アグニカポイントを大量進呈された私は、そのような世迷い言に惑わされる存在ではない
オルシャルを心が強く望んでいるので初投稿です
職員室
「代表を辞退する?」
「私は敗北者で未熟者な事を痛感いたしましたから、自主的な辞退を!」
「俺は・・・やり過ぎたから」
「ふむ・・・となると、後続は・・・」
「はい!」
「あぁ」
「・・・いいんだな?」
「未熟ですが、きっとやってくれますわ!」
「オルガを、信じてるから」
「・・・そうか。では、そのように要望を通す。授業が始まる。グラウンドに行け。・・・あぁ、それと」
「?」
「オルガは特例として、オリムラとペアで戦うことを許可する。ヤツのワンオフアビリティでは戦闘にて特性を活かしにくい。一度発動したなら、オリムラに戦闘権を譲渡する形で戦うような形だ。異論はないか」
「オルガが死んでも、イチカが戦えるなら大丈夫ってことだね。ありがとう。そうしてもらうと助かる」
「よし。・・・それと」
「?」
「夕方、食堂は貸しきっておく。・・・以上だ。行け」
「・・・ありがとう」
「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう」
アリーナ、まぁグラウンドに並ばされた俺達一年一組。インナー一枚のきわどい格好で、クラスの皆は授業に望む。俺ら男子も、おんなじように並んでるわけだ。で、先生の指示を待ってる。どこも上下社会。かわんねぇな、こういうのはよ
クラス連中の全員がピシッと整列して気を付けして並ぶ中、白いジャージを着こなして出来る女っぷりをまざまざと見せてきやがるチフユ先生の言葉に、俺は気を引き締めて言葉に耳を傾ける。授業の実践訓練、そんでこれから学んでいく基礎中の基礎。飛行の訓練をやって見せろ、って事らしいな。そいつぁ心が踊るってもんだ。──声をかけられる相手は、大抵察しがつくからよ
「オリムラ、オルガ。ミカ、オルコット。試しに飛んでみろ」
おいでなすった。やっぱりここは専用機持ち、んでもって男連中が率先するってのが筋ってもんだ。女子が怪我をする、下手こいて巻き込まれ事故なんて笑えねぇ結果は防がなきゃなんねぇ。頑丈な男が、先陣を切ってやんねぇとな
「・・・ミカ。授業の最中に参考書を読み耽るな」
「ぁ、ごめん」
ミカのヤツは先生の指示が出るまでずっと本を読んでやがった。そのページは『基本飛行動作』って項目で、色々難しいことが書いてやがる。・・・お前、本当に真面目だな。気が付いたら勉強をしてやがる・・・自前でやると決めたらとことんまで極めんのがお前って事なんだな・・・
「ミカくん、一番真面目なのに怒られてる~」
「しっかりー!風紀委員!クラスのエースなんだからねー!」
ポリポリと頭をかくミカに、クラスの皆は茶化しながら気安く接してくれる。どうやら前の戦いの禍根は無さそうだな。日頃の行いだ、やったなミカ!
「解りましたわ!では、衣装替えを!」
セシリアがハキハキと前に進み、左耳のイヤーカフスを輝かせて全身に鎧みてーな蒼い装甲を一瞬で纏う。ISってのは普段は待機状態で体のどっか・・・アクセサリーにして持ち運ぶのが通例なんだとよ。ミカに丁寧に教えてもらったぜ。サンキューなミカ!
「さて・・・」
となると、次は俺な訳だ。いよいよ俺のIS・・・長い間見せれなかった秘蔵っ子、『王の玉座』の御目見えってヤツだ。展開の仕方は頭に叩き込んである。期待の目線がビンビン俺に突き刺さるのを感じるぜ・・・待ってろよ・・・!今すぐ、ここで!見せてやるよ!
「──rideon!」
俺の言葉に反応して、ジャキンと尖ったナイフみてーにセットされた俺の『前髪』がキラリと光って、俺の身体に鎧、ISがガキンガキンと装着されていく。白いボディに、イカした一本の角。火星の王が腰掛ける玉座、んでもって俺の唯一の専用機にしてIS・・・
「名付けて、『獅電』だ!なんだよ・・・結構カッコいいじゃねぇか・・・フヘッ・・・」
「「「「おぉ~!!」」」」
歓声に機嫌を良くする俺。あぁそうだ、解ってる。このいぶし銀な感じ、男も女もバッチリ惹き付けるシンプルイズベストなフォルム。見とれちまうのも無理はね・・・ん?
「行くぞ。──バルバトス」
見ると、クラス連中の視線は俺じゃなく隣の──アトラから貰ったミサンガに念じ、バルバトスを纏ったミカに集中している事に気付く。筋骨粒々に二本の角。禍々しいフォルムの癖に三日月の体格に合わせてちんまいバルバトスが、女子の関心を独り占めしてやがる
「可愛い!カッコいい!」
「見た目は怖いのに、なんか惹き付けられるよね~!ミカくんもクールだから、マッチしてるって言うか!」
「あのメイスにロマンを感じる・・・おっきくてぶっとい・・・」
「あわわわわわわわわわわ・・・・・・・・・」
思い思いの感想と関心がバルバトスに向けられてやがる。セシリアのやつは妙にビビってるが・・・どうかしたのか?ミカのヤツはそんなクラス連中に手を振ったり愛想よく付き合いやがる。ヘッ・・・社交性が身に付いてきたじゃねぇの。なら、俺から視線をかっさらった事は責めねぇでやるよってな
「よし、できた!さあ、行こうぜ、皆!」
見るとイチカの奴もIS、『
「よし、飛べ!」
チフユ先生の号令に、セシリアのブルー・ティアーズは素早く上昇し青い空を威勢よく駆け抜けて飛んでいきやがる。エリートの肩書きは決してフカシってわけじゃぁねぇみてぇだな。やるじゃねぇか!
「じゃ、二人とも先に。ガンダムバルバトス、出るよ」
それに続くように、バルバトスを纏ったミカが力の限り地面を蹴って空を飛び、背中んとこのバーニアを吹かして勢いよくかっとんで行く。跳躍と飛行をうまいこと組み合わせた移動の仕方に、連中の目は釘付けだ。俺らも負けちゃいられねぇ・・・ミカばっかにいいカッコはさせねぇぞ!
「イチカァ!気ぃ引き締めて──ヴァアァアァッ!?」
「うぉおぉおぉおぉお!?」
白式の飛行を試みやがったイチカは、何故かへなへなした軌道でハエみてーにうぉんうぉん飛び回りながら上昇していく。──あぶねぇ!俺にぶつかるとこだったぞ!イチカァ!
「なんだよ・・・」
だが、ぶつかってみるのも悪くはなかったかもな。ISを纏った俺の耐久性はどんなもんか、試してみたい気持ちはあるっちゃあった。まぁ、ここは怪我が無くて良かった・・・ってことにしとくか!
なんとか空に飛び立った俺ら四人は、飛行と操縦センスがバッチリと目に見える形で姿勢と速度に現れてやがった。ミカの奴がフルスロットル、フルスピードで誰よりも速く先頭をかっとんでいく。そいつは何度も何度もシミュレーションと練習、んでもって経験と感覚で掴んだ努力とセンスの現れだ。鉄華団のエースのセンスは伊達じゃねえって訳だな。急停止や旋回までこなしてやがる。何度言わせるんだっての。すげぇよ、ミカは・・・
セシリアも、ミカ程じゃねぇが高速で、上品に風を切って飛んでやがる。ミカが荒々しく空を蹂躙する飛び方なら、セシリアのヤツは舞うように、って感じだな。制動じゃぁ、ミカよりうまいかもだ。
で・・・イチカのヤツと、偉そうに解説してる俺らはというと、だ
『速度が遅い!スペック上の出力では、ブルー・ティアーズより白式の方が上だぞ!オリムラ、気合いを入れろ!』
ケツを叩かれながらのさのさと飛んでるイチカの隣で、俺は落ちねぇようにするのが精一杯だった。いや、結構ムズいぞこれ。独特のふわふわっていうか、足につかねぇ頼りなさって言うか・・・
「ヴァアァアァッ!──ハラハラさせやがって・・・」
うっかり落ちそうになっちまった俺はあわてて体勢を立て直してなんとか飛行の体面を保つ。ミカやセシリアはホイホイやるなか、自分のイマイチさには情けねぇ気もするが・・・まぁ、俺の操縦技術としてはこんなもんなのかもな
「そう言われても・・・自分の前方に角錐を展開するイメージだっけ?んん・・・よくわかんねぇ・・・」
「──セシリア。イチカにコツを教えてあげて。俺より、セシリアの方が細やかさでは上手いから」
「は、はい!光栄ですわ!三日月さんもお気をつけくださいな!」
頭を唸らせてるイチカ、それに俺らを見かねたのか。前にいた二人が速度を落とし、ミカは俺に、セシリアはイチカの傍にアドバイスをするために寄ってくれやがった。ありがてぇ!
「イメージは所詮イメージ。自分にあったやり方を模索するほうが建設的でしてよ?」
「イチイチ細かく考えないでいいよ、オルガ。空にも、俺達の道は続くって考えて、進み続けるだけでいい。止まらない限り、道は続くんだ」
ミカの言葉に、俺も気合いと勇気が沸いてくるのをハッキリと感じ取れる。へヘッ、最初からそう言ってくれりゃあ、バカな俺でもわかるってもんだ!
『オルコット。急降下と完全停止をやってみせろ』
「了解です!では、三日月さん!お先に!」
「気を付けてね」
先生の指示に従い、セシリアのブルー・ティアーズは地面に向かって思いっきり加速し、んでもってぶつかる寸前スレスレってとこで速度と勢いを殺し、ピタッと止まって着地する。拍手が巻き起こるのがこっからも聞こえてくるぜ。やりやがるじゃねぇか!流石鉄華団だ!
「上手いもんだな・・・」
イチカのポカンとした声を背中に、俺も負けてはいらんねぇと思いっきり加速をつける!セシリアとミカにも負けねぇってとこ、クラスの皆にも見せねぇとな!操縦技術で負けてんなら、気合いだ気合い!!
「よぉし行くぞぉ!!──うっ!?」
意気込んでみたはいいが、思いっきりかっ飛ばしたISの最高速度は半端ねぇ速度だ!気合いと比例して速度が出やがる!ブレーキどころか止まれねぇ!やべぇ・・・!地面がみるみるうちに迫ってきやがった!
「しくじっ──ヴァアァアァッ!!」
ヤバい!ぶつかる!ぶつかる!!そう感じ、ワンオフアビリティの世話、つまり死ぬんだなと直感的に理解した──そんときだった
「オルガ──!!!」
さっきまでへろへろ動いてた白式がものすげぇスピードと速度で俺に近付いて、衝撃を殺すように俺を庇いやがった!な、何やってんだイチカお前!!
「とりあえず舌噛むなよ!うわぁあぁあぁ落ちるー!!!」
俺とイチカは抱き合い、もんどりうつようにすげぇ加速で──グラウンドに叩き付けられる。最高速度で二つのISだ。グラウンドに地面に穴の一つや二つは空くもんだと思ったが──そいつぁ、防がれてたんだ
「・・・二人とも、大丈夫?」
ミカだ。あの一瞬で、俺ら二人より速くブーストを吹かして着地地点に先回り。装甲を頼りに俺ら二人を纏めて護り受け止めたって事になる。グラウンドも、俺らも、全部まとめて護りやがった。ったく・・・
「あ、あぁ・・・何とか無事だよ。ありがとな、ミカ」
「気にしないで。風紀委員だから」
「イチカお前・・・何を無茶してやがる。いや、やればできんじゃねぇか」
「ん?・・・あぁ、そう言えばそうだな。オルガが危ないって考えてたら、なんか飛べてた。ISが応えてくれたってことかな」
「・・・ISが、応える、か・・・うん、いいね、それ」
バルバトスが俺ら二人をゆっくりと下ろす。すげぇ衝撃だってのに、ミカはまるで気にしてねぇ。んでもって、イチカのヤツには借りが出来ちまったな。でけぇ借りがよ
「すまねぇ、イチカ。恩に着る」
「気にするなって。ダチを助けるのは男として当たり前だ」
「三日月さん無事でして!?お怪我は!?御体に異常はありませんか!?」
「大丈夫。・・・皆も無事?」
一同は顔を見合わせる。どこも怪我はしてねぇ。心配ねぇよ。──頼りになるダチ公どもだぜ、全くよ
「オリムラくん!三日月くん、イツカくん!大丈夫ですか!?」
ヤマダ先生、チフユ先生も心配そうに歩み寄ってくれるとはよ。気を遣われるって結構嬉しいじゃねぇか・・・ヘヘッ
「・・・オリムラ。いい速度だったぞ。その感覚を忘れるな」
「は、はい。いやあの、助けるために咄嗟だから・・・」
「それを忘れるなと言っている。よし、四人とも、すぐにまた飛んでもらう!準備しろ!」
その厳しいスケジュールの授業に、俺らは必死に飛んだり旋回したり、たまに団長命令が鳴り響いたり、必死こいて食らい付いた
やること為すことが初めてばっかりで、もどかしく感じることもあるがよ・・・
「三日月さん!加速、展開、そして攻撃の回避!その、宜しいでしょうか!」
「うん。遠慮しないでいいよ」
「それでは・・・!はぁっ!!」
「ヴァアァアァッ!!!!」
「あ・・・」
「・・・流れ弾は大抵俺に当たるからよ・・・だからよ・・・無駄撃ちすんじゃねぇぞ・・・」
「ナノラミネートアーマーが有る筈だから、ビームは大丈夫な筈なのに・・・ワンオフアビリティの副作用かな?」
「おーいオルガー!!しっかりしろー!!」
でも、すげぇ楽しくて、笑いが止まらねぇ場所で、こうやって騒げんのは、すげぇ良いことだと俺は思う
「もももももも申し訳ありませんわ三日月さん!!かくなる上は、私、セプク、ハラキリをもってお詫びを・・・!!」
「しなくていいよ。オルガは、死んでも大丈夫なオルガだから」
──良かったな、ミカ。これからも、上手くやっていこうぜ
だからよ・・・・・・日々の生活を、止めるんじゃねぇぞ・・・──
夕方、食堂にて
オルガ「よぉしお前ら!今日は遠慮しねぇで思いっきり楽しめよ!!──クラス代表就任に、乾杯!!」
『オリムライチカ オルガ・イツカクラス代表就任おめでとう!』
「「「「「かんぱーい!!!」」」」」
イチカ「オルガはともかく、何で俺がクラス代表なんだよ?」
セシリア「それは、私と三日月さんが辞退したからですわ。三日月さんに身の程を弁えずに挑み無様に敗北した愚かな私と・・・」
三日月「試合内容に問題あり・・・だから、自主的に俺は落選で辞退。その代わり、オルガとイチカを推薦で選出したんだ。先生にもそう話をつけてる」
「そう言うわけで・・・私と三日月さんは、それぞれ二人にクラス代表を譲ることにしましたの!どうか、これより先も懸命に頑張ってくださいませ?」
オルガ「ミカお前・・・」
「頼んだよ。オルガとイチカなら、任せられる」
「・・・いや。解った。任せとけ、ミカ」
ホウキ「責任重大だぞ。やれるのか、イチカ」
「ん・・・そうだな。二人が推薦っていうなら、やってみるか。なんとかなるよう、気合い入れてやってみるよ。団員として」
「・・・そうか。なら、いいんだ」
「ありがとうな、ホウキ」
「モップはイチカが心配なんだよ」
「な!三日月、余計な事を言わなくていい!」
「言わなきゃ、伝わらない」
「う・・・そ、それは・・・」
パシャ!
「ヴァアァアァッ!!!!」
「はいはーい、新聞部でーす!悪魔の風紀委員三日月・オーガス君!クラス代表の一人、オリムライチカくん!写真、いいかな?」
「ん?いいよー」
「か、構わないけど・・・」
「はーい!じゃあ立って立ってー!じゃあ男と男で、握手してもらおうかなー!」
「これからも、よろしくな。ミカ」
「うん。頑張って、イチカも。・・・皆も、一緒に写ろう。仲間で、家族だから」
のほほんさん「わーい。皆で撮ろうよー」
「男同士の友情なら、争いは起こらないしね~!」
「オルガ?オルガー!どこ行ったのさオルガー!」
「おー!いいよー!じゃあ笑顔で笑顔でー!三日月くん緊張しないでー!オリムラくん笑顔かたいよー!はーい、皆とるよー!はーい!」
「「「「「「ちー、ず!!!」」」」」」
パシャッ──
「・・・あれ?オルガ?」
キボーノーハナー
「・・・明治時代では、写真を撮ると魂を抜かれるって信じられていたからよ・・・」
「・・・なんで死んでるの?」
「迂闊に・・・フラッシュ炊くんじゃねぇぞ──」