HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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HITMAN『戦車道の危険性』

『大洗女子学園艦へようこそ47。』

 

『あなたは“戦車道”って競技を知っているかしら?乙女のたしなみの一つとして第二次世界大戦当時の戦車を操縦して戦う競技よ。私もハイスクール時代にやっていたわ。懐かしいわね。私はこれでもM24チャーフィーの車長だったのよ?』

 

『今回この学園艦では私立L新良学園と大洗女子学園との練習試合が組まれていて、学園艦にはいろいろなところから見学者も訪れて大賑わい。でも私立L新良学園のほうは新設校で伝統と校風というよりもとにかく勝つことだけを目指していて、今回の試合も親善試合にもかかわらず、大洗女子学園の方へ様々な妨害工作を仕掛けているそうよ。中でも学園艦機関部へのウイルス混入によるシステムオーバーフロー問題は現在戦車道連盟や文部科学省でも制裁が議論されてるほどの大事だったみたい。これらの妨害工作の陣頭指揮をとってるのは私立L新良学園戦車道の隊長であるバスティコ。彼女が今回のターゲットよ。』

 

『彼女は戦車道以外にもいろいろと黒い噂が絶えないけれど、つい最近リビアの反政府ゲリラに西側諸国の支援部隊の情報をネットで売り渡してたことが判明したの。彼女は親が軍事アナリストで、職業柄いろいろな情報を入手するコネを持っていたみたい。15カ国のサーバーを経由しての大胆な犯行だったけれど、ついにCIAがその尻尾を掴んだ。しかし相手が学園艦という洋上の要塞に居る上に、同盟国日本の学生ということでおおっぴらに始末はできなかったようね。だから私達に依頼が来たというわけ。今回のクライアントはCIA極東支部及びNATO欧州司令部からよ。久々の大物クライアントね。』

 

『準備は一任するわ』

 

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「すみません。大洗女子学園戦車道科はここでしょうか」

「はい?ああ、新しい装備の受け取りですね!会長から聞いています。」

 

私は今ターゲットの相手方である大洗女子学園の戦車道チームの隊長に会っている。新式装備の受け渡し業者に扮しているためだ。

 

「わあ!これが“10.5cm KwK 46 L/68改造キット”!これでうちのポルシェティーガーもプラウダや黒森峰の重装甲を打ち破る手立てができそう!ご苦労様でした!」

「いえ、代わりに“8.8cm KwK36 L/56”の引き渡し証明書にサインかはんこをいただきたいのですが。」

「あ、はい。えっと・・・すみません、サインか判子は会長がすることになっていて、お手数なんですが生徒会長室に居る五十鈴華会長にもらっていただけますか?」

「わかりました。しかし生徒会長室へ行くための道がわからないので地図か何かをいただけますか。」

「はい、えっと・・・こちらが地図です。ここに生徒会長室がありますので!」

「ありがとうございます。では。」

「ご苦労様でした!」

 

私は地図を片手に生徒会長室へ向かう…フリをしつつ一路対戦相手の私立L新良学園の待機スペースへ向かう。彼女らの待機スペースは演習場のちょうど反対側だ。

 

 

 

 

 

 

待機スペースへついた。私立L新良学園の生徒と思わしき女生徒が話し合っているのが見える。私は止まっていたトラックに身を隠しつつその会話に聞き耳を立てる。

 

「たいちょぉ~ひとついいっすか~?」

「なんだフィオーレ、作戦会議前だぞ。」

「今回の作戦、流石にやばくないっすか?」

「何だ。何がいいたい。」

「流石に実弾を使うのはやりすぎってことっすよ。いくらなんでも。相手の戦車に直撃はさせないって言っても榴弾なんだからそれなりに・・・」

####アプローチ発見####

「うるさいぞ!全国大会で優勝した大洗女子。そんなとこを相手にするんだからこれくらいはハンデみたいなものだ!」

「ハンデで実弾使って相手に怪我させたり最悪死者まで出したらそれこそ学園の存続にも関わるっすよ?!」

「うるさいうるさい!私に意見するな!」

 

 

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『どうやらL新良学園側は規定で禁止されている実弾を密かに使用しようとしているみたいね。本来戦車道で使う戦車は実弾の使用に耐えきれる構造にはなっていないの。特殊な改造を施すんでしょうけど、戦車搬入の際にはチェックがあるから現場での急ごしらえ改造なのでしょうね。あなたが改造してあげれば彼らもきっと喜ぶんじゃないかしら?それか弾薬の搬入を手伝ってあげるとかね。』

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「とにかく!作戦はまずフィオーレの乗る四号F2で実弾を相手の足元に撃つ。そうすると学園艦の上部構造板を破壊でき、相手の戦車はその穴に足を取られて身動きが取れなくなるはずだ。そこを私の四号Jを含めた全員で一斉放火。各個撃破していく算段だ。フィオーレは発砲したらすぐに身を隠せ。実弾を撃ってることがバレたら懲罰どころでは済まん。実弾も相手の戦車の数と同じ数しか持ってきていないから必ず打ち切るように。いいな!」

「・・・ハイ。」

「わかったらさっさとF2型の砲閉塞機を強化しておけ!爆発したら尾栓が飛んで、車長であるフィオーレ、お前が死ぬことになるんだからな!」

 

ミーティングが終わる前に私はその場を後にした。実弾が何処にあるか特定しなければならない。

 

 

 

 

 

 

待機スペースの端に戦車が一列に並んでいる場所があった。右から四号戦車H型、四号戦車J型、四号戦車F2型、三号戦車M型、M10パンター、二号戦車H型、フィアット3000、カルロアルマートM15と並んでいる。その近くに弾薬がそれぞれ置かれており、積載作業を何人かの生徒が行っている。四号戦車3台の積載作業はまだおこなわれておらず、生徒は今三号戦車で作業を行っているようだ。

 

「ちょっと!M10パンター動かしといて!そこに居られると四号の装弾ができない!」

「あいよー!」

ブルルルルン!!!ヴォヴォヴォヴォヴォ

 

 

掛け声とともにけたたましい音を立てながらエンジンが始動する。と、四号F2戦車の横に他の弾薬とはわけて木箱に収められた弾薬を発見した。数は8発。相手の大洗女子の参加車両数と同じである。おそらくあれが実弾なのだろう。私はエンジン音に紛れるように足早に接近し、1本だけ取った。それをすばやく四号J型の弾とすり替えた。見た目的には完全に一致しており、重量もさほど変わらない。が、競技弾にはついているはずの戦車道連盟のロゴマークがついていなかった。入れ替えを行ったあとはすぐさまその場を離れる。幸いにしてまだM10パンターの移動作業は続いており、私の行動に気がついているものは誰も居ないようだった。私は待機スペースを離れ、生徒会長室へ向かった。

 

####アプローチ完了####

 

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『的確な仕事ね。これで競技が始まれば実弾仕様にしていない隊長車で暴発事故が起こせるわ。後はゆっくりと戦車道の試合を楽しみましょう。』

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「失礼します。生徒会長の五十鈴さんはいらっしゃいますか。」

「ハイ、私が五十鈴華です。ご用件は何でしょう?」

「先ほど新式装備を戦車道履修生徒へ受け渡しが完了しました。折返しで旧装備を引き取りたいので書類にサインかはんこをお願いします。」

「はい、ご苦労さまです。少々お待ちいただけますか。」エートハンコハンコ

窓の外ではすでに試合が始まっている。戦車のエンジン音が艦橋部分にある生徒会室まで響いてくる。

「はい、はんこを…あら?戦車道にご興味がありますか?」

「多少は。」

「でしたらここからならよく見えますから、ぜひ見ていってくださいまし。お時間が許すのであればですが。」

「時間には余裕があります。是非拝見させていただきます。」

 

 

 

 

試合は一方的とまでは行かないものの大洗女子がリードしているようだ。

 

「今回の親善試合は1年生と2年生だけでやってるんです。私達3年生だけに頼り切りは良くないと冷泉さんが提案してくれて。」

「なるほど。」

「でも皆さん、みほさんの教えを忠実に実践していてとても期待が持てます。」

 

ここで1台の戦車が発砲。大洗女子の89式中戦車甲型の足元に着弾し、89式が足元を取られた。と、周辺から集中砲火が始まる。隊長車である四号J型は最後に姿を現し、砲身が折れ満身創痍になった89式に向け発砲する。

 

バァーーン

 

弾は何処へ飛んでいったかわからない。少なくとも89式には当たっていないが、代わりに隊長車である4号J型の砲身が裂け、白旗が上がっている。しかし他の車両は何が起こったのかを把握しきれていないようで、大洗女子の戦車も発砲を中止し、隊長車へ近寄っていく。と、救急車が来た。

 

プルルル

「ハイ、こちら生徒会室…えぇ?!L新良学園さんの隊長車で暴発事故!?本当なのですか?それで隊長さんは・・・安否不明・・・すぐに情報を集めてください。私もすぐに行きます。」ガチャ

「すみません。なにかトラブルが発生したみたいで、すぐ行かなくてはなりません。申し訳ありませんが・・・」

「わかっています。私もそろそろ失礼させてもらいます。」

「申し訳ありません。では失礼しますわ。」

 

 

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『素晴らしいわね47。衛星からのスキャンでターゲットの生体反応消失を確認。見事だったわ。もうすぐ船が出るから帰還して。』

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生徒会室を後にし、船が出るタラップに向け歩いているとL新良学園の生徒の何人かが青ざめた様子で反対側の歩道を歩いているのが見えた。どんな処分が下るのかはわからないが、隊長に振り回され汚名を着せられた彼女たちに少しだけ同情した。

 

 

 

 

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~3日後~(分かりづらいので先頭に判別用の一文字を追加)

 

 

み「でもチームに被害がなくてよかった。まさか相手が実弾使ってたなんて・・・」

ゆ「今回のことでL新良学園は戦車道の参加権を剥奪されただけでなく、学園艦自体の解体も視野に議論されてるそうです。」

さ「当然だよ!当たってたら死んじゃってたかもしれないんだよ!そんな人達に戦車道やる資格なんて無いよ!」

は「さおりさんが一番心配して一番怒っていましたものね・・・」

れ「まあともかく。因果応報というやつだ。死んでしまったのは流石に可愛そうだったが。」

み「今回のことで、うちのお母さんも戦車道連盟の会議に参加してるみたい。今までにないくらい相当怒ってた。」

は「一歩間違えれば自分の娘が被害にあって死んでいたかもしれないということで確執なんかよりも一人の母親として心配してくださったんですね。」

み「うん。ちゃんと考えててくれてたみたい。」

ゆ「仲直りも近いですね!西住殿!」

れ「仲直りのきっかけとしてはこれ以上にないくらい血生臭くなってしまったがな。」

さ「さあさあ、嫌なことは忘れて!今日は私特製の肉じゃがバージョン2だよ!」

は「まあ、美味しそう!」

れ「作る相手も居ないのに・・・」

さ「なによぅ!絶対現れてくれるもん!」

み「まあまあ、はやく食べよう。せーの」

「「「「「いただきます!」」」」」

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「射撃演習」  +3000 『ターゲットを実弾の戦車砲弾で暗殺する』

・「お届け物」  +1000 『装備配送員としてスタートする』

・「天覧試合」  +3000 『試合を生徒会室から観戦中にターゲットを暗殺する』

・「戦車に耳あり」+1000 『L新良学園の策略の情報を得る』

 

 




今回はちょっと短め。

あの謎カーボンがあるということは軍が使ってる戦車も装甲が厚くなってるんだろうなあ。


次回は別アプローチです。

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