『米花町へようこそ47』
『日夜重犯罪が絶えないこの街が今回の舞台よ。治安が悪いわけでもないのに殺人事件がよく起こる町として知られているわ。事件発生率の原因は不明だけれど検挙率は国内トップで、そちらの原因は優秀な“眠りの小五郎”こと名探偵毛利小五郎の事務所である毛利探偵事務所があるため。もっとも情報部によると実際に事件を解決しているのはその居候である江戸川コナン、本名工藤新一らしいけど。』
『ターゲットはその毛利探偵事務所のある雑居ビルの1階にある喫茶ポアロの店員、加藤幸之助。ある組織の諜報員で、コードネームは“ウーゾ”。組織の情報を外部にリークしようとして抹殺対象にされたみたいね。今回の依頼主はその組織よ。』
『準備は一任するわ』
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「おまたせしました。アイスコーヒーです。ごゆっくりどうぞ。」
私は今、喫茶ポアロのカウンターに座っている。この店は周囲が市街地ともあってなかなかに繁盛しているようで、店の中には常に人がいる状態だ。店内での暗殺は厳しいと言わざる負えない。今回持参したのは絞殺用のワイヤーだ。私の得意な暗殺方法でもある。
「そろそろ加藤さんが来る頃ですね。彼に見せたいものが有るので梓さん、ちょっと裏に行ってきますね。」
「あ、ハイ。わかりました。例のですね。私にも後で味見させてくださいね。」
「わかっていますよ。元よりそのつもりですから。」
カウンター内で若い男女が話している。男性の方は名前を安室透。女性の方は榎本梓だ。そして話に出てきたのが今回のターゲットである加藤幸之助だ。どうやらそろそろ出勤してくるらしい。私はそのまま静かにアイスコーヒーをすすりながら新聞を読むふりをして待つことにする…ん、あの監督辞任するのか…。
しばらくそうして待っている。店内の客が何人か入れかわった後、大荷物を抱えた自転車が店の前を通り過ぎて止まった音がした。すぐにその大荷物を抱えたターゲットが店内に入ってきた。
「おはようございま~す!」
「ああ、加藤さん。おはようございます。今日はそこまでお客様も居ないので例のアレ、出来ますよ。」
「おお本当だ。って店を預かるものとしてはお客が少ないのは嘆くところなんでしょうけど・・・。」
「まあそれは・・・。でも私も加藤さんのお菓子楽しみですし今日くらいは良いかなと。」
「あはは・・・で、安室くんは?」
「あ、今奥に。」
「安室くんは今日は何を見せてくれるのか楽しみですよ!まあお菓子だったら私のよりは下でしょうけどね!」
「フフフ、さあそれは私も食べてみませんと♪」
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『アレがターゲットの加藤幸之助よ。表向きは人当たりの良い好青年ね。重犯罪に手を染めてきたとはとても思えないくらいに。』
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「じゃあ安室さん呼んで来ますね。加藤さん店番お願いします。」
「承知しました・・・あ、だったらこのケーキも一緒に持っていってください。一応要冷蔵なので。」
「あ、はーい。」
そういうと榎本梓は抱えてきた大荷物、中身はケーキらしいが、それを抱えて安室と同じく奥へ引っ込んでしまった。
私は手を上げてターゲットを呼ぶ。
「すみません。注文良いですか。」
「あ、ハイ。何にいたしましょう。」
「では、“ウーゾ”を1つ。」
「ッ!!…申し訳ありません。そのようなお酒は取り扱っておりません・・・。」
「そうですか、それでは“キール”。“バーボン”や“ジン”、“ウォッカ”でも良いのですが?」
「・・・この店は居酒屋でもバーでもありません。残念ですが・・・」
「そうですか。知り合いの名前になったお酒なので飲んでみたかったのですが。」
「・・・」
「では先程の安室さんと言われたお方なら何処にあるか知ってそうですね。“バーボン”も“ウーゾ”も。」
####アプローチ発見####
「あなたは一体・・・」
「さあ・・・」
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『彼はこちらの話にうまく乗ってくれたみたいね。この手の情報は彼にとって一番知られてほしくない情報のはずよ。きっと秘密裏に接触してくる。二人っきりになるチャンスが巡ってくるまでゆっくり待ちましょうか。』
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「あれ?どうしたんですか?加藤さん?」
「え!ああ、いえ、何も。」
「すみません。でしたらアイスコーヒーをもう一ついただけますか。」
「あ、アイスコーヒーですね。少々お待ちください。」
鎌掛けは十分。私は更に時間を潰すことにした。
カウンター内ではターゲットが持ってきたケーキ数種と、安室透が持ってきたと思われる和菓子数種を榎本梓が食べ比べをしていた。私はその目の前のカウンターに居たのもあり、時々会話に混ざりながら試食させてもらった。その際榎本梓を重点的に視界に収めておいた。ターゲットは幾分顔が険しかったが、それに気がついたのはこの場では私と安室透だけのようだった。最も安室透の方は私に対抗心のような嫉妬のような眼差しも稀に垣間見えたが。
そうこうしているうちにだいぶ時間が経っていたようだ。時間にして既に4時間は経とうとしている。外はもうすぐ日暮れである。私は席を立ちレジへ向かった。
「楽しかった。そろそろ帰ります。また来ようと思います。」
「はい!七郎さん!またぜひいらしてください!」
「はい。是非とも。」
七郎とは私が名前を尋ねられた時に出した偽名である。どう考えても日本人にしか思えない名前だが、榎本梓は別段不思議には思っていないようだった。ハーフか帰化人と思われたのだろうか。
レジでは安室透が待機していた。その表情はすでに作り笑いと素人でも見抜けそうなくらいの引きつった営業スマイルだった。
カチャカチャチーン
「100万円です。」
「・・・えっと?」
「安室さん!だめですよ!ボッタクリで炎上しちゃいます!」
「冗談ですよ。1230円になります。」
目が明らかに冗談ではなかったが。
アリガトウゴザイマシター
私は店を出るとゆっくり歩きだした。後ろで安室透が榎本梓に向かってだろう、「ああいう男には注意してください!」とかいろいろ忠告しているのが聞こえた。私はそのまま店のすぐ横の路地裏に入った。路地裏は狭く、人がすれ違うのがやっとという広さである。既に日が傾いているのもあり、薄暗く表通りに比べて全く人気がない。私は路地裏をゆっくりと進み続け、店のあった区画がそろそろ終わるというところだった。
「まて。」
後ろから呼び止めたのは黒っぽいセーターと黒っぽいズボンにニット帽、サングラスをかけた男だった。格好は全く違うが声色からターゲットであることだけはわかった。
「なんでしょう?」
「お前。ジンに何を言われた。何が目的だ。」
「はて、ジン・・・ですか。お酒ですか?」
「とぼけるな。先程の店での会話。何も知らないわけではあるまい。」
「私は何も知りませんよ。」
「榎本梓を狙っているのか。」
「狙うとは?私は一応妻子持ちなのでね。」
「彼女だけはやめてくれ。彼女は・・・私が初めて守りたいと思った人なんだ。」
「・・・」
「彼女を見逃してくれるなら何でもする。組織にも戻るし従う。だから彼女だけは見逃してくれ。」
「・・・わかった。」
そう言うと私は背を向ける。ターゲットはそれを了承と取ったのだろう。踵を返して、店の方向に戻ろうとした。私はその瞬間、ワイヤーを取り出し彼に一気に近づいた。
「!!!」
彼はとっさに反応して避けつつ反撃のジャブを放った。ボクシングの心得があるらしい。しかし私もICAの訓練施設以前から近接格闘術は得意分野の1つであったので、それを瞬時に躱し、逆に顎に掌底を食らわせる。
「がっっ!!」
掌底により彼の顔は顎と一緒に一気に上を向いた。その瞬間にワイヤーを首に巻きつけて一気に引いた。
「がっぐあ・・・」
「“何でも”と言ったな。ならばその命を貰い受けることにする。もう一つ言うならば榎本梓に意味深な視線を送っただけでこうも簡単に来てくれるとは思わなかった。」
「グッ・・・クッソ・・・」
榎本梓に重点的に視線を送っておいて正解だった。嫉妬なのか保護欲なのかはわからないが少なくともおびき寄せる材料としては最適だったようだ。
彼は話した後も少しの間もがいていたが、次第に動きはなくなっていき、ついには一切動かなくなった。
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『ターゲットダウン。見事な手際だったわ。そこから脱出して。』
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動かなくなったターゲットをそのまま引きずり、路地裏の更に奥まった路地に連れ込み、そこに置かれていた大きめの箱の中に押し込んだ。戦闘により多少乱れた服を整わせながら路地を出る。
シュ パシン!
突然元の路地から拳が飛んできた。私は既の所でそれを防ぎ切る。
「加藤…いや、ウーゾに何をした。」
安室透、“バーボン”である。彼はどうやら私と話した後のターゲットの様子がおかしくなり、更に私が店を出た後にすぐにその後を追ったことに疑問を持ったらしく追いかけてきたようだ。
「話す必要があるのか?」
「事と次第によっては・・・ね!」
シュ!シュ!パシン!パシン!
彼の腕前もなかなかだ。加藤は情報斥候だったのもあって体術はそこまでという感じではあったがこちらはまさに実働部隊。並の体術ではなく、私も防ぎ切るのが精一杯と言ったところである。
「彼に、何をした!何処へ、やった!言え!」
「私が、言う必要があると、考えれば、言うかも、知れないな。」
シュ!シュ!パシン!パシン!
「ならば、吐かせてみせる!」
「そうか、それは良いが、いいのか?榎本梓は。」
「なに!?」
ゴッ
「ぐあ!」
あの店の店員は皆榎本梓を慕っているようだ。彼女の名前を出しただけで隙ができるとは。その隙を見逃さず彼の腹にほぼ全力の蹴りを食らわした。彼は前のめりに倒れかけるがリカバリーしようと無理に身を起こしながら拳を出してくる。しかしダメージはそれなりにあるようで拳に全くキレがなく、容易に避け背中にカウンターを食らわせた。彼はその衝撃に苦悩の表情を浮かべながら大きくよろける。私は更に回りこみ、首筋に手刀を食らわせた。
「がっ・・・」
「加藤はすぐそこの路地裏の箱だ。後処理は任せる。」
「ぐっ・・・」
ドサッ
彼は倒れ込み気絶した。私は彼を路地外から見られない位置に寝かせると、戦闘により乱れた衣服を整え直し、路地裏から出た。
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~3日後~
「ほんとに大丈夫?安室さん。」
「ああ、コナンくん。大丈夫。これでも結構鍛えてるからね!」
「それにしても大変だったね。すぐ近くで殺人事件に巻き込まれるなんて。」
「ああ、本当に。ああ、梓さんには内緒だぞ。殺害されたのが同僚だと知ったら傷つくと思うからね。」
「加藤さんだっけ?殺されたの。目暮警部も小五郎のおじさんも証拠がなさすぎるって嘆いてたけど。同じ職場で働いてたなら聞きに来ると思うけど。」
「うん。そこは僕の方から手を回してかかわらないように・・・って、小五郎さんも関わってるのかい?梓さんに喋っちゃわないように釘を刺しておいてくれよ?」
「わかってるよ。それで実行犯の目星はついたの?」
「いや全く。同僚の中でも迷宮入りは確実とまで言われてる難事件になりそうだよ。」
「組織の仕業・・・」
「・・・わからない。上に問い合わせても詳細を教えてはくれなかったよ。」
「加藤さんも組織の人間だったの?」
「ああ、コードネームは“ウーゾ”。ギリシャのお酒だよ。情報斥候担当だったんだが、ここに赴任してきた理由も結局わからずじまいだったな。」
「もしかして僕か小五郎おじさんを・・・」
「それはないね。それだったら僕に指令が来るはずだから、わざわざ怪しまれる新顔を用意する必要がない。」
「じゃあ一体誰が何のために」
「君も相変わらずの詮索好きだね。」
「そりゃあ、下手したらこっちにも降りかかりそうな火の粉だし・・・」
「・・・僕はおそらく、組織が暗殺の指示を出したんだと思う。しかし実行したのは外部の業者だと思うな。」
「外部の業者?」
「ああ、アメリカにICAっていう組織があってね。非公式で存在すら怪しまれてる影の組織なんだけど、僕はそこのエージェントがやったと睨んでいるんだ。」
「じゃあジョディ先生に言って調べてもらうのは」
「だめだね。今回の事件の管轄は日本警察だし、それに僕が気がついたときには周りにも僕自身にも加藤さんの遺体にすら証拠になるようなものは何も残っていなかったから。」
「一体どういう組織なの?そのICAっていうのは。」
「政界、財界、芸能界、その他諸々の裏社会に通じる影の暗殺組織と聞いてるよ。それ以外は本部が何処なのか、何処で活動しているのか、表向きは何なのか、構成員はどのくらいなのか、一切わからないけどね。」
「そうなんだ・・・」
「ともかく言えるのは、これ以上この周辺では被害者は出ないということだけだね。警察の方も打つ手なしといった感じのようだし。」
「敵にはならない?」
「どうだろうね。彼らは金で動く傭兵集団みたいなものらしいから、自分たちがターゲットになりさえしなければってところだろう。君も気をつけたほうが良いぞ?」
「ぼ、僕は大丈夫だよ。小学生だし。」
「・・・噂によると工藤新一が失踪した真相も掴んでるらしいけどね。」
「・・・マジ?」
ミッションコンプリート
・「殺人の美学」 +3000 『ワイヤーでターゲットを暗殺する』
・「犯罪率の穴」 +2000 『誰にも見られることなくターゲットを暗殺する』
・「ポアロの用心棒」 +5000 『安室透と格闘戦をする』
・「コーヒーブレイク」+1000 『喫茶ポアロで3時間以上過ごす』
梓さんかわいい。なんか渋では炎上キャラになっちゃってるけどw
2019/06/17追記
炎上キャラなのは映画の影響だったようですね。この前の金ローで知りました。
次回はドームですよ!ドーム!