インフィニット・オルフェンズ!   作:札切 龍哦

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本家を楽しんでもらいたいから初投稿です


オルガ「おはよぉございます」

「あははっ、挨拶当番?随分オラついてるね!」

「あ、わりぃ。そう見えたか。おはようございます・・・」

「ううん!オルガらしい!」

「言えてるー!」


「なんだよ、そりゃ・・・」

キーンコーンカーンコーン

「そらチャイムだ!気ぃ引き締めて走れ走れぇ!遅刻したヤツは、確実に殺されるぞ!チフユ先生にな!」

「「「きゃー!こわーい!」」」

「そらそら走れ走れぇ!」

「誰に殺される、だと?」

「エッ──」

キボーノハナー♪


確実に殺されるぞ!

「これより、再来週に行われるクラス対抗戦の代表者を決める」

 

朝のチャイムが鳴り終わり、ホームルームに突入した直後。チフユ先生がそんな話題を、よく通る声で教室全体に響き渡らせやがった。朝で寝惚けた頭にスッと通るピシッとした、前に立って話すのにピッタリな声じゃねぇか。団長として、俺もきっちり見習わねぇとな

 

「・・・何をする役目なの、代表戦って」

 

参考書と教科書を一心不乱に読みながら、真後ろの席からミカが俺に囁いてくる。学園に入学してからミカはいつもこんな調子だ。暇さえあれば勉強、勉強・・・よっぽど文字が読み書きできることが嬉しいってのがビシビシ伝わってきやがる。学生の本分は勉強。きっちり、学園ルールを守ってやがるんだな。すげぇよミカは

 

「そりゃあお前・・・代表戦ってのは・・・」

 

「読んで字の如く、クラスの代表として他のクラスと戦う選ばれたクラスのトップですよ。言うなれば、クラスの顔ですね」

 

山田先生が、こっそりひそひそと耳打ちしてくれる。・・・距離が近いんじゃねぇか。当たる、当たるじゃねぇか。待ってくれよ・・・

 

「三日月、オルガ。分からないことがあれば挙手して聞くように」

 

バレバレじゃねぇか・・・俺達は余計な気を遣わせちまった山田先生とチフユ先生に詫びをいれ、真面目に話を聞く姿勢に戻る。ピシッと背筋を伸ばして・・・

 

「オルガ、見えない」

 

・・・ちょっと体を斜めにずらして座ることにする。俺、無駄に図体がでかいからな・・・入れ替わった方がいいんじゃねぇか?

 

「クラス代表とは、対抗戦だけでなく生徒会の会議や委員会への出席など。・・・まぁ」

 

「火星の王・・・!」

 

皆の矢面に立って、皆のために懸命にしのぎを削る・・・そいつはまさに王!火星の王なんじゃねぇのか!?そいつぁつまり──

 

「ここは地球で、日本。火星じゃないし、一番偉いのは総理大臣か天皇って言うんだよ、オルガ」

 

・・・おぉ・・・ミカ、めちゃくちゃ知識を詰め込んでるじゃねぇか・・・俺も下手すりゃ、あっさり抜かれちまう・・・いや、抜かれてるんじゃねぇのか・・・?

 

「自薦他薦は問わない。誰かいないか?」

 

自薦他薦は問わない、と聞いてクラスがざわついてきやがる。こいつぁ中々に骨太な選択を迫ってきやがった。クラスの顔を自負するなら、此処にいる誰よりも強いって事を告げるってことだ。粋がるだけじゃ自薦は無理だ。他薦も、自分の命やメンツを預ける相手を推し進めるんだ。生半可な覚悟や絆じゃできやしねぇ。ここは、どうしたもんか・・・

 

「はい!私はオリムラ君、ミカくん、オルガを推薦します!」

 

そんな中、クラスメイトの一人が声を上げ、俺達男組の三人を指名してくれた。・・・いいのか?男が代表だと、なんというか・・・

 

「いいよー」

 

ミカはそんな事を気にせず気負わず、のんびりと手を上げる。見栄や体面はどうでもいいが、薦められた、認められてるってことが嬉しいのかも知れねぇな、ミカは

 

「私もそれがいいと思います!ミカくんは真面目で、いつも自分がやるべき事をやってくれる誠実な男子だと思うからです」

 

「ミカくんがいるなら、当然オルガも外せないよね!団長だし、ミカくんの保護者みたいなものだしね!」

 

「オリムラ君、平団員なんだからきっちり支えてあげなくちゃね?さんせー!」

 

次々とクラス代表の支持が集まっていく。・・・なんだよ、皆男とかの偏見を持たないでちゃんと接してくれるんじゃねぇか!どうやら物怖じしてたのは俺だけみてえだな!

 

「ありがとうございます!・・・やれるよな!イチカ!」

 

「ん、ぁ・・・まぁ、二人がいるならいいか!解った、チフユ姉、俺やるよ!」

 

手を上げ、ハキハキと意志を示す弟に満足げな笑みを浮かべてやがるチフユ先生の顔は、中々に新鮮な表情じゃねぇか。ツンツンしてるが、弟が可愛くて仕方ねぇタイプなのかぁ?

 

「三人か・・・よし、良いだろう。全員専用機持ち、男性操縦者。代表には申し分ない。ならこれで・・・」

 

チフユ先生が決まりと太鼓判を押そうとした時──それにまたまた、水を注しやがるエリート様が現れやがった

 

「納得が行きませんわ!そのような選出は認められません!」

 

バン、と机を叩き、声を張り上げるのはあの件のエリート様、セシリア・オルコットじゃねぇか。なんだよ・・・選出が認められねぇならなんでギリギリまで黙ってやがった。他薦待ちか?自分の立ち振舞い分かってんのか?人望集める努力はしたのかよ?

 

 

「男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!このセシリア・オルコットに、1年間そのような屈辱を味わえと言うの?」

 

「はあぁあぁ・・・」

 

やべぇ、溜め息が漏れちまった。おまけに目もいてぇ。指で目を抑えながら、エリート様の意識の高さにほとほとうんざりさせられる

 

なんで率先してクラスの輪を乱したがるんだ。1年間暮らしていく仲間に、そんなに孤立して浮きたいのかよ。エリートの肩書きは、辛いときになにもしてくれねぇ。一緒に飯も食えねぇし手も差しのべてもくれねぇんだ。人間は一人じゃなんもできねぇってこと、ISとかいうオモチャにかまけて忘れてんじゃねぇのか?

 

「大体!文化も何もかも後進的な国で暮らさなくてはいけない事が、私にとっては堪え難い苦痛で・・・!」

 

「それはダメだ」

 

セシリアの聴くに堪えない国辱を聞きかね、三日月が風紀委員のワッペンを綺麗に磨きながら、エリート様の声を遮った

 

「チフユも、イチカも日本で過ごしてる。此処にいる皆も、日本で過ごして暮らしてる人は沢山いる。IS学園も、日本にある学校なんだ」

 

「・・・か、庇いだてしますの?私は、ただ事実を・・・」

 

「俺もオルガも、此処で頑張ってくって決めたんだ。俺達の居場所を──馬鹿にしないで」

 

それは、ミカのはっきりとした意思表示だった。辿り着く場所の一つを虚仮にされるのは我慢ならねぇ。そういうことなんだな。そんで・・・ダチを虚仮にされて黙ってはいられねぇ。そういうことなんだろ、ミカ。なら・・・

 

「・・・そういや、俺な。アンタの国を勉強してみたんだよエリート様」

 

憎まれ役や嫌われ役を買うのは、団長の俺の仕事だ。どのみちつまんねぇいさかいを残しちゃいじめに繋がるかも知れねぇ。そんなチンケな真似、俺が許さねぇ。ぶつかるなら、派手にやろうじゃねぇか

 

「世界で一番マズい飯が御自慢みてぇだな。イギリスって国はよ。寿司に天ぷら・・・食大国日本サマに喧嘩売るには、ちっと身の程があってねぇんじゃねぇの?」

 

バカにしやがった事を直接返してやる。御国柄としてこの手の侮辱は堪えらんねぇだろ。お前が先に手を出したんだ。文句は言わねぇよな

 

「なっ──!!!美味しい料理は沢山ありますわ!!」

 

「ウナギパイ・・・マーマイト・・・スターゲイジーパイ・・・美味しい料理?アンタ何いってんの?」

 

・・・グルメかよ、ミカ・・・

 

「あなた、私の祖国を侮辱しますの?」

 

「解らねぇか?侮辱して差し上げたんだよ。日本で日本をバカにするイギリスのエリート様に分かるようにな」

 

視線が交錯する。噛み殺すような視線が俺とミカを射抜くが・・・舐めんじゃねぇよ。ミカは潜り抜けた修羅場が、俺は死んだ回数がまるでちげぇんだ。嬢ちゃんのカワイイにらめっこなんかにビビるかよ。さて──

 

「──決闘ですわ!!」

 

食いついて来やがった。この手のタイプはすぐに頭に血が上りやがる。四の五の言うより、シンプルにケリをつけた方が分かりやすい

 

「おぉ、上等だ。ビビって逃げるんじゃねぇぞ。よぉしお前ら!気ぃ引き締めて」

 

「それはダメだ」

 

えっ!?俺もかよミカ!何がダメなんだ?まさか戦うななんて言うんじゃねぇだろうな。此処はスカッと発散させねぇと、後々いじめやリンチに繋がっちまってアイツ自身の為にも・・・

 

「オルガを出すくらいなら、俺が出る」

 

は?・・・お前、ミカ・・・

 

「風紀委員だし、皆とのいさかいを何とかするのは俺の役目だから。アイツを、皆と仲良く出来るようにすればいいんでしょ」

 

・・・そっか。お前、風紀委員のワッペン大事にしてたもんな。その肩書きは、学園の勲章でもあるって訳だな。なら・・・

 

「──そっか。ミカ・・・やってくれるか?」

 

「勿論。いいよ」

 

ミカの名乗りに、エリート様は鼻をならす。誰でもかかってこいと言わんばかりだ。後悔すんなよ・・・と言いたい所だが・・・

 

「ハンデはどのくらいつけんだ?リクエストを聞いてやるよ」

 

俺は欠かさず、エリート様に告げてやった。大事な事だ。下手すりゃ生死に関わることだからな

 

「あら、早速お願いかしら?威勢がいいのに慎重ですわね?」

 

「あ?何言ってやがる。ミカにつけるハンデに決まってんだろ。骨だけバルバトスからルプスレクスまで、どの形態でやるか選ばせてやるっていってんだよ」

 

ミカのバルバトスは、形態がそりゃあ多い。進化が進めば進むほど手がつけらんねぇ強さになる。絶対防御だのフィールドだの。無事でいられる保証はどこにもねぇぞ。何せ俺らは、文字通り生きるのに必死で手加減や手心なんざまるで縁がなかったんだからな

 

「む、むしろ。私がハンデをつけなくていいか迷うくらいですわ?」

 

「は?・・・あんた正気か?」

 

待て、これは予想外の展開だぞ。無くていい?お前状況を・・・ってかミカの実力分かってんのか?ハンデに甘んじるべきなのはお前かミカか、どっちだ

 

「おいセシリア、嘗めすぎなんじゃないか?」

 

「日本男児は引っ込んでいてくださいまし!」

 

「確実に殺されるぞ!!」

 

ミカは目の前に立った敵には容赦しねぇ、俺が一番分かってる。グチャグチャになっちまうぞ!それはなんでも・・・

 

「オルガ、こいつがいいと言っているんだ。自由にやらせてやれ。責任は全て私が取る」

 

チフユ先生・・・だがよ。エリート様も一応クラスメイトで、殺していいって訳じゃ・・・

 

「話は纏まったな。では、対決は次の月曜、第三アリーナで行う。オリムラ、オルガ、三日月、そしてオルコットはそれぞれ準備をしておくように」

 

・・・引き立てた俺が言うのもなんだがよ。こういう場合、先生は真っ先に止めるもんじゃあねぇか・・・?万が一にも人死になんて起こっちまったら学校生活どころじゃねぇぞ・・・

 

「吠え面をかいて逃げるなら今の内でしてよ?獅子はウサギを狩るのにも全力を尽くしますわ!」

 

「ふーん」

 

 

とりあえずミカには・・・殺さないようにする方法を教えなくちゃな・・・

 

 

エリート様・・・いや、セシリア・・・死ぬんじゃねぇぞ。死んでもなんとかなるのは俺だけなんだ。大事な未来を溝に捨てんのだけは、はやまんじゃねぇぞ・・・




イチカ「スゴいことになっちまったな・・・」

ミカ「まぁ、風紀委員の仕事だよ」

「気を付けろよ、ミカ。鼻につくけど専用機持ちだ。間違いなく強い」

「うん。なんとかする。・・・で、頼みがあるんだけど」

「?」

「もし俺が、やりすぎそうになったら・・・オルガや皆と一緒に、止めてほしい」

「止める・・・」

「多分、皆の声が聞こえたら・・・止まるから。じゃ」

「あ、おいミカ!」

「見回り、行ってくる」

「・・・やりすぎ・・・手加減か・・・」

(・・・つまり、特訓場所が必要って事だな。なら・・・)

オルガ「なんだ、当てがあんのか?」

「あぁ。幼馴染みが剣道やっててさ」

「・・・まさか・・・『シノ』か?」

「・・・シノぉ?」

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