キサラギカンナは■■■■である   作:佐藤ネジ

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二話です、やっと勇者出てきます



行き着く先での思考、そして出会い

『コレが?流石にこわれすぎてはないかね?』

『いや、ここまでになってしかしもう五日も生きている、その生命力なら《神衣(ジンギ)》にも耐えられるやもしれん』

『なるほどな、試して見る価値はある…か』

 

横たえられたワタシの上で二つの声が交互に響く。

 

夢だ、ワタシは夢を見ている。

 

これは過去の夢だ、ワタシが知るはずのない、いつの間にか変わってしまっていた体が変わる時の夢。

 

『全く、並の精神では耐えられないのに、適合するパルス信号を出せるのが子供だけとは…』

『だが、一度適合すれば全てを蹂躙できる、しかも普通は使い物にならないガキが戦闘に参加できる、なに、精神の方はクスリ漬けにでもすればいいさ、そっちの方が従順な“兵器”になるしな』

 

これは妄想にすぎない、なぜならワタシは全てを焼かれ意識がなくなり、戻ったときにはもう…。

 

『では処置を始めるとするか』

『そうだな、早くあの忌々しい敵どもに報復を与えねば、奴らの顔が恐怖に染まるときが楽しみだ』

 

ワタシはこうやって、人々の勝手な都合でワタシの全てを書き換えられたと、悲観したいのだろうか、ワタシがあのままだと確実に死んでいたと知ってるのに。

 

ワタシはやはりこの世界が………。

 

ーーーーーー

 

「……………ん…」

 

どれだけ気絶していたのか、ワタシは目を覚ました。

 

「《ジャンプ》は成功…した…?」

 

ワタシは倒れていた体を起こし周りを見渡す、さっきまでとは違う場所、あの台座も機械も最後まで気丈な顔をしていた彼女の姿も見当たらない。

 

今居るのは廃墟、と言うのが正しいか、乱雑に散らばった書類ーーー日本語のようだ、あちこちに放り投げられたように倒れたデスクや棚、とあるオフィスの一室、であったろう空間。

 

その隅にワタシは倒れていたようだ、ワタシが倒れていたところだけ壁と床が丸く落ち窪んだようにえぐれている、《ジャンプ》が正常に行われた証拠だ。

 

「………」

 

しかし、ワタシの気は晴れない、ワタシが望んでいた光景はこうではない、ワタシが望んでいたのは、このオフィスが掻き回される前の、人が普通に働いている、大戦が始まる前ーーー2015年7月30日以前の光景だった。

 

(《ジャンプ》自体は成功、しかし目的の時間にはたどり着けなかった、か)

 

ワタシは起き上がると、体についた埃を払う、確かに目標の時間軸にはたどり着けなかったかもしれない。

 

しかし諦めるのは早い、数十分前にいた外の空気とはまるで違う、澄んだ空気、肺呼吸ができたのなら美味しいと感じるのだろうか。

 

装甲にもあの地獄で感じたひりつくような感じはない、窓の外を見ると青空が見えた、ワタシがいたあの世界では当分見ていなかった光景だった、つまり少なくともここは化学兵器投下による世界中の末期的な汚染がされる前の時間ということだ。

 

それならまだ、間に合う可能性はある、世界が取り返しのつかない攻撃を始めるあの惨劇までに戦争を終わらすことができるのなら。

 

「……よし」

 

心に気合いを入れ直す、わかっている、戦争が始まる前ですらそれを阻止するというのは難しいことなのに、始まってしまったものを終わらせるなど絶望的だということを。

 

1人でも人が死ねば、そこから際限なく憎しみが生まれ、それは一生消えることはない、その憎しみから報復心がうまれ、それが人を殺す、そうしてまた新しい憎しみが生まれる。

 

この連鎖を断ち切ることは容易ではない、ましてやそれが国家レベルで行われるのだ、はっきり言って不可能だろう。

 

「それでも」

 

ワタシに与えられた任務は“第三次世界大戦”の回避、できることは全てやる、それがワタシの使命だから、この身が滅びるまではどこまでも足掻こう。

 

そう、

 

思っていたワタシの覚悟は、

 

数時間後には無駄なことになると、

 

この時のワタシは知る由も無くーーー。

 

ーーーーーー

 

瓦礫だらけの道と廃墟、その廃墟の影を縫うように一つの影が動いていく。

 

「………」

(ここは…どこの街だろうか…)

 

決意を固め直したワタシはこの時代の現状を把握しようと朽ちたビルの間を隠れるように移動していた…。

 

(さっき見た書類は日本語だらけだった、たまに見える看板も漢字、カタカナ、ひらがなが多い…ここが日本というのは間違いなさそう……それでいてこれだけ大きいビルがたくさんある都市、東京か…大阪あたりか…?)

 

東京や横浜ならある程度町を見ていけばわかる、戦争が始まり崩壊する前にも何度か行っていたから、しかし他の…大阪や神戸、名古屋などはやはりランドマークや道路標識などがないと…この崩壊加減だと判別に困る…。

 

(さっきから運が悪いのか…標識が一つも見当たらない…地名が書かれた看板も…)

 

そう思いながら私の隠れながら、しかし足早にビルの間を走っていると。

 

「…!」

(コレは…)

 

大戦が始まる前の日常、その時よくテレビで見ていた光景、その変わり果てた姿が少しの面影を残して私の前に現れた。

無数の看板ーーーあちこち剥がれているが、手前は川であったと思われる大きな溝が、そして一番印象的な目印。

 

(グリコ……ここは道頓堀…か)

 

大阪、そこが私が《ジャンプ》によってたどり着いた場所らしい、自分が今立っている場所を知り、少し安堵する。

だがもう一つの疑念、ここがいつの時間なのか、それが払拭できていないことで私の感情はすぐに曇った。

さらに、ここまでたどり着いた中で気づいた大きな疑問がさらに私の心を不安にさせた。

 

(さっきから、全くもって人の気配がない…?)

 

こんなことがあり得るのだろうか、大戦中、大阪は日本でも有数の激戦区であり四六時中銃声が鳴り響いているような状態だった、そして最終的には業を煮やした敵国が新型爆弾ーーー反陽子爆弾と推測される、を投下し、大阪は地図から消滅した、と私の(データ)には記録されている、それなのに今の今まで銃声はおろか、足音一つ聞こえないとはどういうことなのだろうか…。

 

(嫌な予感…がする、これはもしかすると…)

 

私の中で生まれた一つの仮説が、真実味を帯びてゆく、もしそうなのだとしたら…この時代…いや、この世界は…。

そう、私が思案しているとーーー。

 

道頓堀川の東の方から高い銃声と思われる音、そして瓦礫の崩れる音が連続して響いてきた。

 

(!!、この音は…!?)

 

すぐに瓦礫に影に身を隠し、様子を伺う、段々と音は近づいてきているようだ。

 

(この感じだと…一人対多数で一人が逃げながら戦ってる…みたい、多数の方は…なんだ?無人機?)

 

この体になり極限まで研ぎ澄まされた感覚器官(センサー)で感じる音と気配から、今までの経験を頼りに推測する。

 

一人、逃げながら応戦している方が銃を使っているようだ、ただ、マシンガンのような連続的な乱射音ではなく一つ一つ、着実に仕留めるように一、二秒毎に銃声が響いている。

 

不思議なのは多数の方だ、なぜか音がしない、まるで体当たりのようにビルなどを壊す音しか聞こえない、地面を歩行する音も、空中を飛ぶ浮遊音もしない。

 

ありえない、とワタシは思った大戦の終盤に出ていた無人飛行掃射機(ドローン)ですらわずかながらの浮遊音は隠せなかったというのに。

 

音はどんどん近づいてきて、ついに戦闘が肉眼で家訓できるようになるーーーと。

 

「あー!なんやな!ばか!あほ!こんないっぱいでか弱い乙女一人をリンチとか!マジありえへん!しつこい男は嫌われるで!」

 

なんだか乖離的な悪態を叫びながらも、白い機体ーーーまるで空中を泳ぐかのように動きまわる、丸く、口だけがついた生物のような謎の兵器ーーーを一体一体着実に撃ち落としていく少女の姿が見えた、その姿は黒い服に薔薇を思わせる白いラインが入った、戦場には似合わないとても目立つ、しかし美しいものだった。

 

「あの人……は………」

 

彼女の銃の腕は確かなようだ、飛び跳ねながら後退しつつも、空中を不規則に泳ぐ機体を撃ち落としていく、しかし、その表情には疲れが見て取れた、彼女はかなり長い間戦闘をしていたようだ、その疲労が、銃口にも現れている、ぶれる、銃口、打ち出される、銃弾、白い機体に当たる、

が、

当たったところが浅かった、そのまま少女に突っ込んでいく、

 

「しまっ…!!」

 

少女に迫る、機体についた口のような、いや口そのものが、彼女を食いちぎろうと大きな口を開けて。

 

「う……へ?」

 

“ガチン!”

少女を食いちぎろうとするその口は、しかし彼女を食いちぎることなく、そのまま閉じられた。

 

「えと…あんたは?」

「…今は戦いに集中して」

 

彼女を助けたのは、ワタシだった、速さには自信がある、化け物の口が閉じる前に、彼女を引っ張り、抱き寄せた、よかった、助けられた。

 

ワタシは彼女をそのまま抱き抱え、そのまま化け物に背を向け、走り出した。

 

「うぇ!?そ、そんな抱えてもらわんでも大丈夫やで!?まだ動けるし!」

「いいから、こっちの方が速い」

 

ワタシは彼女を片腕で抱いて、もう片方の腕を変形させる。

 

ワタシの腕は、義手だ、片腕だけではない、両腕、それと両足も、義手義足である、開戦後の兵器の技術革新により急激に進化したバイオニックアーム、そして16年の終わりに登場した変形可能武器(トランス・ウェポン)、この二つが組み合わさり、ワタシの四肢は全能兵器(フル・ウェポン)と呼ばれるまでに、殺しに特化した体となった。

 

手の形が変形してゆき銃口の形になる、そこから打ち出された弾は、後ろの白い機体に当たる、が。

 

「…まるできいてない」

 

奴らはなかなか強度のあるマシンのようだ、銃程度ではビクともしないらしい。

 

ならば、と銃口をしまい今度は小型ミサイルを出す、網膜インターフェースで照準を定め、打ち出す…!

 

ミサイルは確かに機体に命中して爆散するも。

 

「これもダメ…か!」

 

白い機体には傷一つつかない

 

「あーあかんて、あいつらには普通の武器は通じひんよ」

「…アナタのはちがうの?」

「ようわからんけどうちの武器にはこう、ブワーっとした、神力?見たいのがエンチャントされてるらしいんよ」

 

神力?

ワタシは聞きなれない力に頭の中に疑問符が浮かぶ、どこかの軍の新エネルギーの別名なのだろうか、大戦中のエネルギー革新は凄まじく、その競争でたくさんのエネルギーが生まれた。

ワタシもデータでも全て把握できているわけではない、戦争中に埋もれたエネルギーの一つに神力と呼ばれたエネルギーがあったのだろうか。

 

「ならば…!」

 

つまり2015年以降に生まれたエネルギーを使った兵器なら奴らに通じる可能性は高い…!

 

そう判断し、また腕の先の形を変形させていく、荒々しく、無骨なデザイン、それでいて近未来的、複雑に変形していく銃口には所々に青白くランプが灯る、その弾丸を飛ばすのとは全くちがう役割果たす銃口には電子の光が集まりーーー

 

放たれた、

 

白い機体に当たる、

 

機体の形が不確定にねじ曲がり、

 

機体の半分がぐちゃりと潰れ、飛び散った、

 

なんだか私の前に《ジャンプ》に失敗したあの男の最後のようだな、なんて場違いなことが頭をよぎった、

 

「おおう、なかなかグロテスクな倒し方やな…」

 

彼女はそう言ってゲンナリした顔をしているが、ともかく攻撃は通った、やはり、この時代以降のワタシの武器(オーバーテクノロジー)ならば、奴らにも対抗できるようだ。

 

「…!」

 

が、しかし、ワタシの武器によって半身を破壊された機体は、それでもなおワタシ達に向かってくる、これ一発で元の世界なら戦車を鉄くずに変えれていたのに…!

 

壊れた機体の後ろからも白い影が多数うごめいている、殲滅は簡単ではない、それよりも今はーーー

 

「とばすよ、下を噛まないよう注意して」

「へ?どういぅぇぇぇ!!!」

 

ワタシは全速力で、しかし少女を振り落とさないように、機体の群れから距離を引き離し、ビルとビルの間へと逃げ込み、そこから路地裏を縫うように走って行き、廃墟の一つに隠れた。

 

「あ、ありが「しっ!静かに」……」

 

話そうとする彼女を押しとどめ、感覚器官(センサー)に意識を集中する。

 

「……」

「……」

 

しばし沈黙…何も聞こえない、反応なし。

 

…まけたようだ。

 

「大丈夫みたい」

「はぁーよかったわぁ…」

 

彼女が安堵の表情を浮かべる、私も少し気を落ち着け、少しでも外から見えないよう、しかし外の様子が器官(センサー)でわかるように壁に身を預け、彼女にも横に来るように手招きする。

彼女は少しおどつきながも、私の隣に座った。

 

「あ、改めて、ありがとうな…助かった」

「…」

「えーと…?」

 

私は返答しない、いや返答に窮していた、なぜ私は彼女を助けてしまったのか、その理由が自分でもわからない、いや、わかりたくないのだ、だいたいこの場所に彼女がいるはずないのだ…なのに…私はなぜ…そんな感情が渦巻いている…

 

「……」

「……」

 

しばらく無言の空間がワタシ達の周りに広がっていた。

 

 

 




勇者が出ると言ったが、原作勇者が出るとは言ってない、すまん、もう少しまたれよ

兵器の女の子
前の話で外見には言及してなかったけど多分髪は白い、今回使った兵器(オーバーテクノロジー)はサイコパスに出てくるドミネーターのエリミネーターをイメージしてもらえれば、威力は戦争用だから強め。

黒い服の女の子
関西弁、地元の子でしょうか?、元気はいっぱい、疲労もいっぱい。
ちなみに勇者服はペルソナ5のDLCペルソナであるマガツイザナギ・賊神(ピカロ)みたいなイメージです(あれの星のラインを薔薇っぽくした感じ)、わかる人にしかわからんね。
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