室内、かつ、転移魔法のアドバンテージを封じた今、戦況の天秤は明らかに健人に傾いていた。

 そして、ヴァーロックがストックしていた転移魔法が、ついに尽きる。

 

「もらった!」

 

 転移のスペルストックが尽きたヴァーロックに、健人の斬撃が迫る。

 袈裟懸けに振るわれた黒檀のブレイズソードが、ヴァーロックの肩口に吸い込まれていき……。

 

「っ!」

 

 甲高い金属音とともに受け止められた。

 ヴァーロックの両手から生み出された魔力の剣が、健人の一閃を受け止めている。

 魔力の剣。

 素人クラスの召喚魔法であり、その名の通り、魔力によって仮初の剣を生み出す魔法だ。

 スペルストック内に最後に残っていた魔法であり、そして無手から近接武器を生み出せる便利な魔法。

 しかし、素人クラスの魔法なだけあり、時間制限があり、かつ耐久性に難がある。

 それでも、ヴァーロックほどの術者ともなれば、その強度は現実の剣と大差ない。むしろ、聖水晶の刃を上回る、鋭利な刃を作り上げることもできる。

 それこそ、健人が振るう黒檀のブレイズソードと、正面から打ち合うことができるほどの刃すらも。

 

「コス、ヴァール、アーゼイド、フル゛! ヌツ、ニ、セィザーン、ジンド! ニス、ダイン、セィザーン、ジンド!(ここまで追い詰められるとはな! だが、負けんぞ! 負けてたまるか!)」

 

 ヴァーロックが健人の黒檀のブレイズソードを下にはじき落とし、反撃の二刀を繰り出す。魔力の剣の特徴は、重さがほとんどないがゆえに、素早い取り回しができることである。

 振り上げられた双刃が、痩せこけた腕から繰り出されたとは思えない速度で、健人の脳天に迫る。

 

「速い……が、軽いな」

 

 しかし、ヴァーロックの双刃は、それ以上の速度で引き戻された健人の刃に防がれた。

 腕を畳み、体を落とし、体をひねりながら掲げられた黒檀の刃が、しっかりとヴァーロックの魔力の剣を受け止めている。

 ヴァーロックの剣には、殆ど質量がない。故に速いが、軽いという欠点を持つ。

 それを一目で見抜いた健人は、全身の筋肉を収縮させ、掲げた刀を振り上げると、羽のように軽いヴァーロックの双刃をはじき返す。両腕を跳ね上げられ、がら空きの胴体が晒された。

 

「しっ!」

 

 横薙ぎに一閃。ドラゴンアスペクトとハウリングソウル。二つのシャウトによって極限まで高められた健人の一閃は、防ごうと引き戻されたヴァーロックの双刃を紙のように両断し、妄執に囚われていたドラゴンプリーストの肉体を両断した。

 断ち切られ、床に倒れこんだヴァーロックの両眼から青白い光が失われていくのを眺めながら、健人は緊張を解くように息を吐く。

 

「終わったか……」

 

 強敵だった。ミラークのライバルだったという話も納得できるほど、卓越した術者だった。少しでもボタンを掛け違えていたら、やられていたのは健人だったかもしれない。

 黒檀のブレイズソードを鞘に納めながら、健人はヴァーロックの遺体に背を向けると、最奥に安置されている言葉の壁に向かう。

 最奥に安置された言葉の壁の前には、一際大きく、豪華な装いの宝箱もある。カシトが見つけたら、目の色を変えそうなほどの大きさだ。

 健人は残してきた親友が鼻の下を伸ばす様を思い浮かべて苦笑を漏らしつつ、最奥の言葉の壁の前へと足を進める。

 

「高潔なノルドは、その偉大な勇気で人も竜も『鼓舞』した。強きヴァーロックをいつまでも覚えている、か。覚えているのは“ヴァーロック”の名前なんだな。そして、それすら、もう忘れ去られている……」

 

 まだハウリングソウルを解いていないためか、共鳴しているミラークの魂から流れ込む哀愁と惜別の感情に、健人はどうにも心揺らされてしまっていた。

 流れ込む『鼓舞』のシャウトを己の魂に刻まれながら、自らが倒したヴァーロックに思いをはせる。

 ヴァーロック。守護者、そして監視者の意味のスゥーム。彼もまた、ミラークと同じように、名によって運命を縛られていた。

 

「でも、本当にそうだったのか?」

 

 Vahlokの文字を分割すれば、Vahとlok。そして、それらは、それぞれが春と空を意味する。

 

「春の空……。あのドラゴンプリーストに名前を付けたドラゴンは、どっちを望んでいたんだろうな……」

 

 春の空。冬の終わり、新しい何かが始まる予感を漂わせる名前は、永劫の監視者にとなったドラゴンプリーストの名前としては、皮肉にも感じられる。

 健人の胸の奥で、ミラークの魂がドクン、と一際大きく震えた。

 何かを訴えるような戦友の魂に、分かっていると語り掛けるように瞑目する。

 

(終わらせてほしかったんだろうな。同じようにシャウトで縛られた、ヴァーロックを……)

 

 健人の言葉に答えるように、震えていたミラークの魂が静まっていく。

 この遺跡に来てから、絶え間なく震えていたミラークの魂が、ようやく落ち着きを取り戻し始めた。

 戦いが終わったことに肩を落とした健人は、出口を探し始める。

 ここに来た時の入り口は、既に崩落によってふさがってしまっていた。脱出するには、新しい出口を見つけなければならない

 

「言葉の壁の裏とかに、隠し通路とかないのか?……ん?」

 

 カタン、ズルズル……。

 何か石に触れ、布がこすれる音が健人の背後から流れてきた。治まったはずの胸の疼きが、再び蘇る。

 健人は一体何かと振り返り、そして驚愕に目を見開いた。

 

「なっ……」

 

「ファー、ドロク。ファー、スー、ジュン……。(主のために。我が王のために……)」

 

 胴体を両断されたヴァーロックの瞳に、再び青白い炎が灯っていた。

 分断された上半身だけで浮遊するドラゴンプリーストは、最後の力を振り絞り、魔法を展開する。

 掲げられた両手。そしてヴァーロックの頭上に、巨大な炎塊が出現する。

 人一人が楽々と飲み込まれるほどの炎の塊は、ヴァーロックの体から噴き出す膨大なマジカを吸収しながら、収束されていく。

 

 ヴォルケイノテンペスト

 

 達人魔法、ライトニングテンペストと同系統の極大砲撃魔法。

 かつて、ミラークとの戦いの中で、地続きだったソルスセイムとタムリエルが切り裂かれるきっかけの一つとなった魔法の一つ。そして、ヴァーロックの最後の切り札。

 

「ミラーク、ダール、コス、フ゛ァール、オブラーン!(ミラークよ、これで終わりだ!)」

 

「させるか、ウルド、ナー、ケスト!」

 

 発動すれば、一瞬で蒸発すること間違いなしの魔法。それを前にして、健人はためらわず突撃を敢行した。

 死ぬべき時に死ぬことを選ばず、そして今でも与えられた運命に従う哀れな骸。その振り下ろされそうになる両腕めがけ、黒檀のブレイズソードとスタルリム刀を突き刺す。

 

「ぐぅ!」

 

 直後、砲撃が解放された。

 発動したヴォルケイノテンペストは玄室の天井を一瞬で溶解し、大気を切り裂き、雲を消し飛ばし、エセリウスにまで届くのではと思えるほどの炎の柱を現出させる。

 

「オオオオオオオオオ!」

 

「ぐうううう!」

 

 がっぷりと組み合う両者。ヴォルケイノテンペストの強烈な圧力にさらされながらも、健人とヴァーロックは至近距離で睨みあう。

 

「もう終わった! ミラークはもう死んでいる!」

 

「ニス、オブラーン! ヒ、コス、ミラーク。ズー、コス、ロニト、ホロコン、ファース、ホコロン、ヴォクル、ホコロン! ニス、オブラーン、ズー、ヘイヴ、ミル!(終わっていない! お前はミラークだ。我が宿敵、我が大敵、我が怨敵! 我が使命、我が忠誠は、なにも終わっていない!)」

 

「こんの……! 大馬鹿野郎!」

 

「っ!」

 

 刀を握る健人の手に、いっそうの力が籠る。次の瞬間、スタルリム刀が震え、強烈な冷気を放ち始めた。付呪されていた冷気攻撃の魔法が発動したのだ。

 スタルリムは“解けない魔法の氷”の異名を持つ、極めて良質な武器の材料であり、同時に冷気関係の付呪の効果を劇的に高める性質を持つ。

 さらには、このスタルリム刀には、魔力吸収の付呪も施されている。

 発動した冷気は、ヴァーロックの右腕を凍らせ、彼が持つ最後のマジカを奪い取った。

 

「っ!?」

 

「おおおおおお!」

 

 ヴォルケイノテンペストの圧力が、急激に落ちていく。

 次の瞬間、健人はスタルリム刀でヴァーロックの左腕を砕き、一閃。彼の胴体と首を両断した。

 

「ミラーク、ミラーク、ミラ……」

 

 落とされたヴァーロックの首は、最後まで宿敵の名前をつぶやきながら、やがて沈黙した。続いて、ヴァーロックに制御されていたヴォルケイノテンペストが、徐々に揺らぎ始める。

 砲撃は未だに上空へ向けて打ち出されているが、その基部となっている炎塊が、不定形に歪み始めている。術者が完全に沈黙したことで、不安定になっているのだ。

 

「まずい!」

 

 ヴォルケイノテンペストの威力は絶大だ。ほとんどのマジカは砲撃で空に散ったとしても、至近距離で暴発されたら、命はない。

 おそらくは、これすらもヴァーロックの采配の中にあったのだろう。最後の切り札でも健人に勝てなかったら、その切り札の魔法を暴発させて、心中するつもりだったのだ。

 健人は咄嗟に魔法障壁を張ろうとするが、明らかに間に合わない。

 次の瞬間、ぐにゃりと歪んだ炎の塊が炸裂した。

 

「ぐ、あああああああ!」

 

 ハウリングソウルによって強化されたドラゴンアスペクトをも貫通してくる熱に、健人が悲鳴を上げる。強烈な熱による痛みにより、意識が白濁していく。

 

(死んで、たまるか!)

 

 絶体絶命を前にして、ついに健人も禁じ手を切ることを決めた。

 

「モタード、ゼィル……!」

 

 ハウリングソウルのスゥームを紡ぐ。今度は完全な三節。しかも、自身の内側ではなく、外側、外界へ向けて。

 ミラークの枷を外している今、全力のハウリングソウルを唱えた場合、どのような影響があるかわからない。

 だが、それでも使うと決めた。アポクリファの一領域を、デイドラロードごと消し飛ばす可能性を秘めたシャウトなら、ヴァーロックのヴォルケイノテンペストを吹き飛ばすこともできるだろうと。

 

「ラヴィ……え?」

 

 剥離していく意識の中、健人が最後の言葉を紡ごうとしたその時、健人の目の前に強固な魔法障壁が展開された。

 まるで城壁を思わせる光の盾は、ヴァーロックのヴォルケイノテンペストの爆風を受けてもビクともせず、逆に炎に込められていたマジカを吸収し、より堅固になっていく。

 魔力吸収。かつてミラークが持っていた魔法技術。あまりにも高度すぎて、今の健人には使えない技術と魔法の発現に、健人は面食らう。

 

「い、いったい、何が……」

 

 ヴォルケイノテンペストの熱により、健人の意識もかなりもうろうとしていた。しかし、目の前で炎の奔流を遮る障壁の陰に隠れる、特徴的なマスクの男の姿は、はっきりと映っていた。

 かつて、アポクリファでの戦いで鎬を削ったライバルにして戦友。すでに肉体もなく、意識すら消えたはずの彼の姿に、健人は目を見開く。

 

「ミラーク……」

 

 まったく、しょうがない主だ……と、皮肉るような聞きなれた声が、頭の中に響いてきたような気がした。

 お前に言われたくないと心中で愚痴をこぼしながら、健人はヴォルケイノテンペストの閃光に飲まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 健人がヴァーロックとの戦いを終えた頃、カシト達は何とか遺跡の出口にたどり着いていた。

 

「ぷは! 死ぬかと思った!」

 

 土まみれになりながら遺跡の外に飛び出したカシトは、荒い息を吐きながら、プルプルと体を揺らして、体毛の間に挟まった土を振るい落としている。

 

「ケントは、どうなったのかしら……」

 

「わからんが、戦いは終わったようだな」

 

 カシトに続いて遺跡の外に出たフリアとサースタンは、心配そうな目で自分が脱出してきた遺跡の入り口に振り返る。

 既に遺跡の入り口も崩落し、中に戻ることは不可能になっていた。

 しかし、脱出の最中、熾烈を極めた健人とヴァーロックの戦いの余波は、遺跡全体に伝搬していた。

 その余波が収まったということは、既に戦いは終わったということだ。

 

「見て見て! なんか巨大な穴が開いてる!」

 

 健人の身を案じていたフリアの耳に、カシトの大声が聞こえてきた。彼はいつの間にか、遺跡の入り口前にあった裂け目をよじ登っている。

 彼の声に導かれるように、フリアとサースタンが裂け目の上に上ると、とんでもない光景が目の前に飛び込んできた。

 

「これは……」

 

 彼女たちの眼前に広がっていたのは、巨大なクレーター。

 直径は百メートル以上。クレーターの内部は未だにヴァーロックのヴォルケイノテンペストの余波による熱が残っており、所々で溶けて固着した砂と岩が、赤い熱の光と煙を上げている。

 立ち上る水蒸気の量は多く、クレーターの中心近くはまだよく見えない。

 

「これが、古のドラゴンプリーストと最強のドラゴンボーンとの戦いの結果か。スコール村で見たアポクリファでの戦いもすさまじかったが、こうして現実に目の当たりにすると、また違う感情が湧いてくるな……」

 

 肌に刺さる余熱に眉をひそめながら、サースタンはクレーターを見下ろす。その手は、僅かに震えていた。

 好奇心に促されるまま、突き進んだ遺跡探索。その結果、蘇らせてしまった存在に、いまさらながら恐怖が湧いてきたのだ。

 

「ケント、ケントがいた!」

 

「どこ、何所よ!?」

 

「ほらほら、あそこ、クレーターの真ん中!」

 

 一方、少しずつ水蒸気が収まったことで、カシトの目が健人の姿をとらえた。

 飛び出した彼を追いかけるように、フリアが後に続く。

 

「ケント、ケント~~!」

 

「ん? カシト、フリア、無事だったか!」

 

「ええ! サースタンさんも無事よ!」

 

 健人の目が、クレーターの淵にいたサースタンに向けられた。

 一瞬、サースタンはびくりと肩を震わせる。これほどのクレーターを生み出すようなドラゴンプリースト。そして、それを倒し切った健人の存在が、いかに強大なものであるか、彼は改めて実感し、恐怖を覚えたのだ。

 ゴクリと息をのんだサースタンは、顔を引き締めながら、健人のもとへと向かう。

 

「サースタンさん、無事ですか?」

 

「あ、ああ。怪我はないよ」

 

「良かったです。依頼は達成、ですかね?」

 

 表情を強張らせていたサースタン。一方、健人はただただ、安堵とも苦笑とも取れる笑顔を浮かべていた。

 ポリポリと頬をかくその仕草に、超越者としての威厳や恐怖は微塵も感じられない。

 ありきたりなその笑顔に、サースタンの胸に湧き上がっていた恐怖が、スッと消えていく。

 

「ケント、ヴァーロックは……」

 

「倒したよ。色々と、可哀そうな奴だったけど……」

 

 クレーターの中心。おそらくはヴァーロックがいたであろう場所に振り返る健人の目は、静かな哀悼の色を帯びていた。

 

「終わったの?」

 

「ああ、終わった。終わらせたさ」

 

 先程まで隆起していたミラークの魂は、すっかり落ち着きを取り戻し、再び沈黙している。

 これで、いいだろ? というように、胸に手を当てながら、健人は瞑目した。死んでもスゥームに縛られた監視者。そして、己が取り込んだ戦友に語り掛けるように。

 その姿に、サースタンはようやく、本当の英雄の姿を見たような気がした。

 

「さて! 健人も無事だったし、お宝を探そうか!」

 

「お宝って、残っているかな? 大きな宝箱はあったけど、かなりの爆発だったから……」

 

「消滅しているんじゃないの?」

 

「そんなの、探してみなきゃわからないよ!」

 

 首をかしげる英雄、呆れる相方、そして、相も変わらず能天気な仲間のカジート。

 生まれた環境も、価値観も違う三者が戯れるその姿に、サースタンの口元に笑みが戻ってくる。

 

「……そうさな! 探してみなければわからん! ケントよ、どの辺りにあったのだ!?」

 

「ええっと、その辺かな?」

 

「よし、突撃!」

 

「おうさ!」

 

 立ち直った意欲と好奇心に促されるまま、サースタンはカシトと共に宝箱探しを開始する。完全復活したサースタンは老齢とは思えないほどの身体能力を発揮し、焼けた砂をあっという間に掘り起こしていく。

 舞い散る砂と岩が、まるで噴水のように周囲に降り注ぐ。地面に残った熱で手を焼かれないように厚手の手袋をしているとはいえ、とんでもない発掘速度である。

 その人間離れした動きに健人が苦笑を浮かべていると、隣にやってきたフリアが水の入った袋を差し出してきた。

 

「お疲れ様」

 

「ああ、ありがとう」

 

 健人は水袋の中に入った水を飲みながら、フリアと二人で発掘作業に没頭するカシトとサースタンを眺めていた。

 先ほどまで壮絶な戦いを繰り広げていたとは思えないほど、のどかで微笑ましい光景。しかし、その命がけの戦いがあったからこそ、この安堵に満ちた時間が、健人達はなによりも愛おしかった。

 

「あった!」

 

「ぶっ! マジか!?」

 

 そうこうしている内に、カシトが本当に宝箱を掘り当ててしまった。

 ヴォルケイノテンペストの余波で豪華な装飾は焼け落ちてしまっているが、中身は問題なさそうに見える。

 

「よくやったぞカシトよ、さ、開けるのだ!」

 

 サースタンに急かされるまま、カシトがロックピックで開錠を始める。

 二人の発掘作業を遠目で見守っていた健人とフリアも、いつの間にかサースタンたちのそばで開錠作業を見守っていた。

 

「何が入っているのかしら……」

 

「なんだかんだ言って、フリアも楽しそうだね」

 

「まあ、罠に嵌められるのは御免だけど、たまには、ね」

 

 微笑むフリアに、健人もまた笑みを浮かべる。

 なんだかんだで色々と酷い目にあってきた遺跡探索だったが、なんとか無事に終わり、二人もまた安堵を隠し切れない様子だった。

 そうこうしている内に、ガチャリという機械音と共に、掛けられていたカギが解除される。

 

「開いた! さあ、御開帳!」

 

 カシトが勢いよく宝箱の蓋を開けると、黄金の輝きが四人の目に飛び込んできた。

 

「すごいな、金貨がこんなにいっぱい」

 

「しかも、これ全部古銭よ。一体いくらになるのかしら……」

 

「それに、付呪を施されたアクセサリーなどの類もあるようだな」

 

 目の前に広がる黄金や貴金属の類に目をくらませながらも、健人達は宝箱の中身を次々に持ち合わせた袋に入れていく。

 大方全ての財宝を袋に詰め終えたところで、もう何もないか確認しようと宝箱の中をのぞいたカシトが、首を傾げた。

 

「ん、ナニコレ?」

 

「どうしたカシト」

 

「変なもの見つけた!」

 

「どれどれ、なんだこれ?」

 

 カシトが取り出したのは、人の頭ほどもある白い多角体。宝石の類には見えないし、健人達の目には、妙な力を発しているようにも映っていた。

 おそらくは、何らかのアーティファクト。それも、かなり力のあるアーティファクトであることが察せられる。

 カシトが差し出してきたアーティファクトを健人が手に取ると、妙な声が頭の中に響いてきた。

 

『新たな手が灯に触れる』

 

「ん、なんだ?」

 

『聞きなさい。我が言葉に従うのです。穢れた闇が我が聖堂に入りこみました。それは、あなたが滅ぼすべき闇なのです』

 

 やけに高圧的で、断定的な口調。声色から言って女性。しかし、妙に警戒心を掻き立てられる声だった。

 耳の奥から響いてくる奇妙な声に、健人は眉を顰める。まるで、面倒なクレーマーに目を付けられたような感覚を覚えていた。

 

「……変な声が聞こえる」

 

「え?」

 

 突然変な事を言い出した健人に、その場にいた全員が首を傾げる。健人としても、空耳だと思いたい。

 一方、声の主はいまいちな反応を示す健人に焦れたのか、いよいよ語気が強くなってくる。

 

『定命の者よ、灯をキルクリース山に持ち帰りなさい。事が成った暁には、あなたを浄化の光の導き手に……』

 

「これやっぱりヤバイものだ!」

 

「捨てていく?」

 

「そうだな、そうしよ……ん? うわああああ!」

 

『我が声を聴きなさい!』

 

 いっそう強い声が響いたかと思うと、次の瞬間、健人の体が宙に浮き始めた。慌てたカシト、フリア、サースタンの四人が、健人の体に飛びついて抑え込もうとする。

 一方、健人の手を離れた白い多面体は、ペカペカとまるでディスコのミラーボールのように輝きながら、健人を天空へと引っ張り上げようとする。

 

『使命を果たしなさい、定命の者よ! お前はこの私、メリディアが見初めたのです』

 

「メリディア……デイドラロードか!」

 

 メリディア。

 デイドラロードの一柱であり、生命の力を司る超越存在である。

 羽の生えた天使の姿で描かれ、「生命」という他のデイドラロードとは毛色の違う概念を司る。

 それもそのはず。このメリディアは、元はデイドラではなくエイドラ。その中でも、世界創造の際にマグナスと共にエセリウスに脱出したエイドラの一柱なのだ。

 その後、ある禁を犯し、エセリウスから追放され、オブリビオンの領域にたどり着き、デイドラロードとなった、異端の神でもある。

 ちなみに、性格は極めて面倒。極度の潔癖症であり、命を汚す不死や死霊術をとにかく嫌悪している。

 冒涜と支配、使役、生命の搾取、堕落などを司るモラグ・バルとは、不倶戴天の敵でもある。

 

「また!? これってまたデイドラがらみなの!?」

 

「け、ケント!」

 

 健人を掴むカシト達の手から、徐々に力が抜けていく。三人もまた、遺跡探索の果てに疲労を抱えている身だ。このままでは、健人は天空に連れ去られてしまう。

 

「こんのぉ!」

 

 攫われては堪らんと、健人が吼える。頭の上でペカペカ光っているミラーボールを引っ掴むと、そのまま力一杯、足元の空の宝箱向けて放り投げた。

 

『ふべ! な、何をするのですか、この無礼者! この私が一体誰だと……』

 

 ガン! と勢いよく宝箱の底に叩きつけられたメリ玉が、文句をあげる。

 一方、一時的に上空への引力から解放された健人は、落下しながら宝箱の蓋に手をかけ、勢いよく蓋を閉じた。

 

「てい!」

 

 バン! と勢いよく蓋が閉じられ、さらに健人は傍に居たカシトの腰に手を伸ばし、宝箱の開錠に使ったロックピックを取り出す。

 

『こ、こら! 出しなさい、定命の者よ!』

 

「やかましい!」

 

 宝箱の中でゴチャゴチャ喚くメリディアの訴えを一蹴した健人は、カシトから奪い取ったロックピックで再び鍵をかけると、突っ込んだロックピックをワザとへし折る。

 さらに雷の魔法を鍵口に叩き込み、アーク溶接を敢行。残ったロックピックの前側を融解して鍵穴を塞いでしまった。

 

「ファス、ロゥ、ダーーーー!」

 

『きゃあああああ!』

 

 最後に、トドメとばかりに“揺ぎ無き力”をぶち当てる。

 空中で綺麗な二回転半を決めたメリ玉入り宝箱は、放物線を描きながら海へと落ちていった。

 

「はあ、はあ、はあ……」

 

「け、ケント……?」

 

「デイドラ死すべし慈悲はない!」

 

「あ~~、アポクリファであんな事があったばかりだもんね……。無理もないかな……」

 

 実は、健人はアポクリファの一件からデイドラアレルギーになっていた。

 実際、メリディアも生命という、いかにも善を連想させる力を司りながらも、やっている事は結構えげつなかったりするので、健人のこの反応も決して間違いというわけでもない。

 神様なんてそこら中にいて日常の中にすっかり溶け込み、かつ経済的には恵まれた日本にいたからこその暴挙だが、アポクリファやこの島で彼の身に起こった事を考えれば誰も彼の奇行を止められる者はいなかった。

 ちなみに余談だが、健人のデイドラアレルギーはソルスセイムを出る頃には多少和らいだものの、以後もデイドラ関係の話となると、渋い顔をするのは止められなかったそうな。

 

「よっと、それじゃあ、オイラはちょっと用事があるから、少し別行動するよ!」

 

 突然の別行動の宣言に、健人達は疑問の声を上げる。

 

「いきなり突然だな。それに、そんな大量の金貨、どうするんだ?」

 

「まあ、ちょっとした投資だよ。オイラはちょっと用事があるから、ケントたちは先にスコール村に戻ってて」

 

「いや、いったい何をしているのか教えて……」

 

「それじゃあね~~」

 

 健人の疑問に答えることなく、カシトは走り出してしまう。

 その背中があっと言う間に小さくなっていくのを眺めながら、健人は思わずため息を漏らした。

 

「やれやれ、一体何をするつもりなのか……」

 

「気にはなるけど、今は村に帰りましょう。健人も戦いで疲れているでしょ。しばらくはゆっくりした方がいいわ」

 

「あ、ああ……」

 

 どうにも、カシトの行動が気になって仕方のない健人だが、今はヴァーロックとの戦いで疲れ切っているのも事実。

 大きく息を吐いて気持ちを切り替えると、残った財宝が入った袋を担ぎ上げる。

 

「それじゃ、私は今書いている英雄の記録をまとめておくか! ついでにまだ聞きたいこともあるし……」

 

「爺さん、今は質問攻めは勘弁してくれよ……」

 

 ニカッと顔を綻ばせたサースタンに、健人がげんなりとし、そんな二人の様子をフリアが微笑みながら見つめる。

 色々と大騒動になった遺跡探索は、こうして全員生還したうえ、かなりの財宝を手に入れる大成功に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海底に沈んだ宝箱。その中でメリ玉は、必死に脱出しようと頑張っていた。

 しかし、いくら暴れても、ぎっちり閉められた蓋はビクともしない。

 元々、タムリエルには干渉することが難しいデイドラ。しかも、神殿を汚され、影響力をほぼ失ったメリディアにとっては、先程健人を天空に連れ去ろうとすることも難しかったのだ。

 

『ううう、あの定命の者め、せっかくこの私が目をかけてやるというのに……!』

 

 スンスンと涙目になりながらも、宝箱のなかで健人への不平を漏らすメリ玉。

 もっとも、現代日本で普通の恋愛が基準である健人としては、そんな一方的な寵愛などごめんである。

 しかし、デイドラロードは元々超越的な存在であるが故に、一介の定命の者の気持ちなど推し量るはずもない。そしてメリディアは、デイドラロードの中でも空気を読まないことで有名な存在である。

 だが、そんなデイドラロードにとっても、坂上健人という人間は、目を奪われる存在だった。

 ニアとパドメイによって生み出された、エセリウスを含んだこの世界の外から来た者。僅かな竜神の祝福を己の意思で育て上げ、最古のドラゴンボーンと渡り合うまでに成長した勇者。そして、デイドラロードすら退けた特異点。

 実のところ、デイドラロードだけでなく、エイドラ達の間ですら、健人の名前は広がっている。

 デイドラロードを退けたことなどがその最たるもので、きっかけを作った竜神に他の八大神が一斉に詰め寄るという珍事まで起こっている。結局、彼らはとりあえずこれまで通り、経過を見守る事に決めたようだが。

 当然、デイドラロードも、裏ではいろいろ動いている。今は水面下で互いの足を蹴り合う程度の牽制しか行われていないが、やがて大きな動きとなるだろう。

 そんな中、メリディアは他のデイドラロードに先んじて、意気揚々と健人と接触しようとした。高貴で美しい自分なら、間違いなく頭を垂れて忠誠を誓うだろうという、かなり浅はかな考えからである。

 もっとも、メリディアとしては健人に向けた寵愛は本物であり、忠誠を誓った暁には、自らの秘宝を与え、最終的には魂を浄化して自らの最も近い所に侍らせるつもりだった。

 しかし、結果は見ての通りの大惨敗。強烈な拒絶を受けた上で、こうして宝箱の中に幽閉されて海に沈められてしまった。

 

『いっそ、最初から浄化して我が手駒に……』

 

 はっきり言って、健人の事情を鑑みないメリディアの盛大な自爆行為なのだが、彼女は生憎とその程度で自分の過ちに気づくような殊勝な存在ではない。

 自らの愛を拒絶されたヒステリックメンへラ女神は、沸々と煮えたぎる怒りに身を焦がしながら、どうやって彼を自分に夢中にさせるかを考え続ける。

 そんな中、暗闇の奥底から、身の毛もよだつ様な声が響いてくる。

 

『随分と嫌われたものだな、メリディアよ……』

 

『な、貴様は!?』

 

 闇に包まれた宝箱の中で、メリ玉の前に出現したのは泡たつ無数の瞳と、毒々しい触手。知識のデイドラロード、ハルメアス・モラが送り込んだ端末だった。

 ハルメアス・モラは送りこんだ端末の触手を操作し、暗闇の中で戸惑いの声を上げるメリ玉を絡めとる。

 

『その汚らしい触手で触れるでない! は、離しなさい!』

 

『彼に惹かれる気持ちは理解できる。かの者の輝きは、私達にはあまりに眩しい。しかし、彼の魂を浄化しようとするとは言語道断。彼は、我が勇者なのだ……』

 

 浄化。それはメリディアが持つ権能。人の魂を浄化することで、不老不死にする能力だ。

 しかし、浄化された者はその意識を永遠に失い、ただメリディアに仕えるだけの人形と化してしまう。健人が聞いたら絶対に拒否するような能力なのだ。

 健人の特異性が、彼の魂とその意思から来ている事を察しているハルメアス・モラにとっても、当然看過できない能力。ゆえに、彼自身がメリ玉の排除に動いたのだ。

 

『やめなさい! や、やめ……』

 

 悲鳴にも似た声が、メリ玉から響く。潔癖症の彼女にとって、ハルメアス・モラの触手に絡めとられることは、間違いなく不快の極致に違いない。

 しかし、その強い拒絶の言葉とは裏腹に、声量は徐々に弱々しくなっていく。

 元々、ニルンへの干渉力のほとんどを失っているメリディアだ。力を失っているのは急速に復活したハルメアス・モラも同じだが、この場では知識の邪神に軍配が上がっていた。

 毒々しい濃緑の触手な搦め捕られたメリ玉は、深遠の奥深くへと引きずり込まれていく。やがて、メリ玉の声は完全に力を失い、トプン、という音と共に暗闇の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大量の金貨をゲットしたカシトは、一路、西へ向かっていた。

 目的地は、コルビョルン墓地。レイブン・ロックの南東、砂漠と化した島の南側にある、埋もれた遺跡である。

 そこでは、一人のダークエルフが、砂の舞う中、必死につるはしとスコップで砂を掘り越していた。

 彼の名は、ラリス・セダリス。

 とあるダークエルフのお偉いさんの依頼で、遺跡の発掘を行っている人物であり、そしてカシトの協力者の一人だった。

 

「ラリス、持ってきたよ! 発掘資金!」

 

「おお、待ち焦がれていたぞ!」

 

 二人の目的は、この遺跡の中にあるお宝。しかし、遺跡は砂に完全に埋もれており、カシトとラリスだけでは発掘することができない。

 そこで、レイブン・ロックで鉱山労働者を雇い、遺跡の発掘を手伝させようと考えた。

 そこで必要となったのは大量の金銭である。

 レイブン・ロック鉱山が再稼働したことで、鉱山労働者も今は歩合のいい仕事が大量にある。その為、通常予定していた金額よりもさらに多くの金が必要だったのだ。

 カシトが差し出した金貨袋の中を確かめたラリスは、喜色満面の笑みを浮かべる。

 

「確かに。よし、これで新たな労働者を雇える!」

 

 二人の発掘作業は既に何度か失敗していた。

 古代ノルドの遺跡は危険で、未だに稼働している罠や、ドラウグル達が徘徊している。そのため、今まで何度も作業の中断を余儀なくされていた。

 しかし、カシトがヴァーロックの遺跡で大量の金貨の古銭を手に入れた事で、二人は発掘を終えるまで十分な作業員を雇えるだけの資金を得ることができていた。

 

「やれるね?」

 

「もちろんだ、こいつを十倍にして返してやるよ、相棒!」

 

「ふ、ふ、ふ、お宝を元手に、さらなるお宝をゲットだぜ!」

 

 カシトは新たな、そして、より大きなお宝を得られる確信に、満足げに鼻を鳴らす。

 だが、彼は気付かない。その遺跡の奥で復活しようとしている、新たな脅威。そして、その脅威の魔の手は既に、目の前の商売仲間にものびていることに。

 

 

 




これにて閑話、ヴァーロック編は終了となります。ありがとうございました!
そしてメリ玉触手プレイで興奮した人、ちょっと校舎裏まで来なさい。


ヴァーロックその2

 かつて反旗を翻したミラークを退けたヴァーロックであったが、その身に負った傷は重く、致命傷であった。
 もはや手の施しようのない傷を負った彼は、最後の忠誠を示さんと、自らがミラークを永遠に監視する役目を、竜王であるアルドゥインに申し立てた。
 結果、彼は必要な処置を施され、裏切り者を倒した英雄として、ソルスセイム後に埋葬されることになる。
 ヴァーロックの名は、監視者。しかし、その名前を分割した場合、春の空という意味になる。
 その名を付けた者が何を想い、ヴァーロックにその名を与えたのかは、既に永劫の時の流れの中に消え去っている。




ヴォルケイノテンペスト

 ライトニングテンペストと同じ砲撃魔法であり、炎系最上位の達人魔法。本小説オリジナルの魔法でもある。
 元々絶大な威力を誇るヴォルケイノテンペストであるが、炎の魔法を得意としたヴァーロックのそれは次元違いの威力を誇り、ミラークのシャウトともに、地続きだったタムリエルとソルスセイムを切り離すきっかけを作った。



ハウリングソウル

 健人が持つ最後の切り札であるシャウト。今回はあくまで自分の体の内側に限定して使用したため、アポクリファを砕いた時ほどの反動は無かった。
 とはいえ、共鳴対象を限定せず、三節を無造作に外界に向けて放っていたらどうなったかは分からない。
 最後の三節目“世界”の言葉は、あまりにも適用範囲が広すぎるため、シャウトに反応した対象によっては、影響は多大なものとなる可能性を秘めている。


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