インフィニット・オルフェンズ!   作:札切 龍哦

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バエル!!(いよいよ最初の山場が近いので初投稿です)


バエル・・・!(止まり戻りはしないよう、身体に気を付けて投稿しております)

バエルゥ・・・(ミカラウもしっかり書けたらな、と心から思います)

バエル!!(だけど小説で夫婦の営みはR18だぞミカァ!!)

バエルの下へ集え!!(最後に、原作者様!拝見していただき本当にありがとうございました!心から応援しております!!)

皆!!インフィニットオルフェンズの下へ集え!!


あの目は裏切れねぇ

「おぉ、リンじゃねぇか」

 

「随分と早いですわね?」

 

 

朝になって、まだ登校している連中がちらほらいるような早い頃。俺は偶然道でバッタリと出会ったセシリアとなんやかんやで連れ合い、第三アリーナ、まぁ要するに空きのグラウンドに足を運んだわけだが。其処に一番乗りって訳にゃいかなかった。其処には鉄華団一年二組所属、中国代表候補生のリンが先にいやがった。パイロットスーツのマゼンタが眩しいじゃねぇか。ヘッ、まぁ体つきで言やぁセシリアの圧勝だがよ。そこは言わねぇのが華ってやつだな。確実に殺されるからな

 

「私はこれから、学年別トーナメント優勝に向けて、特訓するんだけど」

 

「私も全く同じですわ。オルガさんとは、偶然会っただけですが・・・貴方も同じですの?」

 

「あぁ?俺は・・・」

 

俺は、ただシャルを護んのにてめぇを磨こうと思って自主練に来たってだけの話なんだが・・・いや、まぁ・・・トーナメントか・・・

 

俺は考える。トーナメントで、勝ち抜いて勝ち抜いて勝ち抜いて・・・天辺に辿り着けたんなら。少しはシャルのヤツにカッコいい所を、オルガ・イツカとしてのカッコいい姿を見せ付けてやれんじゃねぇかと。死んでばっかで、不安や心配ばっかりかけてるからな。たまには、いいニュースで喜ばせてやりてぇじゃねぇか。・・・まぁ、そんな俺の気概は一先ず置いといて、だ

 

「・・・!!」

「むむむ・・・!」

 

・・・下手すりゃ殺し合いになりかねねぇな、コイツら。鬱憤や鬱屈を押し込めさせんのも良くねぇし、何より会話で引き下がったりはしねぇよな。・・・仕方ねぇ、ストレス発散も兼ねて、俺も含めた・・・朝練と行くか!

 

「なぁ、ハッキリさせようじゃねぇか。誰が此処の一番かって事を。代表候補生の力、バッチリ見せてもらおうじゃねぇの?お二人さん?」

 

その言葉を待っていた。俺の安い挑発にサクッと乗ってくれる女二人。血の気が多いよな、こいつら。日頃ちゃんとカルシウム摂ってるか?好き嫌いは良くねぇぞ?

 

「よろしくてよ?誰が一番強く優雅であるか、風紀見習いの私が、この場で決着を付けて差し上げますわ」

 

「勿論♪私が上なのは分かりきってることだけど!なんならハンデでオルガをそっちにあげるわ」

 

・・・ハンデ扱いかよ・・・いや、あながち間違ってねぇがな。俺の獅電はとにかくスペックが低い。第二世代の初期型か量産型か・・・ワンオフアビリティ頼りのピーキー仕様なもんだから、試合には一人じゃ不利すぎんだよな・・・

 

「あぁ?言うじゃねぇかリン」

 

「ふふっ、弱い犬ほどよく吠えると言うけれど、本当ですわね?」

 

「どういう意味よ?」

 

「自分が上だって、わざわざ大きく見せようとしているところなんか、典型的ですものっ」

 

・・・それ、お前が言えたことかぁ?入学してのホームルームで俺らに真っ先に代表候補生の肩書き振りかざしてきたお前に言われちゃ、リンも可哀想ってなもんじゃねぇのかよ?いや、これは成長してるんだよな?自分の事を棚に上げてる訳じゃあねぇよな?挑発なんだよな?

 

「・・・その言葉ァ・・・そっくりそのまま返してあげるッ!!」

 

「ふふっ・・・試合開始、ですわね!」

 

二人がセーフラインをぶっちぎってISを纏い、展開し、装着する。やる気がみなぎってんのは良いことだ。ガツンと来やがれ、遠慮はいらねぇ!

 

「rideon──!」

 

セシリアのイヤーカフス、リンの腕輪、んで、俺の前髪。それらがキラッと光って身体にISを展開し終え、アリーナに三体のISが現れる。遠距離型、セシリアの『ブルー・ティアーズ』。近距離格闘型『甲龍』。んでバランス型、俺の『獅電』。なんだよ・・・相変わらず結構カッコいいじゃねぇか・・・フルアーマー型だから俺は見えなくなるがよ・・・

 

「行くわよメシマズ女!!酢豚の材料にしてあげるッ!!」

 

「よろしくてよ?イギリス料理の礎となりなさいな!」

 

「どっちもISバトルとは関係ねぇからよ・・・!」

 

セシリアが銃を構え、牙月を振り回し突撃する。朝から少し過激な朝練になるなと、タカと腹を同時に括ってライフルを構えて俺も突撃しようとしたとき──

 

「何ッ!?ヴゥアァアァアァアァ!!」

 

突然──セシリアもリンもいねぇ方角から、俺目掛けてバカでけぇ砲弾が一直線に俺目掛けて飛んできやがった。完全に二人に気を取られていた俺は、防ぐことも避ける事も出来ずに直撃し吹き飛ばされ、壁に叩き付けられ──

 

「・・・鳴り物入りなのは構わねぇがよ・・・長距離狙撃でガンメタすんじゃねぇぞ・・・」

 

成す術なく・・・ワンオフアビリティの世話になっちまった。本来の試合じゃ間違いなく負け確定じゃねぇか・・・瞬殺かよ・・・

 

「オルガ!大丈夫!?」

 

「オルガさん!くっ・・・!何者!?」

 

こんくれぇなんてこたぁねぇ・・・!死ぬのが怖くてIS乗れっかよ!俺にとって生きることは死と隣り合わせ、死を想わねぇ日はねぇ!

 

「──フッ。三日月を誘き寄せる撒き餌には丁度いい」

 

其処にいたのは、漆黒の機体。遠距離と近距離を器用にどちらもこなす万能型。ドイツの第三世代にして問題児・・・

 

「シュヴァルツェア・レーゲン・・・!ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・!」

 

「どういうつもり!?いきなりブッ放すなんて、いい度胸してるじゃない!」

 

二人が新たな乱入者に食って掛かる。そいつぁそうだ。打ち所が悪けりゃ、あるいは廻りに人がいたら大惨事もいいとこだった。ヤンチャにしても度が過ぎるってもんだぜ

 

「俺だったから良かったものの・・・この落とし前、アンタどう付けるつもりだ」

 

悪いことは悪いと言ってやんなきゃなんねぇ。力だとかなんだとかは関係ねぇ。団体行動や組織の輪を乱すような真似は、誰かがきっちり叱ってやんなきゃなんねぇんだ

 

「フッ、誰でも構わん。纏めてでも良い。──とっとと来い。鉄華団とやらの力、見せてみろ」

 

挑発的にクイクイと右手を振るラウラ。その態度に、まずはリンがブチキレちまう。・・・止めるつもりはねぇな。売られた喧嘩を流すほど俺は賢くねぇもんでよ!

 

「むっかぁー!新入りが調子に乗っちゃって!!行くわよセシリア、オルガ!アイツをシメる!」

 

「今回ばかりは一時休戦ですわ!団長!やりますわよ!」

 

「上等だ・・・!よぉし行くぞぉ!!」

 

俺らは調子に乗ってやがるドイツのラウラ・ボーデヴィッヒに向けて、一目散に突撃する。人を見境なく攻撃した落とし前、きっちり着けさせてやる。暴れたいってんなら、俺らが相手をしてやるよ──!!

 

 

 

「~♪」

 

「どうした、シャルル。随分と上機嫌だな?」

 

場所を変え、こちらは廊下。シャルル、三日月、そしてイチカは三人で登校を行っていた。朝練に参加していない面子が、シャルルと合流し共に学園へと足を運んでいるのである。昨日とは明らかに違うシャルルの態度に、イチカは不思議そうに訪ねる。鼻唄まで歌い、楽しくてたまらないと言った様子だ。なんならスキップも始めそうな雰囲気すらある

 

「そりゃあそうだよぉ。だって僕、昨日・・・」

 

「昨日?」

 

「あっ・・・う、ううん!何でもない!・・・オルガは朝練かぁ・・・僕も頑張らないと・・・!」

 

「・・・?ミカ、昨日なんかあったか、解るか?」

 

「裸の付き合い」

 

イチカの問い掛けに、歩きながらミカは右手の小銭をじっと見つめながら、静かに歩いている。それは、昨日の売店にて・・・

 

「どうした?そのお金。400円・・・?」

 

「お釣りだよ。受け取らないで帰っちゃったから。いつか、返さないと」

 

「お釣りぃ・・・?」

 

なんだか昨日に妙な事ばかり起こっているな、とイチカがぽりぽり頭をかいていながら、それでも三人で歩いていると・・・

 

「第三アリーナで模擬戦やってるって!」

 

「戦ってるの、オルガもいるみたいだよ!」

 

生徒たちが、その騒動を聞きつけ走っていく。この時間に戦っているもの。訓練ではなく、模擬戦。──一同に嫌な予感がよぎる。そして何より

・・・

 

「オルガが!?」

 

その名前を聞いた瞬間、シャルは走り出す。自らを庇い、護ると告げた男の下へ。顔を見合わせるイチカとミカ。共に、その原因に思い至り顔色を変える

 

「・・・もしかして、あのドイツの・・・!」

 

「行ってみよう」

 

最悪の事態への憂慮、そして乱れし風紀の気配。二人は先頭を走るシャルの背中に続き、共に渦中の第三アリーナの下へと向かう──

 

 

「リン!セシリア!!」

 

たどり着いた第三アリーナの様相は凄惨たる有り様、荒れ果てた戦場の大地の如くに様変わりしていた。あらゆる場所にクレーターが生まれ、そして観客席を別け隔てる仕切りが粉々に破壊されている

 

イチカの叫びは、二人のIS使いの惨状に向けてのものだった。徹底的に叩きのめされ、仰向けとうつ伏せにて非武装状態にて乱雑に野晒しにされている。止めはささぬ、無造作な獄門のように

 

「来たか、三日月・オーガス。風紀の乱れには流石に敏感だな」

 

「・・・」

 

ラウラの言葉に、静かに見返し見つめる三日月。彼は静かに察する。この大騒ぎは、自分を狙い定めた囮にして撒き餌に他ならない。そうでなくてはここまで騒ぎを大きくする理由がない。目論み通りに事を進ませた事にほくそ笑みながら、ラウラは三日月に手招きを行う

 

「私に二度も屈辱を味わわせた実力は認めてやろう。オリムラ・イチカなどいつでも潰すことができる。──光栄に思え。お前は私の最優先目標となった」

 

「ふーん・・・戦いたいの?」

 

「そうだ。私と戦え。聞けば貴様はこの学園最強の存在と聞く。相手にとって不足は──」

 

「オルガッ!」

 

シャルの悲痛な悲鳴が、二人の言葉を遮る。収まる砂埃の中に、彼はいた。セシリア、リンと同じように・・・徹底的に、叩き伏せられ這いつくばらされたのである

 

「よくもオルガをっ──許さない!」

 

「鉄華団の仲間を傷付けるヤツは許さねぇ!!」

 

怒りのままにISを纏い、ラウラに報復を行おうとするイチカ、シャルル。その激情に冷然とした態度にて返すラウラ。あわや大乱戦・・・その混沌の様相を阻んだのは、他でもない──

 

「待った」

 

「・・・何?」

 

三日月自身が仲間の逸る気持ちを手で制し、オルガを指差す。身体中から血を流しながらも・・・

 

「まだ終わってない。オルガの終わる場所は此処じゃない」

 

折れてはいない、けして立ち止まろうとしない・・・団長の姿を見つめ、立ち上がろうとするオルガの魂を見つめる。戦う意志は消えていない。萎えていない。戦う気力がある限り、それは敗けじゃない。だからこそ、まだ自分達の出る幕じゃない。そう三日月は決断した。己の意志で

 

「・・・解ってるじゃねぇか、ミカ・・・余計な手出しをしやがってたら、ぶん殴ってやるつもりだったぞ・・・そうだ・・・立ち止まらない限り、道は続くって言ってるだろうが・・・!」

 

気合いを込めて言葉と気迫を吐き出す。ISとの同調を高め、傷だらけの身体に鞭を打つ。その必死と全霊の痩せ我慢に、理解できぬとばかりにラウラは吐き捨てる

 

「何故そこまでする。第二世代以下の欠陥品ISに加え、三日月・オーガスより遥かに実力の劣るお前が。大人しく地に伏せ、這いつくばっていればいいものを」

 

「・・・そうかもな。確かに俺ァ、ミカに比べりゃミソッカスもいいところのポンコツだ。だがよ・・・俺は一度も、てめぇの境遇や実力に不満を懐いた事はねぇ・・・!」

 

そうだ。与えられた力を鼻にかけて暴れまわり、強い力を恵んでもらって粋がる事などするつもりはない。与えられた環境で、必死こいて足掻くだけの力と体があれば十分だ。其処から先は自分の仕事だ。自分の人生を、借り物の力で着飾るつもりなんてこれっぽっちもない。それに──

 

「このままじゃ・・・」

 

ダサいままじゃ終われない、無様なままじゃいられない。今までもそうだ。これからもそうなんだ。自分の肩には、ミカの新しい人生が、鉄華団の期待が・・・そして・・・──

 

「オルガ・・・また、そんなにボロボロになって・・・!」

 

(──なんて顔して、なんて声出してやがる。シャル。・・・心配すんな・・・俺を、誰だと思ってやがる・・・!)

 

目に映る、自らを見つめる女の顔。その顔が、不安に曇っていることが許せない。曇らせている自分が許せない。その感情に、その想いに──王の玉座が、奮い起つ

 

「こんな所じゃぁ──!」

 

高まる同調率。高まる出力。ISとの相性が、最高に粋がって、カッコいい姿を見せつけてやりたいと言うオルガの純粋な願いに応え──限界を突破し、その機能を全開とする・・・!

 

「終われねぇ──!!」

 

──ワンオフアビリティ、『希望の華』。オルガの気力と体力が保つ限り、傷を癒し完全回復し戦線復帰を可能とする、団長としての魂と力を昇華した、オルガにのみ赦された技巧にして奥義・・・!

 

「何、ッ──!?」

 

完全に仕留めた筈と油断していたラウラ。最早眼中にないとすら定義していた獅電。その不死身の如き蘇生に、完全に虚を突かれた形になる

 

「無い物ねだりしてるほど暇じゃねぇんだよ・・・!よぉし行くぞぉっ!!」

 

復活を果たし、獅電が唸りをあげてライフルをラウラに目掛けて乱射し突撃し距離を詰める。一発一発は気にも留める必要は無いほどに弱いもの、しかし──其処には、圧倒されるほどの気迫と気合いが存分に込められており、当たっては唯ではすまないとラウラの直感に訴えかけ、否応なく回避を優先させられてしまう

 

「チッ、雑魚が──!」

 

「嘗めない方がいいよ、ガリガリ」

 

「何ッ・・・!!」

 

「オルガがこのまま、何もしないわけない。・・・だろ?オルガ」

 

その言葉に、自らを見つめる視線と期待に応えるように──オルガの行動は、冴え渡る最適解を取ることとなる

 

「なっ!?」

 

力の限りに、ラウラに向けて近接のパルチザンを投げ付けたのだ。それは三日月が得意とするメイス投げ。戦術と戦法を把握し熟知した相棒の十八番。銃撃を回避していたラウラには、それを回避する手立てはなく──

 

「──このような雑魚に使わされるとは・・・!ふっ!!」

 

苛立ちに歯噛みしながら、飛来するパルチザンに向けて右手をかざし、秘蔵の装置にしてアビリティ・・・『AIC』、アクティブ・イナーシャル・キャンセラーを発動させる。空間干渉にて、あらゆる物体のベクトル操作を停止させるラウラの奥の手。それを、オルガの気迫に圧され『使わされた』のだ。その不快感を、そのまま返却せんがためパルチザンを叩き付けようとしたその刹那──

 

「あぁあぁあぁあぁぁーッ!!!!」

 

力の限りに飛翔し、視界外からのライフル殴打。尋常でない集中力を要するAICに集中していたラウラは、回避も叶わずにしたたかに直撃し、壁へと叩き付けられる。それは、白式が得意とする近接格闘攻撃。団長としての、団員の特性を把握したがゆえの、気合いの反撃にして報いた一矢・・・──

 

「くっう・・・!このぉ──死に損ないがぁあっ!!!」

 

三日月・オーガスと尋常に勝負を付けるはずが、添え物としてしか見ていなかった存在に土を付けられた。遥かに実力の劣る存在に、こうも屈辱を味わわされる。その事実がラウラの思考を煮立たせる。力の限りに転身し、怒りのままにオルガの獅電を──グラウンドに叩きつける

 

 

「ヴゥアァアァアァアァ!!!」

 

解除されるIS。巻き起こる砂埃。瀕死に喘ぐオルガ。だが・・・──その目は、確かにラウラを睨んでいる。けして退かず・・・──けして、折れぬと空を睨む

 

(──あの目は、裏切れねぇ)

 

瀕死の身体で、ワンオフアビリティが発動する寸前で。朦朧とする意識の中で心に浮かぶのは──あの時に見た、彼女の笑顔

 

 

庇ってくれて、ありがとう。・・・これからも、連れていってね。僕が見たことの無い場所、辿り着く場所に

 

 

 

(あの目に映る俺は、いつだって最高に粋がって・・・カッコいいオルガ・イツカじゃなくちゃいけねぇんだ・・・!)

 

あの顔。安心しきって、キラキラと煌めいて、自分を護ってくれると信じきった、あのキレーな笑顔。あの笑顔だけは、絶対に裏切れない。裏切るわけにはいかない

 

そうだ。その為なら何度だって立ち上がって見せる。弱かろうと、なんだろうと、痩せ我慢だろうと、何度だろうと立ち上がってみせる。例え死のうと──あの期待や信頼を、裏切るわけにはいかないのだから・・・!

 

「死ねぇえぇえぇぇっ!!」

 

迫り来るラウラに、視線を返すことしか出来ないオルガ。その剣が、彼の体を貫く刹那・・・

 

「──よく頑張ったね、オルガ」

 

ラウラの突進を、メイスを盾に阻む姿。白き装甲、禍々しくも勇壮なガンダムフェイス。穏やかに声をかける、優しくも強き風紀委員・・・

 

「──三日月・オーガス・・・!」

 

「勝負はついた。此処までだ。これ以上は──ダメだ」

 

鍔競り合う白と黒のIS。向かい合い交錯する視線。拮抗する中・・・ラウラの方が、勢いを緩め踵を返す

 

「・・・ふん。其処の雑魚の奮闘に免じ、此処は退いてやる。クラス別トーナメントで、決着を着けてやろう」

 

「いいよ。あと・・・」

 

「・・・?」

 

「お釣り」

 

「──いらんっ!!」

 

それだけを告げ、踵を返し、飛翔していくラウラ。その後ろ姿を、無言で見つめる三日月

 

「オルガ!オルガ!しっかり!ねぇ、返事してよ・・・!」

 

「・・・心配すんな・・・慣れてるからよ・・・」

 

「箒!保健室に連絡だ!セシリアとリンは俺が運ぶ!」

 

「一人でか!?」

 

「何のために鍛えてると思ってるんだ!急いでくれ!お前が頼りなんだ!早く!」 

 

「わ、解った!すぐに行く!」

 

シャルルの腕の中で、ワンオフアビリティの世話になるオルガ。イチカに運ばれるリンとセシリア。混乱と動乱の模擬戦は、幕を下ろす

 

──後に、チフユの一存にて。一切の私闘が禁じられたのは言うまでもない──




夜・部屋にて

シャル「もう、オルガってば無茶しちゃって・・・」

オルガ「そんなつもりはねぇよ。俺は、やるべき事をやっただけだ」

気絶したまま、俺は部屋に運ばれたらしい。・・・粋がって結局これか。情けねぇ話だぜ、まったくよ・・・イチカやミカにも礼を言わなきゃな。・・・それに、無茶だなんて欠片も思っちゃいねぇ。ただ・・・

「ふふっ、好きな人にカッコ悪いとこ見せちゃったから、恥ずかしいんだよね~?」

「お・・・お前・・・」

・・・そりゃあ、お前から見ちゃカッコ悪かったかもしれねぇがよ・・・俺は俺なりに、お前に筋を通そうって必死にだな。その、なんだ・・・カッコ悪くても、精一杯足掻いてやろうってだな・・・

「ふふっ。・・・オルガが好きな人が、僕だったら嬉しいな・・・なんて、ね」

「・・・ヘッ・・・」

・・・なんだよ。ちゃんと・・・分かってくれてるんじゃねぇか・・・たぶん、それは当たりだぜ。・・・付き合った事なんてねぇから・・・好きってどんなもんか、わかんねぇがよ・・・

「・・・さてと・・・着替えるか、シャル」

「うん。もう、オルガに見られても恥ずかしくないから・・・ね?」

「ん、おぉ・・・そ、そうだな・・・」

・・・俺は恥ずかしいっつうか、照れるからよ、向こう、向いてっから・・・

「わわぁっ!?」

「!?どうした!?どっか痛むのか──」

慌てて振り替えると、其処には──白いパンツと、やわっこそうなお尻をこっちにむけて、もぞもぞしてるシャルの姿が・・・──いや、これは、なん、なんつ、なんつーんだ・・・

「いたた・・・足引っ掛かっちゃった・・・わぁっ!?」

「・・・・・・・・・・・・────」

「お、オルガ・・・?」

「・・・・・・」

「・・・見ちまって、ごめんな、シャル。ちょっと行ってくる」

バタン

「あっ、オルガ・・・!?・・・・・・もう。ちゃんと言ってくれたなら・・・僕は、オルガになら、別に・・・」


三日月の部屋

オルガ「シャルを邪な目で見たくねぇ。ミカ、頼む」

「はい。バルバトスの太刀。一極式限定展開」

「サンキュな。──ぐぅうっ!!!」

キボーノーハナー

「シャル・・・俺はお前の貞操も絶対大切にすっからよ・・・身売りすんじゃねぇぞ・・・」


──学年別トーナメント、当日

イチカ「へぇ、しかしスゴいなこりゃ」

オルガ「見るからにお偉いさん、って感じだな」

シャルル「三年にはスカウト。二年には一年間の成果の確認に来ているからね」

イチカ「ふーん。鉄華団の俺らの事も、気にかけてくれてりゃいいんだけどな」

オルガ「そいつは、俺らのこれから次第だな。頑張ろうぜ、イチカ」

「勿論だ、団長。・・・しかし、ホウキは誰と組むんだ?ペアが決まらないなら抽選とか言ってたが・・・」

三日月「あ、対戦相手、出たよ」

シャルル「・・・えっ!?」

イチカ「な・・・!」

オルガ「これは・・・!?」


女子更衣室

ホウキ「・・・なんと言う組み合わせだ。・・・最悪だ・・・」


シノノノ・ホウキ&ラウラ・ボーデヴィッヒVSオリムラ・イチカ&三日月・オーガスVSオルガ・イツカ&シャルル・デュノア


「勘弁してくれよ・・・ミカと一回戦じゃねぇか・・・」

「頑張ろうね。いい試合にしよう」

「勘弁してくれって言ってるだろうが!!バランス考えやがれ!一人でいいだろミカァ!!」

「逃げないで」

「離しやがれぇ!!」

イチカ「・・・どうなるんだ・・・」

シャル(・・・オルガと同じチームだ・・・!やった!嬉しいな・・・!)

「頑張ろうね、オル」

キボーノーハナー

「オルガ──!?」

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