前線日記   作:へか帝

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世界観ガバってるのゆるして
ご都合主義もゆるして


一冊目

〇月〇日

 今日でクルーガーのクソ野郎ともおさらばだぜ。シーユー筋肉ゴリラ。あんな職場二度と戻るか。悪いなカリーナ、俺は先に抜ける。

 この清々しい気持ちを記録するため、今日から日記をつづることにする。

 これで俺は完全に根無し草となったわけだが、まあなんとかなるだろ。

 

〇月×日

 

 丸一日彷徨った結果無人となった工場を発見した。持ち逃げした四丁の銃器は人形との戦闘で使い物にならなくなってしまった。これ以上の戦闘できないところまできていたのでギリギリセーフってところだな。でも風穴とか空いちゃってどうすんのよコレ。

 肝心の工場だが、当然ながら廃墟ではあるものの崩壊の規模も小さい。そして機材は意外なことに状態が良かった。それなりの期間放置されたせいかなかなか酷い有り様だが、致命的な欠損はなさそうだった。電源さえどうにかなれば動くんじゃないだろうか。

 どういういきさつでここが廃棄されたかはわからんが、この町工場はあの紫色のぶっ壊れた人形どもも近寄ってこないしいい拠点が手に入ってよかった。雨も凌げるし、暇つぶしの道具にも困らなさそうだ。

 

 

〇月□日

 

 倉庫に大量の保存水と乾パン等の非常食を見つけた。俺一人なら当分は困らないだろう。おあつらえ向きに予備バッテリーも少量ながら発見できた。更に工場内を漁ってみたところ、素晴らしいものを見つけた。

 コンデンサだ。これさえあれば電力が蓄えられる。使い捨てのバッテリーくらいは作れるだろう。予備バッテリーが全滅する前にはどうにかしないとな。

 それとこの工場だが、どうやら銃の工場だったらしい。前時代的な古めかしい設計図が、なんと紙媒体で残されていた。よくもまあこんなご時勢に紙文書を採用したものだ。この日記も同様に、端末なしに自由に閲覧・記入できるのは電子データよりも優れた点だな。こうして何もかもが機能停止しても紙は紙のままだからな、お陰様でしっかり閲覧できる。埃まみれだったり黄ばんでいるのはこの際我慢しよう。そこまで贅沢は言えん。

 しかしこの工場は異様にマニュアルが多い。そこらじゅうに張り出されているのを確認できた。普通はもっと標語とか注意喚起が多くを占めているものだろう。恐らくだが、ここは工場が稼働し始めてから日も浅いまま廃棄されてしまったのではないか。だとすれば機材の状態が良かったのも頷ける。機材表面の油膜がなく、ダメージは錆びによる経年劣化がほとんどで摩耗や破損が少ないわけだ。

 

〇月△日

 

 結論から言うと、銃ができた。無事バッテリーは役目を果たし、機械は動いた。マニュアルに沿って図面を読み込ませ基本的な入力さえすれば、機械がテンプレート化された手順に沿って動く。全ての工程が一つの機械に結集されているのには驚いたが、数世紀前の骨董品を現在の科学力で量産しようとすればこうもなるのか。

 面白がって俺の愛銃と同じもの製造してみたが、いつのまにか使用した図面が跡形もなく消滅していた。まさか設計図が消耗品などと誰が予想できようか。

 製造した銃の名は順にUMP45、UMP9、HK416、G11というらしい。そんな名前だったのか、散々酷使しておきながら知らなかったぜ。ちなみに名前は設計図に書いてあった。多分明日には忘れてる。

 軍人の癖に銃に疎いのをどうにかしろとクソゴリラによく説教されたもんだが、引き金引いて鉛玉でるんならどれも一緒だろガハハハ!

 と、そう言った直後にぶん殴られたのは記憶に新しい。

 

〇月§日

 

 この工場のもう半分を見つけた。人形工場だ。もっともこちら側の工場よりも損壊が酷く、ほとんどが倒壊していた。瓦礫だらけで住居としても使えそうにない様子だったぞ。それも自然倒壊ではなく、何者かが明確な意思を持って破壊した様子だった。やっぱ紫色の人形作ってた工場だからだろうか。

 それと昨日できた銃だが、改めて見ると酷い出来だった。機械はともかく、材料が良くなかった。元から機械に突っ込みっぱなしの材料じゃあまあそうなるわな。動かんこともないんだが、要所が歪んだり曲がったりでちょっとよろしくない。仕方がないので俺の持ち逃げした方の生きているパーツを交換してやってなんとかした。とりあえずこれで弾がまっすぐ飛ぶようにはなった。ますます不格好になってしまったが、弾が出るならそれで人形が襲ってきても対処できるだろう。

 

 

Φ月Ж日

 

 前回の日記から随分日が空いた。途端にこれほど立て込むとは思っていなかったぞ。

 あの後、どこぞの人形が転がり込んできた。問答無用で銃口を向けてくるファッキン紫ではなく、我らがグリフィンの人形だ。中々に損傷が激しかったので有り合わせの材料で応急修理をしてやった。昔取った杵柄ってやつでな、I.O.P製の人形なら多少は整備の心得がある。まあ人形といえど同じ戦場を駆けた戦友だからな、情も湧くってもんよ。当時直してやるための修復技能を修めたのは間違いじゃなかったってことだな。そんなこんなで話を聞いてみると、なんと俺を連れ戻しに来たという。だが幸いなことに背後にいるのはクルーガーやヘリアンではなく、ペルシカだった。

 奴は俺の所在をクルーガーにチクらない代わりに、俺の銃を寄越せと主張してきた。たぶん人形と物質を結び付けてうんたらかんたら実験に使うんだろう。

 仕方がないので定期的に水と食料、バッテリーを寄越すことを条件に加えて了承してやった。

 

 

◎月●日

 

 俺の銃を持った人形が工場に住み着いた。どうしよう。

 

 

 

 

 

 

 




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