問題児たちが異世界から来るそうですよ? 召喚士の軌跡 作:ブレイアッ
side 修也
周りを見渡す
ずいぶんと慣れ親しんだ風景とよく似ている
さっきは思わずシュトゥラだと言ってしまったが本当にシュトゥラの城とそっくりだ、まるでベルカの地から直接城とその周辺を箱庭に転移させたかのよう
だが、決定的な違いがある
それは空が慣れ親しんだ曇天ではなく今だに慣れない晴天であること
そのせいか、オリヴィエやイクスが好きだった花も記憶より生き生きしていて生命力に溢れている
「お城に着いちゃったね」
「そうね」
「罠の一つも無かったのですよ」
「ったく、拍子抜けだぜ」
「まあまあ、落ち着いて」
いつの間にか城の目前にまで来ていた
首を横に向けると見覚えのある木が見える、よくリッドが登っていた木だ
「”ノーネーム"の皆様ですね」
いきなりどこからともなく現れたメイドが俺たちに声をかける
よく見たらオリヴィエ直属のメイドのようだ、メイド服にそれを示す薄桃色のリボンが胸元についている
「そうだけど、貴女は?」
「私は貴殿方を招待した
慣れたようにすらすらと言ったあと、ペコリとお辞儀するメイド
「すみませんが貴女の主に会わせてはくれませんか?」
「ええ、そのつもりです」
ジンの言葉に即答するメイド
あれ?
「でしたら…………」
あ!
「その前に、貴殿方には衣装を着替えてもらいます」
気付いたときにはもう遅い、俺たちはいつの間にか大勢のメイドに取り囲まれていて、逃げ道を全て塞がれてしまった
くっ、オリヴィエのメイド隊ならこれくらい普通にすることくらい簡単に予想できたはずなのに…………
「メイド隊、確保ー!」
先程のメイドがメイド長だったのか、彼女の号令とともに俺たちに飛びかかってくるメイドたち
「なっ、何!?」
「とにかく逃げるぞ!!」
十六夜たちがメイドから逃れようと抵抗するが無意味
「なっ! 嘘だろ!?」
あ、道を開けようと投げた石をキャッチされたか、どうやら、というかやっぱり彼女たちには
「修也さん! 何かないですか!?」
何か、とはたぶんこのメイド隊から逃れられるようなものだろうけど
「そんなものは無い!」
メイド補正に敵うもの無し!!!
side out
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さて、メイドたちにワッショイワッショイと運ばれた先は城の中の衣装部屋。そこには十六夜とジン、修也の男性陣三人
「黒ウサギたちと離れちゃいましたね」
「…………何もできなかった…………何なんだあのメイド集団は」
十六夜は決して弱くはない、むしろ箱庭でも上位に入るくらいには強い。一見すると非力にも見える女性たちはその十六夜の抵抗をものともせず担ぎ上げ、祭りのみこしのようにここまで運ばれたという事実に十六夜は少なからずのショックを受ける
「十六夜、次にメイド隊から何かされるときは抵抗するな、仕事中の彼女たちには絶対に敵わない」
実際、彼女たちのスペックが十六夜を上回っている等ということはない。ただ、この世にはメイド補正というものが存在する
十六夜は彼女たちに負けたのではない、メイド補正に負けたのである!
「失礼します」
手にかごを持ったメイドが衣装部屋に入る薄桃色のリボンをしているということは彼女もメイド長なのだろう
「いいな、抵抗するなよ、ジンも」
「は、はい」
修也が十六夜とジンに耳打ちする。修也自身、メイド補正には苦い思い出があるのだ
「お召し物の用意ができましたので着替えていただきます」
パチンとメイド長が指をならすと天井から修也たちを取り囲むようにメイド隊が現れる
「それでは、三分で着替えさせます」
メイド長がかごを床に置いて右手をあげる
「はじめ!」
降り下ろされた右手と同時に十六夜とジンに飛びかかるメイドたち、二人の姿がメイド隊に飲み込まれ、ポイポーイと彼らが着ていた服が宙を舞う、どうやら無理矢理スムーズに服を脱がされた様子、ジンの悲鳴が蚊帳の外の修也の耳に届く、十六夜は抵抗することを諦めたようで今の状況を楽しんでいるようだ
そんな二人を見ていた修也にメイド長が近づく
「ヴィヴィ様から貴方の衣装を預かっています」
どうぞ、と渡されたのは大きな青い宝石が目立つ華美な装飾のついた鞘におさまった短剣だ
「やっぱり、君たちの主はオリヴィエなんだな」
修也は懐かしそうに短剣を受け取りながら言う
「はい、他のお二人もいらっしゃいますよ」
そうかと短く返したあと、修也は短剣を華美な鞘から抜き放つ
半透明な刀身の中はカイゼル・ファルベと呼ばれる聖王家の血統に頻出する虹色の特殊な魔力光が揺らめいており、柄には聖王家、ガレア、イングヴァルトの紋章が刻まれている
外の世界ではロストロギアと呼ばれる類いのそれは、オリヴィエとクラウス、イクスの三人が修也に親愛の印として贈られたものである
すぅ、と短剣に魔力をこめると刀身から虹色の光が溢れだし、それに呼応するかのように左手に持つ鞘に埋め込まれた青い宝石が発光する
虹色の光が修也を包み、その上から青い光が包む
チン、と納刀する音と共に光が収まり、そこから出てきた修也の服装は一変していた
「わお」
着替えを済ませた十六夜が驚きの声をあげる
十六夜とジンの格好はタキシードだ、十六夜の身につける少し着崩したタキシードはよく似合っており、いつもの制服姿とはまたちがった印象を受ける
ジンはぐったりとした様子で部屋にあった椅子に座っている。ジンのタキシード姿もよく似合っており、良くも悪くも七五三のような印象を受ける
「すごく似合ってますね」
「ん、そうか」
修也の服装は深い緑色の軍服のような服に白いフード付のマント、腰には先程の短剣を大きくしたような剣があり、どこか着なれたような着こなしからは騎士のような印象を受ける
「ずいぶんと扱いが違うなオイ」
十六夜は不満の目をメイドたちに向けようとしたが
「…………いませんね」
「いつの間に消えた」
メイド補正を発揮した彼女たちはいつの間にか姿を消していた。メイド補正、恐るべし
十六夜は不満の矛先を修也に向けるが
「まあ、直ぐにわかるさ」
そう、答えた
結論:メイドは最強