『米花町へようこそ47』
『この街は一見平和そうに見えるけれど重犯罪件数が日本トップクラスなの。それも殺人事件に特化してるみたい。あなたにとっては仕事がしやすいかしら?でも気をつけてね、犯罪件数もトップだけど検挙率もトップなのよ。理由はこの街にある「毛利探偵事務所」。そこの経営者である探偵の毛利小五郎彼がこの町で起こる犯罪の殆どを対処して見事解決に導いてるようね。でもICA情報部の情報だとどうやら推理して事件を解決してるのは毛利小五郎ではないらしいけどね。』
『今回のターゲットはそんな毛利探偵事務所からほど近い、というかその真下に有る喫茶店“ポアロ”に最近勤務し始めたという加藤幸之助。彼は鳥取に存在しているとある組織のメンバーで、情報斥候を担当しているみたい。コードネームは“ウーゾ”。その組織は時々ICAにも依頼を送ってくるの。今回もその組織からの依頼よ。彼は組織内の情報をどこかにリークしようとしてるみたいね。それを危険視した組織から抹殺の対象にされたというわけ。でも彼は商売柄警察の出入りも多い毛利探偵事務所の近くに居を構え出入りすることによって組織から身を守ってるみたい。』
『気をつけてほしいのはすぐ上の階に居る毛利小五郎、その傍にいつもいる情報部が最重要視している江戸川コナン。並外れた洞察力を見せる安室透の3人よ。この3人のそばではうかつな暗殺は控えたほうが良さそうね。また安室透は店員に扮した公安警察の諜報員との情報も入ってるからあちらの仕事も邪魔しないようにね。』
『準備は一任するわ』
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「おまたせしました、特製ハムサンドです。ごゆっくりどうぞ。」
なるほど、確かに女性人気が高くなりそうな美形の男性である。私は今、ターゲットの勤務する喫茶ポアロに来ている。しかしシフトが合わなかったのかターゲットはおらず、榎本梓と安室透のみ。客は他に数人居るがどれも一般人だ。っと、一番窓際に座っているガタイのいい男は警察関係者のようだ。犯罪発生率が高いのもあって拳銃を懐に携帯している。懐に忍ばせているガンホルダーの重みの分だけ左肩が下がっている。公務というわけではないようだ。目線は榎本梓を捉え続けている。隠れファンが多いというのは本当のようだ。
私は今回、経口摂取型の致死毒を持参した。しかし、店員が少ない上に死角がほとんどない店内で安室透はいろいろな方面に目を配っている。これでは隙を見て食べ物に混入させるのは無理だろう。残念ながらこの薬は使い所が無さそうだ。ひとまず様子を見ることにする・・・ん、このハムサンドはなかなか美味だ。
「そろそろ加藤さんが来る頃ですね。彼に見せたいものが有るので梓さん、ちょっと裏に行ってきますね。」
「あ、ハイ。わかりました。例のですね。私にも後で味見させてくださいね。」
「わかっていますよ。元よりそのつもりですから。」
安室透はそう言うと店の奥に引っ込んだ。見せたいものがなにか気になるところでは有るが、そろそろターゲットが来る頃合いということでハムサンドを食べ終えた私は一旦店を出ることにした。
「ありがとうございました。お会計780円です。」
「美味しかった。あなたが作ってるのか?」
「いえ、私じゃなくさっき店の奥に行った安室さんが作っています。」
「もうひとり男性が居たと思うのだがそちらの方も同じ様に作れるのだろうか?」
「あ、加藤さんのことですね。彼も同じくらい美味しいサンドイッチを作れるんですけど、最近はお菓子作りの方に凝ってるみたいで、今日もこの後安室さんと自慢のお菓子の発表をするらしいです。」
「なるほど。だから最近はよく車で来ていたのですね。」
「え?ああ違います。その車は多分上の毛利さんのところので、彼はいつも自転車通勤ですから。」
####アプローチ発見####
「ああ、そうだったのですか。自転車でお菓子を運ぶのはあまり想像できませんね。」
「ええ、この前なんか結構大きなケーキを運んできてたので結構フラフラしてて。あれはいつかコケるって安室さんといつも言ってるんですよ。」
「なるほど、気をつけるように言ったほうがいいかも知れませんね。では。」
「はい。ありがとうございましたー。」
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『榎本梓の情報によれば彼はいつも大きな菓子入りの荷物を持って自転車出勤しているそうよ。視界不良かつバランスが悪い状態での走行は危険ね。目の前の通りは車通りもそれなりに多いから事故に合う確率は高そうよ。』
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私は店を出て周りの状況を確認する。目の前の通りはそれなりに交通量が多い割に片側1車線の道路。しかも大型のトラックもそれなりに通る。しかし横断歩道は見た限り近くにはなく、通行人の何人かは車の合間を縫って横断している状況だ。歩道もそれなりに狭く、なおかつ歩行者専用であり人通りもある。ここを自転車で通るのはいつ歩行者と接触してもおかしくはない。
私は反対側の歩道へ移動した。ターゲットが来た瞬間に車道に飛び出し、車がとっさに避けるときの動きでターゲットを轢き殺すことを考えた。ここの通りの車は近くに信号がないのもあって法定速度を守っている車は少ないからこそのプランだ。
5分ほど経った後、右手に大きな荷物を抱えた状態の自転車が反対側の歩道に見えた。
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『あれが加藤幸之助。周囲を有能な探偵や警察に守られた鉄壁のターゲット。お手並み拝見ね47』
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と、こちら側の歩道の同じ方向から子供がやってくるのも同時に見えた。子供たちのほうがこちらに来るのはだいぶ早い。そのうちの一人は器用にサッカーボールをヘディングしながら来ている。ブリーフィングで顔写真を確認した江戸川コナンという子もサッカーが得意らしいが、彼は顔写真とはだいぶ違っていた。江戸川コナンという少年はおそらくその隣にいる眼鏡の子だろう。ヘディングのコツを教えながら歩いているようだ。
私は計画を変更した。彼らの隣の植え込みに向かってコインを遠投する。
ピッーン
ガサッ
「ん?なんだ?」
「え?あ!」ポーンポンポン
植え込みの物音につられて目を離した瞬間ヘディングを誤り大きくはねて私の方へ転がってきた。
私はそれを足で受け取ると少年たちを一瞥してリフティングを開始する。
「おおー!」
「へぇ・・・やるじゃんおじさん。」
私はリフティングをしながら位置を変え横に路地が来るようにした。と、ターゲットがちょうど向かいにつく頃合いで少年たちのすぐ隣にあった電柱に向かって勢いよく蹴った。
「ああ!何処蹴ってんの!」
「向こう側に・・・あ!!」
ボールは電柱に跳ね返り90度方向を転換してターゲットの後ろの別の電柱に跳ね返り、またもや90度方向転換してターゲットの左側の足元に転がった。
私は少年たちの気が反対側にそれてる間に瞬時に路地裏に入る。
「うわ!あ、ああ、ああ!」
ターゲットはいきなり現れたボールに驚き、バランスを崩した。とっさにボールとは反対方向に避けようとしたためハンドルを右に切った。そこはすなわち車道。一旦急激に右に切ったハンドルを左に切り直すのは結構難しく、更に車道と歩道の間には段差があるためさらにバランスを崩す。右手に重い荷物を持ってバランスが悪かったのも相まって車道に大きく飛び出した、次の瞬間
キキーッ!ガシャーン!!
時速60キロ以上で走ってきた乗用車に派手に衝突した。ブレーキは駆けたようだっがもうほんの1~2mのところだったのでほとんど減速せずに衝突した。ターゲットの体は10m弱は派手に吹っ飛び、アスファルトに叩きつけられたターゲットはほぼ即死だったようで、ピクリとも動く気配はなかった。
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『ターゲットダウン。素晴らしいシュートだったわ47。目をつけられる前にそこを離脱して。』
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「なに?今の音?・・・え?きゃああああ!!」
「なにが・・・え!?加藤さん!しっかりしてください!」
物音に気がついてポアロの中から二人も出てきた。安室透が応急処置を試みようとするのが見える。次第に周囲に野次馬も集まってきた。
私は雑踏に紛れつつ、足早に路地裏を縫うように歩き、2本横の街路に止めてあった車へ向かった。
「待ちなよ。おじさん。」
実のところ私は突然呼び止められたことにあまり驚いていない。
振り返るとそこにはさっきまで友人と居た江戸川コナンがスケボーを片手に立っていた。一人で来る辺りも情報通りである。
「さっきおじさんが蹴ったボールで人が事故にあって死んじゃったよ。故意かどうかはともかくとしてまずは警察に来てもらわないと。」
「悪いな。私はボールを蹴った瞬間その場を離れてしまったからよくわからない。」
「嘘。だよね。路地裏に入って事故にあった人が死んだかどうか確かめてた。みんなは雑踏に紛れてごまかせたけど僕はごまかされないよ。」
さすがICA情報部が目をつけるだけは有る。小学生とは思えない洞察力である。
「ではどうすればいい?私はこの国に来てまだ間もない。警察が何処に居るかよくわからないんだ。」
「そう。ならとりあえずおとなしくついてきてくれればいいよ。さっきの現場にそろそろ警察が来ると思うから。」
「わかった。」
彼はそう言うと体を半回転させ来た道を戻るよう誘導するように歩き始めた。私は距離を詰め彼の肩に手をかけようとする。
「下手なことは辞めておいたほうがいいよ。」
「気配ですべてを察するか。流石だな。江戸川コナン。いや、工藤君。」
「?!?!」
彼が高校生探偵工藤新一であることは情報部は掴んでいた。彼らの子飼いの衛星は全世界のいたる所をモニタリングして記録している。彼が小さくなる瞬間もモニタリング済みだった。
「お前・・・!何者・・・!」
「さあな。“組織”とやらだったらどうする?」
「組織のことまで・・・!くっ!」カチッ
「っと、それはいけない。」ガシッ キュッ ピシュ!
「うっ!しまっ・・・」
彼はとっさに腕にはめていた時計型麻酔銃で私を眠らそうとしたようだが、元より肩に手がかかるかどうかの距離、麻酔銃の照準を展開した瞬間手を掴み時計を半回転させ、彼自身に向けて麻酔銃を打ち込む。彼はあっけなく倒れた。事前に彼の周囲や装備品について情報部の情報がなければ私が眠らされていただろう。私は彼を路地裏の人目につきづらいが見つけられないことはない場所にそっと寝かせ、止めてあった車に乗り込み脱出した。
運転中、右腕袖口内側に貼り付けてあった発信器を剥がして路上に捨てるのも忘れずに。
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~10分前~
「そうそう上手い上手い。光輝くんだいぶ上達したな!」
「えへへ、ありがとう。コナンくんの教え方が上手いからだよ。」
「コナンくんはすごいんだよ!サッカーも上手いし勉強もできるし私達少年探偵団のリーダーでも有るんだから!」
「あはは・・・(そりゃ高校生が小学校の勉強できなくてどうするよ)」
「コナン!今度はオレにもリフティングのコツ教えろよな!」
「元太くんはリフティングの前にまずシュートの力加減から覚えるのが先だと思いますけどね。」
「あん?どういう意味だ?」
「わかってないんですか!?もー!この前も公園でシュートが大幅にずれて歩行者に当たりそうになってたじゃないですか!」
「ああそういうやそうだったな。あんときは腹がいっぱいだったからよ、腹いっぱいだと力がみなぎって余計に力入っちまうんだよな。」
「ねえ、聞いてもいい?」
「なんだい光輝くん?」
「コナンくんって頭いいんだよね?」
「まあそれ程ってわけじゃないけど」
「じゃあ相談に乗って欲しいんだ。僕のお兄ちゃんのことなんだけど。」
「お兄さんがどうかしたの?」
「うん、最近お菓子ばっかり作ってるのはいいんだけど、仕事先に持っていってるみたいで、そのときに自転車を使って運んでるんだ。危ないからやめてって言ってるのに大丈夫だって言って聞かないんだよ。」
「ふーん、じゃあそのお兄さんにもっと安全運転をしてほしいわけだ。」
「そうなんだ。アレじゃいつ事故にあってもおかしくはないよ。なんとかならないかなあ。」
「そうだな・・・問題はどうやって危険性を伝えるかだけど・・・」
ガサッ
「ん?なんだ?」
「え?あ!」ポーンポンポン
「ああ、ボールが・・・って、あ、おじさんごめんなさいボールを・・・」
「おおー!すごい上手いリフティング!」
「へぇ・・・おじさんやるじゃない。(なんだあの男、殺気は無いのに側に居たらいけないような、黒ずくめの奴らとも違うもっと根本的な恐怖を感じる・・・)」
ポーン
「ああ!電柱に!何処に蹴ってんの!」
「向こう側に・・・あ!危ない!!」
「あ!お兄ちゃん!!」
キキーッ!ガシャーン!!
ミッションコンプリート
・「PK戦」 +3000 『サッカーボールを使ってターゲットを暗殺する』
・「いつものこと」 +1000 『江戸川コナンの目の前でターゲットを暗殺する』
・「眠りの名探偵」 +5000 『江戸川コナンを気絶させる。本人以外に発見されてはいけない』
・「接客は笑顔で」 +2500 『榎本梓・安室透・江戸川コナン・毛利小五郎の内3人以上に顔を見られる』
ハルケギニア編の別アプローチを書く予定を変更して新しい世界へ。
ですが予定より文字数が少なくなってしまいました・・・w
コナンくん相手にサイレントアサシンやるのはかなりの高難易度になりそうです。
次回は別アプローチです。