問題児たちが異世界から来るそうですよ? 召喚士の軌跡 作:ブレイアッ
この物語はフィクションです。この物語に登場する組織、世界観は一部を除いて全て空想によって成り立っています
今回は『魔法少女リリカルなのは』に登場する【次元世界】、【次元断層】等に対する自己解釈、オリジナル設定等が多分に含まれています
境界壁 舞台区画 暁の麓。美術展、出展会場。魔王側本陣営。
交渉から四日経ち、“グリムグリモワール・ハーメルン”の四人は展示会場の奥にある大空洞に居座り、思い思いに過ごしている
「ねぇマグスちゃん、一つ聞いてもいい?」
「なに?」
退屈しのぎとばかりにラッテンがマグスに話しかける。マグスはラッテンの顔を見もせずに自身の武器でもある笛を琥珀色の布で磨いている。ロウソクの灯りにかざしてみるとキラリと鮮やかに輝いた
「マグスちゃんがお兄ちゃんって呼んでるあの剣士の坊やについてよ」
「それは私も気になるわね」
転がって寝ていたペストも起き上がる。これから同士になる予定の人物についていくらかは興味がある。それも偽者とはいえラッテンの首を何の躊躇いもなく切り落としたとあらば尚更だ
「お兄様は私が知る限りでは最強の兵器。それとラッテン、お兄ちゃんじゃなくてお兄様だから」
マグスは簡潔に答える。お兄様呼びには何かこだわりがあるらしい
「あなたが知る限りで最強ってことは私よりも強いの?」
マグスは首を縦に振って肯定する
「お兄様は強い。全盛期だったらマスターなんて瞬殺」
何でもない、当然の事実のように瞬殺されると言われたことにペストの何かが刺激された
「へぇ…………? そんなに強いの? そのお兄様とやらは」
「ええ、強いよ。まず死の功績の数から違う」
死の功績の数、ペストの持つ死の功績は黒死病で死んだ八千万の命、世界人口の三割だ。それだけでも十分多い、死の功績の数から違うとはそれよりも多いと言うことか
「そう…………マグスのお兄様は一体どれだけの人を殺したと言うの?」
マグスは僅かな笑みを浮かべて
「二桁を超える次元世界……いえ、宇宙の命総て。数を数えるのも馬鹿馬鹿しいほどのね」
「おい待て、それはどういうことだ? 二桁を超える宇宙ってのは」
「言ったままのこと、お兄様は星一つを破壊したときの余波で周辺の世界を破壊した。それだけ」
外界には次元の海にいくつもの世界が存在する。それは一つ一つ異なる世界、別々の宇宙と言ってもいい
一つの宇宙に一体どれだけの命が、神話があるのだろうか? 民族伝承等も合わせると百は優に越すだろう
「全てを滅茶苦茶にしろ、そんな命令をこなすために星一つを破壊するつもりが周りの次元世界を巻き込んだ大災害を引き起こして一晩の内に総てを“無の世界”へと変えた。死の功績としてはこれ以上のものはこの世には無い」
“無の世界”とはビックバンによって宇宙が発生する前にあったとされる時間と空間の区別がない「無」の状態のことを指す
過去に修也が引き起こしたこの大災厄は後の世で超大規模次元断層、別名“終の夜”として様々な形で語り継がれている
「そんなヤツに俺達は勝てるのか?」
ヴェーザーが当然の疑問を口にする。これはペストもラッテンも思っていたことだ。
「勝てる」
マグスは刹那の間すら与えずにペストたちの不安を一蹴した。基本的に無表情の彼女には珍しく、その
「何故そう言いきれるの? マグスちゃんの言葉が本当なら私たちには勝ち目なんて無いはずよ」
「簡単なこと、私の話したお兄様はもう死んでいる。今のお兄様はその残りカス、霊格もラッテンやヴェーザー以下。魔力で肉体を構成しなおしてるから戦闘になれば大幅に戦力が低下する。そこに私の特性を加えればお兄様たちの勝ち目は限りなく0に近くなる」
これで勝てないはずがない、と彼女は断言する
「そう言えばマグスちゃんの特性は確か………」
「なるほどな、“魔力”がヤツの弱点ならば勝ち目はある」
「じゃあ、ゲームが再開したらヤツの相手は任せたわよ、マグス」
「了解、
“グリムグリモワールハーメルン”、ハーメルンの笛吹を旗印に掲げる新米魔王のコミュニティの迎える夜は一体、後いくつだろう
今日もまた、夜が明ける
ゲーム再開まで、後二日