問題児たちが異世界から来るそうですよ? 召喚士の軌跡 作:ブレイアッ
今回のお話には残酷な描写が含まれております。苦手な方は『戻る』をクリックしてください
夢
「ん………あれ? どこだろ、ここ」
春日部耀が目を覚ますとどこか知らない場所に浮いていた
上は分厚い雲に覆われた空で大体の時間すら分からない。下には街が広がっていて城のような建物が建っていて、曇天だというのにそれが当然のようにその街に暮らしているであろう人々の様子は活気付いているようにも見える
少なくともここは耀が暮らしていた場所ではない、箱庭かと思って辺りを見回してみるが境界壁も世界軸も天幕も無い。そうなると考えられる可能性は一つだ
「ここは、誰かのゲーム盤の上なのかな?」
箱庭に来たばかりの頃に白夜叉によって見せられたゲーム盤、あの広大な白夜の白い大地は今でも忘れることは出来ない
とりあえず下に降りようとして、自身に起こっている変化に気付いた
「なんで……動けないの!?」
正確には、“移動できない”だ。手足は動く、声も出せる。それでも、その場から移動することが出来ない。こんなことは初めてだ
手足をバタバタと動かしてみる、移動できない
ギフトを使って旋風を起こしてみる、服が風になびくだけ
その場で宙返りしてみる、出来た
「うん、移動できないだけで回転とかは出来るみたいだ」
耀の隣に見覚えのある三角形の魔方陣が出現し、そこから見覚えのある人物が姿を現す
「修也……?」
そう、つい最近耀の従者となった幼馴染み、源修也に似た白髪の少年がヴォルザの
しかし、見た目は似ているが纏っている雰囲気が違う
例えるなら刃のよう。冷たく、鋭く、触れるもの総てを切り裂かんとする感情の無い眼光。まるで別人のようだ
「召喚、始まりの合図」
彼の右手に穂先から石突きまで赤黒い槍が握られる。よく見るとその色は槍にベットリとついた血の色だった
「っ………!」
それが解った途端、耀は息を飲む
彼は
「鮮花狂乱、
感情の無い冷酷な声は
何の躊躇いもなく落とされた槍は城のような建物へと落下し、爆発したような光と音とともに建物を崩壊させる。いきなり城が破壊された街の住民たちはパニックに陥ったようで右へ左へと走り回る。誰かが空に浮かぶ修也を見つけてこう叫んだ
「シュウが……シュウが来たぞーーー!!!」
シュウと呼ばれた修也に似た白髪の少年はピクリとも表情一つ変えずに右手を掲げる。すると空を覆い尽くさんばかりの剣が出現する、その切っ先はすべて下の方を向いている
「待って……待って、一体何をする気なの?」
鮮花狂乱、鮮やかな花は咲き狂い、乱れる
耀には目の前の少年がやろうとしていることは何となく分かっていた
「やめて……お願いやめてぇ!」
耀の悲痛な叫びはシュウに届くことなく
「
右手を降り下ろされ、空中で待機していた剣たちは一斉に逃げ惑う人々目掛けて飛び出す
剣たちは確実に建物の外に出ていた人々を突き刺し、絶命させる
鮮血の花は咲いた
シュウが両手に剣形態のヴォルザを持ち、街中へと転移すると同時に耀の目の前は真っ暗になった
:::
耀が目を覚ますと自分はさっきまでとは違う状態にいるのがわかった。さっきまでは体は自分の意思で動かせていたが移動することが出来なかった。しかし、今は体は自分の意思で動かせないが移動は出来ている。いや、今度は誰かと感覚を共有していると考えるべきか
周りは空の上ではなく、おそらく下にあった街だろう。おそらくというのは街の様子がさっきまでとはガラリと変わっているからだ
活気のあった街には人の気配すらなく、建物の壁には飛び散った赤い血が、道端や建物の中には切り裂かれた人が転がっている
(ヒドイ………こんなのって無いよ)
耀は今まで映像等で戦場は見てきた。しかし、これは映像等ではない
鼻につく血の臭い、肉が焼ける音、それらは感覚を共有している誰かを通じて耀も感じていた
(え………うそ…………)
砕けたガラスに写る姿、それは耀が感覚を共有している人物、全身を赤い血に濡らし白いはずの髪は真っ赤に染まり、両手に刀身が赤くなった剣を持った少年、シュウだった
カランと瓦礫が崩れる音がする
音のした方を見ればまだ幼い子供を連れた母親と目があった
「……………」
無言でその親子に歩み寄る
「ぁ……ぁあ…………」
母親は子供を庇うように抱き締める。その表情は恐怖や怯えに満ちていた
「……………………」
シュウは親子の目の前に立つ
右手に握られた剣を振り上げる
「お…お願いです、この子だけは………この子だけは助けてください! 私の命は差し上げますから、この子だけはお助けてください!」
彼女の命乞いは子供を必死に守ろうとする母親の願いだった
(もう………止めて! これ以上誰も殺さないで!)
耀も必死に願う。これ以上罪を重ねないでと、これ以上誰かの命を奪わないでと
しかし、その願いも虚しく、振り上げられた刃は無惨にも降り下ろされ母親の首を切り落とす
(やめてーーーーー!!!!!)
「ぅ…………っ」
目の前に転がる母親の首を見た子供は悲鳴をあげることも忘れ、ただ目に涙を浮かべてシュウを見る。子供が見たのは目の前に迫る刃と感情の無い瞳だった
:::
境界壁・舞台区画
大祭運営本陣営、隔離部屋個室
そこに寝ていた少女、春日部耀はベッドから飛び起きる
目覚めた耀は息も荒く、汗でパジャマもベッドも濡れている。身体中のあちこちを触り、自分が自分であることを認識する
「はぁ…はぁ、良かった。夢だった」
その割にはあまりにもリアルな夢だった。今も鼻の奥には血の臭いが手にはあの親子を斬った感触が残っている
「………寝たくないなぁ」
汗をかいて髪や服が肌に張り付いて気持ち悪いし何故か体も軽い。治ったのかと思ってしまうほどだ。でも、本当は寝たらまたあの夢を見そうでコワイのだ
昔は何かコワイ夢を見たら長い時間修也と話をしたりしていたのだが今は彼とは喋りたくないし顔を会わせたくない
「なんでだろ…………修也と会いたくないなんて今まで無かったのに」
会いたいのに、会いたくない。そんな矛盾した感情を抱きながら窓の外を見る
朝日が、射し込んできた
ゲーム再開まで、後一日
次回予告(アニメをイメージして)
十六夜「なぁ、マグスの耳と尻尾は何なんだ?」
修也「ただの趣味だ」
十六夜「は?」
修也「作者の趣味だ」
29話 決戦前夜ですよ?
注:獣耳と尻尾は修也にもあって本人の意思で出したり消したりできるという(お蔵入りになった)設定があります