バトルスピリッツ スターティング・ゼロ   作:謙虚なハペロット

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バーストインパクト発売まで投稿を待とうか迷いましたがとりあえず投稿することにしました。
そういうことで、とりあえずのAパートになります。


イチを足してみよう・Aパート

 

「………っ」

「さて、“シャークトレーダー”君。私の勝ちなんだが」

「……二度とこんな店に来るかッ!!」

 

 手札のカードを叩き付けバッグを乱暴に掴んで席を立ち、周囲のお客を気にもせず一目散にお店を出て行った。…あ!ちょっと、デッキ…。

 

「ふう…、何とも後味の悪い勝利だねまったく」

 

 いきなり始まったバトルは、ホスト風イケメン女性の(自称)カケルさんの圧勝で終わった。

“デッキ破壊”という青の能力と、“青のアルティメット”によって、あれよあれよと言う間にデッキが消し飛んでしまっていた。

 

「どうやらこのデッキ、彼のものじゃないみたいだね」

「え?」

「鮫トレーダーってのはね、まるでレートが合わないトレードを強要する輩のこと指すんだよ。主に初心者なんかに食らい付くもんで、始めて間もなく価値が十分に分からない人に価値を詐って…まぁぶっちゃけ詐欺師ってことだね」

 

 じゃあ、断ってはいたけど危うくその鮫トレードの餌食にされてたってことか…。

 

「単なる憶測だし手札が事故ってたのかも知れないけど、彼、このデッキの動かし方が分かってないんじゃないかな」

「それは、どういう?」

「見たところ…デッキレシピをネットで見て、目立つカード

 

を片っ端から積んだようなデッキみたいだからね」

「そうなんですか?」

「まず《サードアイズ・スネーク》を退かさない、退かせない時点でアレだよね。《放浪者ロロ》、《戦神乙女ヴィエルジェ》、《白亜元帥レイ・ザウラー》も一応入ってたりはするけど、出せばそれだけでアドバンテージが取れるのに。勿体ない」

 

 カケルさんがデッキのカードを確認していく。どれもこれも光っていて、私にはレアものなんだろうなということしか分からなかった。

 

「ちなみにさ、ヒダチ君はどんな鮫トレされそうになったの?」

「え? えっとですね…」

 

 たしか、私の《リューマン・ブレイド》や《リューマン・フェニック》、その他当てた光りものを……

 

「何だったっけ……“りゅうびと効果”とか言ってたような…」

「それって《烈の覇王セイリュービ》のことじゃないかな」

 

 ああ、何かそれっぽい名前だった気がする。見せられたときはXレアか〜なんて思ったけど、そんな価値が釣り合わないものだったんだろうか。

 

「…セイリュービはね、過去の《大天使ミカファールの大寒波》に続く覇王編大恐慌時代の重罪人…いや、重罪カードのひとつなんだよ…」

 

 …突然カケルさんが遠くを見て疲れたような表情をした。…前にこの表情璃恵と彩音さんの時にも見たぞ。

 

「ミカファールの時よりは良いけど、あの時も酷かった…」

「は、はぁ…」

「スマホで調べてみなよ。私はこのカード達を(すみれ)さんに渡してくるから」

「はい…」

 

 てなわけで騒ぎは一段落?したので調べもの調べものと…。

 

「……?」

 

緑 スピリット

《烈の覇王セイリュービ》『禁止カード』

コスト7 軽減緑2 <覇皇(はおう)華兵(かへい)>

<1> Lv1 BP5000

<3> Lv2 BP10000

<6> Lv3 BP14000

シンボル:緑

【バースト:自分のライフ減少後】

自分のライフが3以下のとき、このスピリットカードを召喚する。

フラッシュ【烈神速】『お互いのアタックステップ』

自分のトラッシュのコアが5個以上のとき、自分のトラッシュのコアすべてを自分のフィールド/リザーブに好きなように置くことで、手札にあるこのスピリットカードを、コストを支払わずに召喚する。

 

 …え〜っと? つまりは真桜が使ってた【神速】と違って、リザーブじゃなくてトラッシュのコアを参照にして召喚するのか。…私は実際に触ったこと無いし、使われてるところも見たことないからイマイチ実感が湧かない。

 

「お待たせ。どう?分かった?」

「…う〜ん」

「まぁ…知らなくていいさ。あれは終身刑になるべきカードだ。二度と世に出回ってはならないカードだ」

 

 カケルさんにそこまで言わせるカードだったとか一体何をしたんだこのセイリュービは…。

 

 

麗奈(れな)さ〜ん、色々お待たせしました〜」

「ああ菫さん。面倒掛けます」

「いいえ〜。あの彼には悪いんだけど、しばらく出禁にしといたし〜、他のお店の方たちにも連絡しておいたわ〜」

「流石菫さん。おっとりしてるのに手際が良い」

 

 そうこう話していたら真桜のお姉さん…すみれさんって言うのか…がやってきた。

話は、あの男の事についてだった。店内でのトレード禁止という訳ではないが、いざこざを起こした、鮫トレを行ったという事で当面の入店禁止という処置となったようで。

カードについては、しばらくお店側で預かり、鮫トレに遭った人に返すという話にまとまったようだ。

 

「さ。ジメっとした話はここまでにして、菫さん。今夜お食事でもどうですか?」

「あら〜、どうしようかしら〜」

 

 とその矢先いきなりナンパし始めるカケルさん。ホスト力をここで発揮しないでいただきたい。

 

「お姉さん」

「…ん? あ、真桜。いついたんだ」

 

 カケルさんに呆れていたらいつの間にか背後にいた真桜に話し掛けられた。まぁスミレさんがこっちに来たってことは真桜のお手伝いも一段落したんだよな。

 

「大丈夫なのです?」

「ああ、大丈夫大丈夫」

 

 さっきのを一部始終…私が絡まれた辺りを見てしまったらしく、助けに入ろうにも接客が終わらずヤキモキしていたらしい。心配そうに腕に抱き着いてくる姿を見て、スミレさんには申し訳ないが新しい妹が出来たみたいでほっこりする。

 

 

 

「ただいま〜♪悠姫と真桜ちャんお待た〜………ッて!? レ、麗奈さン!?」

「お待たせ……!? あなたは蒼の調律者(ブレイ・ブルー)!? いつ此処に!?」

 

 用事で外れてた璃恵と彩音さんも戻ってきた。てか二人とも知り合いだったのか。世間は狭いな。

 

「やぁ璃恵君、彩音君…いや、ここでは蛇刳(ジャクリ)君と呼んだ方がいいかな?」

「ど、ドモドモ…。てか、何で悠姫が麗奈さンと一緒にいるの?」

「いや、その…。私の間抜けで迷惑掛けることになっちゃって」

 

 

 経緯説明………。

 

 

「…ふ〜ン。でさ、その鮫トレ野郎何処行ッたかな?璃恵ちャんちョ〜ッと話付けに行きたいンだ♪」

「座ってなさい白銀(はくぎん)の。もう蒼の調律者(ブレイ・ブルー)が手を下したわ。悠姫さんも災難だったわね。危うく不運(バッド・ラック)と舞踏《ダンス》してしまうとこだったじゃない」

「全くもって…」

 

 璃恵が威圧の雰囲気を纏った笑顔であの男を潰そうとしたところを彩音さんに制止され、彩音さんには気を使っていただいた。…会ってまだ数日も経ってないが彩音さんの言ってることが徐々に解り始めてきた。

 

 

「…おっと、楽しい時間はすぐ過ぎてしまうね。名残惜しいけど戻らなきゃ」

「あ、お仕事ですか?」

 

 あれやこれやと皆で雑談をしていたら、カケルさんが腕時計を見て残念そうに話した。

 

「まぁね。本当は買い物しに来ただけだったからさ、あまり長居は出来ないんだ」

「すみません、ご迷惑を…」

「ははっ、いいさ気にしない気にしない。良くいえば、彼がヒダチ君に絡まなければ、キミとはすれ違いになってたかも知れないんだ」

「な…」

「ヒュー、ヒュー♪臆面もなく口説いていく〜♪でも悠姫を口説いてるのに腹が立つ〜♪」

「蒼の調律者が口遊む言の葉はあらゆる女性カードバトラー達を虜にする…」

「お姉ちゃん、あれは営業トークなのですか?」

「う〜ん、真桜ちゃんが将来麗奈さんとおんなじお仕事するなら分かるかもね〜」

 

 あ、煽るな璃恵!彩音さんも菫さんもちょっとは助けてくださいって!

 

「あははっ。まぁ小意気な別れの挨拶はここまでにして、そろそろ行くよ」

「小意気…、まぁ、ありがとうございました」

「良いって。…じゃあお近づきの証に悠姫君には“これ”をプレゼントしよう」

 

 そう言って麗奈さんから差し出されたのはバトスピのカードが2枚。…まさか自分自身のブロマイドとかじゃないよな?と訝しみながらも受け取る。

 

「……これは」

「キミの赤の中に蒼が共存出来る時が来たら、是非お供にね」

 

 渡されたのは、私が買って付いてきた“白のプロモーションカード”ではなく“青のプロモーションカード”だった。

 

「それじゃあね、皆。それに悠姫君」

「……あ、ありがとうございます」

 

 去り際に軽く手を振って行く姿は他の誰よりもイケメンの雰囲気をかもしだしていた。マジすげぇ。

 

「あ!じゃあボクもあげるのです!緑と組むなら是非入れてほしいのですよ!」

「なら私も渡しておくわ。赤と円舞曲(ワルツ)を踊れるのは紫をもって他に無いわ」

 

 何を張り合ったのか真桜と彩音さんがカードを差し出してきた。それはあの白と青のと同じく、“緑と紫のカード”だった。あ、有り難く受け取るけど、いいのかな?これある意味限定品だろ?

 

「え〜!?何サ皆して〜! うぅ、ならワタシは…ワタシは…白はもう貰ッてるし……あ!コレだ!」

 

 何故か対抗心を燃やした璃恵から差し出され…突き出されたのは“赤のカード”。

 

「い、いいのか?」

「イイの!」

「じ、じゃあ…遠慮無く」

「どうせまたすぐ再録されるわよ。多分ね」

 

 ……えっ、マジっすか?

 

 

 

 

 

「…色々疲れた」

 

 ——夜。自宅の自室にて。

今日はちょっとはしゃぎ過ぎたかな…。めっちゃ疲れた。

あのあと璃恵がサブで組んでいた青のデッキと対戦(もちろん惨敗)、彩音さんの青に対する指南、真桜の対青とのあるある話、菫さんの販促コーナーなどなど…。とにかく頭がオーバーヒートしそうになるくらい楽しんだ。

こんなに楽しんだのはいつ以来だったかな。

 そうそう、パックの開封は家に帰ってから部屋ですぐ行ったから全部開封済み。一応結果は

緑の《アルティメット・カイザーアトラス》が2枚。

青の《アルティメット・キャッスルゴレム》2枚

紫の《アルティメット・デスペラード》1枚

白の《究極巨人アルティメット・トール》1枚

 

 という結果だった。それと…皆から貰ったこの2種のカード。

《魔龍帝アルティメット・ジークフリード》と《不滅龍エターナル・ドラゴニス》だ。

 

* アルティメット

魔龍帝(まりゅうてい)アルティメット・ジークフリード》

コスト7 軽減*4 <新生・龍帝(りゅうてい)>

<1> Lv3 BP10000

<3> Lv4 BP15000

<4> Lv5 BP20000

シンボル:金

【召喚条件:自分の*スピリット1体以上】

【Uトリガー】Lv3・Lv4・Lv5『このアルティメットのアタック時』

Uトリガーがヒットしたとき、このアルティメットが相手のスピリットにブロックされたら、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く。

Lv4・Lv5『このアルティメットのアタック時』

このアルティメットのアタックによって相手のライフを減らしたとき、相手の合体スピリット1体を破壊する。

または、相手の合体スピリットのブレイヴ1つを破壊する。

 

* スピリット

《不滅龍エターナル・ドラゴニス》

コスト7 軽減*3 <滅龍>

<1> Lv1 BP5000

<2> Lv2 BP7000

<4> Lv3 BP9000

シンボル:*

???…

 

 

「悠姫、ちょっといいかしら?」

 

 っと、カードを確認してたら母からお声が掛かった。

 

「はいよ〜」

 

 のそのそとベッドから降りてドアを開ける。

 

「入るわね」

「言わなくても入っていいのに」

「お年頃なんだから、それくらい気を使わないと悠姫がぐれちゃうかもしれないじゃない」

「私がそんな繊細に見える?」

「そりゃお母さんの娘だもの」

「ソウデスネー」

 

 他愛もないやり取りをしたら部屋に母を招く。とりあえずベッドでいいか。

 

「悠姫、バトルスピリッツやってるみたいじゃない」

「あれ、母さんに話したっけ…?」

「璃恵ちゃんから聞いたのよ。すごいはしゃいで惚気られたわよ。悠姫が遂にバトスピ始めましたーって」

 

 あんのお喋りめ…。いや、隠すつもりは無かったんだ。深い意味も意図も無い。

母と璃恵はとても仲が良い。璃恵は四人目の家族、娘だ!と豪語するくらいに。その上両方の母公認で交際まで認めるまで。…交遊関係にはあるが交際なんてしてないからな?

…って誰に言い訳してんだか。

 

「それでね…。はいこれ」

「ん? …パック?」

 

 何やら手渡されたのは、アルティメットバトル01のパックひとつ。

 

「よく分からなかったから、運試し程度にひとつだけ。ね」

「…ありがとう、母さん」

 

 なんかちょっと照れ臭い。

 

「早速開けちゃいなさいな」

「いいの?」

「お母さんも見たいの〜」

「わかったわかったから抱き着かないの苦しいんだから…」

 

 何だうちの周りには抱き着き癖のある人が多いのかまったく。悪い気はしないけど母さんと璃恵は私への当てつけが混じってる気がする。

 

「ほら開けるから少し離れてよ」

「は〜い」

 

 母さんはいつまで経っても若いし子供なんだから…。まぁいい、とにかく開封っと

 

 

 ・ ・ ・ ・ 。

 

 

「———あっ」

「あら?」

 

 ………嘘だろ、コレ…。

 

「やった〜!お母さんの運もなかなかねモンでしょ〜?」

「ああ…、凄いよ…マジで…」

 

 

 

 

 

 ——翌日、朝。

 

「………」

「お姉ちゃーん。起きて…ないか」

「………」

「入りますよ〜」

「………」

「お姉ちゃん、そろそろ起きる時間だよ」

「……………ぅ゛」

「…起きないとまた璃恵さんのラブラブアタックで起きるはめになるよ?」

「起きた」

「はいおはよう」

 

 私は朝にとてつもなく弱い。低血圧とかじゃなく寝起きが凄い苦手なんだ。そのため祐依(ゆい)には面倒を掛けてる。

たまに母さんが起こしに来るが、その時は蒸し風呂状態にされて目が覚めるという…。

璃恵に至っては大音量のおはように加え物凄い勢いでベッドにイーグルダイブして潜り込み、耳元で艶っぽい声を出して起こしにくる。最悪の目覚めなので枕でボコボコにして私が起きる。…これがたまにあるから穏やかじゃない。

 

「着替えて降りてきてね。ご飯もうすぐだから」

「…ぅ゛ぃ」

「もう…」

 

 起きたはいいがまだ眠い。目が開かないし力が入らない。

 

「ほらお姉ちゃん、眠気覚ましの辛いの」

「…あむ…………」

 

 ……辛ぁぁい!スッとする!!今私が食わされたのは

 

私と祐依の部屋に私専用眠気覚ましとして常備されている激辛ミントのタブレットだとにかく辛いのよコレ!でもこの辛さがクセになるというかああ辛い!

 

「ヒィー!(相変わらず辛い!)」

「先に行ってるからね」

「ヒィー!(あいよー)」

 

 

 

「おはよう」

「おはよう悠姫。今出来上がったところよ」

「うん」

 

 制服に着替えて降りた頃調度朝食が出来たところだった。しばらくヒーヒー言いながら着替えてたのは言うまでもない。おかげで頭の中が変にスーッとする。

 

「あんがとね祐依」

「いつもの事だから」

「そだな」

 

 私なんかよりも良く出来た妹です。

今まで呆れずよくやってくれてるよホント。普通の姉妹だったら「もう起こしてやるもんかか!面倒なんだから一人で起きろ!」とキレられるはずだが、辛抱強く付き合ってくれている事に感謝。

 

「そういえば璃恵ちゃん来ないわね」

「さすがに毎回は来ないって」

 

 あいつは大体八割方我が家に乱入してくる。朝昼夜関係なく。別に迷惑ではない。

 

「日直とかじゃないかな?」

「ふうむ…」

「お姉ちゃん、やっぱ璃恵さんがいないと不安?」

「まさか」

 

 薄く笑うなよ祐依。とか何とか言って〜みたいにさ。

 

「ごちそうさま」

「ごちそうさまでした」

 

 朝食終了。結局璃恵が来ることはなかった。…珍しいこともあるもんだな。たとえ朝食に間に合わずともそろそろ大声で飛び込んできてもおかしくはないんだかな。…いや、本当に不安とか寂しいとかじゃないからな?

 

「じゃあ今日は私がお姉ちゃんと一緒に登校しようかな」

「そうしてあげて祐依」

「お姉ちゃんが寂しそうだしね、お母さん」

「……寂しくなーいー!」

 

 

 

「もう、(むく)れないでよお姉ちゃん」

「ふん」

「…そんなお姉ちゃんも可愛いんだけど」

「何か言ったか?」

「いいえ何も」

 

 最近妹の私弄りが多くなった気がする。昔からだけどさ。

まぁ、祐依は母の遺伝子を私より強く受け継いでるからか私に対する悪戯が好きなのはそのせいか。

 

「祐依さんおはよー」

「おはようございます先輩」

「祐依センパイ!おはようございまーす!」

「おはよう。そんなに走ると危ないよ」

「気をつけまーす!」

 

 道すがら私らを追い抜いて行く生徒達が祐依に挨拶をし、それを祐依が返してゆく。同級生、先輩、後輩、誰からも受けが良いのも祐依の特徴だ。

 

「それより、璃恵さんからは連絡ないの? いつも謝罪メールみたいのが来るはずでしょ?」

 

 ふむ…。確かに連絡の一つもないのは気掛かりだな。何か急な用事か? 璃恵には悪いがそんなことがあいつにあるとは思えない。私がそう思ってるだけで実際はどうだか分からんけども。

 

「教室にいるかな?」

「……う〜む…」

 

 

 

 程無くして、学校に到着…したのだが、何やら雰囲気がおかしい。あちらこちらからわらわらと生徒が一カ所に向けて集まっている。見たところ察するに、野次馬って感じだが…

 

「…なんだ?」

「あっちの方って総合談話教室だよね…?」

 

 総合談話教室。まぁざっくり言うとだだっ広い娯楽室みたいなもん。体育館並に広く大きく、一学年が全員入っても余裕なくらい。で、そこに集まって何やってるんだ?

 

「…(さくら)さん! 何があったんですか?」

「あ、祐依さん…!それに“お姉様”も。おはようございます」

「…おはよう間燈(まとう)さん」

 

 彼女はクラスは違うが同級生の間燈さん。良いところのお嬢様らしく、祐依と仲が良い。…そして何故か私のことをお姉様と呼ぶ。

 

「それで、何があったんだ?」

「ええ、それが———」

 

 

 

 

 

「…璃恵が喧嘩?」

「はい…。詳細は分からないのですが、怒鳴り声が聞こえたと。伝聞ですけど」

 

 …璃恵が喧嘩するなんてありえるのか? いつも飄々としてるのに、何か逆鱗に触れられるようなことでもあったんだろうか。

 

「…お姉ちゃん」

「行くぞ」

「うん」

「あ、私も…」

 

 人だかりが出来ている娯楽教室へと向かう。放っておく理由にもいかないし、どんな理由であれ殴り合いに発展しそうなら止めなきゃならんしな。腕っ節は強くないが、意地でも何とかしなければならなくなるのは避けたいし。

 

 

 

 

 

「フッザけんじャないッての!!」

「ふざけているのはどちらでしょうね!!」

 

 娯楽教室の出入口に着くとここまで響く怒鳴り声に思わずビクッとなる。今のは璃恵と、誰だ?とにかく騒ぎの中心へと向かう。

 

「ちょっとごめんよ。道開けて」

「ごめんなさい、通りますので」

「あ、あの、通ります」

 

 私、祐依、間燈さんで人混み野次馬を除けて進む。何が原因であれ公共の場で親友が喧嘩してるのはマズい。下手したらしばらく出入り禁止になるやも知れん。進む度に「噂の本人が来た」だの何だの聞こえるが、何なんだ本当に。

 何とか騒ぎの中心に着いてみれば、璃恵の後ろ姿に、璃恵より少し背の高い女性がいた。女性の方は金髪でどこと無く貴族っぽい雰囲気が。

しかし璃恵の雰囲気が今にもド突き合いの取っ組み合いを始めそうな感じだったのですぐさま声を掛ける。

 

 

「璃恵」

「——あ、悠姫!」

「ん? …なるほど、貴女が」

 

 声を掛けると二人がこちらを向く。璃恵は少し怒気が小さくなった気がする。

 

「何やってんだ璃恵」

 

 鞄を祐依に預け、ここで待つよう軽く手で合図し二人に近付く。もう一人の貴族みたいな女性、近付いてよく見れば、制服の左胸にある校章。それに入っている線が三本ってことは三年生。しかも襟に金のピンが三本付けられている。…しかも生徒会委員とか、璃恵とんでもない

人と喧嘩してるな。

 

「悠姫聞いてヨ!この金髪ミノムシクサレ貴族女が!」

「お、おい…」

 

 あちらさんムッとしてるぞ。この人の悪口聞くために来たんじゃないんだから…。

 

「あ、あの…璃恵が何か…」

「……貴女の名前は?」

「え? 緋立(ひだち)ですけど…」

「緋立…。ああ、妹さんが優秀な方でしたか」

 

 妹のが優秀って…。まぁ本当だから何にも言わないけどさ。

 

「ちョッとアンタ——」

「姉を悪く言わないでください」

「—っと、祐依ちャん」

 

 すると祐依が割り込んできた。珍しく怒った様子だが、テキトーに流せば良いのに…。

 

「生徒会委員は生徒を侮辱しても許されるんですか?」

「そーだそーだ!何の権利があッて悠姫を馬鹿にするのサ!」

 

 おい祐依まで熱くなってどうするんだ。てか口を挟む余地が無い。

 

「先程璃恵さんに言った通りですわ」

「だからそれがフザけてるッて言ッてんの!アンタに何が分かんのサ!」

「…璃恵落ち着け」

 

 とにかく事情が分からん。一から聞かせてもらうしかな

 

い。

 

「……あのね、今朝早くのコトなんだけど——」

 

 .

 

 .

 

 .

 

「……私が璃恵を弱くしてる?」

「いかにも」

「馬鹿馬鹿しいでしョ!?ンなもン根も葉も無い妄想だッてのにサ!」

 

 まぁ端的に言えば、これ以上初心者に構い過ぎては璃恵のバトスピの腕が落ちるからもう構うな。とのことらしい

 

。…てかあなたもバトスピやってるのか。

 

「ワタシが弱くなッてるとかどういッた証拠だッての!」

「…では何故“銀嶺(ぎんれい)”の名を捨てたのです」

 

 ぎ、ぎんれい…? 名を捨てた?

 

「それは昔周りが勝手に付けたヤツッしョ!ワタシはもうそんなのヤなの!」

「牙を抜かれ腑抜けになりましたか…。嘆かわしい」

 

 ……つまり、この方が言うには璃恵が最強の名を持ってたのに捨てて私に構い始めたのが許せないらしい。そんなに璃恵は強いのか?

 

「ならばカードバトラーらしく、わたくしと勝負なさい!」

「何でヨ!」

「わたくしが勝った暁には、“白銀(はくぎん)”の名を棄て、もう一度《銀嶺》を名乗り、今後一切その初心者との関わりを断ってもらいますわ」

「はァ!?」

 

 何だよそれ、何でバトスピひとつでプライベートまで干渉されんだよ…!

 

「そんなのおかしいです…!どうしてプライベートにまで干渉するんですか!」

 

 祐依が異議を唱える。確かにおかしい。

 

「…祐依さん。わたくしは許せないのです。あの“ハイランカー”銀嶺の璃恵が、初心者にうつつを抜かし骨抜きにされるなど、我慢ならないのです!」

「はン!骨抜きなのは昔からです〜!ワタシは悠姫を愛してるんです〜!!」

「なん…ですって…!?あ、愛してる、とは…!」

 

 

 …………ん?

何か話がおかしな方になってきたぞ?

 

「ワタシが銀嶺とか言われても気にしなかッたのはチャンピオンシップで優勝したら一緒にお風呂入ッてくれるッて約束したからそれで頭いッぱいだッたんだヨ!!」

「は!?ば、馬鹿…!」

 

 それいつの話だよ!かなり昔だぞ!? しかもこんな公衆の面前で暴露する話か!?

 

「で、では、あの全てを凍てつかせるような鋭い眼差しは…!」

「ンなもン悠姫の裸想像したらニヤけてヤバいからポーカーフェイスしたんだヨ!」

「そ、そんな…」

「璃恵テメェ馬鹿だろ!?」

 

 これ、元を正したら両方悪いんじゃないか…? 確かにあの人が私を下に見たのはちょっと気分悪いけど、突っ掛かって大事にしたのはこの馬鹿二人だよな。

璃恵の話を聞いてあの人が俯いてワナワナし始めた。そりゃそうもなる。

 

「……璃恵さん最っ低」

「えェッ!?そんな、祐依ちャん!?」

「もうお母さんに頼んで夜出入り禁止にしますから」

「そんな殺生な〜!?」

 

 ……こんだけ大騒ぎしておいてオチがこれか。アホらしくなってきた。野次馬もアホらしくなったのか教室から出て行っているが、女子が多く残り小さくキャイキャイしてるのが目に入る。

 

 

「っ………!! 緋立 悠姫さん!」

「は、はい…!?」

 

 突然、俯いて震えていたあの人が顔を上げ大声で私の名前を叫んだ。

 

「あなただけは許しません!わたくしの純粋な憧れを踏みにじって!」

「え!?それただの八つ当たり…」

「問答無用!わたくし、“絳焔(ひえん)のマリアこと

 “赫蓬院(かほういん) マリア”が、堕落した銀嶺を再び甦らせるため、貴女に“決闘”を申し込みます!!」

 

 ………えぇぇ?………

いやデッキケースをこちらに突き出してかっこよく名乗りを決めてるところ申し訳ないんだが、あからさま私怨なんだよなぁ…。熱狂的なファンが「こんなの彼女じゃない!」って怒ってるみたいな。そんなの私じゃなくて直接璃恵を説得…しても意味ないか。勝手にカホウイン先輩が作り上げたイメージだし…。しかも決闘なんて時代錯誤もいいとこだろ。

 

「明日の放課後、ここ娯楽教室にて勝負致しましょう」

 

 …あれ? バトルするって話で進んでるけど、私の意見は?

 

「悠姫!絶対負けないでね!」

「おい。元はと言えばお前がだな…」

「棄権するなら今のうちですわよ? 今逃げ出しても誰も何も言いませんわ」

「………は?」

「ただし、勝てない相手に逃げ出して友達を見捨てた不出来な姉を持つ妹がいると噂されるかも知れませんが」

 

 ——カチンときた。

私だけに言われるなら未だしも、璃恵や祐依にまでそう言うとさすがの私もキレざるを得ない。先輩だろうが生徒会だろうが私の親友を、家族を馬鹿にしていい訳がない。

 

「…誰が逃げるなんて言ったよ」

「では、勝負するのですね?」

「当たり前だ。そこまで言われて下がる私じゃない」

「いいでしょう。ですがまず無礼が過ぎた事を謝罪させてくださいまし。…申し訳ありません」

「お、おう…」

 

 突然深々と頭を下げられどうしようもなくなった。ちょ、ちょっと。この凄もうとした勢いはどうすれば…。

 

「ショックでわたくしも少々熱くなりすぎてしまいました」

「…気持ちは分からなくもないです」

「では先程申し上げた通り、勝負は明日放課後に。…ごきげんよう」

 

 優雅に一礼して娯楽教室を去るカホウイン先輩。マジで上流階級なのか? それを呆然と見送ることしかできなかった。

…その後騒ぎを聞き付けた先生方が到着し、蟻の子を散らすように各自教室へと戻って行った。で、祐依と間燈さんは帰され、騒ぎの中心だった璃恵と巻き込まれた私は職員室で事情聴取されたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 ———時間をすっ飛ばして学校が終わり、時間は夜、自宅自室。

 

「今日は厄日だった…」

「ホントにネ〜」

「誰のせいだ誰の」

 

 あのあと教室では生徒会長と三角関係だの璃恵とはどこまで進んでるだのとうるさくてしょうがなかった。

あと一部クラスメイトは私がバトスピをやっていると知って、今度バトルしないかと誘われたのもある。これは素直に嬉しかった。

 で、何故璃恵が私の部屋にいるのか。簡単。お泊りだ。夕飯も食べ終わりお風呂も済ませてベッドで今日の事と明日のバトルの事についてお話し中。

 

「明日絶対負けちャダメだヨ悠姫!」

「分かってるよ。もう何のためのバトルかまったく分からんけどな」

「ワタシと悠姫の将来のためのバトルだヨ!」

「あーそーっすね」

「も〜!」

「…璃恵はさ、銀嶺、だっけ?その名前イヤなの?」

「イヤ!……でもネ」

「うん?」

「悠姫と一緒にいられなくなるのはもっとイヤ!」

 

 …これは本気の目だ。余程私と一緒にいられなくなるのが嫌なんだろう。

 

「そうなったらワタシ、大好きなバトスピ辞める」

「………」

「それぐらい本気だヨ」

 

 ……実は乗り気じゃなかったけど、負けられない理由が増えたな。

 

「……私だってな」

「…?」

「私だって璃恵と一緒にいられなくなるのは、正直言って寂しい」

「っ、悠姫…!」

「明日は妹の名誉と、璃恵の自由のために何とかするよ」

「おォォ゛ォ…!悠姫ィィィー!!♪」

「だーっ!?いきなり抱き着いてくるな暑苦しい!」

 

 まったくコイツは…。まぁとにかく、明日は負けないようデッキを更に調整するとしますか。

 

 

 

「うるさいですよ二人とも」

「「はい」」

 

 …祐依にやんわり怒られた。このやんわり怒られるのはさすがの私と璃恵でも怖い。

 

「いちゃつくのは…今回だけ許しますが、行き過ぎたら叩き出しますからね。璃恵さん」

「は、はいィ!」

 

 

 

「でさ、デッキどうするの?」

 

 どうするもこうするも、昨日弄ったまま試運転させてないから何とも言えない。

 

「前に真桜(まお)とバトルしたデッキを01弾のカードを足して少し入れ換えた程度だからなぁ」

「ふ〜む。決め手は滅龍帝?」

「ひとつとしてはそうだな」

「アルティメットは?」

「勿論入れてるよ」

「比率は?」

「たしか…7、8枚」

「ふむふむ。…ならさ“アルティメット寄り”にしちャえば?」

 

 アルティメット寄りに? でも、アルティメットがデッキに多くなると事故の要因になりやすいんじゃなかったか?

実際、弄る前の灼熱のゼロデッキで何度かアルティメットが初手に来過ぎて何もできなかったことがある。

 

「悠姫。01弾には“アルティメットをサポートするカード”があッたのを覚えてるかな?」

「アルティメットをサポート……あ!《ワンアイドデーモン》!」

「ピンポ〜ン!正か〜い♪」

 

 そうか、アルティメットの召喚を手助けするカードがあったなそういえば。

 

「正解者には〜、コレを貸しちャいマ〜ス♪」

「ん? ………お前、これ…」

 

 璃恵がデッキケースから取り出し、貸すと差し出してきたのは…“アルティメット”。

 

「ワタシの切り札1号♪ 悠姫に貸してあげる♪」

「…何で」

「…うぷぷ♪」

「……有り難く借りるよ」

 

 こうなったら頑固なんだよな。

 

「じゃあ次は彩音(あやね)さんに電話を…」

「ええッ!?ワタシがいるのにシャックリちャんに電話するとか何事ヨ!?」

「いやアドバイス貰うくらい良いだろ」

「ヤ〜なの〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 時間は進んで約束の放課後。

 

「来たようですわね」

 

娯楽教室の中心で、赫蓬院(かほういん)先輩が待ち構えていた。

私と一緒に来たのは、璃恵(りえ)祐依(ゆい)。…そういえば祐依はバトスピ分かるのかな? 私も行くって言ってついて来てくれたけど。

 

「娯楽教室はわたくしが使用申請を通しておきました。故にここは!わたくしと緋立さんのバトルフィールドとなります!」

「お、おう…!」

 

 訳が分からず思わず返事しちゃった…。

 それより、何人か知らないギャラリーがいるな。見える限りでは…三年生が二人、一年生が…三人?

 

「所謂見届け人です。公正なバトルを見届けてもらうため呼びました」

「失礼ですが、息が掛かっているとかは?」

 

 祐依が鋭い質問をした。たしかに、赫蓬院先輩が呼んだとなれば暗に不正が見逃されたり、後ろに回り込まれ手札をリークされたりとかあるやも知れない。

 

「それは断じて無いと宣言しましょう。わたくしのカードバトラーの名、絳焔(ひえん)。そして赫蓬院マリアの銘に賭けて」

「そうですか」

「祐依さんなら、あの三年生二人の誠実さはご存知でしょう」

「今は訳が違います」

「…ならば、わたくしが不正を行った場合、バトルスピリッツを引退し、この学園を去り、今後一切貴女方に接触しないことを誓います」

「……わかりました」

 

 ……話がとんでもなく大きくなっている。バトスピひとつでそこまでやらんでもいいんじゃなかろうか。祐依もそんな約束させなくてもいいだろ。

 

「わたくしは璃恵さんのプライベート、人生に関わる部分を引き合いに出したのです。そうなればわたくしの人生を天秤に賭けるのが道理」

 

 

 

「……ああもう!!」

 

「…?」

 

 煩わしい!

 

「赫蓬院先輩って実はバカなんじゃないですか?!」

「っ…!?」

 

 赫蓬院先輩の後ろにいた一人の三年生が笑った。笑われても知らん。

 

「バトスピを真剣にやってる方にしたら失礼かも知れませんが、人生を賭けるとか馬鹿馬鹿し過ぎます」

「し、しかし…」

「バトスピって、皆で一喜一憂しながら楽しむもんなんじゃないのか? 名前だ生き方だ何だって、そこまでして何がしたいんだよ!」

「………」

「…先輩が勝ったら、璃恵に銀嶺(ぎんれい)とかいう名前を付けて構わない。

 だけど私が勝ったら、今後一切、こんな事で人生を賭けるだ何だって言うな」

 

 いい加減私も怒っていいはずだ。一昨日の鮫トレの人もそうだけど、何で皆普通に楽しもうとしないんだ? 簡単なジュース奢るとかならまだしも…、人生を賭けるだなんて間違いもいいとこだ。

 

「ははっ! マリア、あんたの一敗だよ」

「“天音(あまね)”…」

「私もちょっと思うところがあるからさ、あんたのバカ真面目なのはわかるけど人生を賭けるのはどうかと思うよ」

「……そう、ですわね」

 

 三年生の一人が説得して何とか落ち着かせることができた。赫蓬院先輩は目を閉じて静かに深呼吸し、ゆっくりと目を開けた。

 

「悪いね緋立(ひだち)の姉。すぐ熱くなりやすくてさ」

「いえ…」

 

 とにかく、色んなことは煩わしいことは捨てて、璃恵、彩音さん、真桜とバトルした時のワクワクを楽しみたい。実際、昨日デッキを調整し終わって寝るとき、なかなか寝付けなかった。

それは璃恵が隣にいるのとかじゃなくて、純粋にバトルが楽しみだったからだ。

 

「先輩。バトルしましょう。純粋に、楽しみましょうよ」

「…緋立さん」

「とか…、カッコつけて言う柄でも無いし、本当に初心者なんで強く言える立場じゃないんですけどね。捉え方によっちゃあ、私の逃げの口実にも聞こえますし…」

 

 …む〜、背中がむず痒い。こんな漫画みたいな台詞私の何処から出てきたんだか。

 

「……わたくしは、自分でもすぐ熱くなってしまうのは自覚しているつもりなのです」

「………」

「名に恥じぬ為、自らのプライドの為、自分の信じていた憧れの為…」

「そんなもの、どうでも良かったのですね」

「固執し過ぎていたって感じですね」

「そうですわね…。…緋立さん」

「…はい?」

「この度の非礼無礼、心からお詫び申し上げます…!」

 

 突然、紫蓬院先輩が両手両膝を床に着き頭を下げた。つまり土下座に近い体勢だ。

 

「一カードバトラーとして、一人間として、余りに浅はかで愚かでした…!!」

「え…いや…あの…」

「この赫蓬院マリア。今一度心を入れ換え、改めて、緋立悠姫さん。貴女にバトルを申し込ませていただきたい!」

「………」

 

 …ポカンとするしかなかった。後ろのアマネ?先輩はお腹抱えて笑い堪えてるし、一年生も一人はあたふた、一人はまたかと呆れ、一人はこっちを睨んでいるように見える。三年生のもう一人はこめかみを押さえ溜息をついている。

璃恵はまったくもうと言った感じで頬を膨らませ、祐依は苦笑い。

 

「して、緋立さん!受けていただけますか!?」

「…あ…はい…」

「感謝いたします!さあ、“(しずく)”さん!朱莉(あかり)さん!洋子(ようこ)!場の設営をお願いしますわ!」

「は、はい〜!」

「へ〜い」

「…わかりました」

 

 私がギクシャクと了承すると、ガバッと起き上がり私の手を取ってブンブンと上下に振る。そして指示された一年生三人がせっせと準備してくれた。…やはり一人こっちを見てたのが気になるけど、今は気にしないでおこう。

 

「あの、彼女達は…?」

「我が生徒会の優秀な一年生ですわ」

「あ…そっすか…」

 

 

 

 かくして、準備出来たようだ。テーブルに椅子にコアにプレイシートまで。

 

「で、できました〜」

「あとは会長のお好きにどーぞ」

「………」

「ご苦労様です。完璧ですわ!」

 

 真四角のテーブルの中心に青コアが積まれ、対面に椅子が置かれ、ライフ、リザーブにもコアが置かれていてまさにいつでも始められるようになっている。

 

「公式で配信されている“バトスピやろうぜ!”のバトルする場所を再現しましたの!」

「…へぇ…」

 

 …分からん。今度探して見てみるか。

 

「さぁ、どうぞ緋立さん!」

「あ、ど、どうも…」

 

 エスコートされるよう席に案内される。案内される程距離は無いんだけど…。

 

「はーいセンパイどーぞ」

「あ、ありがとう…。えっと…」

「どいたましてー。巽也(たつみや)朱莉(あかり)って言いますのでヨロシクっすー」

 

 一年生に椅子引かれて座れるようにしてもらうとかどうなんだ…。

 

 

<緋立 悠姫>

【はじまりの究極】

  VS

【???】

<赫蓬院 マリア>

 

 

「さぁさぁ!先攻後攻はいかがします?」

 

 …何なんだあの子供みたいにキラキラした目は。昨日とは別人みたいだ。怒った私が馬鹿みたいじゃんもう…。

 

「マリアはああいうやつなんだよ」

「はぁ…」

「祐依ちゃんは知ってたよね」

「さぁ。なんのことでしょう」

 

 …祐依、知ってたな?

 

「トにもかくにも悠姫頑張れー!」

「はいよ…」

 

 先攻後攻はダイスで決めることとなった。じゃんけんでもいいが私的にはこっちが好きかな。

 

「運命のダイスロール!」

「だ、ダイスロール…」

 

 勢い良く回転しとテーブルに着地したダイス。すげぇな。

一方私のは手から滑り落とすようにする。さすがにあんなの出来ないって。

…コロコロと転がるダイスはそのまままだ回転している先輩のダイスに……当たった。

 

「むむっ!」

「あ、あれは!相手のダイスにダイスをぶつけて目を変える高等プレイング!悠姫、いつの間にそんな技を!?」

「し、したくてしたんじゃないわい!」

 

 結果、私が『5』、先輩が『2』。

よって私がどちらを取るかの権利を釈然としないが貰えた。なのでデッキから4枚引いてっと…。

 

「これは…後攻で」

「かしこまりましたわ。では——」

 

「ゲートオープン、界放!!」

 

 

 

<マリア 先攻・第一ターン>

「絳焔の第一ターン!」

(手札4→5)

(リザーブ4)

 

「メインステップ。ネクサス《英雄皇の神剣》を配置!」

(手札5→4)

(リザーブ4→1)

(トラッシュ0→3)

 

 赤のネクサス…。見たこと無いやつだが、同じ赤とバトルするのは始めてだな。

 

「更にバーストをセット!」

(手札4→3)

{バースト:セット中}

 

「そして英雄皇の神剣効果!1ターンに一度、わたくしがバーストをセットしたとき、デッキから1枚ドローします!」

「っ!? ドロー効果…!?」

 

赤 ネクサス

英雄皇(えいゆうおう)神剣(しんけん)

コスト3 軽減赤2

<0> Lv1

<2> Lv2

シンボル:赤

Lv1・Lv2

自分のバーストをセットしたとき、自分はデッキから1枚ドローする。

この効果はターンに1回しか使えない。

Lv2『???』

???

 

「ターンエンド!」

 

<悠姫 後攻・第二ターン>

「スタートステップ」

(リザーブ4→5)

(手札4→5)

 

「おや?まだ緋立姉(あね)は二つ名がないのかい?」

「…それ持たなきゃいけないんですか?」

「あははっ、いやいやそんなことないよ。周りがあれだからさ」

 

 まぁ、璃恵の他にも『紫蓮(しれん)』や『緑迅(りょくじん)』や『蒼穹(そうきゅう)』とか言ってるしなぁ…。でも大体そういうのを名乗ってる人ってかなりの腕前の人が大多数なんじゃないか?

 

「とにかくメインステップ。早速来たなら、《リューマン・フェニック》を召喚」

(手札5→4)

(リザーブ5→1)

(トラッシュ0→3)

[リューマン・フェニック コア1 レベル1 BP2000]

 

「リューマン・フェニックは、私の場のスピリットが2体以下の間、最大レベルとして扱われる」

[リューマン・フェニック レベル1→3 BP2000→6000]

 

「ほう…。新弾のカード、しかも赤をお使いになるとは」

 

赤 スピリット

《リューマン・フェニック》

コスト3 軽減赤2 <竜人>

<1> Lv1 BP2000

<3> Lv2 BP5000

<6> Lv3 BP6000

シンボル:赤

Lv1・Lv2・Lv3

自分のスピリットが2体以下の間、このスピリットはLv3として扱う。

Lv2・Lv3『このスピリットのアタック時』

自分はデッキから1枚ドローする。

 

「アタックステップ。リューマン・フェニックでアタック!アタック時効果で1枚ドロー!」

(手札4→5)

 

 手札は多いことに越したことは無い。最初のうちに手札を多くして選択肢を広げるに限る。アルティメットも引き込めれば尚良し。

 

「ライフで受けましょう!」

(マリア ライフ5→4)

(リザーブ1→2)

 

「そして、わたくしのライフ減少によりバースト発動!」

 

 ライフ減少がキーか。多少は覚悟の上だ。どんな効果が来るのかは分からんけども。

 

「古き忍の烈火竜!《ハンゾウ・シノビ・ドラゴン》!」

「スピリットカードか…!?」

「バースト時、悠姫さんのフィールドに存在する色1色につき、コアが1つしか置かれていないスピリット、則ちリューマン・フェニックを破壊しますわ」

「何っ!?」

「その鳳凰、討ち取らせていただきます!」

(悠姫リザーブ1→2)

 

赤 スピリット

《ハンゾウ・シノビ・ドラゴン》

コスト4 軽減赤2 <覇皇・戦竜(いくさりゅう)>

<1> Lv1 BP3000

<2> Lv2 BP4000

<4> Lv3 BP6000

シンボル:赤

【バースト:自分のライフ減少後】

相手のフィールドのスピリット/ネクサスの色1色につき、コアが1個しか置かれていない相手のスピリット1体を破壊する。

この効果発揮後、このスピリットカードを召喚する。

Lv2・Lv3『???』

???

 

「そして効果発揮後、ハンゾウを召喚!レベル2!」

(リザーブ2→0)

[ハンゾウ・シノビ・ドラゴン コア2 レベル2 BP4000]

 

 いきなり出鼻をくじかれたな…。バーストで、しかも効果を把握してないカードだったとは。あれは何弾のカードなんだ…?

 

「わたくしも“似たような”カードを使いますので居残られても厄介なのは理解しておりますわ。ですので早めに退場願いましたの」

「確かに、いきなりレベル3がいたら攻めにくいですもんね…」

 

 コアを参照するのは紫だけかと思ったが、そうでもないみたいだな。でもまだ始まったばかりだ、へこたれるには早い…!

 




茶番が長くてどうしようか悩んだAパートでした。アイキャッチ入りまーす。
…余談ですが、登場人物について何かまとめみたいなページを作った方がいいのでしょうか。他の方々の小説を見るとそういうページを設けてるようなので。
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