キサラギカンナは■■■■である   作:佐藤ネジ

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なんだかんだで遅れてしまった、メブーーーー!
ゆゆゆい早く参戦来てーーーー!!!


今日に絶望し、明日を夢見る

「うちの名前は塩井ユカ、よろしくな!」

 

「うん…」

 

「いやうんやなくて、あんたの名前も教えて〜や?」

 

「…如月神無」

 

「うっわなんかかっこええ苗字やな!漢字ではどう書くん?」

 

「…キサラギは2月の旧暦の如月、カンナは神では無いとかいて神無」

 

「おーなかなかすごい名前やな!かっこいい!うちの名前なんて普通すぎるしな〜ちょっと憧れてまうかも!」

 

「……」

 

彼女…シオイユカは私が何も喋らないのにしびれを切らしたのか、私の前にしゃがみ込み勝手に自己紹介を始めた。

 

なかなか積極性のある子のようだ、会話のテンションも高い。

 

「ちなみになーうちの名前の漢字は「それよりシオイ、聞きたいことがある」

 

「そ、そんなこと…確かにうちのケンチな名前のケンチな漢字なんてめっちゃどうでもいいことかもしれんけど…正面から否定されると凹むで…トホホ」

 

なかなか感情も豊かなようだ、それはともかく。

 

「シオイ、この世界で第三次世界大戦は起きているか?」

 

「へ?何?大胆な変態大変?」

 

…ひどい間違え方だ、なんて感想を浮かべることもできずに、私の心は無力感に満たされる。

 

念のため、いやシオイの反応が何かの間違いであって欲しいと、もう一度問う。

 

「…この世界のこの荒れようは、なぜ起きた?」

 

「?、あーそういうこと、確かにさっきの感じやとあいつらのことしらんのも頷けるな」

 

「さっきの白い機体か…?」

 

「機体っていうか、バケモノ?よくわからんけど、ちょっと前にあれがいきなり空から降ってきて、それでこの有様ってわけ、さっき神無がやってだめやったように、普通の銃火器なんて全く通じひんねんあいつら」

 

「あれは他国からの攻撃機体ではないのか?」

 

「他国?よーわからんけど、あの人は天の神からの尖兵やとかバーなんとかとかそんなこと言ったはったな」

 

「天の…神…」

 

何かの集団を指す言葉…?などと考えるが、それ以上に。

 

 

私の記憶(データ)にはそんな集団の記録も、あんな兵器の記録も存在しないのだ。

 

 

大阪のこの静寂具合、見たこともない機体、そして聞いたこともない組織。

 

 

ここまで私の記憶(データ)との齟齬があるのだ、先ほどの神力というのも、ワタシが知らなかっというよりも、ワタシの世界には存在していなかったのだろう…。

 

 

つまり…

 

 

 

ここはワタシのいた世界とは違う世界の過去なのだ。

 

 

 

もう、認めざる得ない、はっきり言って認めなくない、認めなくないが…。

 

「は、ははは…さっきまでの誓いなんて、なんの意味もなかったんだ…」

 

そう、ワタシの任務はもうすでに失敗していたのだ、そんなことも知らずに、息巻いていたさっきまでの自分をぶちのめしてやりたい気分だ。

 

…薄々感づいてはいたのだ、ここが大阪だと

わかった時から…それでも認めなくないじゃないか…こんなところまで来たことが、全くもって無意味なことだったなんて。

 

「だ…大丈夫?なんかすんごく落ち込んでるみたいやけど…」

 

「…」

 

私はおもむろに右腕を拳銃に変形させると銃口を自分のこめかみに当てーーー

 

「ちょっ!!!」

 

バァン!!!!という、衝撃音が当たりに響く。

 

銃口から吐き出された球は、私に当たる前に、シオイが咄嗟に打ち出した彼女の狙撃銃(スナイパーライフル)の弾によって弾かれた。

 

「…何をする」

 

「それはこっちのセリフやで…何…しとんの」

 

「ワタシの生命意義はさっきを持って消滅した、生きる意味などない」

 

そう、ワタシにとって、いやあの世界のヒトビトにとって、この作戦は最後の、本当に最後の希望だったのだ。

 

それが今潰えた、あの世界に残ったモノ達はこの残酷な真実も知らずに偽りの希望を持って死んでいくのだろう、それなのにワタシだけのうのうと生きていくなどと、そんな選択肢は初めからワタシにはなかった。

 

「…本気で言っとんの?」

 

「シオイには関係ない事だ……いや、流石に目の前で死なれるのは嫌か…わかった、すぐここから離れよう、そしてシオイの目の留まらないところで死ぬと

 

「そういう事やない!!そんな簡単に命を捨てんなって事や!!!」

 

「…」

 

そんな、か、彼女はワタシの何も知らないのに、そんな簡単にと言っている、軽い、言葉が軽すぎるし、薄すぎる。

 

“なんのためにこんなことまでして、生きてるんだろうね…?”

 

“私は…もう…生きたくない…よ…!”

 

「…シオイはワタシの何を知っている?知らないのに“そんな簡単に”などと軽々しく、口にしないでくれ」

 

「…!」

 

パチン。

 

と乾いた音が響いた、シオイがワタシを叩いた、ようだ。

 

「ーーーっ、硬いな…あんた…」

 

そうでもない、戦車の玉一発食らうと凹む顔だ。

 

シオイは痛そうな右手をさすり、涙目を浮かべながらも真剣な表情でワタシに言う。

 

「…確かに、うちはあんたのことなんてミジンコも知らん、けどな、だからって人が死ぬところを見逃せるほど、人でなしちゃうで……あんたがどんな事におうてきたかわからんよ…わからんけどさ…自分で命を絶つのは…やめてや…それって…とっても…かなしい…こと…やから……」

 

………。

 

「…シオイは、自分が悲しみたくないからワタシに生きろ、とそう言うんだな?」

 

ワタシがそう言うと、シオイはとても悲壮な、今にも泣きそうな顔になり、顔を伏せた、彼女の何か、傷にでも触れたのか、少し、悪いことをしたな、とワタシが思っていると。

 

ふいにシオイが顔を上げた、そこには、さっきまでの泣きそうな顔はなく、真剣な表情で、私の目に正面から向き合って、言った。

 

「…そうやな…そうやで、うちはもう、誰も死ぬところを見たくないんや、勝手なこと言ってるとは思ってるけど……お願いします、生きてください…!何無責任なこと言ってるんやって、思うかもしれんけど、私ができることならなんでもするし…支えるから…おねがい、私のために…生きて……」

 

…彼女は何まだ出会って数十分も経ってないワタシにむかって、何を言っているのか…。

 

彼女はワタシの何も知らないのに。

 

ワタシも彼女の何も知らないのに。

 

“確かに生きてたらいいことあるなんて限らへんよ、でも【何か】はあるはずやで、それが希望か、絶望か、わからんけど、それを知りもせえへんで、死ぬなんて、癪やろ?”

 

 

 

…だめだ、彼女は《あの人》じゃない…《あの人》は前の世界で、もう…

 

 

 

“あなたがどんな辛い目にあって来たのかわからんし、多分私にはあなたの過去は一生分かることはできへんやろうけど、でも、これからのあんたのことなら、支えたり、助けたりし合って、分かり合うことが、できるかもしれへんな、あなたがそういう未来を…望んでくれるなら“

 

 

 

「……わかった」

 

「へ?」

 

「ワタシは今死を選ぶのをやめよう」

 

「ほ、ほんまに!」

 

ワタシへ少しだけ笑みを浮かべて、言う。

 

「ああ、シオイに命令されたからな、【私のために生きて】と」

 

「え!?確かにそうやけど!命令て!そこまできつい感じちゃうて!!」

 

ああ、わかってる、そうだ、これは私が選んだ選択だ、もう少しだけ、《あの人》が言ってくれたことを、信じてみよう、いや、みた

いんだ。

 

だから、君のその言葉を、少しだけ借りさせてくれ、シオイ。

 

「ワタシは兵器だ、命令には従うよ」

 

「あんたはまたそうやって自分を……はぁ…まあええわ、生きてくれるなら、うちはなんでもするよ、あんたに生きる命令だって、うん、してやろうやないの」

 

ありがとう、シオイ。

 

まだ、生きるということが希望になるなんて、そんな薄っぺらいことは言えない、でも、《あの人》が言ったように、ワタシの生きる果てにも【何か】があるのなら、それをみてみるのも、悪くないかも、しれない。

 

「シオイのことも心配だしな、せっかく助けたのに、あの調子だとすぐまた死にそうだ」

 

「さっきまで死のうとしてた人には言われたくないで」

 

「では責任をとって死を

 

「あほ!!」

 

と怒鳴り私の頭を叩くシオイ、手のひらをさすりながら痛みに耐えるシオイ、なかなか単純な子だなと思うワタシ。

 

そうだな、せめて彼女に平穏が訪れるまで…それまでは…生きるとしよう。

 

「……改めて」

 

「ん?」

 

「改めてよろしく頼む、シオイ ユカ」

 

こうして、私の新しい世界での。

 

「こちらこそよろしく頼むわ!ナっちゃん!」

 

新しい物語が、始まる。

 

「…そのあだ名は、やめろ」

 

先はまだ、見えず。

 

 

 





キサラギカンナは『兵器』である


《あの人》
神無の記憶に深く刻まれた人、彼女は一体誰でしょう
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