ウルトラマンゼロ The Another Lyrical Story A's 作:フォレス・ノースウッド
後にPT事件と呼ばれるそれから数か月後、新たな事件が幕を上げる。
本来の姿から歪められ、災厄を引き起こしながら時空を超える―――呪われた魔導書の覚醒によって。
その女の子は、決して一人では、まして独りでも無かった。
幼い頃に両親を失い、原因不明の両足麻痺で車椅子の生活を余儀なくされていたが、血縁は無いが、面倒見のいい義兄(あに)がいてくれた。
ペットとはまた違う、友達のキツネの女の子もいてくれた。
仲だって良好って一言で片づけられる以上に繋がりがあったし、その兄と子狐がいてくれなければ、下手をすると何年の一戸建ての家で一日中一人で暮らす羽目になっていたはずだ。
学校だって不満足な足で、まともに通えず、通信制の授業を家で受けるしかなく、同年代の友人など中々できない環境だった。
彼らの存在は、それだけかけがえの無いものだった。
不満はないし、不安もなんて。
でも一方で、こう考えてしまうことがある。
特に兄に対して。
自分は、自分が住んでいる地球とは全く別の〝世界〟から迷い込んで兄となってくれた義兄の足を引っ張る存在でしかないのでは……自分は兄の時間を奪っているのではと……この前も、車に引かれそうになって、兄は学校から早退してまで心配して来てくれた。
案じてくれる人がいてくれるのは嬉しい。
でも、受け身になるばかりな自分が、嫌だった。
だから料理に関しては、頑なに自分担当にして、それなりの腕前は持つようになった。
いやなのかもしれない。
このまま、ただ誰かの庇護下のままな自分と、そんな自分を変えたい、こんな気持ちを繰り返していく日々。
戻りたいのかもしれない。
父と母と兄と揃って生活していたあの頃に。
周りからは強い子だよくと思われてるけど、そんなことない。
強がっているだけ、彼女だって一人の幼い人の子だ。
今だって彼女は、夜の闇に孤独を感じてしまうから、読書に没頭していた。
でも、もう夜の12時だ。
兄である『紅蓮兄ちゃん』が寝ろと言ってくるかもしれない。
本を片づけて、電気を消し、眠りにつこうとした。
その時、彼女は『なにか』を感じた。
言葉では具体的に表現できないけど、何かの存在を感じとった。
得体の知れないのに、不思議と怖くない。
でも、それが何なのか気になって部屋を見渡してみた。
あった。
机の本棚に羅列された本の合間。
今の彼女からは背表紙しか見えないが、両親が亡くなって間もなく家でみつけた厚い本。
茶色に金色の縁、表紙には十字架のレリーフが付けられ、封印するかのように鎖がかけられた西洋のものらしき年季の入った古い本。
なぜだかそれを捨てる気になれず、今までとっていた。
それが今、怪しげな光を発し、そして浮き上がり、彼女に向けてゆっくりと近づき。
「はやて!」
彼女―――はやての兄、紅蓮が異常を感じ、ドアを開けて駆け付けた瞬間。
「Ich entferne eine Versiegelung.」
2人には聞いたことが無い言葉を本が発し、閃光が、部屋を埋め尽くしていった。
ウルトラマンゼロ The Another Lyrical Story A's
はじまります。