バトルスピリッツ スターティング・ゼロ 作:謙虚なハペロット
ですがこの投稿分と長くなってしまう可能性があるため、念のため分割の投稿とさせていただきます。
夕日が差し込む一室。
優雅部とのバトルの結果、祐依が部長である琴識 沙織(ことしき さおり)を降した。
「優雅部部長として、…いいえ。琴識 沙織として、有意義なバトルでしたわぁ」
「…琴識先輩」
すると祐依が席を立ち、手を差し出した。
「ありがとうございました。良いバトルでした」
「っ!……こちらこそ、感謝致します」
お互い晴れやかな表情で握手を交わす。…うん。変な因縁が残らなくてよかった。
「…それで、綺麗に締めたとお思いでしょうが…」
「忘れてはいませんわぁ佐々森さん。約束通り、教室を明け渡します。そして……」
ああ、約束はちゃんと守ってくれるのか。…そして琴識先輩が目を閉じ、何かを決めたように再び目を開く。
「沙織様…」
「名残惜しいですが、本日をもって!我等が優雅部は
解 散 !
とさせていただきます!!!」
「さ、沙織様ぁぁー!!」
うるせぇ…。何か芝居がかった大仰なやりとり。琴識先輩は左手を腰に、右手を大きく突き出して「控えおろう!」みたいなポーズを。鈴枝先輩は膝を付いて手を組み縋るように涙目で琴識先輩を見ている。…何だこれ。
「ううぅ…、私達の優雅部がぁぁ…」
「泣かないの弥生。部員の皆も、理由をしっかり話せば納得しますわぁ」
「納得するしないの問題以前じゃないのか…」
「基本琴識スキーの集まりだからね。琴識が言えば嫌々だろうと納得するだろうさ。生徒会は目の仇にされるだろうけど」
「祐依さん、またバトルしていただけます? 今度は正式なバトルとして」
「こちらこそ」
「ありがとうございます。その時はぁ、祐依さんのお姉さんの実力も見せてもらいますわぁ」
「は、はぁ…」
不敵な笑み、というやつだろうか。握手を求められたのでとりあえずこちらも握手に応じる。……思ったよりも手ぇ小さいな。
「ではぁ!皆様方ぁ!負けた悪役はお決まりの台詞を良い残し、わたくし達は颯爽と去りましょう!!」
バッ!とかっこよくポーズを決める琴識先輩。…何だ、何をするんだ今度は。
「では!!
覚えてらっしゃぁぁ〜〜い!!
おーっほっほっほっほーーーっ!!!!」
「さ、沙織さまぁ!足早過ぎますぅ〜!?」
「………」
「………」
「小さいからか凄い足早いねぇ」
「…まだ笑ってますよ。ここまで聞こえる」
なんか、高笑いしながら捨て台詞残して凄いスピードで教室を出て行った。遅れて鈴枝先輩も慌てて退出。一礼を忘れないのは高飛車でも上級生なのか。
「…何だかな」
「まぁ、とにかく。時間はかかったけど目的を果たせたんだから良しとしよう」
「はぁ…。会長に何と報告するか———」
「皆さん、よくやってくれました」
「おわっ!?」
「っ!?」
突然背後から良く通る凜とした声。突然のことだったから私と祐依は驚いてしまった。
「ん? マリア。あんたいつ戻ってきたのさ」
「会長…! 今日はお戻りにならないのでは…?」
振り向き、教室の扉に手を付き、凛々しく立っていたのは我らが生徒会のリーダー、“赫蓬院(かほういん) マリア”会長だった。
「ついさっき戻りました」
「さっき? あそこからここまで結構距離あるだろう」
「問題ありませんわ。“チャリ”で来ましたから!」
「“チャリ”……自転車、ですか?」
「ええ。ちょっと出費しましたが問題は無いでしょう」
「…は?出費?! か、会ちょ…マリア!!また無駄使いしたの!?」
「ふふふっ。碧、私(わたくし)のポケットマネーですので安心なさい」
「そういう事じゃ…、ああもう!いくら使ったの!? 領収書はあるの!?」
あのクールで冷静な佐々森先輩が珍しく取り乱してる…。マリア会長は涼しい顔で気にするなとどこ吹く風と流している。
だけどチャリでって…、相変わらず規格外の人だな。
「マリア、中一組は?」
「すぐに着きますわ」
「すぐ着く?」
……何と無く嫌な予感がしたからマリア会長の横を通り廊下に出る。…すると遅れて奥の階段から一年組の祥子(ようこ)、雫(しずく)をおんぶしている朱莉(あかり)が息を上げながら姿を現した。
「ちょ、大丈夫か!?」
あまりの様子に三人に駆け寄る。洋子はその場にへたり込み、雫を背負って来た朱莉は雫を優しく降ろすと仰向けに倒れ込んだ。
「…………」
息も絶え絶えの状態で、洋子が蚊の鳴くような声で大丈夫と聞こえたがまるで大丈夫に見えない。
「あ、朱莉ちゃん…」
「ぜぇ……ぜぇ……っだいじょぶ…ス…」
「大丈夫に見えないんだがなぁ…。祐依!」
「すぐに!」
ちょ、まだ何も言ってないのに教室を飛び出して行ったぞ。さすがと言っていいのか…。あっという間に見えなくなった。
頼もうと思ったのは冷たい飲み物、スポーツドリンク類とテキトーに。そうしなきゃ二人がくたばる。雫も息切れをしているが二人ほどではない。来る途中、朱莉に背負われたんだろうな。
「お待たせしました!」
「早っ!」
「さすが祐依さん。3分経たずにこれは流石ですわ」
「マリア」
祐依が超スピードで物資を調達して戻ってきた。やるな。
「はい、洋子ちゃん。立てる?」
「…な……んと…か…」
「朱莉、起きれるか?」
「………」
「あ、朱莉ちゃん…!」
「へ……へ…きッス…」
祐依は洋子を、私と比較的状態の良い雫で朱莉を介抱する。完全にグロッキー状態。一体どうしたらこうなるんだ。
「助かりました…」
「いやぁ、助かったッス先ぱ〜い」
「ご、ごめんなさい、あ、ありがとう、ございます…」
少しして何とか持ち直した三人。
どうしてそうなったか聞いてみたら、何ともまぁ、よく会長に付き合ったなと。
端的に言うと、祐依と琴識先輩のバトル中に佐々森先輩が何処かに電話しただろ? その時にマリア会長に電話したらしく、硝子はどうにでもなるがバトル気になったから、車で戻るのを捨ててマジでチャリ速力最大で帰ってきた。
洋子、朱莉、雫の三人はさすがに会長のそれはできないため、学校が近くなったところで降り、走ってきたとか。
…お疲れ様だな。
「ああ…。バトルが見れず無念ですわ。しかし悠姫さん、祐依さん。誠に感謝致します」
「いえ…」
三人が持ち直したため、生徒会室に戻り報告会となった。報告会と言っても、そこに行ったらバトルで何とかしてみろと言われたからバトルして教室を取り戻した。と、簡単な説明で終了した。…でも驚いたのは——
「——Uビャク・ガロウのトリガー効果、クリティカル効果により月光神龍とサンク・シャインはデッキボトムへ。鈴枝さんはアタックをライフで受け、ヤマトをバースト召喚。ヴァルト・イエーガーを破壊しますが、フラッシュに悠姫さんのネオ・バインディングソーンにより疲労し、ムゲンドラゴンのラストアタックにより悠姫さんが勝利。
——光龍騎神とUジークヴルムの相打ち、最後にUガイ・アスラのアタックにて祐依さんの勝利となりました」
「ほう…。究極の剣王獣、会究極の雷皇と光龍騎神の対峙。そこにいなかったことが悔やまれますわ」
「……はい、佐々森先輩…。き、記録、終わりました…」
佐々森先輩、バトル内容を“正確に覚えていた。”
コアの動き、手札枚数、フィールド状況…。スゲェな…。
それをPCにとは言え書き留めた雫も凄い。
「Uビャク・ガロウにUジークヴルムとUガイ・アスラッスか〜。ねぇねぇ悠姫センパイ!祐依センパイ!後でバトルしてもらっていいッスか?」
「ちょっと朱莉。時間考えなさいよ」
朱莉のバトルの誘いに祐依も私も乗りたい…ところだが時間が時間だ。またの機会だな。
「ふふっ、私もバトルはしたいところ。ですが楽しみは次回にしましょう。皆さんお疲れでしょう。ご苦労様でした」
———その夜。我が家の自室。
「…あ、璃恵からメール来てた」
「え? どんなの?」
夕食に風呂にと色々終え、ゆったりしながら祐依と今日の事を話していたら、スマフォにメールが来てたのに気付いた。…内容は、ショップで新しい初心者の救助に成功…と一見したら何が何やら判らない題名だったが、添付されてた写真と本文で理解できた。
「この璃恵さんと真桜ちゃんの真ん中にいる子かな? 可愛いね」
「そうらしいな。…その子の肩抱いてるバカは何なんだ」
「あれ、お姉ちゃん嫉妬?」
「違う」
この、助けた新たにバトスピ仲間となった子の名前が“リエ”と、あいつと同じ名前だということで気に入ったらしい。それから、色々教授して近々私と対戦させたいと。
「…勝てる気がしない」
「バトルする前から弱気になってどうするのお姉ちゃん」
———しばらくした後、『アルティメットバトル02』が発売となり、アルティメットに触れられるカードが増えた。これにより、『アルティメットという優位性』が徐々にだが失われてきた。
“
…まぁ、危惧してたのはほぼ当たった。
璃恵は勿論の事、彩音、真桜のデッキも更にパワーアップしたためここのところ負けが込んでいる。
そして現在、カードショップ縁にて麗奈さんとのバトルだって……
「《巨人銃士クリフォード》の【招雷:コスト7/8】を発揮しよう。手札から、荒ぶる雷の海賊皇!《海皇巨神デュラン・キッド》を喚び寄せる!!」
「っ!?」
「デュラン・キッドはコスト8、レベル3だ!」
(麗奈手札2→3)
(リザーブ6→2)
[海皇巨神デュラン・キッド コア4 レベル3 BP14000]
「そして召喚時効果!私のトラッシュにある【招雷】持ちのスピリットを全て回収する!」
「全部!?」
(麗奈手札3→7)
「アタックステップ!デュラン・キッド、アタック! アタック時効果、私の手札にある【招雷】を持つスピリットをノーコストで召喚する!」
「やばっ…!?」
「来い、クリフォード!」
(手札7→6)
(リザーブ2→0)
[巨人銃士クリフォード コア2 レベル2]
青 スピリット
《
コスト8 軽減青4 <闘神>
<1> Lv1 BP8000
<2> Lv2 BP10000
<4> Lv3 BP14000
シンボル:青
Lv1・Lv2・Lv3『このスピリットの召喚時』
自分のトラッシュにある【招雷】を持つスピリットカードすべてを手札に戻す。
Lv2・Lv3『お互いのアタックステップ』
【招雷】で自分のスピリットが召喚されたとき、このスピリットは回復する。
Lv3『このスピリットのアタック時』
自分の手札にある【招雷】を持つスピリットカード1枚を、コストを支払わずに召喚できる。
「このアタックは?」
「ら、ライフで!」
(悠姫ライフ3→2)
(リザーブ0→1)
「クリフォード、更にアタック!」
「Uドラグサウルスでブロック! BPは6000、相打ちです。相打ちなら【招雷】は…」
「ネクサス《三つ首竜の海賊旗》を忘れたかな?」
「っ!?」
「これによって【招雷】持ちがバトルで負けても発揮できるのさ! 【招雷】発揮!」
青の新しいキーワード能力【招雷】。
バトルに生き残った【招雷】持ちを破壊することで、【招雷】を発揮させたやつと同じ系統、指定されたコストのスピリットカードを召喚する効果。
これがかなり厄介で、緑の【神速】とはまた違った速攻型になっている。
青 ネクサス
《三つ首竜の海賊旗》
コスト3 軽減青2
<0> Lv1
<1> Lv2
シンボル:青
Lv1・Lv2『お互いのアタックステップ』
BPを比べ【招雷】を持つ自分のスピリットが破壊されたとき、そのスピリットの【招雷】の効果を発揮できる。
Lv2『自分のアタックステップ』
【招雷】を持つ自分のスピリットがブロックされたとき、自分はデッキから1枚ドローできる。
この効果でドローしたとき、自分は手札1枚を破棄する。
「手札のコスト8!《英雄巨人タイタス》をノーコスト召喚!」
「た、タイタス…!?」
「レベル分にはクリフォードとデュラン・キッドから借りてレベル2! 更に召喚時効果でデッキを10枚吹き飛ばす!」
「くっ…!」
[巨人銃士クリフォード 破壊→招雷発揮]
(麗奈手札6→5)
[英雄巨人タイタス コア4 レベル2 BP8000]
[巨人銃士クリフォード コア2→0]
[海皇巨神デュラン・キッド コア4→2 レベル3→2]
(悠姫デッキ残り20→10)
「タイタス、アタック!」
「む、ムゲンドラゴンでブロック!フラッシュタイミングで《ネオ・アグレッシブレイジ》を使ってBPをプラス3000します!」
(悠姫手札3→2)
(リザーブ1→0)
[デブリ・ザード コア2→1]
(トラッシュ6→8)
[ムゲンドラゴン レベル3 BP7000→10000]
「ならこっちもフラッシュ!《フィニッシュブロー》!コストはデュラン・キッドから!タイタスのBPに3000加算!」
(麗奈手札5→4)
[海皇巨神デュラン・キッド コア2→0 消滅]
[英雄巨人タイタス BP8000→11000]
「げっ!?」
「バトルはいただいた! タイタスレベル2の効果!BPを比べ相手のスピリットのみを破壊した場合、デッキ10枚!吹き飛ばす!」
(悠姫残りデッキ10→0)
「ぐぇ…」
「あ、《フィニッシュブロー》の効果で更に7枚もらうけど無いなら仕方ないね」
「………」
(悠姫残りデッキ0→0)
青 スピリット
《英雄巨人タイタス》
コスト8 軽減青4 <闘神>
<1> Lv1 BP6000
<4> Lv2 BP8000
シンボル:青
Lv1・Lv2『このスピリットの召喚時』
相手のデッキを上から10枚破棄する。
Lv2『このスピリットのアタック時』
BPを比べ相手のスピリットだけを破壊したとき、相手のデッキを上から10枚破棄する。
青 マジック
《フィニッシュブロー》
コスト4 軽減青2
フラッシュ:
このバトルの間、自分のスピリット1体をBP+3000する。
そのスピリットがBPを比べ相手のスピリットだけを破壊したとき、相手のデッキを上から7枚破棄する。
「ターンエンド」
「……負けました」
「どうだい悠姫君。私の新しいデッキの切れ味は」
「とんでもない回り方するんですね…」
考えが狂わされるとかじゃなく、デメリットが無しに近い状態で沸いて来るから【神速】よりやりにくい。
「り、リベンジ!」
「いいよ。だけど菫さんの話が始まるみたいだよ」
麗奈さんに促され、ショップの特設ステージっぽいところに菫さんが登壇した。それにより、ショップにいる大半の人物が菫さんに注目する。
「え〜、皆さ〜ん。今日は〜カードショップ
相変わらずののんびりとした口調。
一応今日は土曜日だが、ショップバトルはない。理由は、菫さんが何かイベントを催すらしい。私らは何も聞かされてないから何をやるかはまったく判らない。
「何やるんですかね」
「いずれ判るさ、いずれな…」
「……璃恵、いつからそこに?」
「今さッき♪ ほら、前教えた娘を捜してたんだヨ」
「ああ、噂の璃恵君と同じ名前の子だね」
「そーなんデスヨ〜♪」
「で、見つかったのか?」
「ウン♪ 今祐依ちャんと真桜ちャんと彩音が相手してるから大丈夫♪」
ちなみに今ショップには私、祐依、璃恵、麗奈さん、彩音、真桜と揃い踏み。
「今回行わせていただくイベントは〜、ちょっとしたプロモーションカード争奪戦特別バトルをやりたいと思いま〜す」
おおー、と周囲から小さい拍手と歓声が沸く。エキシビションとかそういうのかな? エキシビションモドキみたいな形で麗奈さんとバトルしたことあったなぁ。
「さっき、皆さんにナンバーが書かれたカードを渡したと思います〜。抽選で〜、当たった数名に限定プロモーションカードをプレゼントしま〜す」
と、菫が掲げたフリップにはデカデカと印刷されたカード数枚が載せられていた。
「あれがプロモーションカード?」
「おお♪ アレ、チャンピオンシップとかに行かないと貰えないカードだヨ悠姫ィ♪」
「へぇ…」
「なかなか大盤振る舞いするねぇ菫さん」
「対戦できるのは〜“6名”〜。その内の勝者、3名に差し上げたいと思いま〜す」
そこかしこで意気込む声が聞こえる。チャンピオンに行けなかった実力者達が「性能云々では無く欲しい」との声もちらほら。
「悠姫も記念にGetしてもいんじャない?」
「ふむ…」
「まぁ、向こう(本場のガンスリンガー)みたく殺伐とはしてないから気楽に行くと良いさ」
まぁ…。璃恵も麗奈さんも言ってくれてることだし、当たれば勝ち狙いに行っても損は無いよな。
「さッき麗奈サンに負けてたヨネ〜♪」
「はははっ。もし当たったらまたよろしくね悠姫君」
「つ、次は負けないですし」
「悠姫ィ♪ ワタシ達も忘れてもらッちャあ困るヨ♪」
……赤の祐依、白の璃恵、紫の彩音、緑の真桜、青の麗奈さんがいる。アカン。アカンぞこれは。当たらないことを祈るしか…!
「では〜、抽選を開始しま〜す。手元の番号を呼ばれた人は、前に出て来てくださいね〜」
菫さん本人は涼しいほんわかした笑顔だがそのカードを入れている箱をガッサガッサと中身が漏れるんじゃないかと心配するほど掻き回している。菫さんすげぇ。
「は〜い。では一人目で〜す。……番号〜、10の方〜」
10……私では無いな。と、少し後ろから「はいっ」と返事が返ってきた。そちらに目を向けると、女性だった。同い年くらいか、嬉々とした感じで友達らしき子に激励され前に出る。
「
「ぶふっ…!り、璃恵君…笑わせないでくれよ…」
小声で璃恵がボソリと何か言った。そしたら麗奈さんが吹き出した。笑いを堪えてるみたいだが、何を笑ってるんだ?
「次で〜す。……番号、73番の方〜」
外れた。返事は私らから右側奥から聞こえた。男性、大人かな?
「No.73、激瀧神アビス・スプラッシュ」
「くふふ…!“激安神”か…!ふふふふ…!」
「…?」
「3人目で〜す。………番号、15番の方〜」
これも違うか……。
「私ね」
聞こえてきたのは知り合いの声。手を上げ立ち上がったのは彩音だった。うぅ…。彩音には悪いんだが、当たりたくない。
「ッ! No.15!!」
「 誰が地獄からの使者、運命を操る人形よ白銀の!」
「悔しいでしョうネェ…♪ せッかく粛々と出ようと思ッたのにネタにされて♪」
「は〜い。ファンサービスごっこは後にしてくださいね〜」
璃恵が立ち上がって何をするのかと思ったら煽りかよ。今のやり取りを聞いたからなのか、参加者も自分の番号を見てあれこれ言い始めた。
「はいは〜い。次抽選しますよ〜。………番号、7番の方〜」
……声が上がらない。誰だ?
見渡してみる、と…怖ず怖ずと手を上げる人が。
「あ!悠姫!あの娘、あの娘だヨ!」
手を上げ立ち上がる不安げな小さい女の子。…あれが噂の子なのか。
傍にいた祐依と真桜が激励して送り出す。何か今にも泣き出しそうな不安顔だが、大丈夫なのだろうか。
「大丈夫だヨ悠姫。No.7 ラッキーストライプだからネ♪」
「幸運が付いてるってことさ」
「…ならいい、のかな?」
これで4人。残り2人。身内は彩音とあのリエって子も含んでいいのか? とにかく2人出た。
当たる望みは薄くなったかなぁ…。
「5人目で〜す。………番号、102番の方〜」
………………あ、私だ。
「やッたじャん悠姫ィ!これもブックス!!の加護!No.102
「は? ま、まぁ、行ってくるけど…」
「ふふふっ。頑張ってね悠姫君」
席を立ち前へと移動す———
「うわっ…と!?」
「オット…」
やばい、誰かにぶつかった弾みでデッキケースを落としてしまった。しかも相手のまで。
「あ、ご、ごめんなさい!」
「ダイジョブダイジョブ。こっチコソゴメンね」
ぶつかったのは……女の子? 黒いフードみたいのを目深に被っているから判断できない。女の子か?って思ったのは声から。何か妙なところでカタコトなのが気になったが、とにかくデッキケースを拾い渡す。
「頑張ッテね」
「あ、うん。ありがとう」
少し早足で前に出る。左横に彩音が並ぶ。
「やっぱり出たわね」
「やっぱり…?」
「やっぱりはやっぱりよ」
「…?」
「では〜、最後の一人、六人目で〜す。………番号、74番の方〜」
「No.74 マジカル・クラウンーミッシング・ソードね」
「何のことだ」
彩音の呟きに何か返そうとした矢先、当たった女性が返事と一緒に手を上げた。これで全員か。
「は〜い。これで6名が決まりました〜。外れた皆さんにも参加賞がありますから〜、6人のバトル、見てあげてくださいね〜」
6名選出後、更に相手決めとなった。……私の相手は、最後に出てきた74番の人だった。彩音の相手はあの子、リエって子。よかった。もし他の人、男性に当たったらどうなることやら。
バトルは1組ずつ行う。失礼だけど、6人同時に席に着けるほどそこまで広くない。
「では〜、まず1組目〜。15番と7番の子からどうぞ〜」
「お、お願い…します…」
「こちらこそ。遠慮せずかかってらっしゃい」
「は…はい…!」
「勝者〜、15番の蛇刳ちゃ〜ん」
「なかなか筋が良いわ。これならすぐにでも強くなれるわね。…癪だけど、あの白銀が見付けただけあるわ」
「あ、ありがとう…ございました…!」
まず一戦目は彩音の勝利。あの子も善戦したが、やはりと言った感じ。彩音が賞品を貰った…が、それを全てあの子に渡した。聞いたら、先行投資だとさ。
次に二戦目。73番と10番のバトル。10番の女性のデッキは、彩音に聞いたが“赤青ガンディ”とかいうもの。73番のデッキは紫緑。
結果は10番の勝利。あの《凶龍爆神ガンディノス》というのに紫の処理が追い付かず押し込み勝利、といった感じ。
…で、最後に私の番となった。
「よろしくお願いします!」
「こちらこそ、お願いします」
活発そうな女性。私より1つ2つ年上かな?
「では〜。最後の三組目、皆さ〜ん、元気良く、お願いしま〜す。
ゲートオープン!」
「「「「「界放ー!!」」」」」
…ここに集まってくる人達は皆終始元気だなまったく。誰一人ここから移動してないってのが驚きだ。
「うへへ…。
対戦者は連れがいるようだが、どうにも璃恵と似たような類だろうか。うへへとか変な笑いしてるし。
「あ。あたし、桐島 霧乃っていうの。よろしくね、グローリアス・ヘイローさん♪」
「え!? い、いや、あの…。私、緋立ですから、そのグロなんとかとかじゃないです」
「あははっ! 気にしない気にしない!」
さすがに気にするわ…。
緋立 悠姫
【???】
VS
【詩姫アイドルktkr!】
さて…………ん?
「さぁーて。先攻後攻どうしよっか」
「………」
「? どうしたの?」
「え? あ、えと…」
ケースからデッキを取り出し、シャッフルして4枚手札に……まではいい。
だが、これは……何だ。
“これは私のデッキじゃない”。
≡≡≡≡≡≡≡≡≡
「…アレ? あレボクのデッキだ。…クヒヒ、マぁイイヤ。あイツのライバルっポいし、使いコなしてテくれルデショ」
≡≡≡≡≡≡≡≡≡
「…あれ悠姫のデッキじャない」
「え?」
「スリーブが違う」
「マジかい? …さっき誰かとぶつかったのが原因かな」
「探す」
「おいおい璃恵君、どうしたんだい君らしくない。私が探してくるから君はここにいな」
「………」
「それじゃあ緋立……下の名前何?」
「悠姫です」
「じゃあユキちゃんからの先攻でどーぞ」
<悠姫・先攻第一ターン>
「じゃあ、スタートステップ」
(リザーブ4)
(手札4→5)
始まってしまった…。今更取りやめてデッキを探す訳にもいかないし…どうする!?
「………」
「おやぁ? いきなり手札事故?」
「ま、まさか」
くそっ、引いたカードもスピリットカードなのは判るが、どう使えばいいんだ!?
「…ネクサス《オリンスピア競技場》を配置」
(手札5→4)
(リザーブ4→1)
(トラッシュ0→3)
「お、青かな」
「……レベル2にしておいた方が良さそうだな」
(リザーブ1→0)
[オリンスピア競技場 コア0→1 レベル1→2]
「…バーストをセットしてターンエンド」
「…お姉ちゃんがオリンスピアを使うはずがないよ」
「え? 入れた訳じゃないのです?」
「…麗奈さんが行動してる。始まってしまった以上、見守るしかないわ」
「…大丈夫かな…」
バトルはありませんでしたが一旦ここまで。
デッキ入れ替わりはアニメバトスピヒーローズでもありましたね。